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天才と脳筋は紙一重  作者: たんすちゃん
《第二章》-王国奪還編-
24/100

24.作戦開始、ですわ!

 翌日、思っていたよりも早くギルドからの召集がかかり、『エクリプス』はギルド管理の大広場へとやってきていた。ちなみにその召集方法はというと、なんとギルドタグから突然声が聞こえてくるというものだった。あまりに突然の出来事で、ここに来る前のルナはひっくり返っていた。ギルドタグにこんな機能があったとは、驚きである。それはさておき……。


「うわあ、すっごい人の量……! この人たちみんな冒険者なんだよね!?」

 目を輝かせながら周りをキョロキョロと見渡すルナ。その視線の先には数千を超えるほどの人数の冒険者が集まっていた。彼らのほとんどがC級以上の冒険者である。B級以上はほとんどが強制召集なのだが、国の一大事ということでC級やD級の冒険者も多く来ている。今回はそれほど重大な状況なのだ。

 尤も、召集がかかった冒険者が全員来るというわけもなく、ギルドに左右されない精神の者や、自由に暮らしている者、気まぐれな者から怠惰な性格の者など、呼ばれても応じない理由は色々ある。SS級やS級の冒険者も例に漏れず……というか、彼らが特に『それ』に当てはまるのだ。S級以上の冒険者は、ほとんどが来ていない者ばかりだ。

 S級以上の者は実力は確かなのだが、気まぐれで自由気ままな制御の利かない者が多く、来ているのは一部の真面目なS級冒険者や、たまたま気が向いたS級冒険者ぐらいである。無論、SS級冒険者は誰一人として来ていない。他国を巡っていたり、国内のどこかで何かをしていたり、はたまた家で昼寝をしている者もいるのだろう。


「いつもは広い王都の大広場が狭く感じるわ……。ざっと八千人弱……ってとこかしら? たまに気配の格が違う奴もちょこちょこ混ざってるわね。あれがS級ってやつかしら……」

「この人混みの中でよくそんなこと判別できますわね……」

 ざわざわと騒がしい喧騒の中、付近の冒険者の観察をしているマナ。周囲には数千と人がいるのにも関わらず冷静に周りの冒険者の強さを識別するマナを見て、カトレアは少し引いていた。が、強い者というのは、どこか佇まいや雰囲気など、変わったオーラを持っている。マナはそういった雰囲気の違いを感じ取ることに長けているようだ。

 勿論、同じA級であるカトレアもそれくらいの違いは察知できるのだが、流石にこの人の多さだとそれも難しいようだった。ちなみにルナは持ち前の『直感』でそれらの違いを判別しているようである。


「あ、誰か演説台のほうに来ましたよ? あれは……騎士団の人かな?」

 ルナ達がごちゃごちゃと話していると、広場には両サイドに数名の兵を連れ、立派な鎧を着た長く美しい黒髪の女性が現れ、一気に静まった周囲の視線を一斉に奪いながら、設置された演説台の上に立った。


「わ~、綺麗な人だね……!」

「そ、そうですね……。素敵です……!」

 静まり返った中、お互いにしか聞こえないようなボリュームで小さく呟くルナとクロエ。恐らく他の冒険者達も同じことを考えていただろう。凛々しく整った顔立ち、凛とした佇まい。美しく艶やかな黒髪。そんな容姿に似つかわしくない立派な鎧。そのギャップが周囲の目を釘付けにしていた。……主に男性冒険者の。


「冒険者の方々、本日はお集まりいただき感謝する! ギルドマスターに変わってこの私、オルランド聖騎士団、団長のオリヴィアが話をさせて頂く!」

 可憐な容姿とは対照的に、勇ましい言動で挨拶を済ませる彼女の名はオリヴィア。若くして団長となった、デュランダル王国最高の騎士団の団長だ。その武勇は数知れず。実力は確かなもので、かつて国へ攻めてきた竜種をも退けたという。

 オルランド聖騎士団は、このデュランダル王国が誇る最強の騎士団であり、剣術も魔法も非常に優れている王妃ローランが設立したという、国や民を巨悪から守る実力派揃いの由緒正しき聖騎士団である。


