表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
帰りたかった未来  作者: 三條 凛花
本編
4/27

3.楓

 引いてくれない進藤に困っているときに助け舟を出してくれたのは、幼なじみの藤ヶ谷楓(ふじがやかえで)だった。幼稚園からの腐れ縁だ。背が低くて色白で、小動物っぽい可愛らしさのある少年だ。――高校を卒業してから、一度も会っていないけれど、私にとっては気のおけない男友だちだった。




「楓、ありがとう」


 20分ほど歩いたところで公園があったので休憩した。メンタルは徒歩に慣れていても、身体がついていかなかった。そういえばこの頃の私は偏食で、お菓子が大好きで、運動が大嫌いだったのだ。すっかり忘れていた。

 自販機で飲みものを買い、ベンチに腰掛ける。少しずつあたりが暗くなりはじめていた。


「別にいいよ。てかさ、あいつ、なんだったの?」


 楓は怪訝な顔をして訊く。


「同じクラスの人。――告られた」


「はあ!?」


 楓は飲んでいたコーラを吹き出しそうになってむせた。


「いくらなんでも早すぎだろう。昨日の今日だぞ」


「――本当にね」


 冷静に考えればわかることだ。15歳の私の頭がお花畑だっただけで。私は温かいほうじ茶で喉を潤した。

 それから制服のポケットをまさぐり、携帯を取り出して、今更ながらスマートフォンじゃないことに驚いて取り落しそうになる。パカパカ開く携帯。調べものには向かない。いろんなキャラクターのストラップがごてごてとぶらさがっている。ピンク色にランプが点滅していて、メールが届いている。進藤からだ。

 うんざりしてパタンと携帯を折りたたみ、じゃらじゃらしたストラップは外してスクールバッグに仕舞い、すっきりとしたガラケーをポケットにしまい込んだ。


「織田さ、――なんか、感じ変わった?」


 楓が訊く。今度は私がむせそうになる番だった。まずい、若々しさがなかっただろうか。


「普段、自販機でお茶とか買わないじゃん。絶対甘い飲みものだっただろ」


 20代のときに美容と健康を研究することにハマり、飲みものは基本的に水かお茶しか飲まなくなった。それもできるならば温かいものだ。身体は冷やさない。甘いものも摂り過ぎない。


「それに少女漫画好きの織田だったら、ああいう顔のいいやつに告られたらふらっと付き合いそうだけど」


 楓がく、く、と笑う。的を得た推測に苦笑するしかなかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