30.対ガウェイン戦、決着。
「「……誰?」」
マナとアルが訝しげにそう呟くと、銀髪の少年は困ったような顔でにへらと笑う。
「あは……ひどいなあ。嫌な予感がしたから助けに来たんだけど……まあ初対面だからしょうがないか!」
窮地を救ってくれたことに違いはないが、この国では見知らぬ顔。マナ達が眉を顰めるのも当然といえば当然だった。
「僕はトリスタン! アーサーから聞いてないかな?」
少年は手慰みで魔力で出来た弓の弦をピンッ、ピンッと弾きながら答える。すると名を聞いたマナ達は思い出したかのようにハッとした。
「貴方がアーサーの言ってたあのトリスタンなのね!」
「タイマンも良いが、流石に手に負えなくなってたとこだ。このタイミングで助っ人はありがてえ!」
思わぬベストタイミングでの助太刀登場。それもアーサーの情報通りなら、トリスタンはかなり強いという。
「君たちがアーサーの言っていた……えーとたしか、マナさんと……クロエさんかな?」
どうやらトリスタンは作戦開始前に、予めアーサーから味方の情報を共有されていたらしい。おそらく此方のメンバーの特徴と、トリスタン側の第三チームの特徴を情報交換していたのだろう。
尤も、クロエが刀を抜くと人格がアルに切り替わることなどアーサーは知らないであろうから、そのせいで今一瞬クロエの名を呼ぶ際に言い淀んだのだろう。
「こっちのことを知ってるなら話が早いわね。手を貸してちょうだい! 三人であいつを倒すわよ!」
三人とは言ったが、マナにはガルムもいる。……がしかし、先程の魔力のぶつけ合いでガルムは体内の魔力をほぼ使い果たし、巨大だった身体は小さく縮み、マナの肩の上で『きゅぅ~……』と項垂れていた。
流石にそんな状態のガルムを戦わせるほどマナは鬼畜ではない。そのため戦力には加算せず、三人と言ったのだ。
「よし来たァ! ……つってもなぁ。あのおっさん硬すぎて俺の攻撃ほぼ効かねえんだよな……。さっきなんて斬撃を素手で掻き消されたぞ? アレイラがどうのっつってたが」
「あ~………」
意気揚々と気合を入れ直すアルだったが、ふと先の戦闘を振り返ってみて、ガウェインに攻撃が効かない理不尽に不満気な態度をとる。そしてその話を聞いたトリスタンは、やっぱり……といった顔をしていた。
「それは仕方ないね。ガウェインのアレイラ……つまり、体内魔力により皮膚に出来た障壁はカリバーン王国で一番硬いんだ。確か前に聞いた時は、金剛石並って言ってたっけ?」
金剛石。それは鉱山の奥深くに稀に生成されるといわれる、この世で五本の指に入る硬さの鉱石だ。その入手難度から、値が非常に高く取引されていて、並の鍛冶師ではまともに加工ができない程硬いのだが、そんな金剛石から作られる武具や装飾品はとてつもない強度を誇るという。
人間の肌がそれほどの硬さというのは到底信じられないことであった。
「金剛石ィ!? ありえねぇ~……」
「ちなみに彼の着てるあのゴツい鎧も金剛石から出来てるって言ってたよ?」
「なんだそりゃ!? 金剛石の鎧に金剛石並の身体とか反則だろ!! とてもじゃねェが斬れねえわ!?」
驚愕の声をあげるクロエ……アルだったが、横から口を挟んだのはマナだった。
「そのアレイラ……っていうのはよく分からないけど、クロエの攻撃が効かないっていうのはどうも厄介ね」
アルが薄霧の森で使っていた広範囲を両断する斬撃、【霧剣・キリサメ】を見た経験のあるマナは、あれほどの水圧の斬撃を素手で止めたと聞いて、半信半疑ながらもこの状況で嘘をつく必要もないと思い、どうすればいいか思案していた。
切り替えの早さはマナの取り柄である。
「よし! 全員で集中して攻撃すればきっとダメージも通るでしょ!」
「うわあ、ゴリ押し……」
そして辿り着いた結論はなんとも脳筋な、作戦とも呼べない作戦だった。しかし相手は圧倒的な力と圧倒的な硬さというシンプルなフィジカルだ。案外、こちらも思考を筋肉にしたほうが通用するのかもしれない。
