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天才と脳筋は紙一重  作者: たんすちゃん
《第三章》-王立学園編-
66/100

66.本丸現る、ですわ!

「やめ、やめてっ……あは、あははははっ!!」

「その調子よガルム! もっとやっちゃいなさい!」

 数分後……ギャリルは動けないのを良いことに、ガルムに顔中や足の裏など好き放題に舐められまくっていた。

 ヒィヒィと泣き笑いを繰り返しながらも終わらない拷問? に、ギャリルはジタバタと暴れながら悲鳴を上げていた。だんだんとボルテージが上がってきたのか、マナは実に愉快そうにガルムを焚きつける。


_


「ま、待って! 分かった……分かったからぁ……っ!! もう解放してぇぇ~~~っ!!!!」

 そしてさらに数分が経った頃。ついに音を上げたギャリルが降参の意を示すと、ようやくガルムとマナの魔の手からギャリルは解放された。

 その姿は先程までの悪魔としての威厳や恐怖感などは一切なく、ぜぇぜぇと息を上げ、髪はボサボサ、顔や手足は涎でびしょびしょ。服もヨレてしまい、翼や尻尾もヘタれてなんとも可哀想な姿となっていた。


「思ってたより音を上げるのが早かったわね?」

「はぁ……はぁ……。わ、私たち悪魔は元々互いにほぼ無干渉。どうでもいいのよ、誰の秘密を漏らしたって……」

 悪魔は皆、自分のために生きる。グリモワールの悪魔という普通の悪魔とは一線を画した存在であっても、それは同じなようで、別に他の悪魔の情報を喋ってはいけないなどというルールはないらしい。

 ただプライドが高いため、悪魔のほとんどは素直に答えたくないというだけである。

 そしてマナは観念した様子のギャリルに、ベリトについて訊ねる。


「嘘は吐かないでね? もし吐いたら……」

「わ、分かったわよ……。ベリト、序列は12位。自分で言いたくないけど、私より数段強いわ……」

 手をわきわきとさせるマナに脅されたギャリルは、渋々語り始める。


「得意魔法は紫電魔法。雷の派生魔法で、質量や速さを自由にいじれるらしいわ。単純な性格に見えて、あいつは案外慎重な性格をしてるから、騙されないほうがいいわよ」

「ふん、嘘は言ってないわね。大方予想通りって感じだわ」

 実際に戦ってみて感じた感覚通り、ベリトは紫色の電撃を放っており、キレて動きが単調になったかと思えば騙し討ちの連続でマナ達はそれに翻弄された。この時点でギャリルが嘘をついていないことは確認出来た。

 マナが聞きたいのは悪魔の弱点や、他の悪魔の情報だ。今しがたギャリルが言っていたように、互いにほぼ無干渉であるのならば可能性は低いが、もしかすればまた現れる時、ベリトが他の悪魔と徒党を組んで攻めてくる可能性もある。

 故に、ベリトだけでなく他の悪魔のことも聞ければ大きな一歩だと考え、質問を続ける。


「ベリトの弱点? 知らないわよそんなの。言ったでしょ、私たちは基本互いに無干渉。魔界のルールで定期的に会合が開かれるけれど、大した話もしなければお互いの秘密を打ち明けるような仲でもないのよ」

 ギャリルの態度を見るに、マナの希望とは反して、悪魔たちの弱点については大した収穫は得られ無さそうであった。ただ、グリモワールの悪魔同士で会合が開かれるという話は初耳だったが、正直現状必要な情報でもないように感じた。


(悪魔の弱点についてはダメそうね……。なら次に聞くべき質問は……)

「序列11位から下の悪魔について教えなさい。特徴と名前、知っていること全て」

 グリモワールの悪魔は全員で14人いる。それはベルを通してルナから聞いたことだ。そして明らかに一際プライドの高そうなベリトであれば、きっと自分より格上は連れてこない。自分より力が上の者に頼るなど、プライドが高い者なら許せないはずだ。

