表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VS-バーサス-  作者: こおろぎ
1/13

起源

雨の中、ある施設の前に佇む少年

「この世はオシャレが全てだ

ダサい奴は除け者にされる

オシャレな奴だけが歓迎される」


少年はジッと施設を見つめる

「俺もかつては除け者にされる側だった

だがそれも今日で終わる

俺は変わるんだ、オシャレの頂点に立って

奴らを見返すために…

あの時から、俺はそう決めたんだ」


-3ヶ月前-

狭い部屋で目覚める少年

ジリリリリ 目覚ましが鳴る

「…」眼鏡をかけて支度する


-カジアル高校-

少年が通う高校


「おい兄ちゃん金よこせよ」

「持ってんだろ?」


登校早々、不良に絡まれる少年

「僕の名前はリョータ、ただの弱虫だ」


リョータ

「地味でダサくて学校に行くといつもみんなにいじめられる

理由はなんとなくわかってる、ダサいからだ」


「小さい頃からダサいダサいと言われて育ってきた

みんな僕を避ける、こんな生活耐えられない」

「だけど…」


兄貴

「よぉ、いっぱい持ってんじゃん

今日からこいつは俺たちの金な

今日はツイてるぜ」

舎弟A

「さっすが兄貴!」

舎弟B

「ぼろ儲けっすね!」


兄貴

「よし、今日は俺の奢りだ

焼肉食いに行こうぜ!」

舎弟A

「いいんすか?!」


兄貴

「あぁ、金も手に入ったからな

今日は褒美だ、お前達もよく仕事した

日頃の感謝さ」


舎弟A・B

「うほぉ!兄貴太っ腹ァ!」


不良達がバカ笑いをするなか

誰かが怒鳴り声を上げる


「コラァ!」


「なにやってんのあなた達!」


不良達が声のする方を見ると

そこには少女が仁王立ちしていた


舎弟A/B

「げっやばっ!!あの女は!!」


舎弟二人が少女の姿を見て怯える

そんな中兄貴だけが少女に近づく


兄貴

「よぉ、なんなんだお前よぉ?」

舎弟A・B

「兄貴!やばいですよ!!」


少女

「カツアゲなんてしていいと思ってんの?」


少女が巨漢な兄貴を前にして凄む


兄貴

「け、関係ねーだろ

引っ込めよ嬢ちゃん

ケガしてーか?」


パァンッ 少女が兄貴をビンタする


リョータと舎弟達が驚く


兄貴

「…テメェ」


ギロッと睨む兄貴


少女

「カツアゲなんてしていいと思ってんの?」


再度聞き直す少女


兄貴

「うるせーこのクソ女ァ!!」


兄貴が少女に殴りかかる

スッ ズゴォッ


兄貴

「んぐっ」


兄貴のパンチを交わして出した少女のパンチが

兄貴の腹にめり込む

兄貴は崩れ落ちる


兄貴

「ぐっぐぇ…うっうっ…」


少女は強かった


少女

「行きなよどっか」


兄貴

「あぁ!?」


兄貴を見下ろす少女


少女

「カツアゲなんてダサいことしてる暇があるなら

働いて自分たちでお金稼いできなよ」


「できるでしょ?」

キッと睨みつけられ

うずくまる兄貴は寒気を覚える


兄貴

「ちっずらかるぞ」

舎弟達

「覚えてやがれ!必ず後悔させてやるからな!」

兄貴を担ぎ、

捨て台詞を吐いて立ち去る不良達


少女は仁王立ちでそれを眺める

リョータはその光景を見ながら

自分語りを始める


リョータ

「(いつもこうだ)」


リョータ

「(学校に来るたび、周りに避けられ

悪口を言われ 机には酷い落書きまでされて

誰も口を聞いてくれない、誰も助けてくれない

話しかけてくる人はみんなさっきのみたいな人達ばっかりだ

もう嫌になる…)」


リョータが廊下を歩くと周りが避ける

「うわ、また来たぜ」「くっせ」

「よく学校来れるな」「早く死んでくれよ…」

「キモォ…」「なにあいつ」


リョータ

「(だけど)」


少女の方を見る


