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天才と脳筋は紙一重  作者: たんすちゃん
《第一章》-邂逅編-
6/99

6.温泉街バルネア!

 なぜルナが地下のダンジョンの壁を突き破って現れたのかというと……。


_

__

___


 マナがダンジョンを見つける少し前……。ルナはバルネアを目指して街道を歩いていた。

 コロンを発ってからもうすでに二日が経っており、あと一時間も歩けば到着する距離まで来ている。

 ふと、周囲を巨大な影が覆う。空を見ると、巨大な瑠璃(るり)色の鳥のような生物が大きく翼を広げ、通り過ぎていくところだった。


「わあぁっ……! すごくおっきな青い鳥! たしか、青い鳥は幸せを運ぶって本に書いてあったし、良いことあるといいな~!」

 ルナが口を開けたまま呆然と空を見上げていると、巨鳥の大翼が大きく羽ばたき、強い羽風が吹いた。その際、髪を結ぶため身につけていたコロンで貰ったリボンが解け、遠くへ飛んでいってしまった。


「あっ、まって! いかないでぇ~!」

 暫くリボンを追いかけていると街道からは外れ、気づけばバルネアの外壁の外周まで来てしまっていた。

 飛んでいってしまったリボンを拾って再び結び直していると、ルナの耳に何かの音が届いた。


おおぉぉぉぉぉ………


「………?」

「なんの音だろう? 何かの声にも聞こえるけど……。この辺かな? えいっ!」

 興味が湧いたルナは音の聞こえる付近と方角を大まかに算出して、それなりの力で地面を殴った。


ぼふぉぉっ


 すると土が爆発したかのように舞い上がり、そこには人一人が収まりそうなサイズの小さな穴が出来た。


おおおおぉぉぉ………


 声は先程よりもやや近く聞こえるようになった気がする。

 ルナはそのまま地面を縦に掘り進んでいった。


「このくらいの深さで……あっち側かな?」

 ある程度の深さまで掘り進んだルナは、直下堀りをそこで止め、今度は拳で横に掘り進み始めた。天井が崩れるよりも素早く、それはもう猛烈な速度で。

 そして地中を掘り始めた際の現在地は、バルネア内では煉瓦街のある付近の外壁の外側、つまりはマナが入り込んだダンジョンの入り口がある区域だった。


ウオォォォオオオオ……!

どぉん……! キィン……!


 しばらくの間掘り進んでいるとだんだんと音が近くなり、度々震動や戦闘音のようなものが聞こえるようになってきた。


「なにが起きてるんだろ? 街の地下になにかあるのかな? よーし……」

 好奇心の塊であるルナは、近くなる謎の声や震動の原因を究明するべく穴を掘る手を加速させた。


「おりゃあああああああああああああ!」


___

__

_


「……って感じで、音を頼りに掘ってきたんだ」

 あっけらかんとした様子で説明するルナ。ぽかんとした表情でその話を聞いていたマナは、ハッと我に返った様子でツッコミどころに触れる。


「いや……変な音がするからって、外壁の下を掘り進むのはおかしいでしょ! しかもダンジョンの壁を壊して入るなんて無茶苦茶よ! いくらダンジョンは壊しても再生するとはいえ……。ていうか、素手で人が通れるほどの穴掘るってどんなパワーよ!?」

 ダンジョンは内部が破壊されようと、一定時間が経つと破壊前の状態に再生する。しかしそうは言ってもダンジョンの壁を破壊して外から侵入する者など聞いたこともない。ましてや地面を掘ってなど前代未聞である。

 マナは呆れたような表情で、至極真っ当な正論をかざしツッコミを入れる。


「……まぁでも、命を助けてもらったことに変わりはないわ。あ、ありがと……。私はマナ、B級冒険者よ。貴女は?」

 気を取り直し、王族ではなく冒険者としての自己紹介をするマナだったが、わざわざ王族だと明かす必要もないうえ、こんなところに王族がいるわけもないので言っても普通の人なら信じないからだ。恐らく純真なルナならば信じてしまうのであろうが……。


