7.私の部屋
2階の角部屋が私の部屋だ。晴れた日は、窓の向こうにぼんやりと海が見える。私が生まれ育ったのは漁港のある、海辺の町なのだ。北側の窓には海が、そして西側の窓からはこんもりと茂った雑木林が見える。思い出すだけで懐かしさに胸が苦しくなった。
もう何年も入っていない、その扉を開けて、――私は絶句した。
部屋には足の踏み場がなかったのだ。
床の至るところに紙切れや本やアクセサリーや服、子どものころのおもちゃまでもが散らかっている。服は脱いだものなのか洗濯済みのものなのかわからない。特に多いのが本や中学時代の教科書、そしてプリント類と思われるものだ。
机の上にも一切のスペースがない。箪笥や本棚もだ。面という面はすべてもので埋まっている。
無事なのはベッドだけ。とはいえ、寝る場所のほとんどを占めているのはぬいぐるみたち。
作り付けのクローゼットに目をやる。たぶん、あれも開けたら雪崩が起きる。
今は生活感のない部屋で暮らしているので、すっかり失念していた。実家にいた頃の私は片づけられない女だったのだ。今でこそ、テレビに出たりしているものの――。
私は自分自身に呆れて、ため息をついた。でも、同時にむくむくと湧き上がってくるのはやりがいだった。この状態からどこまで綺麗になるだろう。そう考えるとわくわくした。
そのとき、下の方から「おねえちゃん!」と怒鳴り声がした。グラタンができたのだろう。こうして部屋にこもったまま、絢に呼ばれることがよくあったと懐かしくなった。
制服の置き場所に困ったが、とりあえず脱いで、皺にならないように広げてベッドに置き、妹と同じマゼンタピンクのジャージを取り出して、下に降りることにしたのだった。