表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天才と脳筋は紙一重  作者: たんすちゃん
《第二章》-王国奪還編-
25/100

25.潜入、アロンダイト帝国!

「ここは……アロンダイト帝国なのかしら……?」

「すごい……本当に転移したんですね……!」

 光に包まれ、目を開けるとそこは人気のない見知らぬ裏路地だった。他の三チームも無事転移できたのだろうか? 何はともあれ、まずは協力者とやらと合流しなければならないのだが……。


「……帝国の地形もろくに知らないのに、いったいどうやって協力者と合流するんですのよ?」

「街の人に片っ端から聞いてみるとか!」

「それでは本末転倒でしょう!? わたくし達は潜入部隊! 見つかったらいけないんですのよ!」

「じょ、冗談だってば……」

 ルナとカトレアが間の抜けたコントをしているが、事実、ルナ達は帝国のマップなど全く知らないまま送り込まれた。その辺りは説明してもらいたいものだったが、急を要する事態だったのもあって色々と説明不足になってしまったようだ。


「とにかく、付近の状況が分からないし、慎重に行きましょ」

 帝国内部の状況も分からず、国の地理も把握できていない。こういった状況ではリーダーであるマナが指揮を執る。四人は帝国のどこかに協力者がいるという情報しか持っておらず、こちらから探すこともできないため、取り敢えずは遠くに見える城の方へ向かうことに。


 路地を通り、人の少ない陰になった道を通りながら城を目指す一行。帝国、というだけあってその街の広さはかなりのもので、ただでさえ迷ってしまうほどの大きさのデュランダルの王都よりも広かった。だが逆にこの広さのおかげで建物が多く、隠れながらの移動には適していた。

 そうしてしばらく進んでいると、人通りが多くある大通りに辿り着いた。そこは今まで通ってきた路地と比べると打って変わってかなりの人混みで、建物の陰から様子を伺っていたルナ達は尻込みしていた。


「迂回……できそうな場所は見たところないわね……」

「屋根の上を通ってくとか?」

「ルナちゃん、それだと逆に目立っちゃうよ……」

 そこはどうしても通らねば、城に向かうことはできない道だった。もっと大回りをすれば他にも道はあるかもしれないが、ルナ達はこの国の地形に関してはズブの素人だ。この道以外に選択肢はなかった。

 しかし、この人の多さ……間違いなく人目につくだろう。とはいえ、彼らはただの一般人なのだから、何食わぬ顔で通ればバレないかもしれない。闇魔法でも使えれば、気配や姿を完全に消して通ることが出来るのだが、『エクリプス』には闇魔法が使える者はいない。少し考えた後、マナは決断する。


「しょうがない。素知らぬ顔で歩いてればきっとバレないだろうし、サッと通り抜けるわよ!」

「「「……了解!」」」

 マナが指示を出すと、四人は堂々と通りへ出ていき、人混みではぐれないよう気をつけながら向かい側の路地に向かって歩いて行く。変にそわそわしていると逆に怪しまれてしまう。そのため内心では緊張しながらも平然と進んだ。まるでアロンダイト帝国の国民の一人かのように振る舞って。

 そしてなんとか人混みを抜け、向かいの路地へ辿り着いてホッと一安心していると、どこか遠くで巨大な爆発音が響き渡る。


ドォォォォン……!

ドォン! ドカァン……!

なんだなんだ……!?


 連鎖して聞こえる爆発音や炸裂音。恐らく魔法によるものだろう。今しがた通り抜けた大通りの人々も何事かと困惑していた。対してルナ達は理解しているため驚くことはない。この音の遠さ、派手さ、そしてこのタイミング……間違いない。


「あっちもいよいよ任務開始……ってとこかしら」

「きっと第一、第二チームの人たちだよね!」

 そう。これは事前に決めていた第一チームのアッシュ達と第二チームのラピス達、別働隊による陽動と撹乱のための作戦であった。


「良かったぁ! 無事皆さん転移出来てたみたいです!」

「随分派手に暴れていらっしゃるようですけれど、ちゃんと住民の方たちは無事ですわよね……?」

 注意を引くためとはいえ、ここまで聞こえるほどの爆発音。家も何件か壊れているのではないだろうか? まさかとは思うが、街の住人に怪我をさせたりはしていないかと不安になるカトレアだったが、彼らはれっきとしたS級冒険者。いくら敵国とはいっても、無関係の住人を巻き込むようなことはしないはずだ。……たぶん。