「まあ、前にガウェインと手合わせした時に僕の攻撃は効くみたいだったし、彼も無敵じゃない。きっとなんとかなると思うよ! クロエさんの攻撃も、傷が全くつかないわけじゃないでしょ?」
「確かに……さっき俺の攻撃は素手で掻き消されたが、傷自体はついてたみてぇだったしな」
トリスタンの言う通り、先程アルのヨコシグレは素手であっさりと握りつぶされてしまったが、少しではあるが握った手から血が噴き出ていたことを確かに確認していた。いくら防御が硬かろうとガウェインも人間なのだ。不死身ではない。強すぎて手加減は難しいが、三人もいれば倒せるような気がしてきた。
「つーかあのおっさんと手合わせ出来るほど強いのかトリスタン坊は!」
「まあね! というか勝ったこともあるよ! 絶好調の彼とは本気出して互角くらいかなぁ?」
話の中でトリスタンの放った言葉を聞いて、彼の強さを再確認するアル。アーサーの言っていた通り、トリスタンは騎士団の中でも上位の実力を持っているようだった。
「マ、マジか……? いつか俺とも戦ろうぜ!」
「うん、いいよ! 円卓の騎士の強さ、教えてあげるよ!」
流れるように試合の約束を取りつけたアル。クロエの身体ということを忘れているのではないだろうか。それにしても、強いと聞いて真っ先に自分も戦おうとする辺り、やはりアルはかなりの戦闘狂のようである。
「ていうか、さっきから暢気に話してるけどガウェインは?」
「あっ……そういえば」
「トリスタン坊との対戦が楽しみですっかり忘れてたわ」
作戦会議兼雑談に夢中で、向かいのガウェインのことをすっかり忘れていた三人。一同が思い出したようにガウェインの方を見ると……。
「……ぐぅ……ぐぅ」
………。
「寝てない? アレ」
「俺にもそう見えるな」
「う、うーん……」
剣を膝に乗せ、座禅を組んで目を閉じているガウェインからは、明らかにいびきのようなものが聞こえ、眠っているようにしか見えずマナたちは困惑していた。
三人がじっとガウェインを眺めていると、静まった周囲に気づいたのか視線に気づいたのか、ガウェインは目をぱちりと開きこちらを見返す。
「なんだ、終わったのか。待ちくたびれたぞ」
「いや貴方今寝てたわよね!」
どうやら律儀に待っていてくれたらしいが、どう考えても寝ていたことにツッコむマナ。するとガウェインは口を開いて反論する。
「違う、瞑想だ。いくら戦いの手が止まったからといって、戦闘中に寝るわけがないだろう」
何を言っているんだ? という、至極当然のことを言っているかのような態度のガウェインだったが、
「いやいびきかいてただろおっさん」
というアルの的確な指摘に一蹴されてしまうのだった。
「………まぁいい、準備が出来たのならさっさとかかってくるがいい」
(諦めて話を変えたわね……)
(話変えやがったなこんにゃろ……!)
そう言って立ち上がったガウェインは再度長剣を構え、いつでも戦える姿勢をとる。何食わぬ顔で話題を切り替えたガウェインに呆れつつ、マナ達も同じように戦闘態勢に入る。仕切り直しての第二ラウンドである。
「あははは! 操られて随分性格が変わっちゃったみたいだけど、そういう面白いところは変わってないね! でも……強さはどうかなっ?」
笑いながらそう言うと、トリスタンは持っていた黒い弓を中で折り、二本の短剣のようにしてガウェインへ向かって飛び出していく。
「弓が剣になった……!?」
「ほえ~、便利なもんだなぁアレ」
その様子を傍から見ていたマナ達は驚きと感心の表情を浮かべていた。トリスタンの持つ魔弓『フェイルノート』は、普段は弦のついていない特殊な弓で、魔力を流せば弦が生成され、折れば双剣、重ねれば長剣にもなる変幻自在の武器だ。
フェイルノートは使い手を選ぶことはないが、魔力が伝導しやすい他には特にこれといった特殊な魔力もなく、ただ変則的な動きが出来るだけの変わった武器である。しかし弓だからといってもその切れ味は凄まじく、名剣にも勝るとも劣らない刃を持つ。誰にでも使えるが、誰にでも使いこなせる武器ではないのだ。
「それそれそれっ!」
「……くっ!」
カカカカッ! キンッ!