「冒険者ギルドの優秀な諜報員の情報によれば、現在隣国のアロンダイト帝国が戦力を整える動きを見せており、いつ攻めてきてもおかしくないという状況だそうだ! 何より、ここ最近国内で増えている盗賊の出没や謎の傭兵による被害も、ほとんどが帝国の仕業だったらしい。

 これ以上、先手を打たれてはならない! そこで我々も戦力を整え、反撃の体勢を取ろうと思っている!」

 通った声でハキハキと演説するオリヴィア。冒険者たちも神妙な面持ちで話を聞いていた。ここまでの話は、レイラやデイナから聞いた話と同じだった。四人が気になっていたのはこの続きの内容である。


「奴らはおそらくあと三日や四日程度もすれば攻めてくるだろう! その前にこちらから別働隊を送り込もうと思う! 兵力は向こうのほうが上……ならば、内側から崩してしまえば良いのだ!」

 三日や四日……そこまで情報を掴めていたのか、と驚く冒険者達。そして内側から崩すとは? と疑問に思っている者も多い中、説明が続けられる。

 オリヴィアの話によると、どうやら、冒険者による別働隊を四チームほど作り、諜報員の設置した転移型魔道具を使ってそれぞれ別々の四箇所から国内へ忍び込むという。その間、残った冒険者や騎士団の兵士達は準備を整え、攻撃に備える次第のようだ。


「我が国の危機だ! 突然の事ですまないが、どうか力を貸して欲しい! 勿論国からの報奨金も出るし、ギルドの功績ポイントも多く進呈されることになっている! 我らのように小さな国でも、大国に打ち勝てるというところを見せてやろうではないか!!」


おおおおおおおおおぉぉぉっっ!!!!!!


 オリヴィアが右手を掲げ、大きくそう告げると周りからは大歓声が瞬く間に広がっていった。野心の高い冒険者達の士気とやる気を上手いこと煽ったオリヴィア。流石騎士団の団長をやっているだけのことはある。


「おー!」

「お、おぉー……!」

「おおっ! ですわー!」

「なにやってんのよ貴女たち……」

 周りに釣られるようにルナ達も真似して叫んでいた。そんな三人を呆れたように見つめるマナであった。そして話は別働隊の編成について切り替わる――。


「帝国へ潜入する別働隊についてだが、第一チームはS級一人とA級三人、第二チームはS級二人とA級一人、B級が一人、第三チームはA級が四人、そして最後に第四チームだが……チーム『エクリプス』に担当してもらいたい!」

 一息間を空けたあとに告げた言葉は驚くことに、なんと最後のチームは『エクリプス』指名であった。オリヴィアは台詞を言い終えると共にこちらを見据える。次の瞬間、周りの視線もルナ達に向けられる。


「は!?」

「ええっ!?」

「はえ?」

「マジですの!?」

 多くの注目が集まる中、驚愕を隠せない四人。……いや、ルナは驚愕というより困惑だったが……。冒険者間ではすっかり有名になっている『エクリプス』がご指名と聞き、周りはすぐさま盛り上がり始めた。

 中には俺たちも選ばれたかった、などと愚痴をこぼしている者もいたが、潜入部隊となると危険度はかなり高い。敵国の懐に入るのだから。

 第一から第三チームまでは、ルナ達のようにチームごと指名するのではなく、個人の指名となるようで、オリヴィアとギルド側が後に話し合い、一人ずつ適正ランクの者を指名していくようだった。


「でも、どうしてまだ結成したばかりの私たちがこんな大事な任務を……?」

「さ、さあ……?」

 この疑問が出るのも当然だった。何しろ、まだ『エクリプス』は結成してからまだ十日と少ししか経っていないのだ。そんな新参のチームに、国からの重大な任務を与えるなど普通はあり得ない。


「……静粛に! 私も、『エクリプス』の噂は最近よく耳にしている。フェンリルを倒せる者など、この国にはそういない。チームを組んだばかりなのは承知の上だが、だからこそ君達の成長にも繋がると思っている。私は君たちの実力を信じてこの任務を頼みたいのだ」