 ベリトは序列が12位。ルナの話では、グリモワールの悪魔は10位から先の悪魔が最上位悪魔(アークデーモン)……つまり、格が違うと言っていた。であれば自分より上の悪魔を連れて来る可能性を考慮するならば、位が同等程度の序列11位以下の悪魔だとマナは考えたのである。


「……どうしてそんなにあいつにこだわるのか知らないけど、まぁいいわ。私は14位のギャリル。夢魔族の悪魔で、序列に興味はないけれど、グリモワールの中では一番下よ」

 マナからの改まった質問に対し、ギャリルは無駄な抵抗は諦めたのか素直に答え始める。彼女にも悪魔らしくプライドはあるらしいが、どうやらそれは自分に対するものが大きいらしく、序列等に対するプライドはそこまでらしい。


「そして13位、獅子の獣人族の悪魔ブエル。彼は……無口だからよく知らないわ。回復魔法が使えるみたいだけど」

 ここに来て初めて聞く名前。ブエルは獣人らしいが、悪魔でもあるらしい。図書館で調べている時に書いていた。悪魔には先天的な者と後天的な者がおり、種族が異なる者も堕落し魔界に堕ちれば悪魔となる。

 その経緯は様々だが、深い絶望や失望。嫉妬や欲望など、とてもプラスとはいえない感情を強く心に宿した時、悪魔に堕ちるという。

 悪魔は皆身体が魔力で出来ているが、元々普通の種族だったはずの彼らも同じく魔力で身体が構成されている。その理由は魔界という特異な環境にある。

 魔界は魔力濃度が人間界と比べて非常に濃く、そこで暮らす生物、植物や無機物である建物などですらその影響を受け濃い魔力を宿す。特に生物はその影響を著しく受けるため、魔界で暮らすうち体質が変異していくのだ。


「本で見た通り、本当に純粋な悪魔以外の種族も混じってるのね……。人間も悪魔に堕ちることがあるのかしら?」

「さあね? 元が人種の悪魔はまだ見たことないわ」

 マナがふと気になったことを呟くが、ギャリルは知らん顔で突っぱねる。悪魔に魂を売る人間というのは本や神話でも見ることがあるが、本当にあり得ることなのかは分からない。


「それで、ベリトはさっき説明したから……次は序列11位ね――」

「!!」

「あら、治療おつかれさま。どうしたのよルナ?」

 ギャリルが最後に序列11位の悪魔について口にした時、カトレア達の傷を治し終えマナの元に来たルナが反応する。

 ルナはベルから今ギャリルが話したグリモワールの悪魔達についてはすでに聞いていた。しかし、その中で唯一、11位のグラウには気をつけろとベルから忠告されていたのだ。それを思い出してつい反応してしまったのである。


「ねえギャリルさん! 序列11位ってグラウっていうんでしょ? 変な魔力を使うって聞いたんだけど、どんな魔力なの!?」

「何よこのコは……グイグイ来るじゃない」

「そういえば貴女はベルから色々聞いてたんだったわね。作戦会議の前に少し聞いたけど、序列11位はそのグラウってヤツなのね?」

 ルナはベルから聞いたことをマナに共有こそしたが、全てというわけではない。マナが作戦を思いつき、皆での作戦会議から行動に移すまでの期間はわずか1日といった程度で、かなりの早さで決まったことだ。

 それも、ルナがマナの魔法の特訓を秒で終わらせてしまったからでもあるのだが……。

 何はともあれ、ルナはベルの言っていた変な魔力というのが気になっていたため、ここで聞けるのならと前のめりになってしまったようだ。


「あら、もう知ってるの? そうよ。序列11位グラウ・N(ノット)・プロフェシー。彼の素性は謎に包まれてるけど、確かにグラウは奇妙な魔力を使う。私はそこまで戦いに興味がないから彼の魔力についてはよく知らないけどね。恐らくベリト、ブエル、私の三人でかかっても勝てるか分からないわ」

