24.戦いの朝
いつものように早朝に目を覚ました。ついに今日から学校が始まる。気が重かった。――高校時代には、あまりいい思い出がない。いじめられたわけでもなければ、友だちもいた。でも、ずいぶん面倒な環境だったように思う。
だからこその武器だ。
ベッドから起き出して、窓を開ける。大きく深呼吸をする。
毎週月曜日を寝具の交換日にしようと思うので、枕カバーやシーツ、布団カバーなどをすべて外して軽くたたみ、洗面所へ運ぶ。そのまま洗濯を回してしまい、顔を洗い、ついでに白湯をもらってきて、昨夜出しておいた、替えの寝具に付け替えた。
勉強机にコスメを並べていく。昨日のようなフルメイクはしない。肌もくちびるもしっかりと保湿。その間に丁寧にブラッシングして髪を軽く巻いておく。不思議なことに、巻き髪は前の時間軸でも挑戦していたけれど、祖父母にも先生にも咎められなかったのだ。私の骨格だと、すとんと落ちるストレートヘアよりも、ふわっと輪郭を覆ってくれるやわらかい巻き髪のほうが似合う。
日焼け止めと化粧下地、パウダーをちょっとはたいて、眉毛をなるべく自然に見えるように描き、アイラインを入れる程度にとどめておく。まつ毛は軽くカールさせて、透明マスカラだけつけておいた。前の自分が「薄すぎる!」と叫んでいるけれど、そこそこ厳しい学校だし、祖父母や母に気づかれない程度にやるためにはこれが限度だろう。
制服に袖を通し、バッグの中身を改めて確認し、階下へ向かった。
「もう準備が終わったの?」
ここ2日と同じ反応が返ってきた。私はこくりと頷く。母は一応予想していたようで、すでに朝食ができていた。白ごはんに納豆、塩ゆでした枝豆、焼き鮭に、厚焼き玉子、豆腐とわかめの味噌汁。なつかしい、平日の朝ごはんだ。
ニュースにたまに目をやりながら、もくもくと食べる。なつかしい。素朴でおいしい、母の味だった。
自転車で行くならば7時半には家を出たほうが良さそうだ。食べ終えると7時ちょうどだったので、一旦洗面所に向かい、寝具一式を干して、歯磨きをしてから下に戻った。
「はい、お弁当」
そういって母がキルトでできたお弁当包みを手渡した。――そういえば、高校のころはお弁当だった。学食もあったんだけど、一度も行ったことがなかったっけ。
息子の幼稚園は給食がメインで、週に1度お弁当の日がある。それだけでも大変だと思っていたけれど、母は中学から高校まで6年間、毎日こうしてお弁当を作ってくれていたのだと思うと、頭が上がらない。思いがけず目がうるみそうなのを隠して、私は家を出た。
自転車に乗って、1時間。最初の一歩を踏み出す。