メインが弓使いのようには全く見えない身のこなしで次々と連撃を繰り出していくトリスタン。短剣特有の高速機動と手数の多さに加え、隙をみては長剣に切り替えてリーチと攻撃の重さを変えたり、ほんの少し距離を置けばすぐさま弓に戻し魔力の矢で追撃をするといった変幻自在の攻撃にガウェインは翻弄されていた。
「いつものガウェインならこれくらい普通に反撃してくるんだけどな~? やっぱり操られてると力が出せないのかい?」
「ちっ……舐めるな!」
トリスタンに煽られたガウェインは、挑発に乗るように反撃に出るが、すぐさま背後からアルの水の斬撃が飛んでくる。
飛ばした斬撃はまたしても片手で握りつぶされてしまうが、先程と同じように握った手からは少し血が吹き出る。するとガウェインは心底不快そうな表情で舌打ちをする。
「煩わしい……無駄だと言っているのがわからないのか」
「とかなんとか言っちゃって~……ちょっと余裕なくなってきてんじゃねェのか、おっさん?」
トリスタンの動きは恐ろしく速く変則的で、いくらアルといえどその戦いに並んでついていけるような気がしない。そのため隙を見ては混ざるといった戦い方を選んだのである。
アルは確かにSS級クラスの実力を持っているが、それは古き時代における剣の達人としての強さであり、この時代のSS級と肩を並べられるわけではない。悪くてA級、良くてS級といったところだろう。アルは現代における魔力を多様に駆使した戦闘にはあまり慣れていないのだ。それにまだクロエの身体にも慣れていない。
しかしこれから慣れていけば、間違いなくアルはこの時代においても達人と呼ばれるほどになるだろう。そのためには沢山の経験を積み、鈍った感覚を研がなければならない。ガウェインとの戦いはその第一歩には充分すぎるほどだった。
そしてマナは一人、後方で感覚を鋭く研ぎ澄まし、アルよりもさらに深く隙を窺っていた。マナには狙いがあった。あの破壊的なまでの力を一時的とはいえ封じるため……防御が硬いのなら攻撃手段を削ればいい。
トリスタンが絶え間なく攻撃を繰り出し、そこに出来た小さな隙をアルが突く。トリスタンの素早い動きは、まるで一人で三人分が戦っているかに見え、ガウェインは四人と戦わされているようだった。
そしてアルの斬撃が握りつぶされることなく、余裕のなくなってきたガウェインの背中に直撃し、やはりアレイラの硬さによって傷は浅いが、一瞬大きく意識が逸れたタイミングでついにマナは動いた。
「――【光焔一閃】!!」
ごちゃついた戦闘の中、ガウェインが僅かに見せた隙を突いたマナは剣に炎と光を纏わせて高速の一撃を放つ。その狙いはガウェイン――ではなく、ガウェインの持っていた緋色の長剣、ガラティンに向いていた。
「く……三人目か! 鬱陶しい……!」
「はあぁっ!!」
ガキンッッッ!!
光焔を纏ったマナは加速して、鋭い一撃は狙い通りガウェインの持っている長剣に命中し、手を上に弾いて剣を弾き飛ばすことに成功する。
「わあ、すごく速い攻撃! 一瞬姿を見失ったよ!」
「やるじゃねェかマナ嬢!」
遠くに弾かれた剣は、拾い直すことも出来ぬような壁の高いところに突き刺さる。これでガウェインの攻撃力は激減した……かのように見えたが……。
「……!?」
「武器を奪ったくらいでこの俺を倒せると思ったかッ……!」
マナが武器を弾いた直後に違和感に気づくと、ガウェインは上に弾かれた手をそのまま天に掲げ、その強大な魔力を手に宿す。
すると先程の炎の竜とは比べ物にならない濃度の炎の魔力がその手のひらに収縮され、瞬く間に業火は剣の形を成し、ガウェインは炎で出来た巨大な焔の剣をマナへ向かって振り下ろす。
「――超級太陽魔法……クラス5【灼陽の太刀】」
「やばっ……!?」
「マナ嬢ッ!!」
初めてその姿を目の当たりにする『超級魔法』。それは実力者の中でもかなりの研鑽を積んだ一部の者にしか扱えない魔法の究極系である。魔法には初級、中級、上級、最上級、そして超級がある。数ある魔法の等級の中で最も等級が高い超級魔法は、魔力消費や発動にかかる時間は大きいが、その分どの魔法に比べても威力が桁違いに高いのだ。
そして強大な魔力を保有するガウェインから放たれる強大な魔法の剣が、容赦なくマナの首元に迫る。
(あの炎の魔力の濃さ……直撃だけは避けないと絶対死ぬ……っ! この距離で避けられるの……!? いや、避けるしかない!!)