「うーん……同じ悪魔のギャリルさんでも知らないのかぁ……」

「序列12位、13位、14位が揃っても勝てないなんて、11位と12位以下にはいったいどれだけの差があるっていうの……?」

 残念ながらギャリルでさえもグラウの魔力についてはよく知らないらしく、ルナの希望には沿わないようだった。

 更にはグラウはベリト達が束になっても勝てない程という発言。ベリト程ではないにせよ、プライドが高い悪魔であるギャリル自身から出た発言だ。その信憑性は高い。


「そういえば、グラウは元々何の種族なのかしら? なんか悪魔っぽくないのよね。角や羽根はあるけれど、生まれつきじゃないみたいだし……」

「どういうこと?」

 ふとギャリルが疑問に思ったように首を傾げる。マナは意味が分からず訊ねるがギャリル自身も分からないようでパッとしない。


「さぁね。まぁでも……それこそ、さっき話した人種みたいな匂いがするのよ。少し違う感じもするけれど、人種の悪魔なんて見たことないし、グラウこそがその人種から成った悪魔なのかもしれないわね?」

「それって……!?」

 ギャリルの言葉に誰よりも早く大きな反応を示したのは、傷を治癒され話を聞いていたカトレアであった。


「教えなさい! そのグラウという悪魔の特徴を!」

「カトレア? どうしたのよ急に……」

 食い気味に質問を投げかけるカトレア。急に様子が豹変したカトレアに困惑と動揺を隠せないマナは訊ねるが、ふと図書館で聞いた彼女の過去を思い出す。


(もしかして、そのグラウとかいう悪魔が……?)

 カトレアの故郷は冷たい瞳を持つ、栗色の髪の少年の姿をした悪魔に蹂躙されたと言っていた。弟や母もその毒牙にかけられた……。カトレアはその悪魔の少年に復讐をするため、冒険者となった。

 今でこそ復讐ではなく仇のためだが、カトレアが長年探していることには違いない。その少年は確かに悪魔らしく角や翼を持っていたが、それを入れても姿は人間と大して変わらないように見えた。つまり、先ほど話していた『人種の悪魔』という可能性が高いのだ。


「特徴って言ってもね~。変な魔力を使う小生意気な子供……ってところかしら。多分子供なのは見た目だけなんでしょうけど」

「見た目が子供の悪魔……やはり――」


パリィン!!


 カトレアの疑念がほぼ確信に変わりかけ、確証を得るために続けて質問をしようとした時。周囲をずっと渦巻いていたギャリルの魔力によるフィールドが破壊される。


「「「「!?」」」」

 ギャリルが魔力を解いたのではない。何者かが外側から壊し、中に入ってきた。そしてその存在は圧倒的な気迫を放っており、近づくにつれてその気配は強くなっていった。



「ダメじゃないかギャリル。そんなにペラペラと他の悪魔の情報を漏らしちゃ……」

 魔力が霧散し、その向こうから語りかけてくる存在。その姿は――。


「子供?」

「僕と同じくらい、でしょうか?」

「なんか変な気配……」

「栗色の髪の……!」

 放つ存在感と気迫とは相反し、見た目はただの人間の少年だった。クロエと同じか少し上くらい。しかし、その姿を見たカトレアは4人の中でただ一人険しい顔をしていた。

 冷たい瞳をした、栗色の髪の少年。それはカトレアの弟と母を殺した、あの悪魔だった。


「あ~! ()()()く~ん♪ ごめーん、捕まっちゃったぁ~」

「全く、人間如きに遅れを取るなんて、だらしないねギャリルは。いつもなら放っておくところだけど、今回は君がいないと困るんだ。だから今回だけは助けてあげるよ」

 ギャリルにグラウと呼ばれた少年はそう言うと、体中から不気味な魔力を放ち始める。ルナがベルから聞いたグラウというのは、カトレアが探していた悪魔のことでもあったようだ。

