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天才と脳筋は紙一重  作者: たんすちゃん
《第三章》-王立学園編-
101/102

101.暁光祭、そして第五種目 6

「さあ各地では戦闘が激化しており、様々なシーンが生まれています!」

「いくつかピックアップしていきましょうか」

 実況席は迷宮内の映像を見ながら、各地で戦っている生徒達をフォーカスする。

 まず最初にモニターに映ったのは、古竜寮の1年生が精霊寮の3年生と2年生を相手にしているシーンだった。


_


「相手は氷だ! 炎系統の魔法で合わせるぞ!」

「了解!」

「分かりました!」

「『大気の魔力よ、燃え盛れ!』【フレアボール】!」

「クラス4(クアドラ)【バーニングウェーブ】!」

「上級炎魔法……【ブレスヴォルク】!」

 精霊寮の3年生と2年生二人は、古竜寮の生徒へ向けて属性を合わせた魔法の同時攻撃を仕掛ける。

 同じ属性同士が合わさり、巨大な業火となった火炎は、一人の生徒へ襲いかかる。


「いいですね合体技! でもこっちも負けないわ!」

 青髪の少女は怖気づく様子もなく笑うと、迫る炎を前に魔力を集中させ、詠唱する。


「最上級氷瀑(ひょうばく)魔法! クラス7(セプタ)【アイスフォール】!」

 少女が詠唱すると彼女の上空に巨大な魔法陣が錬成され、そこから滝のように氷の雨が降り注ぐ。

 その氷の魔力量は精霊寮の放った魔法とは比較にならないほど膨大で、3人分の魔力が合わさった炎魔法と衝突すると、あっさりとその魔法を氷漬けにしてしまった。


「なっ!?」

「馬鹿な……!」

「炎を凍らせただと……」

 自分達のとっておきが簡単に打ち破られ唖然とする精霊寮の上級生達だったが、氷瀑魔法の勢いは止まらず、そのまま精霊寮へ襲いかかる。


ぐわああぁぁぁぁっ……!!


「いぇいっ! "ソフィア"の大勝利~! マナ! 見てるー!?」

 あっという間に3人の生徒を倒し、天空にピースを掲げながら満面の笑みで勝利宣言する少女、ソフィア・フォン・アイスグラン。

 そんな瞬間を映像で見ていたマナは、名指しでアピールされて照れくさそうに笑みを溢すのだった。


「もう……ソフィアったら」

 ソフィアは、学園に入ってから古竜寮で孤立していたマナに唯一できた友人だ。ルナ達とはまた別で、マナが観客席から応援する対象の一人であった。


_


「やれやれ……ここまで上手いこと避けて来たんだがな、戦闘は。気が抜けていたよ。少しね」

 恨み言のように愚痴るニーシャの前には聖獣寮の3年生が立っている。

 戦闘音がする方や、人の気配がする道は可能な限り避けて進んでいたニーシャは、この種目が始まって以来、初の接敵をしていた。

 相棒のリアンは幽体ゆえに壁をすり抜けられるため、彼の力を活用し、戦闘を最小限に抑えながらここまで進んできたのだ。


精霊寮(スピリット)の1年生ですか……申し訳ないが、ここは戦わせてもらう。このままでは我々に後が無いのでね」

「ふむ……。この道は()()()の雰囲気がするんだがな。仕方ないか――」

 聖獣寮の生徒が剣を抜いて戦う姿勢を見せていると、ニーシャは諦めたような声色で背中を向ける。


「諦めて逃げるつもりですか? しかし敵前で背中を見せる行為はあまりにも愚策だ!」

 聖獣の生徒は背中を向けたニーシャに、剣を振りかぶって飛びかかる。貴族として、戦う気のない相手に後ろから攻撃を仕掛けるのはノブレス・オブリージュに反するが、今はそうも言っていられない。