リョータ

「(この子は違った

こんな僕を見ても拒絶せず

対等に話しかけてくれる)」


「(カムイちゃん、僕の唯一の味方だ)」


---


リョータ

「(この高校に入学してから、周りにいじめられても

彼女に助けてもらえるようになった

こんなの初めてだった

今までいじめられるのが当たり前で、助けられるなんて考えもしなかったのに…

彼女に出会ってから僕の中で

何かが…全部が変わったんだ)」


カムイ

「リョータくん、大丈夫?」


リョータ

「う、うん、大丈夫だよ…」


カムイ

「へへ、よかった!」


リョータ

「(力強さと逞しさ

僕は彼女と接するうちに

次第によくわからない感情が芽生えてきたんだ

きっと憧れとかそういうのかもしれない…

今まで知らなかった世界だ)」


カムイ

「ベンチでしばらく休も?」


リョータ

「う、うん…」


---


ピッ ガコンッ 


カムイ

「はい!」


カムイが買ってきたジュースをリョータに手渡す


カムイ

「それ新しい奴、飲んでみ?」


リョータ

「う、うん」


プシィッ

ゴクッゴクッ 


カムイ

「プハァッ!うまぁ」


リョータ

「ゔっ、ごふっごふっ」


緊張して喉に詰まらせる


----


リョータ

「ねぇ、カムイちゃん」


カムイ

「ん、なに?」


リョータ

「どうして…その、

僕を助けてくれるの…?」


リョータが疑問をぶつける


カムイ

「なんで?」


リョータ

「あ、いや、なんでかなって…僕、周りに避けられてるから

なんで、その…助けてくれるのかなって…」


カムイ

「うーん…なんでだろ?

なんとなく助けたいって思うから…かな?」


リョータ

「…」


カムイ

「カムイ昔ね、いじめられてたんだ」


リョータ

「え??」


驚くリョータ


カムイ

「カムイ、力強いじゃん?

それでさ怪力女ってクラスの男子に

呼ばれてて、よく泣いてた」


「どうして自分だけこんな力を持って生まれたのか

わかんなくて、すごい嫌だった

自分の体が他とは違ってて」


「でもね、ある時さ

クラスの女の子が悪い人に襲われてるところに

遭遇しちゃって」


「カムイまだ小さかったから凄く怖くて

無我夢中で壁殴ってヒビ入れたら、その悪い人怖がっちゃって思わず「次はおじさんの顔に叩き込むよ!」って泣きながら言ったら、逃げて行っちゃったんだ」


「でね、女の子にすごく感謝されてさ

私の力はひょっとして人の役に立つためのものなんじゃないか

そう思って、そっから弱い人を苦しめてる人を懲らしめるようになった」


「で、それが段々と日常になっていって…て感じかな!」


リョータ

「…すごいな、この子は本当に

僕とはまるで住む世界が違う…」


カムイ

「カムイ、変かな?」


リョータ

「う、ううん、変じゃない!すごいよ!

人のために、そんなの、誰にも真似できないし!

すごく憧れる!」


カムイ

「え、えへへ…そこまで?」


リョータ

「(こんな強い子でも色々辛い経験してるんだ

それを自力で立て直すなんて…

僕にはとても…そんなこと…)」


リョータ

「カムイちゃん!」


カムイ

「ん?」


リョータ

「(僕もカムイちゃんみたいに強くなれたら…)」


リョータ

「僕っ」


チャイムがなる


カムイ

「あ、チャイム

もうそろそろ時間だ

教室戻らないと」


リョータ

「…」


カムイ

「急がないとね」


リョータ

「…うん」


リョータ

「(僕はなにを言おうと…?)」


カムイ

「リョータくん」


スッ 手を差し伸べる


リョータ

「?」


カムイ

「送ったげる」

ニコッと微笑む



-教室前-


カムイ

「ここまで来れば安心だね!