 はっきりと告げるオリヴィア。その目は曇り無く透き通っていて、本当に自分たちのことを信じている目だった。それを見たマナはつい目を逸らしてしまう。


「フェンリルを倒したのはルナなんだけどね……」

「わたくしとクロエさんなんて、その頃チームにすらいませんでしたわ」

「やっぱりルナちゃんって凄いんだね!」

 マナとカトレアはあまりいい顔をしていなかったが、そこまで言われては断るのも(はばか)られた。……というか、国やギルドからの直接依頼など、断ったらどうなるかもわからない。つまりは……。


「ま、やるしかないわよね」

「良い経験値になりそうですわ!」

「が、頑張ります!」

「えい、えい、おー!」

 当然、受けるしかないのであった。勿論、本人達も強くなるため、経験を積むため、はたまた冒険を楽しむため……。元より断るつもりなどなかったのだが。

 それを聞いたオリヴィアは満足そうに深く頷く。


「うむ、そう言ってくれるとありがたい。別働隊には、詳しい説明は後ほど伝える。……別働隊が出発し次第、残った我々も戦力を整え戦争の準備を開始する! これは防衛戦だ! 念のため、明日は国民の誘導をし、冒険者達にはそれぞれ分隊を組んでもらい、その配置を決める! では、今日はこれにて解散だ!」

 そう宣言するとオリヴィアは演説台を降り数人の兵を連れ、ギルドの方へと歩いていった。恐らく先程言っていた、『エクリプス』以外の別働隊の編成を組むのだろう。

 説明を聞き終えた冒険者一同はそれぞれ解散しつつも、まだ残って話している者もいた。明日を不安にしている者や、逆に楽しみにしている戦闘狂……。作戦を立てている者もいた。そしてルナ達はというと……。


「とりあえずはオリヴィアの連絡待ちね。ギルドで休憩しましょ!」

「「「了解~!」」」

 マナの指示通り、連絡が来るまでギルドで休憩しつつ待つことにした『エクリプス』であった。


_

_

_


「……ちっ、転移型魔道具だと? そんなもんが完成していたのか……。急いであの皇帝サマに知らせないとなァ……。ヒッ……ヒヒッ……」 

 演説を聞いていた冒険者たちの中に紛れていた茶色いフードを深く被った男は、苦虫を噛み潰したような顔で呟いていた。男は人混みから外れ、人目の付きにくい暗い路地に入ると、懐から伝達用の魔道具を取り出した。主君であるアロンダイト帝国の皇帝に情報を伝えるためである。


「……"ランスローテ"陛下、どうやらデュランダル王国の連中は我々帝国の動きに気づき、何やら画策している模様で――」

 こそこそと報告を開始するフードの男。そう、彼こそがデュランダルに潜んでいたアロンダイト帝国の諜報員なのだ。こちらが諜報員を潜入させているように、相手も同じで内部から情報を与えている者がいるのである。

 デュランダル王国は、内部で密かに暗躍する帝国の諜報員の存在に気づくことなく、着々と作戦が進んでいくのであった……。


「ヒヒッ……! 少し面倒だが、面白くなりそうだァ――」



………。



「――以上が、君たち別働隊のすべき任務だ。これは機密なのだが、帝国の内部にはギルドの諜報員の他にも協力者がいる。とても重要な協力者だ。彼らを見つけ、合流したのち、行動を共にし任務を遂行して欲しい」

 ルナ達はしばらくギルドで待っていると、やがてオリヴィアに呼ばれ、ギルドの奥の個室に通されると、彼女から詳しい説明を聞いていた。

 魔道具により敵国内に潜入し、内部の協力者と合流後、王城に侵入。そこで本体を叩き本格的な戦争の開始より前に敵の頭を潰す。要はやられる前にやる、王を取るということだ。それがルナ達潜入部隊の任務であった。