「冒険者!? 私、ルナ! ルナ・アイギス! 冒険者になりたくて王都を目指して旅してるの!」

 『冒険者』と聞いて半ば興奮気味に食いつくルナと、急にテンションがあがったルナにマナはやや引いていた。

 それほどまでにルナの冒険者への憧れは強いのだ。それが良いことになるか悪いことになるかはこの先の本人次第だが。


「ルナ・アイギスね、今回の事は借りにしておくわ! 私、約束を破るのは嫌いなの。だからいつか絶対返してあげる! 一応、命の恩人だし……」

 傷もほぼ完治し、身体が動くようになったマナは立ち上がって腰に手を当て、ふふん!と高らかに宣言する。何故か最後のセリフは顔を赤らめながら。どこか思うところがあったようである。


「よし!これでもう傷は大丈夫だね! じゃあ私、バルネアで宿取らなきゃいけないからもう行くね!」

 無事、傷の治療を終えたルナはそう言うと、立ち上がりさっさと走っていってしまった。

 そんな走り去っていく背中を見ながら、マナは軽く声をかけつつ思索する。


「え、ええ、一応ここダンジョンだから気をつけて行くのよ……。って言ってもあの子なら問題なさそうよね? それにしてもルナ・アイギスか……一体何者なのかしら……?」

 初めての街での初めての出来事。そして初めて会った少女の圧倒的な力。マナは嵐のように過ぎ去っていった少女に、何か縁のようなものを感じつつも、ヌシのいなくなったダンジョンの探索を再開するのだった。


_

_

_


 マナと別れた後、特に何事もなくダンジョンを出たルナはバルネアの街で宿を探していた。

 この街には観光客が多いため宿屋が複数設置されているのだが、それでもなお、全部屋満室の宿が多く、ルナは中々宿が取れないでいた。


「困ったな~? 全然宿が見つからない……。西側と南側は全滅だったから、次は東側かな~? コロンの人達が言ってた通り、すごい人の数で大変だよぉ……。でもお店の食べ物は美味しいからよし!」

 ぶーぶーと文句を垂れながらも、店で買った『わたあめ』やら、『オーク肉の串焼き』やらを頬張り、満足げな顔をしつつ、今いるバルネア西地区の反対側、バルネア東地区へ向かうため中央区に向かうルナ。

 だが都会には当然問題も多く、人が多いということは良からぬことを企む者もいるのだ。そんなお上りさん丸出しの少女を狙う怪しい影が、徐々に近づいてきていた……。

 バルネアの中心、噴水大広場が見えて来た頃、今度は両手に持った『ちょこばなな』を食べながら甘さを堪能していたルナだったが、二人組の男が前から歩いてきて、一人がそのままわざとらしくルナにぶつかってきた。


どん!


「あっ……ごめんなさい!」

 即座に謝罪するルナだったが、ぶつかった男の方はというと……。


「ぐああぁぁ! 痛えぇぇ! てめぇ! どこ見て歩いてんだァ!? うっ…! 血がぁぁ!」

「えっ!? えっ!? そんなに強くぶつかったかな……。もしかして、剣がぶつかっちゃった!? あれ? でも別に抜き身じゃないよね?」

 ルナが腹から血を出しながら叫んでいる男を見ながら呑気なことを考えていると、もう一人の男がいちゃもんをつけてくる。


「おうおう嬢ちゃんよぉ! よくも俺のダチに怪我させてくれたなぁ? そんなでけえ大剣背負って歩いてっからこんなことになんだよ!」

 そう、彼らは人が多いこの街で観光客のみを狙って、様々な言いがかりをつけて金を巻き上げている悪質な当たり屋だった。

 なぜ観光客のみを狙うのか。それは旅行や観光で遠出をしてくるような者は大体それなりの金額を持っていたり、それなりの地位の者が多いからだ。

 当然、最初の男は怪我などしていない。腹から出ている血は予め仕込んでおいた血糊である。そもそもルナの大剣はしっかりと鞘に収まっているのだから刃が当たるはずもない。

 『田舎者っぽい奴』を優先的に狙っていた二人組だったが、今回ターゲットにしたルナは田舎者は田舎者だが、普通の『田舎者』のレベルを超えていた。


「へっ、こりゃあ代償として持ってる金を全部もらわねぇと済まねえなぁ?」

 通りがかる人々もこちらを注目していた。『因縁をつけられている大剣を背負った少女』と『血を流して倒れて騒いでいるふたりの男達』という第三者が見たら明らかに武器を持っているルナを疑ってしまうような状況。