リョータくん

またいじめられたらいつでも言って

カムイがぶっ飛ばしてあげるから」


リョータ

「う、うん」


カムイ

「じゃ、また!」


リョータ

「また」


リョータ

「(カムイちゃん…君はなんて素敵なんだろう

僕には一生届かないよ

さっき僕がなにを言おうとしたのか

よくわからない、でも、多分これは…)」


「(今までこう言うの感じたことなかったのに

カムイちゃんと出会ってから

本当に全部変わっていく)」


「(オシャレじゃない人は人間扱いされない

僕も今まで散々、人間の感情を持たず生きてきた

僕のような存在がそれを手にしていいのか

いや、許されなかった、今までは)」


「(でも、僕もこう言う感情を持ってわかったんだ

僕も人間なんだって

そうだ、こんな世の中おかしいんだ

どうしてオシャレじゃない人が人間として生きちゃいけないのか

オシャレは好きな人だけすればいいのに…)」


「(ダサいだけで避けられる、感情を持っちゃいけない

そんなの、そんなのおかしいよ…絶対

僕も人間として生きていいはずだ

カムイちゃんが気づかせてくれた

カムイちゃんがそう教えてくれたんだ)」


「(そうだ、僕だってやればできるんだ!

きっと僕もカムイちゃんのように…)」


???

「あるぇ〜、リョータくんじゃぁん

なにしてぇんの?こんなとこでぇ」


リョータ

「…」



-階段の踊り場-


ドゴッ


リョータ

「んぐっ」


クラスの男子

「ねぇねぇ、なんで約束破ったの?

いつまで経っても帰ってこないから

心配してたのに

リョータくんがさぁ

ジュース、クラス全員の分買ってくれるって言うから

俺たちずっと喉カラカラにして待ってたのに

なんで裏切ったの?」


リョータ

「ゲホッゲホッ」


クラスの男子

「リョータくんが言ったんでしょ?

買ってくれるって、ねぇ?」


リョータ

「そんなこと言ってな…」


バキィッ


クラスの男子

「言ったじゃん、なんで嘘つくの

ジュース買ってきてって言ったら

リョータくん、「僕のお金で全員分買ってきます!」

って笑顔で言ってたじゃん!

俺たちずっと楽しみにしてたのに、買ってないんだもん

ねぇどう言うこと?俺ら脱水症状起こすかもしれないよ?

下手したら死んじゃうよ?リョータくんのせいで

リョータくん犯罪者になりたいの?」


リョータ

「んぐっ…」


クラスの男子

「リョータくん犯罪者?ねぇ、犯罪者?」


リョータ

「…」


ドゴォ


リョータ

「んぐぅっ」


クラスの男子

「聞いてんだけど、耳聞こえないの?

ずっとさ、教室で待ってたのに…」


リョータ

「くっ…ふぅふぅ…

(カムイちゃん…助け…っ!)」


クラスの男子

「ダサい上にジュースもろくに買えないなんて」


リョータ

「(そうだ、頼ってばかりじゃダメだ

僕も、僕も言い返すんだ!カムイちゃんみたいに!)」


クラスの男子

「なにしに生まれてきたんだよ…

俺たちだけだよ?君に優しくしてるの」


リョータ

「…に行け」


クラスの男子

「は?」


リョータ

「自分で買いに行け…!」


ドゴッ

腹に蹴りが入る


リョータ

「ぶっ、、ぐっ、、ふぅ、、」


クラスの男子

「え、なに?なんか聞こえたな?

え、お前なに言ったの?