 別働隊が四チームしかなく、全て四人編成なのは少数精鋭でバレにくくするためと、動きやすくするためであろう。


「すまない。本来ならばこのような危険な任務、我々騎士団が受け持つべきなのだが……。現在、デュランダルには帝国からのスパイが忍び込んでいる可能性が高い。暗殺を企んでいる者もいるかもしれない状況で、我々騎士団が国王陛下や王妃殿下の元を離れるわけにはいかないのだ……」

 そう言って頭を下げるオリヴィア。彼女も聖騎士団長と、地位はそれなりに高いはずなのだが、冒険者風情にもしっかりとした態度で接する辺り、度量の大きさが窺えた。尤も、ここにはさらに地位が高い第一王女であるマナがいるのだが、彼女はそれについても思う所があるようであった。


「気にしないでオリヴィア。貴女がお父様やお母様を守ってくれるのなら、安心して任務に集中出来るってものよ!」

「しかし姫様……本来であれば姫様も王城にて匿われているべきなのです! 今からでも遅くありませぬ、どうか貴女様だけでも……」

 マナがオリヴィアをフォローするように勇ましく告げるが、対するオリヴィアの心配は当然、国王や王妃だけでなくマナに対しての物もあったようで、またしてもデイナと同じように城へ戻るように忠告しようとするが、それを途中で遮るようにマナは続ける。


「私は絶対城には戻らない! 『エクリプス』を任命したのはオリヴィア、貴女よ? 私はその『エクリプス』の"リーダー"でA級冒険者なのに、参加しないわけにはいかないわ!」

「で、ですが……姫様!!」

 相変わらず断固として譲る気のない硬い意志を見せるマナ。それを見てやや尻込みするオリヴィアだったが、マナは王家の大切なご息女……絶対に失うわけにはいかないため、どうしても納得ができない。そんな空気をぶち壊すようにルナが口を開く。


「マナちゃんは私が絶対守るから大丈夫だよ? オリヴィアさん!」

「ルナ……だったか。キミの実力はギルドから聞いている。あの魔獣フェンリルを一対一で仕留めたとか……。信じていないわけではないが、やはり私は心配なのだ……もし姫様に何かあったらと思うと……!」

 どうやら彼女はマナ以外のメンバーのことも詳しく知っているようだった。ルナの強さを知っているなら心配はいらない……となると思ったが、どこか信じきれていないのか、やはりまだ不安な様子……。

 するとずっと静かに話を聞いていたカトレアとクロエが、いよいよ我慢ならぬと口を開いて文句を言い出した。


「ちょっと、さっきから黙って聞いていれば、騎士団長さんでしたかしら! 貴女、ちょっとマナを見くびり過ぎなのではなくて!?」

「そ、そうですよ! マナさんは王女様でもありますけど、同じA級冒険者さんよりもずっと強いんですから!」

 声を揃えて訴える二人。カトレアに至っては興奮しているからか、敬語が外れマナのことを呼び捨てになっていた。それほどまでに想いは強いということだろう。


「カトレア……クロエ……」

「………」

 その声を聞いて呆然としているマナと何か思いふけるように黙り込むオリヴィア。当然、彼女がマナのことを見くびっているわけではない。それどころか、マナとは今日久々に再会したが、家出をする前から大きく見違えるほどに立派になっていた。


_


 ――私は普段、聖騎士団の団長として、王都全体のパトロールや王城内の警護、王妃様の護衛をしており、定期的に兵士の剣術や魔法の指南役もしている。そして、マナ様がまだ幼い頃にローラン様と共に剣術の指南をしていたのだ。

 故に、失礼とは分かっているが、まるで自分の娘や弟子のように大事に思っていた。他のご兄妹と比べると類稀な才能もなく、平凡に感じられたが、陰ながら一人で努力されていることはよく知っていた。


 そんなある時、姫様は一人で城を飛び出して行ってしまわれた。まだまだ発展途上で、大きな才能も開花されていないというのに……。しかしそれから半年が経った頃。冒険者同士の間でよく噂を耳にするようになった。半年前に冒険者になったばかりなのに、怒涛の勢いでランクを上げている冒険者がいると……。

