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隣の一九さん

作者: みーたんと忍者タナカーズ


私のお隣さんが


ハゲていることは誰もが知っていた。


なのにいつも髪を持ち上げて


ハゲを隠していた。


その涙ぐましい努力の甲斐もなく、


みんなから一九さんと呼ばれていた。


特に子供は残酷で、


お隣さんに「やい、ハゲ」と


罵声を浴びせていた。


だから一九さんが呪いの言葉を


自らの血で書き残し、


学校の教室で首をつり、


死んだ時には、


誰もが一九さんに呪われると、


恐れおののいた。


数日後、ある少年が


丸坊主で学校に現れた。


髪をいきなり掴まれ、


髪を引き千切られたというのだ。


その姿はまるで


河童そのものだったという。


お化けの正体は


誰もが見慣れた一九さんだった。


それから毎日のように


一九さんは生前に一九さんを馬鹿にした


小学生の前に現れては、


髪の毛を引き千切っては


逃げていくようになった。


丸坊主にしてもてっぺんが


ツルッパゲなため、


それを隠そうと髪を剃る子も現れた。


帽子をかぶって登校する子が増え、


女の子は学校に来なくなった。


このままではうちの生徒は


みんな坊主にされてしまう。


そう思った先生は


祈祷師にお祓いをしてもらおうと考えた。


ところがその先生たちまでも


坊主になって現れた。


一刻を争う事態である。


女の先生はもう学校なんか


行きたくないと言い始めた。







私はお隣さんとは数少ないお友達だった。


ハゲてることは知ってたが、


そのことを問いただしたことはない。


女の先生はもう学校なんか


行きたくないと言い始めた。







私はお隣さんとは数少ないお友達だった。


ハゲてることは知ってたが、


そのことを問いただしたことはない。


ところがついに一九さんに


会うことができた。


それはまさに一九さんが


女の先生の髪の毛を引き千切り、


「やーい、ハゲ」と


罵倒してるところだった。


女の先生は泣きじゃくり、


私を見ては、


再度悲鳴を上げ、気絶した。


私は一九さんに飛び掛った。


もちろん幽霊なのだ。


飛びかかれるわけもない。


ただ、私が飛びついた瞬間


かつらが落ちたのを見て、


一九さんは動きを止めた。


「やあ、ひさしぶり」


そう声をかけると、


一九さんは私を思い出したようだった。


「君はもうお化けなんだから、


1.9分けじゃおかしいよ」


私がそういうと、


一九さんは首をひねった。


「落ち武者だって、髪はたらしてるだろう。


君ももう立派なお化けなんだから、


髪はたらしたほうが似合うよ」


そう言った。


すると、一九さんはニコリと笑って、


持ち上げていた髪を下ろして、


落ち武者のような髪型になった。


その日以来


となりの一九さんは現れなくなった。


そして私もハゲと


馬鹿にされることがなくなった。


誰もがハゲと馬鹿にすると


呪われると思ったからだろう。


こうして一九さんは成仏した。


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