「みんなが気を引いてるあいだに、私たちも急ごう!」

「そうね。S級が衛兵如きに捕まることは無いだろうけど、暴れる体力も魔力も無限じゃないもの」

 そう言って四人はお互い頷き合う。自分達含め他のチームも全員、無事帝国への転移に成功した。

 そして先程、大通りという名の関門も突破したのだ。もう怖がるものはない! ……と、暢気な事を考えながら先へ歩を進めようとする。


「おい、そこのお前達!」


 すると突然、後ろから声を掛けられる。……後ろ。要は……大通り側だ。先程通った大通りからの見知らぬ声。嫌な予感……。まさかとは思うが、背筋が凍るような思いで、恐る恐る一同が振り返るとそこにいたのは……。


「げっ……!?」

「あら。あれは……」

「ん~?」

「あっ……!」

 全身を銀に輝く鉄鎧と鉄兜で身を包んだ、どこをどう見ても衛兵が立っていた。見つかってしまった。一気に汗が吹き出すマナ達。一般人に見つかる程度ならまだなんとか誤魔化せるだろうが、まさかの、この国の衛兵様に。……いや、待て。今の声の掛け方、もしや……?

 恐る恐るメンバーを代表して返事をするマナ。確かめたいことがあったからだ。


「な、なに、かしら! え、衛兵さん?」

 マナは気になることがあって確かめようと返事をするが、最悪の場合を考えて、緊張でやや喋りがガタガタになってしまっている。そして問題の衛兵は口を開く。次に出てくる言葉次第じゃ、ここから真っ先に逃げなければならない。それを……確かめる。


ドクン……ドクン……


「あぁいや! すまない。見かけない顔だったもんで、つい。観光客だか端っこの住人だかなんだか知らないが、とにかくそっちの路地は行かないほうがいい」

「え……えーと……その、ど……どうしてかしら?」

「ん、知らないのか? その先は有名なスラム街に繋がっててな。お前たちみたいな嬢ちゃん達にゃ、ちと危ねえだろうさ。だから声を掛けたってわけだ! ただのお節介かもしれんが、一応……衛兵、だからな」

 とても紳士的に親切で丁寧な説明で、笑いかけながら答えてくれる衛兵。頼まれてもいないのに、わざわざ危険そうな場所へ入り込もうとする見知らぬ少女達を止めようとするその心意気。見事であった。声を掛けたのがマナ達でなく、他の女の子であれば、ワンチャンオチていただろう。

 それと同時に、この数秒の問答のあいだにマナの確認したいことはすでに確認し終えた。彼は別に我々を怪しんで追ってきて声を掛けたわけではないということを。ならば後は問題ない。上手く言いくるめてここから去ってもらえば済む話だ。


「ご忠告痛み入るわ、衛兵さん。でも、ごめんなさい……。私たちこの路地の先に用があって……どうしても通らないと行けないのよ……」

 確認したいことを達成したため、気が楽になったのか、先程とは打って変わってハキハキと喋り、胸に手を当て、目をうるうるとさせながら上目遣いで衛兵の男の説得を試みるマナ。完全なる猫かぶり……実に役者である。その後ろでカトレアとクロエはドン引きしていた。普段は絶対にやらないような態度の演技だ。珍しくもあるが、……口は悪いが正直非常に気持ち悪い。



(うわぁ……あれはかなりの役者ですわ!)

『あら、素敵な演技力じゃない。褒めてあげるわっ!』


(すごい演技力だけど……マナさんぽくなくてちょっと怖いね……)

『ほー、マナの嬢ちゃんは演技とはいえ、あんな顔も出来るんだなァ~? 意外だぜ』


(マナちゃん、カワイイ!)