逆ギレしちゃった?怒りたいのこっちなんだけど」


クラスの男子

「いいからさ、ジュース買いに行けっつってんだよ

なにダセェくせに調子こいてんだ」


ドカドカと何度も踏まれる


リョータ

「ぐああ…」

「(ダメだ、僕じゃカムイちゃんにはなれない…

ダサいし弱いままだ…僕じゃ何も変えられない…

僕もカムイちゃんみたいに強かったら…)」


オォ…

リョータの右腕が突然光る


リョータ

「(僕も…カムイちゃんのように強かったら…)」


クラスの男子

「…!」


ズゴゴゴ

リョータの右腕の光が激しくなり

クラスの男子もその不可解な異変に冷や汗流して焦り始める


クラスの男子

「…!?…!?…!?」


リョータ

「(どんなに…)」


リョータの無意識のパンチが

男子の顔面目掛けて飛んでくる


ドゴッ


暗転



バタバタと

学校中が騒ぎになる


「おい、聞いたか?!」「不審者に殴られたって!」

「救急車に運ばれてった」「顔パンッパンだってよ?!」

「こええ」 「やべぇ」「誰がやったの?!」


一方、トイレの個室で震えるリョータ

右手を見つめる


リョータ

「(何今の…!?)」

「(急に腕が光ったと思ったら

いつの間にかあいつが倒れてて)」

「(落ち着け、情報を整理しろ、僕がやったのか?)」

「(ど、どうしよ…わからない…)」


本人も状況が飲み込めず

訳がわからずパニックに


リョータ

「(とりあえず今わかってることだけ、

ゴクッ…えっと、さっきあいつに殴られて

やり返そうとしたけど無理で

そしたら突然腕が光って、次の瞬間見たら

あいつがボコボコになってた…

ぼ、ぼ、僕が倒したのか…?)」

「(じょ、状況的にそうとしか…じゃあ僕は…)」


「(僕は強くなったのか…?)」



-放課後-


リョータ

「カムイちゃーん」


カムイ

「?」


カムイを見つけて駆け寄るリョータ


カムイ

「リョータくん」


---


カムイ

「ふぅん、そんなことがあったんだ」


ベンチに座る2人


リョータ

「腕が光ったと思ったら急にそいつが倒れてて」


カムイ

「リョータくんが倒したってこと?

リョータくん、そんな強かったっけ」


リョータ

「わからない、でも多分僕がやったんだと思う

僕強くなったのかも

自分でピンチを脱した、僕強いんだ!」


リョータが嬉しそうに語る


カムイ

「ふふ、やったね(ニコっと微笑む)」


リョータ頬を染める


リョータ

「カムイちゃんのおかげだ」


カムイ

「えー?何もしてないよ?」


リョータ

「僕があいつに抵抗できたのは

カムイちゃんの強さに憧れがあったから

僕もカムイちゃんみたいに強くなりたいって

願ったら、やらなきゃって感じて

夢中であいつに…」


「もし、カムイちゃんと出会わなかったら

僕は多分ずっと何もできないままだった

僕は君から勇気を貰った、だから勝てたんだ

ありがとう」


カムイ

「えー、なんか恥ずかしいなぁ」

「でもそっか、リョータくんはもうカムイがいなくても

大丈夫なんだぁ

何だか嬉しいような、寂しいような

ちょっと複雑だなぁ… チラッ」


リョータを見つめるカムイ


カムイ

「ふふ」


リョータ

「へへ」


2人はしばらく談笑


日が沈みはじめる


カムイ

「遅くなったねそろそろ帰ろっか」


立ち上がるカムイ


リョータ

「あ…うん…」


リョータは妙に落ち着かない

心がざわざわする感じ


カムイ

「じゃあまた明日」

リョータ

「ちょっと待って!」


帰ろうとするカムイを引き止める


カムイ

「?」


リョータ

「あ、あのさ、カムイちゃん…」

「(今なら言えるかも…)」


「ぼ、ぼくカムイちゃんのこと

その…す…き…かも

す、すきになった…かもしれない…」


カムイ

「ん、よく聞こえないよ」


リョータ

「だから、僕、カムイちゃんの事が…好きで

いや…なんというか…くっ!」


カムイ

「?」


リョータは声を張り上げる


リョータ

「す、好きなんです!僕カムイちゃんのことが!!