 周囲の目を利用した非常に悪質な手口である。しかしお上りさんを超えたお上りさんであるルナは、初めて体験するトラブルに軽いパニックになり、持っていた手つかずの方の『ちょこばなな』を男の口に突っ込み……。


「ごめんなさい!! 今治すからこれでも食べて落ち着いてぇぇぇっ!!」

「もごっ……!?」

 お前が落ち着け、と言わんばかりな行動に出た。まだまだ人間関係は苦手なようである。

 血を流していた男はというと、周りによく聞こえるように、全力で叫んでいたところにいきなり『ちょこばなな』を突っ込まれたため、喉が詰まり意識が遠のいていた。というか、もはや泡を吹いて気絶していた。


「待て! マジで死んじまう! やめろおぉぉぉおおっ!」


クスクス……


 一部始終を見ていた周りの者たちは、あまりの馬鹿馬鹿しさに、まるで大道芸でも見たかのように笑っている者もいた。



「よかった~! 大怪我でもしてるのかと思った!」

 治癒魔法をかけ終わり、安らかな顔をして気絶している男を見てルナは安堵していた。

 実際は小さな怪我すらしておらず、普通ならば治癒魔法をかける際に気づくのだが、パニックになっていたルナはそんなことにも気づいてはいなかった。


「ぶつかってごめんなさい! それじゃあさよならー!」

 そう言うとルナはスタスタと足早に噴水広場に向かって歩いていってしまった。


 彼らがルナに絡んだ結果得られたものは、周囲からの嘲笑と『ちょこばなな』だけであった……。


「完全に絡む相手を間違えた……」

 気絶した相棒の横でそう呟く男だった。


_


 面倒事に絡まれながらも、ようやくこの街の中心地、噴水大広場に着いたルナ。


「あーあ、さっきの人にちょこばななあげちゃったし、買い直すお金ももうほとんどないや……。都会って何が起こるかわからなくて怖いなぁ」

 誰に話しかけるでもなく独り言を呟くルナは、バルネアに来てからというもの、買い食いをしすぎて、すでに巾着袋には宿代ぐらいしか残っておらず、もう無駄遣いは出来ないまでにカツカツになっていた。

