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コスプレとロリィタの境目はどこにあるのか。

作者: 藤代京


 コスプレとロリィタ、変なというか日常ではない衣装を着るのは同じだけど明らかに違う。

 その差ってのはどこにあるもんでしょう。


 まず分かるのは、コスプレの主体はレイヤーではなくコスするキャラにあると言うこと。衣装だけではなく、カラコンやメイク、ウィッグを使ってよりキャラに近づけていく。

 女性レイヤーが男装コスする時はナベシャツ等で胸を潰してコスプレする。

 男性レイヤーが女装するときはガムテープでも使うんかねえ。

 体型まで補正してコスプレ、そこに「私」はない。

 あくまで主体はキャラである。


 これに対してロリィタはあくまで「私」ひたすたに可愛い私を追求していく。

 ロリィタはコスプレじゃないあくまでファッションだと彼女らは主張する。

 そのことによって没入するキャラを喪失して、私を主張していくしかなく訳だ。

 

 なのでコスプレとロリィタの境目は主体が私にあるかキャラにあるかである。


 ではなぜ彼女たちは過剰に可愛い服を着てロリータと称するようになったのか。


 昔、Qpotの小物を見て驚いたことがある。とてもデコラティブで可愛らしく、思わず手に取って欲しくなるが、くその役にもたたない。

 確かメロンの置物だったけど、手の平に包めるくらいのそれは小物入れになるとかそういうことはなにもなく、ただ可愛いだけの小物。

 それでお値段5万円くらいだったかな。

 樹脂製なので軽く、文鎮になるかも怪しい。

 徹底的に機能を削がれて、可愛いに全振りしている。

 その時は意味がわからず、デコラティブとはこういうことか、と理解しただけだったけど、今だと違う理解ができる。

 機能を要求するのはなにか?

 社会だ。世の中だ。

 誰しもが社会のなかでなんらかの役割を果たしているから、機能を要求される。

 ならば、一切の機能を持たないということは社会からの逃走であり逸脱である。

 その果てにある社会からの自由である。

 だから、ただ可愛いだけの小物でいい。下手に小物入れなんかにしたら、社会的な役割が生じてしまう。

 くその役にも立たないものに馬鹿高い値段つけるのも、それが正解。

 うちのスタンスはこうですってのを示せればいいんだから、売れなくていい。

 売れてしまうとそれはそれで社会的な意味が発生してしまうので、売れないように馬鹿みたいな値段をつけているとも言える。

 デザイナーって怖いね。

 ここまで考えてデザインしてるんだぜ。

 

 ロリィタファッションにも同じことが言える。

 仕事するにも家事するにも向いてないおよそ機能性を追求していないファッションは、社会からの逸脱であり、その果ての自由である。

 彼女たちは社会に強烈にノーを突きつけている。

 可愛いから分かりにくいが、ロリィタの本質はパンクでアナーキーだ。



 というのは真っ赤な嘘だ。

 信じてはいけない。


 

 いや、大筋では外してないと思うが、ロリィタ服を色々検索してみると社会から逸脱するほど機能がないか

と言うとそうは思えない。

 服として機能はしている訳だし。

 コレクションのランナウェイだとそれは服じゃない、ただの端切れだ! ってのは平気で出てくるしな。

 社会からの逸脱というならそのレベルまで行かないと。

 ロリィタ服のお値段はと見ると、意外にリーズナブルで2万から5万程度。

 全身揃えると10万越えるらしいが、それでも買えない値段じゃない。

 商品としてちゃんと機能している訳だ。


 ではレイヤーと比べて生態はどんなもんよと調べてみたら、凄く世間の目を気にしているのな。

 世の中からどう見られているかに対して敏感というか。

 ほれコスプレの場合はイベントという形で世間から隔離されているし、祝祭空間における祭事の面もあるから基本他者からの目線は男女年齢関係なく称賛な訳さ。

 オマケにファッションではなくプレイだから、批判されても刺さらないし。

 

 対してロリィタはファッションだから、世間から隔離されてはいない。しかも確実にどんな状況でも浮くので、同類以外からの視線は基本非難である。

 しかもプレイじゃなくてファッションなので批判が直に刺さる。


 ロリィタ服ってハレ着か普段着かで言うたら、ハレ着じゃん。

 種類としてはお祭りとかお祝いの時に着る服じゃん。

 それを日常に持ち込んでしまっているから、かなりの無理が出ているように見える。

 ハレの場でもないのにハレ着を着ているから、着ている人が服からハレを要求されている。

 コスプレはハレの場でハレ着を着ているのだから、そういう無理はない。

 イベント終わったら着替えて打ち上げいって、ああ、楽しかったねまたやろうね、で終わりだ。

 ロリィタはファッションにしてしまったから、コスプレのような終わりや切り替えはない。

 周りは普通に日常を送っているなか、着ている本人だけが常に祭事を要求される。しかも他人には凄くわからない感じで。


 コスプレをお祭りだと言ったら、まったく知らない人でもああ、そうなんだと納得しやすいだろう。

 しかし、ロリィタをあれは個人限定のお祭りだと言われても???だろう。


 なので、ロリィタはコスプレを目の仇にしている。

 自分たちはファッションであり、コスとは違うのだよと。

 ロリィタがコスプレという時、かなりの蔑称を帯びる。


 レイヤーの方ではほぼ気にしてない用だがね。

 コスするキャラがロリィタのこともあるだろうし。


 

 まったく個人的な印象だけど、ロリィタってなんか楽しそうじゃないなあ。

 着る人に無理を要求しすぎてるせいで、妙に寒々とした印象がある。

 ロリィタブランドは若い人をターゲットにしているのも納得だ。服が要求する無理を全てクリアできる訳がないので、そこは若さというか生命力で押しきるしかない。

 ちょっと年を取ったら、もうほころびをごまかせなくなるので、そこで終わりって訳だ。

 

 

 あのさあ、日常にいらん祝祭を持ち込んだせいで祝祭が呪いになってないかい?

 毎日お祭りやろうとしたら当然仕事はできないから、ひたすら蓄えを食い潰していくしかない。

 そこら辺が寒々とした印象を受ける原因だろうな。


 もうファッションじゃない、これはイベントの時だけの服! と割りきってしまえば変な無理もなくなってずいぶん楽になるだろうに。

 着るのはライブ行く時だけって人もいるようだし。


 ああ、わかった!

 ロリィタって自覚のないパンクなんだ。

 可愛さに自分たちも目が眩んで、自分たちがかなりアナーキーなパンクであることに気づいてないんだ。


 ああゆう可愛さってパンクとかなり遠いとこにあるもんな。

 気づかないのも無理はない。


 そういうことなのな。

 すげえ納得した。



 

 

 

 

 

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― 新着の感想 ―
[良い点] ロリータがパンク! wikiでパンクを調べると 言い得て妙だと感じました(o゜▽゜) [一言] ある意味で”生き様”ですね! ロリータファッション女子の漫画を読んでも やはり”覚悟”があ…
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