好きになりました!よかったら僕と付き合ってください!」


リョータの声が響く



驚いた表情をするカムイ


リョータ

「(…言った)

(やばいやばいやばい!どうしよどうしよ!)」


赤面するリョータ

カムイは少し考える、そして


カムイ

「無理、かな」


冷たい返答

リョータ一瞬固まる


リョータ

「…」


リョータ

「…え?」

「な、え、ど、どうして!?」


正気に戻り、焦って聞き返すリョータ


カムイ

「うーん、なんだろ

カムイには勿体無いかなって

ほかにいい子いくらでもいると思う」


リョータ

「そんなことないよ!カムイちゃん強いし

優しいし!憧れるし!

それに、その…」


「かわいいし…」


恥ずかしそうに言うリョータと

それを聞いて頬を染めるカムイ


カムイ

「うーん…」


しばらく考え

ピコーンと閃く


カムイ

「じゃあさ」


構えるカムイ


カムイ

「カムイと勝負しようよ」


リョータ

「…?勝負?」



-空き地-


カムイ

「いい?カムイが負けたらさっきの話考えたげる

リョータくんが負けたらさっきの話諦めて」


リョータ

「や、やっぱりダメだよ!

カムイちゃん、こんなこと…」


カムイ

「じゃあやめる?

もう君との関係終わることになるけど…?」


リョータ

「そんなぁ!」


カムイはリョータに

付き合うか付き合わないかを賭けて

決闘を持ちかけていた


カムイ

「ほら、遠慮しなくていいよ

全力でかかってきて!」


リョータ

「ご、ごめん…カムイちゃん!」


リョータは覚悟を決め

カムイに突進する


リョータ

「うわぁぁぁぁぁ!!」


バキィッ


勝負は一瞬でついた

カムイの拳がリョータの顔面にクリーンヒット

そのまま吹っ飛び、地面に激突するリョータ


ゴシャァ


カムイ

「…」



リョータ視点


目が覚めるとカムイがいた


カムイ

「弱くてダサくて惨めなリョータ」


リョータ

「…」


カムイ

「そんなんだから、みんなからいじめられるんだよ?

自覚しなよ

リョータくんみたいなの「身の程知らず」

って言うんだよ

カムイ、リョータみたいなダサい子とは付き合えないなぁ」


リョータ

「…」


カムイ

「じゃあね、ダサリョータ」


リョータ

「カムイ…ちゃん…」


カムイを迎えにきた謎の男

リョータを罵倒し、立ち去るカムイ


リョータは悲痛な声を漏らしながら

ふたたび気絶


雨が降る


ザー


血まみれで、這いつくばるリョータ



場面変わって、とある倉庫


ベシャアア


大男が壁に激突し、ズルズルと下に下がる


舎弟A

「兄貴ィ!!」


壁に激突したのは昼間、リョータをカツアゲしていた不良のリーダー、兄貴だった


???