 そして殺気を隠すことをやめたグラウを見て、ルナはベルに言われたことを思い出す。


『グラウには気を付けて。とにかく戦っちゃダメ』


 その言葉を裏付けるかのように、ルナの直感が危険を知らせる。この悪魔は先程戦ったギャリルよりも明らかにレベルが違う。それどころか、あのベリトとも。

 ギャリルが言っていたことが本当ならば、ベリトやギャリルが合わさっても勝てないほどの強さを持っているということ。そしてまだ距離があるにも関わらず、本能が危険を告げているこの状況。ルナは嫌な予感を感じ臨戦態勢に入る。


「マナちゃん、カトレア、クロエくん、構えたほうがいいかも……あいつはやばい気がする……!」

「言われなくても……!」

「分かってます!」

「……ええ」

 ルナが警告すると、そんなことは分かっていたようにすでにマナ達は剣を抜き、いつでも戦える姿勢に入っていた。

 4人が警戒を高め様子を窺っていると、グラウの方からこちらに声を掛けてきた。


「はじめまして下等な人間諸君。早速で悪いけど、そこの女を渡してもらえるかな? 僕はあまり無駄な殺生は好まないんだ。素直に渡してくれればお互い平和に終われると思わないかな?」

「相変わらず見下した態度……驕ってばかりいると足元を掬われますわよ、グラウ!」

 言葉の節々に人間を見下すような態度が散見されるグラウに、静かに怒りを燃やしながら細剣を構えるカトレア。その手はふるふると震えていた。

 内心では今にも飛び出して斬り掛かって行きたいほど怒っているのだろう。目の前にようやく見つけた家族の仇がいるのだ。しかし、今無暗に飛び込んでいけば一瞬で殺されるだろうことは怒り心頭のカトレアにも分かっていた。

 他でもないルナが警告しているのだ。幼い頃グラウに遭遇した時は分からなかったが、今なら分かる。あの悪魔は格が違う。我を忘れてはいけないと本能が言っていた。


「まるで僕を知っているかのような口ぶりだね? 言葉は選んだほうがいいよ。すでに君たちの命は僕の手のひらの上だ」

「知っているかのような口ぶり? ええ、知っておりますとも! わたくしはあなたをずっと探していた! お母様と弟の仇、ここで取らせてもらいますわ!」

 グラウ自身覚えていないらしかったが、そんなことはどうでもいい。たしかにあれだけのことをしておいて忘れているというのは腹立たしいことだったが、カトレアにとっては仇を取れればそれでいい。

 母や弟がそれを望んでいるとも思っていない。これはカトレアの気持ちの問題。墓前で誓ったのだ。絶対にあの悪魔を許さないと。シトラスと約束したのだ。必ず仇を取ると。


「僕を探していた、か。人間は成長と共に姿が変わるのが早い。生憎だけどいちいち覚えてられないよ。ただ、僕に恨みがあるのなら来るが良い。僕と戦う覚悟があるのならね」

「言われなくても――ッ!!」

 カトレアのことを嘲笑うかのように挑発するグラウだったが、カトレアはその挑発をすぐに買う。別に頭に血が上って正常な判断が出来なくなっているわけではない。

 元より戦うつもりだった。相手がやる気なら、こちらも遠慮するつもりは一切ない。それだけのこと。そうして細剣を構えて踏み込んだカトレアだったが、同時に剣を構えて並ぶように飛び込んだのはマナだった。


「マナさんッ!?」

「安い挑発だけど、私の友達を侮辱されているみたいで不快……だから、買うッ!!」

「申し訳ありません……ですけど、感謝しますわ!」

 カトレアと共に飛び込んでいったマナ。その後方ではルナとクロエが支援のために魔法の準備をしていた。


「来るか。無謀だね」

「「ッ!?」」

 瞬間――。二人がグラウに接近し、剣を振るおうとした時。余裕たっぷりな様子のグラウが二人を視界に入れると、直後マナとカトレアの身体は、まるで重力が何倍にもなったかのように地面に叩き伏せられる。