 マナの役者っぷりにドン引きしているカトレアとクロエをおいて、横では称賛しているシルファとアルキュオネウス。そして純粋に演技をしているマナに対する感想を思い浮かべるルナがいた。


「あー……そうか。なら余計なお世話だったな。俺は今から急いであっちの爆音のする方に行かなきゃなんねーんだ。嬢ちゃん達も気をつけていくんだぞ! 今この国はあまりいい空気とは言えん」

「ええ! ありがとう衛兵さん! それじゃあね!」

 あっさりと別れの挨拶まで済ませたマナ。こちらへ振り向くと、スッと作っていた表情は消え去り、いつものマナに戻った。怖い。実に役者である。

 そして衛兵の男が去っていく直前、ルナがとんでもないことを口走る。


「いやー潜入してるのがバレたのかと思ったよ! あっちで暴れてるみんなも、きっと大丈夫だよね!」


ひゅぅ~………


 そこにはしばしの沈黙が流れる。かなり重い空気の中、ルナ以外の三人は凍り付き、大通りへ戻ろうとしていた衛兵も立ち止まる。ルナだけは自分が今、何をしてしまったのか理解していないようで、間抜けな表情を浮かべていた。


「……逃げるわよッ!」

「「了解ッ!」」

「えっ? うわあっ!?」


ダッ!


 あの場から咄嗟にルナの首根っこを掴んでそのまま駆け出すマナ。それにすぐさま応じ後を追うカトレアとクロエ。……そして後ろからは鬼の形相で後をついてくる衛兵の姿があった。地獄の鬼ごっこのスタートである。


「貴様らぁぁぁっ!! 見かけん奴らと思えば侵入者か! よくも騙しやがったなッ!!」

「うわーっ!? めっちゃ怒ってる!? どうしよマナちゃん!?」

 激怒しながらものすごい速度で追いかけてくる衛兵。マナに後ろ向きに掴まれたままそれを見ていたルナは、どうするかと訊ね、後ろを振り向きマナを見ると……。


「こんの馬鹿ルナァ! 私がどれだけプライドを捨ててあんな演技したと思ってんのよ!? それを台無しにしてぇ……もうッ!!」

「うわあぁーっ!? こっちも超怒ってるうぅ!! 助けてカトレア~……クロエく~ん……!」

 当然マナも顔を真っ赤にして、初めてルナに激怒していた。明らかに自分のキャラではない猫かぶりの演技までして、どれほどのプライドを捨て去ったことか……。それをあっさりと馬鹿みたいなネタバラシのような一言で台無しにされたのだ。怒るのは無理もない。


「知りませんわ。自業自得ですのよ、ちゃんと謝罪なさってくださいまし。ほら、はやく」

 ルナに助けを求められたカトレアからは、感情が一切感じられないくらい冷たく淡々とした返答が返ってきた。こんなカトレアは見たことがない。……もしや、彼女も怒っているのだろうか? いや……十中八九、怒っているのだろう……。


「えっ、と……ごめんルナちゃん。今のは完全にルナちゃんが悪いよ……僕じゃ庇いきれない……」

 クロエは怒ってはいなさそうだったが、苦笑いで絶望の言葉を告げられた。あの優しいクロエにすら完全に見放された。ルナ、一世一代の大失態である……。


「ご、ごめんなさあぁぁぁいっ……!!!」

 絶望の渦中に立たされたルナは、衛兵から逃げながら精一杯謝罪を叫ぶのであった。



「こら待て侵入者共! くそっ足のはええ奴らだ! もう少しなんだが……!」

(くっ、中々撒けない……! 倒していく? ……いやでもあの衛兵、悪い人ではなさそうだし……)

 暫く追走劇を広げているうち、やや追いつかれそうになってジリ貧状態の中、マナがどうするかと考えていると、ふと建物の陰から衛兵に向かって飛び出していく人影が見えた。


どすっ……!