「ちっ、情けなーなぁ」


舎弟A・B

「クウマさん!!」


現れたのは不良達を牛耳るヘッド

クウマだった


クウマ

「女にやられてノコノコ逃げ帰ってきやがって

メンツ汚してんじゃねーよ」


舎弟A・B

「ちがうんすよクウマさん!違うんス!」


クウマ

「何がちげーんだよ

カムイって女にビビって逃げたんだろうが」


舎弟B

「違うんすよ、カムイって奴はたしかに一見女ですけど

普通の女じゃないんすよ

まじで…こう、やばいっていうか、そうありゃバケモンです

俺たちじゃとても…」


バキィッ


顔面を蹴り飛ばされ失神する舎弟B


舎弟A

「ひぃ!!」


クウマ

「おい、そいつ片付けとけ

…たくっ」


仲間A

「ははは、あんま虐めちゃダメっすよクウマさん」

仲間C

「そうっすよ、お化けをみたかもしれないんすから

へっへっへ」


仲間達がゲラゲラ笑う


仲間B

「だがそいつらの言うこと

まんざら嘘でもねーらしいぜ

知り合いが言ってたんだ

他校でバケモンみてーに強ェ女がいるって

とんでもねぇ怪力で、でかいバーベルも片手で持ち上げて

投げつけてくるって話だ

そいつの知り合いも、その女とやり合ったらしいが

秒で半殺し状態にされたらしい」


仲間A

「ひぇーこえー」


クウマ

「ふん」


仲間B

「俺たちが最近つるんでるのも

そいつの関係者らしい」


仲間C

「おいおい」


仲間A

「いくらなんでもそいつは…」


仲間B

「でもよぉ、ここ最近まじで俺胸騒ぎがしてよ

パリピだパリピだってバカにできねぇ

奴らとんでもねー組織なんじゃねーかってな

俺たちがここまで急激に伸びたのも

そいつらの影響が大きいし…」


仲間A

「考えすぎだ、カムイって女も

本当は実在しねーかもしんねぇ

そいつらの嘘だ、お前の仲間も見間違ったんだろう

本当はゴリラみたいな男なんだよ

ロン毛のな」


仲間C

「女と見間違ったのか!俺ら女には飢えてっからなぁ?!」


仲間B

「そうだといいがな、どうしても不安だぜ

あいつら信用しちまっていいのかって」


クウマ

「ふん、情けねぇ

どいつこいつも

相手がどんなバケモンだろうが

関係ねー、俺ら最強の不良集団だろうが

警察も政府も俺らには一切手出しできねー」


仲間B

「そ、そうっすけど

それもやつらの…」


クウマ

「上等だ

ならそのカムイって女ぶっ飛ばしてくるわ

そうすりゃ全部わかる

どっちが上かってな、はっきりするだろ?」


たじろぐ仲間B


クウマ

「どうせこっちもメンツ汚されてんだ

丁度いい

汚名返上させてやる」


クウマ

「お前らも来るか?」


仲間達

「い、いや、俺はその…な?」

「よ、用事が…」


仲間達が必死に誘いを拒否


クウマ

「ふん」



場面変わり、リョータが壁にもたれながら

ゆっくり帰宅


カムイ

「(リョータみたいなダサい子とは付き合えないなぁ)」


さっきの出来事の回想が何度も脳内でリピート

しばらく歩いているとクウマが立ち塞がる


クウマ

「おい、そこのダセーの」


リョータ

「…」


クウマ

「聞きてーことがある」


リョータ

「…なんですか」


クウマ

「女を探してんだ

カムイ…って知ってるか?」


リョータ

「!!」


リョータ、無言でクウマの脇を通る


クウマ

「おい」


呼び止め

回り込むクウマ


クウマ

「何お前、無視してんじゃねーよ」


リョータ

「どいて…ください」


クウマ

「まだ質問の途中だろうが」


リョータ

「どいてください」


クウマ

「あ?」


睨みつけるリョータ


リョータ

「どけ!」



とある倉庫


バキッドゴッベシッ

ズシャァ


リョータをボコるクウマ


リョータ

「ぐっ…かぁ…」


クウマ

「おいダセーの、口の利き方に気をつけろ」


クウマ

「俺は人を探してんだ

カムイって女を

人が優しく道聞いてんのによ」


リョータの髪を掴む


リョータ

「うっ…あぁ…」


クウマ

「あのな、ちょっと答えるだけでよかったんだ

知ってるか、知らねーかをよ

答えてくれるだけで、よかったんだ

わかるか?」

「俺は、すっげーイライラしてんだ

仲間がやられてよ

そいつやった奴追いかけてたら

今度はてめーみてーな奴に

ナメた口聞かれて」


クウマ

「なぁ?お前、俺のこと知ってる?