「燃え尽きろ! 哀れな少女よ!」
迫りくる高濃度な魔力で出来た炎の斬撃。当たれば間違いなくただでは済まないであろうその一撃は、マナが死を覚悟するほどの気迫があった。ガウェインの剣を弾くため、その懐に飛び込んだマナは、剣を弾くことには成功したが未だに引くことが出来ておらず、間近で発動された彼の攻撃は避けられるかどうか分からないほどの距離だった。
「マナさんどいて!! これを待ってたっ!」
そして斬撃が目の前まで迫った瞬間、背後からマナを押しのけるように人影が重なる。ガウェインの重い炎の斬撃は、身代わりになるように前へ出た影に直撃し、その影は激痛に声をあげる。その声をあげたのは……トリスタンだった。
「トリスタン!?」
ザシャァッ!!
「うあああっっ!」
急所は避けたが、利き手とは逆側の左肩が深く抉れるほどのダメージを受けたトリスタン。しっかりと戦う力を残すために右側ではなく左側を犠牲にした辺りは流石SS級といえる。恐らく自ら攻撃を受ける場所を選んで庇ったトリスタンと違って、不意を突かれたマナがそのまま攻撃を食らっていたらもっと酷い結果になっていただろう。
だが、今にも千切れ落ちてしまいそうなほど深い傷を受けた左半身は、もう動かすことすらままならないように思えた。それは誰の目にも明らかで、トリスタン自身も理解しているようだった。
(そんな……私を庇ってあんな大怪我……後遺症も残るかもしれない……。私はいつも誰かに助けられてばかりで、何もできないの……!?)
(マナ嬢は助かったが、トリスタン坊のあの傷……今はまだアドレナリンドバドバで平気かもしれねぇが、あれじゃもう戦えねェだろ……)
「ふん。一番の勝算があった者が犠牲になるとは、判断ミスだな……トリスタン」
絶望の渦中にいるマナとアル。そして最も実力の高いトリスタンを討ち取って勝利を確信しほくそ笑むガウェインだったが、同じように笑みを浮かべるのはトリスタンだった。
「――あは……ガウェイン、忘れてない? 僕のとっておきのこと……! まぁやっぱかなり痛かったけど」
「なに……?」
どこか含みのある言い方をするトリスタンの態度を見て、怪訝な表情を浮かべるガウェイン。トリスタンはそんなガウェインに対し、唯一動かせる右手を構え、異質な色合いの魔力を高め始める。
するとガウェインの怪訝な表情は更に深まっていく。
「なんだ、この魔力は……」
「さあ……行くよ、ガウェイン。この痛みを倍にして、君に返す! ――超級反映魔法……【映し身】!」
「反映……魔法? 聞いたことない魔法だわ……!」
トリスタンが魔法を詠唱すると、右手に蓄積されていた不思議な色の魔力は高まり、眩い光を放ったかと思うと、凄まじい速度でその手から放出される。
「速い……! だが、避けられぬこともない!」
高速で接近するトリスタンの反映魔法を見切り、その場から飛び退るとガウェインがいた位置をトリスタンの魔法がそのまま通り過ぎていく。
「あのスピードの魔法をあっさり見切りやがった……!」
「そんな……」
マナを庇い、大きな傷を負ってまで放った渾身の一撃が簡単に避けられてしまい、絶望と自責の念に駆られるマナ達。しかしただ一人、トリスタンだけは痛みで脂汗をかきつつも、表情を変えずに笑みを浮かべていた。
「僕の固有魔力……反映魔法は、相手の攻撃を受けないと使えないけど、その代わり……発動さえしてしまえば受けたダメージを倍にしつつ、絶対に命中する必中のカウンター魔法だ。その攻撃はガウェイン、君に当たるまで追尾する!」
「なんだと!?」