「な、にが……!?」

「身体が……重い……!」

 何をされたのか二人には理解出来なかった。グラウは何もしていない。一歩も動かず、ただこちらを一瞥しただけ。

 それだけなのに、二人は地面に伏したまま起き上がることもままならなかった。


「何が起きたの!? 二人が急に倒れた……!」

「分からない……ただ、あのグラウっていう悪魔が何かしたのは間違いないよ……!」

「さて、次は君たちか。抵抗しなければ痛い目は見ずに済むよ?」

 目の前で突然上から押し付けられるように倒れ伏したマナ達を見て困惑するルナとクロエだったが、そんな間もなくグラウはこちらへ近づいてくる。

 グラウから半ば一方的ともとれる提案を出されるが、すでに仲間が攻撃を受けているのだ。言われた通りに大人しくしているような二人ではない。


「【霧剣・キリサメ】!」

「【フローズンバレット】!」

 マナ達を地面に伸しこちらにゆっくりと向かってくるグラウに向けて、ルナ達は躊躇なく攻撃を仕掛ける。

 迫る氷の弾丸と水圧の斬撃はグラウに襲いかかる――……が、グラウが飛来する2つの攻撃を一瞥すると、次の瞬間ルナの魔法は空中で静止し、クロエの斬撃はそのまま霧のように霧散した。


「なっ!?」

「無駄だよ。人如きが僕に勝てるはずがない。諦めてそこで寝てなよ」


ドッ!!


 グラウがそう言うと、直後クロエとルナの身体にはとてつもない重力がのしかかる。マナ達を押さえつけている()()と同じものだ。


「ぐっ……う、動けない……」

「んぐぐぐぐ……!!」

 指一本動かせないほどの重圧。魔法を行使した様子もなく、さらには重力だけでなく魔法すらも無効化する謎の力に、ルナ達は成す術もなく皆地面に伸されてしまう。

 そんな二人を無視し、最後にはギャリルの元で彼女が逃げないよう傍にいたニーシャの元へとグラウは向かう。


「君の仲間はこのザマだ。まさか君まで無駄な抵抗をするとは、言わないよね?」

「く……」

 半ば脅しのようなグラウの言葉に後退りするニーシャ。しかし、せっかく皆で協力して捕らえた悪魔を逃がすわけにはいかない。そう思い、ニーシャも戦おうと構えるが、グラウは言葉を続ける。


「君には選択をやろう。仲間を見捨てて君だけが生き残るか、仲間のために君だけ殺されるか。君が死ねば仲間の命は保証してあげるよ」

「っ……」

 一方的で理不尽な選択を突きつけるグラウ。それは圧倒的強者にしか出来ない提案だったが、彼にはそれを為せるだけの力がある。一瞬困惑したが、ニーシャは考える間もなくすぐに答えを出した。


「分かった……くれてやる、私の命を。その代わり、皆に手は出すな」

 ルナ達の身を案じたニーシャは大人しく引き下がる決断をする。このまま無謀に悪魔と戦って全員死ぬより、自分だけが死ねば他の4人は助かる。自分が犠牲になることで皆が助かるならそちらのほうがいい。合理的にそう判断したのだ。


「何言ってるのニーシャ! そんなの誰も望んでないわ!」

「そ、そうですよ……っ! それに、その悪魔の言う事が本当とは限らないです!」

「わたくしのせいで、また誰かが命を落とすのは嫌……!」

「ニーシャ……っ」

 皆が思い思いに止める中、ニーシャは覚悟を決めたような表情をしていた。

 それを見たグラウは感心した様子でニーシャに歩み寄る。


「随分仲間思いなんだね。人間らしいといえばらしいが……。その自己犠牲心に免じて、君の仲間の命は確かに保証すると約束しよう」

「そうか……それならいいんだ」

 グラウは抵抗する気がない様子のニーシャの元まで来ると、拘束されて床に転がっているギャリルを片手で抱えあげてからニーシャの方へ向き直す。


「それじゃあね。勇敢な人間の娘――」

 そう言うと覚悟を決めて目を閉じたニーシャに向けて、グラウは手をかざし振りかぶった――。


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