「ぐっ! うぅ……」

 暗闇からの突然の襲撃に為す術もなくあっさり気絶させられる衛兵。走ってきた道は幸い人通りがない路地裏だったため、人目にはついていないはずだ。倒れた衛兵の傍を見れば、全く知らない顔の緑髪の青年が気絶した衛兵のことをロープで縛り上げていた。


「……だれ?」

 ルナが声を漏らすと、衛兵を縛り終えた男がこちらへ寄ってきて声を掛けてくる。


「やっぱり……。あなた方、デュランダルから送られてきた潜入部隊ですよね?」

「えっ!? ってことは……もしかして、例の協力者さん?」

「そうですそうです! 我々一同、あなた方の到着を待っておりました! 容姿と人数、日程と転移のエリアはある程度、そちらのギルドの諜報員殿から伺っていたので、すぐわかりましたよ!」

 なんと驚くことに男はルナ達が探していた協力者であった。どうやらルナ達と違い、前もってあちら側にはしっかりとした情報が伝えられていたようで、転移エリア付近を探して、追いかけられていたルナ達のことをわざわざ見つけ出して助けてくれたらしい。あちらから来てくれるとは何たる僥倖(ぎょうこう)か。


「これでよし、と。とにかく、まずはアジトへ行きましょう! 案内します、ついてきてください」

 縛った衛兵を適当な物陰に隠し、先頭を歩き出す緑髪の青年。『エクリプス』の四人は断る理由もないので、彼に案内されるがままついていく。ここは敵国の真っ只中だ。彼が実は敵で、嘘をついている可能性も無くはないが、衛兵に追われている侵入者をわざわざ助けるとも考えにくい。おまけに縛ってまでいるし。


「いやまさか、転移して早々追われてるとは思いませんでしたよ。……あ! 申し遅れました、僕はエルヴィンと申します!」

「私はマナ。こっちから順にルナ、カトレア、クロエよ。はぁ全く、どっかのお馬鹿がミスしたせいで散々よっ……」

「う……ご、ごめん……」

 移動しながら雑談の中、自己紹介を済ませるエルヴィンとマナ。そしてエルヴィンの出した会話のおかげで飛び火したルナ。ただ平謝りすることしか出来ない。


「な、なにかあったんでしょうかね? ……そうだ。他の部隊の方もすでに別のアジトで合流されているみたいですよ! えーとシトラスさんでしたっけ? A級が四人の部隊です」

「あら、そうですの? 第三チームも無事合流出来たようで良かったですわ!」

 どうやら彼らには他にも複数のアジトがあるらしい。第三チームもすでに合流しているようで、お互い別のアジトを出て、別の方向からそれぞれ王城へ攻め入る……ということだろう。


ドォォン……!

どかぁぁぁん……。


 話していると、またしても再度あの爆発音が聞こえた。まだアッシュ、ラピス達は立派に任務を遂行しているようだ。我々がこうしていられるのも彼らがあってのものだ。感謝しなければならない。


「任務とはいえ、随分お仲間の別働隊の方々は派手ですね……ここまで音が聞こえてくるだなんて……」

「ちゃらんぽらんとクソ真面目っぽかったけど、あっちはS級三人いるんだし、実力は確かなんでしょうね」

 なんとも口が悪いマナだが、実力は認めているようだ。エルヴィンはそれを聞いて苦笑いしていた。


_


「ここです」

 そうこうしているうちに、エルヴィンは立ち止まって到着を告げた。周りを見ればここは衛兵が近寄るなと言っていたスラム街だった。


「スラム街は治安があまりよくなく、帝国からも半ば見捨てられている場所なのであまり人がこなくて隠れるにはもってこいなんですよ」

「「「「なるほど……」」」」

 説明しながら暗い民家の前まで来たエルヴィンは、突然しゃがみ込んで床に完全に同化するように設置してある隠しハッチを開放すると中へ入る。四人も後を追って中へ入り込む。

 中に入ると地下には長く整備された通路が掘られていて、かなり広そうだった。通路を少し進むと広い部屋があり、余裕で生活できそうなスペースと様々な家具や小物、武具などが色々置いてあり、そこには二十人近くの人々がいた。