ここらじゃすっげー有名なんだぜ?」


「俺のこと知ってるか?」


リョータ、首を横に振る


バキッ

殴り飛ばされるリョータ


クウマ

「じゃあ今からよく覚えとけ

俺はなぁこの辺牛耳ってるヤンキーのアタマ

クウマ様だ」

「「どけ」だと?ダセーくせに調子こいた口聞きやがって」


「いいか?てめーのせいでな

俺の貴重な時間奪われてんだ

カムイの居場所、吐け

知ってんだろ?その反応、知ってるから

そう言う反応になんだろうが!」


リョータへの暴力が続く


リョータ

「ゴホッゴホッ」


クウマ

「ちっ、余計な時間食っちまった

もういい、おめぇはそこで這いつくばってろ

あとで沖にでも沈めてやらぁ」


リョータ

「ダサくて…何が悪い…

オシャレな奴が偉いのか…」


リョータがつぶやく


クウマ

「あ?何ぼそぼそ言ってやがんだ」


ゆっくり立ち上がるリョータ


リョータ

「ダサい奴がそんなにダメか…?

オシャレな奴がそんなに偉いのか?」


クウマ

「…」


リョータ

「答えろ!」


バキッ


リョータ

「ぐあっ…」


ドシャアァ


クウマ

「うるせーんだよ、なに訳わかんねーこと言ってんだ

殺すぞ、大人しくしてろゴミが」


リョータ

「ぐはぁっ…ぐく…」


痛みに悶える


やがて動かなくなるリョータ


クウマ

「(…死んだか)」


一服するクウマ

すぐ立ち上がるリョータ


リョータ

「オシャレな奴が偉いのか

ダサい奴はそんなにダメか!」


クウマ

「くっ…うぜぇな」


タバコを捨てる


リョータに再び暴力を振るう


クウマ

「オシャレな奴が偉い?当たり前だろうが!

お前みたいな奴がいると空気腐るんだよ!」


殴り倒し、何度も蹴る


リョータ

「だったら俺も…オシャレになってやる」


踏まれながらそう言うリョータ


クウマ

「なれるかバカ、んな甘えー世界じゃねーんだよ」


ドカッ

リョータの顔面を踏みつけ、気絶させる


クウマ

「あ〜あ、何やってんだ俺は

さっきからなんなんだこれは?