 しかし、ニーシャは最初から諦めたわけでも、逃げるつもりもなかった。


「――!? 身体が動かない……!」

「……逃げる? ふふ……。ないよ。そんなつもりは」

 振り返ったニーシャはニタァ……と不気味な笑みを浮かべる。尤も、嫌味な表情のつもりではなく、ただ笑顔が苦手なため硬い表情筋を無理やり動かした結果なのだが。

 剣を振りかぶった聖獣の生徒は何故身体が硬直したのか困惑したが、すぐに違和感に気づく。


「なんだ、これは」

 聖獣生の踏み込んだ足には、地面から生えた不気味な骸骨の手が数多にも亘って絡みついていた。

 ニーシャの魔法、死霊魔法だ。


「空中に……壁に……地面。どこからでも現れられるんだ。私の"友達"は」

「くっ……邪悪な魔法だ……こんなもの……っ!」

 下半身を完全に押さえつけられた聖獣生は、絡みついている死者達を剣で切り刻んで取り払おうとするが、切っても切ってもまた別の手が生え、更には背後にも出現した骸骨が、聖獣生の上半身を押さえつける。


「強いよ。彼らは。先輩には悪いが、勝たなければならないんだ、精霊寮は。倒れてもらうよ、ここで今」

「……1年生だというのに、キミは強いな。……負けたよ。邪魔が入る前にトドメを刺してくれますか」

「ああ。そのつもりさ、最初からね。――【ブラックホール】」

 諦めた聖獣生の頼み通り、ニーシャは闇魔法を凝縮した魔力玉を放ち、黒い魔法は押さえつけている骸骨ごと聖獣寮の先輩を飲み込んでいった。



「……別に、私じゃないさ。強いのは。強く、そして優しいだけだよ。力を貸してくれる皆が」

 魔法に飲まれ、気絶して地面に倒れている先輩を後に、ニーシャは先へ歩を進める。



「ニーシャってば、笑顔怖すぎ……」

「流石アナスタシアさんですね、3年生を圧倒するとは」

「フッハハハハ! 邪悪な魔法か! その通りだな!」

 一連の戦いを見ていた精霊寮の選抜生からはそれぞれの感想を述べつつも、種目の展開を見守るのだった。


_


「いやはや今年の1年生は凄まじいですね!?」

「うん。武術試験や魔法適性試験も粒ぞろいだったらしいよ、リオンくん」

「推薦入学の生徒だけではなく、今年は優秀な子が例年にも増してかなり多く入ってきている。まだ実力を見せていない生徒の活躍も楽しみだ」

「なるほど! ちなみにアレス学園長が一番気になっている生徒は誰なんですか?」

「むっ……。はは、それは中々、答えづらい質問だね」

 実況席ではリオンがアレスに質問を投げかけるが、学園長という立場上、誰かを強く推すのは贔屓のようになってしまうため、あまり良くないとアレスは考えていた。

 当然、気になっている生徒は何名かいるのだが、それを教えることはなく、アレスは答えを濁す。


「学園長だからね、贔屓はできないよ。キルベルトくんはどうなのかな?」

「僕ですか? そうですね~……個人的には、聖獣寮のクロエ・ミールくんが気になっていますね。リオンくんは着目している子はいるのかな?」

「私は古竜寮のソフィアさんと魔狼寮のカトレアさんと聖獣寮のシトラスさんと――」

「うんうん、沢山いるんだね。ほら、ちょうどそのシトラスさんが戦ってるみたいだよ」

 テンションが上がって興奮するリオンを宥めながら、キルは今しがた話題に上がったシトラスへと映像をピックアップする。


_


「らららららっ、おらあーっ!!」

「ぐうっ!」

 シトラスはちょうど、精霊寮の3年生と戦闘になり、怒涛の連打で追い込んでいる途中だった。

 精霊寮の先輩は剣でシトラスの拳をガードするが、防御が空いた腹にめがけて、シトラスは蹴りを放つ。


「とどめーっ!!」

「ぐはっ!?」

 強烈なアッパーカットを食らった精霊寮生はそのままダウンし、シトラスの勝利に終わる。

 最近ではルナの影に隠れて薄れてしまっているが、こと近接戦においては、シトラスはかなり手練れの部類なのである。


 そんな彼女の元に、魔狼寮の少女が近づいていた。


「あちゃー……さっきぶり、だね?」