「皆! 連れてきたぞ! 我らの英雄を!」

「おー、おかえりエルヴィン! どうだった、上の様子は?」

「そいつらがデュランダル王国からの使者か!」

「思ってたより若いな?」

 エルヴィンが声を掛けると、広間で(たむろ)していた集団はぞろぞろと集まってきて、エルヴィンと世間話を始めたり、ルナ達をじろじろと眺めながら色々感想を言い始める。

 すると奥の個室から、金色の鎧を着た端正な顔立ちで短い金髪の男が現れる。男が歩いてくると、ルナ達の周りに集まっていた男たちは皆、金髪の男の前方に綺麗に整列し、頭を下げて跪く。

 ルナ達が呆然としていると、金髪の男は同じく跪いているエルヴィンに対し、優しく声を掛ける。


「ああ、エルヴィン! 良かった、無事戻ったか! ご苦労だった。後は休んでいてくれ!」

「ハッ……かしこまりました。ありがとうございます!」

 そう言われるとエルヴィンは畏まった態度で礼を告げ、隣の部屋に入っていってしまった。かなり仰々しい態度になった皆を見て、訝しげな顔を浮かべるマナ達。


「随分と仰々しい態度ね……」

「もしかしなくても偉い人なのかな……!?」

「たしかにどこか貴族っぽい雰囲気漂わせてますわよ……!」

「マナさんやカトレアさんと同じ感じですかね……?」

 ヒソヒソと金髪の男を見ながら会話する『エクリプス』。それに気付いたのかは知らないが、男は他の皆を別室に下がらせてから、ゆっくりとこちらへ向かってきて優しい声で口を開いた。


「初めまして、デュランダル王国の冒険者殿。私は対アロンダイト帝国叛逆軍のリーダー……兼、カリバーン王国の国王、アーサーと言うものだ」

「「「「ええええっ!? お、王様ぁ~~っ!?」」」」

 只者ではない雰囲気を纏っていたが、まさかの国王であった。一同、それはもうびっくり仰天である。誰もこんなアジトでこそこそと一国の王が活動しているなどとは思うまい。


「はっはっは! その反応、見るのは何度目かな? なぜか私と初めて話した者は皆、毎回同じような反応で実に愉快なものだ」

「それはそうでしょう! 貴方っ……国王様がこのような場所で徒党を組んでいるなど予想できるわけがなっ……できるはずがありません!」

「ああ、無理して仰々しく敬う必要はない。キミ達はなにせ我々にとって救世主なのだからな」

 他人に対して慣れない敬語を使おうとして少々ガタガタになっているマナを見て、気を使ってくれたのか即座にフォローを入れるアーサー。自然とこちらに気を使ってくれたり、他国の冒険者風情にも敬意を払ってくれたり、家臣や部下を労い休息を与えたりと、その言動の節々からは王たる圧倒的なカリスマ性が窺えた。そんなアーサーに首を傾げて疑問を投げかけるルナ。


「アーサーは王様なのにどうしてこんなところにいるの?」

「ちょ、ちょっと!? 王様を呼び捨てだなんて失礼すぎますわよ!」

「えー、だって今無理して敬わなくていいって……」

「限度ってもんがあんでしょ!?」

 ルナによる突然の無礼に焦って詰め寄るカトレアとマナ。いくら相手が良いと言っても何事にも限度というものがある。ましてや相手は国王だ。マナ達は態度には厳しく当たる。それは同じ貴族故か……。


「ハッハッハ! 初対面で呼び捨てにされたのなんて何十年ぶりかな? 新鮮な気分だ。問題ないよ、お嬢さん。好きに呼ぶといい!」

 だが、アーサーは少し驚いた顔をしたが、大して気にした様子もなく、むしろ嬉しそうだった。国王ともなると周りが仰々しくて息苦しさも多少あるのだろう。それが嫌で家を飛び出したマナにはなんとなくそれが想像出来た。

 そして変わらず明るい様子で、にこやかに質問に答えてくれた。


「これは五年ほど前の話になるが、アロンダイト帝国は最近、王が変わってから国の雰囲気や名前が変わり、次々と周辺国を取り込み大きく成長を遂げたことは知っているね?」

 口を開いたアーサーはぽつぽつとこの国の状況を説明し始めた――。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