 それほどまでにお金の管理がガサツなルナが宿代だけはちゃんと残しているあたりは、まだ褒められる方である。


「はぁ……。宿もまだ取れてないし、もうお腹は空いてきたし、なんか疲れちゃったし噴水でも眺めて癒やされよう……」

 やや落ち込みながらも一旦休憩しようと噴水の外縁へ向かうと、噴水の前になにやら人だかりが出来ていた。

 不思議に思ったルナが近寄ると大きな見出し看板が立てられていた。


『毎年恒例!! バルネア最強の力自慢は誰だ!? 腕相撲大会! 参加自由! 観戦自由!』


「……腕相撲? あはは! 毎年やってるんだ! こんなに人が集まるところでやったら誰が最強かなんて決めれっこないよ~!」

 どうやらバルネアでは毎年恒例の大会が『偶然』にも開催されているようだった。

 気が抜けてつい笑ってしまうルナ。

 看板の下には詳細な説明が書いてあるようだ。


『前回王者を打ち負かした者が今年の勝者! 勝負は一回勝負。王者が敗退したその時点で今大会は終了となります。

挑戦者全員が敗退した場合は前回王者は殿堂入りとなり1ヶ月温泉無料券と賞金が贈呈されます!参加料金は無料。挑戦者優勝賞金は10万ヘラ。さぁ、お前の力を示せ!』


 ……と書いてあった。そして現在お金に困っている少女が『偶然』にもここにいた。

 そう。ルナである。


「じゅっじゅじゅ……『10万ヘラ』!? 腕相撲に勝つだけで10万! そんなにあったらおやつとか食べ物がいっぱい……。うへ、うへへへへ……」

 大金が取れた時の使い道を妄想しながら、涎を垂らして(いや)しい笑い声が漏れているルナ。

 10万ヘラとは中々の大金である。この国においてヘラの貨幣価値は村や街によって値段は変動するが、大体、水は0~10ヘラ、パンは10~30ヘラ、飯付きの宿屋で50~300ヘラ、武器や防具を買うのに500~9000ヘラ、家を買うのに50万~200万ヘラといった感じだ。

 ちなみにコロンでルナの泊まった宿屋は飯付きで一泊10ヘラとかなりぶっ飛んだ価格設定である。

 地域によって価格設定にある程度差は出るものの、コロンは大盤振る舞いすぎである。おそらく盗賊の影響などで食材も少なく来客もほぼなかったからなのだろうが……。

 世間知らずのルナは最近になってその辺りの知識をつけ始めたため、コロンの価格設定のイカれっぷりには当時気づかなかったのだ。


「出るしかないッ! 今後私が生きていくにはこの10万ヘラが必要だよ!」

 当然、出る決意を固めた少女は、ふんすっ、とドヤ顔で拳を握り、人だかりに向かって歩いていく。


「さあさあ次の挑戦者は、『隣村一番の力持ち』ハンス! 対するは、『前回チャンピオン』アレク!」

 ルナが参加者の列に並ぶと、ちょうど対戦が始まるところだった。


「いけーっ、ハンス!」

「これで決めてくれ! 挑戦者ー!」

「負けるなーっ、アレク!」

 ギャラリーの量も、年に一度のイベントとだけあって中々の人数である。

 あまりの人の多さに、身長が平均以下のルナには対戦内容は見えないが、観衆の盛り上がりよう的に熱い戦いが繰り広げられているのだろうか。


「おーっと! ここで決着ッ! 勝者はアレク! やはり前回王者は硬く強い! 倒せる者は現れるのか!?」

 どうやら決着がついたようだ。挑戦者は負けてしまったらしい。ルナの前には力に自信がありそうな巨漢が五人ほど並んでいる。このペースなら、もうじきルナの番が回ってきそうだ。


「おや? お嬢ちゃん、ここは参加者の列だが間違えてないか?」

 のんびりと待っていると、すぐ前に並んでいた男、カインが声をかけてきた。


「私、今お金ないからこの大会の賞金がほしいんだ!」

「はっはっは! お嬢ちゃんの体格じゃ、ちときついかもなぁ?」

「んっ! それどういう意味ー!?」

 ルナは頬を膨らませて反論するが、カインの言い分も一理ある。周りを見れば分かるがこの大会の参加者は筋骨隆々の男性ばかりだ。そんな中ひとりだけ小さな少女が混ざっているというのは些か浮いている。