 私は直感した。姫様だ! きっとあれからも弛まぬ努力を続け、冒険者として活動しておられるのだ! そしてさらに半年後、姫様が家出をされてから一年が経った。

 噂を聞けば、拙かった剣術も立派に成長し、苦手だった魔法すら使いこなし、チームも組まずにたった一人で一年の間にB級まで上がっていると言うではないか! ……感動だった。


 そんな姫様と久々に再会し、今、私の目の前には立派になられて、良き仲間にも恵まれ、強く成長なされたマナ様がいる。――そうだ。昔を知っているからこそ、心配することなどないではないか。


_


 オリヴィアは、昔のことを思い返し、ルナ達を改めて見回した。そしてしばらく黙っていたが、再度口を開く。


「そうだな……。私は少し、過保護になりすぎていたのかもしれない。姫様も見違えるほどにお強くなられたようだ。他人のために怒れるような良き仲間も持ち、ここまで見せられてまだ私が心配していては、情けないというものだな」

 オリヴィアは軽く笑い、皆の顔を見ながら語る。何か少し考えていたようだが、どうやら認めてくれたらしい。


「じゃあ……!」

「ああ! ルナ、カトレア、クロエ。姫様をしっかり頼むぞ! そして、『エクリプス』! 今回の任務、この『四人』で必ず成功することを祈っている!」

「「「「了解!」」」」

 憑き物が落ちたように明るい様子で告げるオリヴィアと、彼女に認められ、改めて任命されたルナ達は強く返事を返すのだった。



「……これを渡しておこう」

「これは……?」

 そう言ってオリヴィアがルナに差し出したのは、手のひらサイズの小さな丸い魔道具だった。


「これは転移型魔道具。少し前にようやく完成した、この国に数個しかない貴重品だ。これを使い、キミ達潜入部隊は帝国内部に設置された転移先用魔道具のポイントにワープし、そこから任務を開始してくれ」

 どうやら今渡された方が転移するための物で、帝国に設置しているらしい方が転移先に指定できる物らしい。同じものを王国にも設置しているため、帰りも心配はないそうだ。

 これがあれば、帝国と王国を瞬時に行き来することが出来るというわけである。敵に奪われたら大問題になりそうなものだが……。


「それは心配ない。デュランダルの者にしか使えないよう、ギルドがなにやら細工をしたらしい。無論、研究されて技術を盗まれてしまう可能性もあるため、奪われないことが一番だが、万が一奪われても問題はないそうだ」

「へえ……。それで、どうやって使えばいいのー?」

「強く握りしめて魔力を流すと起動し、光の輪が展開されるそうだ。その輪に入れば複数人で転移出来る。おっと、まだするなよ? 作戦開始は全員が集まってからだ! もうじきこの部屋に来るだろう」

 オリヴィアがそう言うと、噂をすればなんとやら。扉の外から複数の足音が聞こえてきた。


コンコン

ガチャ……


「お、やってんねー。これで全員かー?」

「失礼します。今回はよろしくお願い致します」

「こんにちはー! あ、『エクリプス』の皆さんだ! 噂は聞いてますよぉ!」

 ドアを開けて部屋へ入るなり、ルナ達以外の別働隊のチームの各リーダーが代表して声をかけてきた。ぞろぞろと部屋に入ってくるメンバー達。ルナ達含め16名。そしてオリヴィアの計17名。広い部屋ではあるが、最初に比べれば随分と窮屈になっていた。

 広いソファーを四方へ4つに分け、それぞれのチームが向かい合う形で座る。オリヴィアは適当な場所で立ちながら説明を始める。


「まずは自己紹介……と行きたい所ではあるが、キミ達はそれぞれ帝国内での役割も異なり、会うこともあまりないだろう。なので、全員の顔合わせついでに、リーダー同士だけでも自己紹介を頼めるか?」

 オリヴィアが指示すると、んじゃまずは俺が……と、ルナ達から見て左に座っているチームの男が手を上げ立ち上がる。


「第一チームの臨時リーダー、アッシュだ! 普段は召集とかされても来ないんだが、気が向いたんで参加してみた! 俺以外の3人はA級らしいから、必然的に俺がリーダーになった。何すりゃいいのかは知らん! あ、一応S級ね~、よろしくぅ!」