「ですわね。先程別れた時の言葉、憶えてますわよね」

 シトラス、そしてカトレアの二人は再び相見え、言葉を交わす。先ほど一度手合わせをした時の別れ際、ルナを交えて約束したこと……。


「「勝負ッ!!」」

 拳を構えたシトラスと、細剣を引き抜いたカトレアは同時に距離を詰めていく。お互い近接メインの戦闘スタイルだ。余計なものは必要ない。

 最初に戦った時はお互い本気ではなかったのもあって、中々決着がつかないところをルナの登場によって決着が曖昧に終わってしまった。


「【シルファ】!」

 故にカトレアは最初から長引かせるつもりはなく、相棒のシルファの力を借りる。

 さらにそれだけではなくカトレアは、走りながら自身を強化する魔法を次々に発動させていく。


「【ゲイルフォース】、【エアリアル・エンチャント】!」

 ルナやマナなど、よく使われる光属性の身体強化魔法とは違い、カトレアのシルファの力を借りた風属性の身体強化魔法は、重ねがけをしてもルナのように致命的な副作用は起こらない。

 その代わり、ルナの二重強化のような瞬間的に爆発的な身体強化を得るようなこともできない。……が、汎用性と安定感は抜群である。


「あーっ、ずるーい!?」

「短期決戦で行きますわよ! シトラス!!」

 いきなり全開で来たカトレアに、シトラスは文句を垂れるが、勝つための戦いにズルいもへったくれもない。持ちうる力を引き出し、最大限に発揮して勝利する。それが普通である。


「魔力がいっぱいある人ってああいうことできるのが羨ましいなぁもう」

 尤も、シトラスの恨み言はただのかわいい妬みであるため、嫌味な気持ちなどまったくない。

 自分には魔力が110とごくわずかしかないために、ああいった身体を強化する魔法などが使えないのが悔しいだけである。


 そしてあらゆるバフを付与したカトレアは、凄まじい速度でシトラスに接近し、その細剣を振るう。


「【ピアシングストライク】!!」

「わああ速ぁぁぁぁ!?」

 シトラスは絶叫をあげながら、必死の形相でカトレアの剣を捌く。

 しかし風の精霊"シルファ"の範囲拡大によってその身体には次々に傷が増えていく。

 最初から魔力全開で、出せるものは全て出したカトレアの攻撃は、恐ろしく多い手数であり、捌いても傷が増える速度は尋常ではなかった。


「ちょっとシトラス!? 本気で言ってますの!?」

 シトラスの動きを見たカトレアは目を見開いて驚愕する。今カトレアが使っている強化魔法と剣技は出し惜しみなしの全力だ。

 それをギリギリとはいえ防いでいることにカトレアは驚いていた。ルナならまだしも……。


「いや本気も何もギリギリだってばーっ!?」

「そんなこと言って、まだ少し余裕ありそうですわね!!」

 シトラス自身、本当に限界ギリギリのところで攻撃を捌いているのだが、容赦のないカトレアは更に速度を上げた。


「【エアリアルストライク】ッ!!」


いやあああああぁぁぁぁっ……!!?


_


「あーっと! カトレアさっ……魔狼寮の1年生がシトラスさ……聖獣寮の1年生を圧倒し撃破! 一瞬ながら凄い戦いでしたね!」

「うん、落ち着こうねリオンくん。確かにすごい戦いだったけど」



「きゅぅ~……」

 最初からフルスロットルで全力を出したカトレアの猛攻は、シトラスに歩法や反撃などの隙を一切与えず決着に終わった。

 伸されたシトラスを前に、カトレアは細剣を見つめながらモヤモヤとしていた。


(身体強化、本当に使えないんですわよね? シトラス……恐ろしい子! ……ですわ)

 先程のシトラスは、まるでルナのような身のこなしだった。ルナに匹敵はせずとも、身体強化魔法なしでかなり近しい動きができるというのは、かなり異質だった。

 普段のおどけた態度からは想像がつかないが、実はシトラスもかなりの実力者なのではないか……と、カトレアは戦慄するのであった。


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