 そんなことを話していると前の男の順番が回ってきたようだ。


「お、やっと俺の番か! 嬢ちゃんには悪いが賞金は頂くぜ?」

 自信満々にそう告げるとカインはルナへ手を振り会場へ歩いていった。

 少々驕った態度だが彼の自信の源はその引き締まった筋肉にあるのだろう。実際、カインが出ていった瞬間の観衆の盛り上がりは凄まじかった。


「さぁ次の挑戦者はなんと! 『初代チャンピオン』カインだーッ!」

「「「「うおおおおおおおお!!!」」」」

「『初代』と『前回』のチャンピオンのぶつかり合い! これは勝負が全く予測できないぞ!」

 まさかのカインはこの大会の初代王者だった。あれだけの自信があるわけである。


「あのおじさん、チャンピオンだったんだ!」

 前に並んでいた者がいなくなったため、ルナはようやく王者の姿を見ることができた。

 対する王者アレクはカインに全く引けを取らない体格で、焼けた肌に誰が見ても一目瞭然な鍛え上げられた上腕二頭筋。

 恐らくこの大会最高のカードが今揃ったわけである。


「二人ともすごい筋肉……。ほんとに賞金取られちゃうかも……?」

 筋トレ趣味のルナから見ても彼らの鍛錬量は並々ならぬものだった。不安に駆られるルナだったが勝負は時の運。どうなるかはわからないものだ。


「それでは早速行きましょう! 両者、レディ、セット……ゴー!」

 司会がコールを掛けると勝負は始まった。

 開幕こそカインが押していたように見えたものの、すぐさまアレクが押し返す。


「ウオオオオオオオオオオ!」

 しかし負けじとカインも雄叫びをあげつつ押し返す。二分ほどそんな様子が続いていた。

 今日一番のアツい戦いに観衆も大盛り上がりである。

 まるで波のように寄せては返す戦いだったが、軍配はアレクにあがった。


「なんと! かなりアツい戦いだったが接戦を制したのはアレクだーッ!!」

「さすがだぜアレクーッ!」

「あの筋肉、素敵だわ……!」

「この大会出なくて正解だったぜ……」

 決着がつくと観客たちは大盛りあがり。アレクとカインの二人もいい汗を流したと、とてもいい顔をしていた。


「いい勝負だった! アレク!」

「ああ、ここまで本気でやりあったのは久々だ!」

 かなりの盛り上がりの中、アレクとカインは握手を交わし王者同士の熱い戦いはアレクの勝利で幕を閉じた。


「カインさん、すごかったよ! もう少しで勝てそうだった!」

「ありがとよ、お嬢ちゃん! 勝負には負けちまったが、俺は満足している。お嬢ちゃんも気張れよ!」

「はーい!」

 会場を出る途中のカインに声をかけられ、背中を押されながらも次はいよいよルナの番である。ルナが会場に現れると観客からは驚きの声と慈しむような声があがっていた。


「やーん、かわいいー!」

「女の子!?」

「あの子も挑戦するのか?」

 当然の反応である。この大会の参加者は皆、力自慢の男性ばかりなのだから。


「さあいよいよ今大会も大詰め! 最後の挑戦者はなんと大会初の美少女だーッ!」

「美少女なんてぇ……。えへへ……」

 あまり褒められ慣れていないルナが照れていると司会者が名前と意気込みを訊いてきた。


「えっと、ルナと言います! この街に来てから食べ過ぎちゃってお金に困ってて……賞金に釣られて来ちゃいました! 力には自信があります!」


「ルナちゃん頑張って~!」

「あの子、ルナっていうのか。負けんなーっ!」

 ルナの初々しい自己紹介に心打たれた観客は、内心では無理だろうと思っていながらも応援していた。

 しかしやはり勝負は時の運。結果は誰にもわからない。それが分かりきった結果になると思っていても―――。


「さてさて、いよいよラストバトル! 挑戦者は、お金に困って急遽参加! 『謎の大剣美少女』ルナーッ! 対するは、初代を打ち破った『現最強王者』アレクーッ!」


「すまんが勝負は勝負。手加減はせんぞ!」

「は、はい! お願いします!」

 司会が紹介を終え、互いの腕を固定し、一言交わしたところで試合開始の幕が切って落とされた。


「レディ……ゴー!!」

 のだが――。


だぁん!


「「「え………」」」

 一瞬の出来事だった。

 軽い衝撃音が響き、次の瞬間にはアレクの手の甲は机に伏していた。

 司会も周りの観客も、当人であるアレクすらも何が起きたのか理解するのに時間を要していた。

 そう、ヌシミノタウロスを片手で瞬殺するほどの力を持った少女が、ただの筋肉に負けるはずがなかったのだ。瞬殺。ルナの圧勝である。


「な、何という大番狂わせ!! 今大会優勝者はルナだァァァァ!!?」

「「「うおおおおおおおおおおおお!!!」」」

「やったぁーーっ♪」

「な、なんだと……」

 驚きとショックのあまり崩れ落ちるアレクと、お小遣いを得られてニッコニコのルナ。それを見て大歓声をあげる観客たちであった……。


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