なんかヤベェ…

さっさとカムイ潰さねぇと…」


リョータ

「俺もオシャレになってやる」


立ち上がるリョータ


リョータ

「俺もオシャレになって

偉くなってお前らを見下してやる!」


クウマ

「…はぁ

なんなんだお前は?さっきから」


リョータ

「カムイ…」


クウマ

「わかったよ、殺してやるよ

それでいいんだろ?」


リョータに殴りかかろうとするクウマ


ドシャアッ



吹っ飛ばされたのはクウマのほう

地面に叩きつけられた後、すぐ起き上がり

周りを見渡すクウマ


クウマ

「!?!?」


混乱しているクウマの後ろで光が


ゴゴゴゴゴ


リョータの頭の中はカムイの事がループされていた

「(弱くてダサくて惨めなリョータ、リョータみたいな

ダサい子とは付き合えないなぁ)」


ここから脳内で誇張されたカムイのセリフ

「(死んじゃえ)」


リョータ

「!!!」


ゴアッ


リョータの光が大きくなり

周囲の瓦礫やゴミが宙を舞う


クウマもその光景に呆然


リョータ猛スピードで接近、クウマをボコボコにする


クウマは膝をつきダウン

一瞬の出来事だった


ひざまずくクウマ

それを見下ろすリョータ


リョータ

「お前らが偉いなら、俺も偉くなってやる

オシャレして誰よりも…」


リョータ

「誰よりも偉くなってお前らを見下し、笑ってやる!」


クウマ

「(なんなんだこいつは…)」

リョータを呆然と見上げながら

そう思うクウマ


クウマ

「よせ、やめ、たの…」


ドスッ


命乞いも虚しく

リョータに顔面を踏まれ

トドメを刺されたクウマ


リョータ

「うぉぉぉぉぉ!!」

リョータは雄叫びをあげる


それから3ヶ月---


洗面台でおめかしをするリョータ

髪型をツンツンにセットして

緑髪だった髪は黒、前髪を赤に

メガネも外し、カラーコンタクト(赤)へ


赤いフード付きの黒のジャケットを着て

イメージチェンジ


セットが完了し、ある場所へ向かう


リョータ

「この世界はオシャレが全てだ

オシャレな奴は歓迎され

ダサい奴は除け者にされる」


ある施設の前に立つリョータ


リョータ

「あれから3ヶ月…色々あったが

結局オシャレの事はよくわからなかった

服を変えたらオシャレになれる…なんて軽い気持ちでいたが

どれだけ服を変えようと、髪型をいじろうと

結果は何も変わらなかった」


「ますます周りから変な奴、頭がおかしいと拒絶された

俺はオシャレがなんなのかまるでわかっていない…

オシャレってなんなんだ?どうしたらなれる?」


「俺はオシャレの事をずっと探し回っていた

ネットで調べても曖昧な事ばかりで、結局オシャレっていうのがなんなのか全くわからない…だがそんな時、俺はあるものを見つけた、それがオシャレを知るヒントになるのかは

わからない、だが行ってみる価値はあるって--」


施設を見つめながら


リョータ

「バーサス…ネットの掲示板に書いてあった

この世のどこかには誰でも参加可能なオシャレを競う秘密の施設があるって…

オシャレじゃない奴でも参加が許されてるらしい

俺でも参加できる…」


「そこに参加すればオシャレの事がわかるって思った

だからこの3ヶ月、ずっとその施設を探していたんだ

そんな施設、本当は無いのかもしれない

でも俺にはそこに賭けるしかなかった」


施設の人間に案内されるリョータ


ブオォ…


ハイテクな部屋にたどり着く


ブォンッ

ホログラムのバーサス受付が出現


受付

「はーい!バーサス参加の方ですね!

では早速バーサスについて解説いたします!」


バーサスについての説明を受けるリョータ

ホログラムで表示される街(バーサスの会場)

ホログラムだが質や感触は現実と同等

インスピレーションを働かせる効果の期待

参加者はこの街でオシャレを競い合う事になる

バーサスの世界では法は適用されない

オシャレを競いながらも自由に暮らすことができる


オシャレ上位に食い込めば、雑誌に載り、メディアなどに取り上げられブームを起こすと言われている


バーサスの説明が一通り終わった後

名前とブランド名を記入


名前→リョウガ

ブランド名→street


記入が済んだあと

受付から「オシャレウォッチ」という

アイテムを渡される


受付

「そのアイテムはバーサスの必需品です」



-オシャレウォッチ-

時計の部分に手をかざすと

オシャレパッドという

さまざまな機能を備えた

ホログラムのモニターが出現

参加者をサポートする


機能一覧

アイテム/食料購入

コイン/ポイント表示

時間など


コインは現実世界で言う

お金の役割を担う

食料やアイテムを購入するときに消費

(購入したものは転送され、送られてくる)


操作方法はタップ(画面をタッチ)、スライド等

スマホと同じ操作


もう一度時計に手をかざすと

閉じることができる



受付

「初回はコイン500枚と携帯食料を配布します

食料が手持ちになくてもご安心を」


「では、いよいよバーサスに向けて出発しましょう!

あちらから会場へ転送されます!

なお、一度参加すると外へは出られないのでご注意ください

また、どこに転送されるかはランダムです

それでは良いオシャレライフを!」



リョウガ転送装置で会場へ移動


ヒュオオオ…


リョウガ

「ここが、バーサスの世界」

「静かだ…」


辺りを見渡す


リョウガ

「必ず目標は果たす

どんな困難が立ち塞がろうと

絶対に屈しない」


「俺はやってやる

オシャレの頂点へ行くために…」


リョータ改めリョウガは

オシャレを知るため

そしてオシャレの頂点を目指し

バーサスに足を踏み入れた…

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