トリスタンの生まれ持った才能。それは剣の才や弓の才だけでなく、固有の魔力もあった。固有魔力とは、人が誰しも生まれた時からその身に宿す魔力の属性が、他の誰とも同じでない、その個人だけが使える特殊な属性の魔力のことで、元素の五属性である『火』『水』『自然』『光』『闇』の、どの属性にも分類しない隔絶された謎多き魔力なのだ。
その種類は多種多様で、トリスタンの持つ反映魔法や、空間を操る転移魔法、空を自由に飛ぶことができる飛行魔法など、似ているものでも全て別物で、普通の属性魔法には出来ないことが出来る。だが、謎多き魔力と言われるだけあって、どういった条件で持って生まれてくるのか、どうすれば子に受け継げるのかも判明していない。
普通の属性は、自分の親と同じ属性を受け継いだり、派生した属性の魔力を持って生まれてきたりするのが一般的なのだが、固有魔力は未だにそれを持つ者が子を成しても引き継がれた前例はなく、『固有』というのは本当にその個人一代のみ扱える物と言われている。
一般的に受け継がれる属性は父親が火魔法、母親が水魔法が得意属性ならば、その間に生まれてくる子供は火か水、もしくは両方かそこから派生した属性の炎や氷などが得意傾向になりやすい。当然、他の属性を持って生まれてくることもあるが。
炎と光魔法の二属性を得意属性とするマナなどは、母親が光魔法、父親が炎魔法を得意としたため、その両方を受け継いだといえる。力は弱くとも、立派な才能のひとつだ。
派生属性は、火なら炎や煙、水なら氷や霧、自然は草や土、風、木、鋼や花など様々で、光は召喚や回復、闇なら毒や重力、幻覚など、色々な種類の派生魔法が存在する。ガウェインの使う炎魔法や太陽魔法も、火魔法の派生属性のひとつである。
……そして固有魔力であり、超級クラスの魔法が簡単に避けただけで終わるはずもなく、通り過ぎた光は急旋回しガウェインの後を追ってさらに加速する。
避けたばかりで体勢も整っていない状態。そこへ加速し不規則な軌道で曲がり追尾してくるトリスタンの魔法は、もう一度避けることは敵わず、ガウェインは仕方がなく咄嗟に魔力を手に纏わせその攻撃を受け止める。
ドォッ!!
「こんな……ものッ!」
ギギギ……と歯ぎしりをしつつ、トリスタンの放った魔力の塊を抑え込もうとするガウェイン。トリスタンの魔法の質量も凄まじいものだったが、やはりガウェインの魔力は膨大で、必中のはずの反映魔法を上からさらなる力で押し潰そうとしていた。
――だが。
「背中が……!」
「がら空きだぜ、おっさん!」
「【ルミナスランス】!」
「【静剣・ヨコシグレ】!」
ばしゅっ!
反映魔法を受け止めることに全力を注ぎ、隙だらけとなったガウェインの背後からマナとアルの二人が遠距離の攻撃を放ち、見事にそれは命中する。相変わらずのアレイラの硬さによって致命傷にはなりえなかったが、意識を別の方へ向けていたためか、二人の攻撃が命中した背中には確かな傷が出来ていた。
「ぐっ! しまった、集中を欠いたか……!」
そしてマナ達の妨害が功を奏したのか、ガウェインの纏っていた魔力は揺らぎ、トリスタンの反映魔法の光は強くなりガウェインに襲いかかる。
「く、うああああアアアアァァッッ―――!!!?」
次の瞬間、強い光は収束し、強烈な爆音と共にガウェインを包み破裂する。地下全体が揺れるほどの爆風は、ここが地下ということもあって今にも崩れてしまうのではないかと一同が不安に感じるほどだった。
少し経ち、やがて爆煙が晴れるとそこにはトリスタンと同じように、左半身に深い傷を負ってボロボロになったガウェインが意識を失い倒れ伏していた――。
最近リアルの方が忙しく全然書けてませんが、月1~2話を目安に頑張っていきます。