 随分と軽薄な態度で挨拶する、ギザギザした短剣を三本腰に刺した、ツンツン頭の茶髪の男の名はアッシュ……これでもS級らしい。S級以上は変わり者や気まぐれな者が多いとは聞いていたが、まさにこの男はその通りに感じられる。

 そしてアッシュに次ぐように、次は正面に座っている水色の髪を三つ編みにした真面目そうな女性が立ち上がる。


「第二チーム、臨時リーダー。ラピスと言います。ランクはS級です。メンバーは私以外のS級がもう一人と、A級とB級が一人ずつです。我々第二チームは転移後、帝国の都内において目立つよう注目を集めます。その隙に皆さんは任務を遂行してください。よろしくお願いします」

 頭を深く下げ、メンバー全員に丁寧なお辞儀をするラピス。彼女もS級らしいが、それにしてはかなりまともに思えた。ただ少し変わっているのは、背中に背負った杖と左手に握った杖……予備の杖なのだろうか?どう見ても魔術士だが、二本の杖を常備しているのは珍しかった。

 どうやら帝都で暴れるのが彼女達の任務のようだ。危険そうだが、そのためにS級が二人も編成されているのだろう。


「次、私ですね~! 第三チーム臨時リーダーのシトラスですっ☆ このチームは私含め全員A級で、S級さんがいなくてちょっと心配かもですけど頑張りまーすっ♪ えーっと、私達の任務は協力者と合流して王城に攻撃を仕掛けるらしいです! よろしくお願いしまーす!」

 ピースをしながら意気揚々と明るく自己紹介を終えた若い女性冒険者。シトラスという名前に似合うように、シトラスフルーツのような眩い金髪をサイドテールにした、活発な冒険者のようだ。この任務のメンツにおいて、ムードメーカー的ポジションになりそうである。彼女は武器を持っていないが、指抜きされたタクティカルグローブをつけているため、恐らく拳闘士なのだろう。

 そして、最後はルナ達の番である。リーダーは勿論マナなので、マナが立ち上がり話し始める。


「第四チーム、『エクリプス』のリーダー、マナよ。メンバーは私ともう一人がA級、D級が二人。低ランクチームだけど、ナメないで欲しいわね! 任務はシトラス達と同じで、協力者と合流し王城へ攻め込むわ。……よ、よろしく」

「よろしく~!」

 最後に照れくさそうにボソッと挨拶したマナの代わりに大きく挨拶をするルナ。これでとりあえずの自己紹介は済んだであろう。そしていよいよオリヴィアが口を開き、任務開始の口上を告げ始める。


「うむ。良い自己紹介だった。第一チームの任務は陽動だ! 他のチームがスムーズに動けるよう注意を引け。第二チームも似たようなものだ! 帝都で目立つよう暴れ、撹乱しろ。ただし、無茶はするな!

 第三、第四チームは第一、第二チームが陽動撹乱している間、協力者と共に王城へ入り込み、奴らの頭……皇帝ランスローテを討て! 生きていても死んでいても構わない! とにかく攻めさせるな!」

「「「「了解!!」」」」


「では、各自転移開始!」

 オリヴィアが宣言すると、それぞれのチームは皆立ち上がり、少し距離を取って、リーダーが各自、転移型魔道具に魔力を流し起動させる。

 次の瞬間、皆の周囲に白い光の輪が展開され始める。先程オリヴィアから説明された通りだ。皆、輪からはみ出ないようにしっかりと集まり、別チーム同士お互い目配せをする。武運を祈る、ということだ。


ポワァァァ………!


「最後に一つ。……必ず、誰も欠けることなく生きて戻ってこい! いいな―――」

 光が強くなると共に、視界も白い光に包まれながら最後に聞いたのは、オリヴィアのその台詞だった。思わず目を閉じてしまうほどの光が完全に視界を包んだ次の瞬間、目を開けるとそこはすでに個室ではなく見知らぬ裏路地であった。


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