拾い物
「桜さん、そろそろ寝ない?」
「咲玖さんが寝てから寝る。」
「そか。
じゃあ、僕はソファ使うから桜さんは僕の部屋でベッド使って。」
「え?
いや、ベッドはいい。
部屋に鍵付いてる?」
「ホテルでもなんでもない個人宅だからあるわけないよ。
怪我してるんだからベッドでゆっくりしたらいいと思ったけど、嫌ならいいや。
僕が部屋行くから、桜さんはここのソファで寝て。
はい、毛布。」
「ありがとう。
あの…、咲さんは咲玖に似てるよ。
初めて見た時に思ったから。」
「あの警戒の仕方見てたら信じられないけど、ありがとうね。」
「だって。
咲はお話の中でどんな人か知ってるけど、咲玖さんは知らない人だから。」
「そうだね。
それくらいが丁度いいよ。
僕なんて、桜さんを強引に誘拐した変態だからさ。」
「そんなこと……。」
「思ってる、でしょ?」
「違う!違う!
男の人に付いてくの良くないだけ!」
「ハイハイ。良くないね。
桜さんが素直に病院に行ってれば僕もこんなことしなかったよ。
そうだ!
スマホ、明日買いに行こう。」
「え?」
「親に見つかりたくないんでしょ?」
「うん。」
「スマホって、携帯会社が探してくれるサービスあるんだよ。
それでおおよその位置が特定できるから電源切っておかないといけない。
親がそのサービスに気づいたらまずいよね?」
「うん。」
「身分証ある?」
「家出る時に市役所寄って取った住民票なら。
予備2枚あるから、合計3枚あるよ。」
「オッケー。
駄目だったら僕の名義で作ろう。」
「え?
いや…、でも。」
「スマホは連絡手段として重要だからさ。
作るよ!いいね?」
「ぁ……。でも。」
「いいから。
そういえば桜さん、僕より年上ってことだけど何歳?」
「19」
「じゃあ、20歳になるまでだね。
僕のマンション、オートロックだし身を隠せばいいよ。
契約してるからアニメも見れるしゲームもあるよ。
なにかのきっかけでバレるとよくないから20歳まで働くのやめときなよ。」
「引きこもり?」
「そこまではしなくていいけど、外歩く時はマスクして帽子被って歩くといいと思う。
それから服装でバレないように今持ってるのとは系統の違う服買った方がいいかも。」
「うん。」
「お金は、今日あげた100万円からでいい?」
「え?
受け取れない。」
「怖いの?」
「……。」
「僕、そんなに怖いかなぁ?
まだ16歳の高校生なのに。
背は高いけど子供だよ。」
「……。」
「きっとそういうやつが一番危ないって思ってるよね。
僕もどうやったら、この状況を打開できるのかわからない。」
「……。」
「じゃあさ、どうしたらいい?」
「兎に角お金は受け取れないです!
お金で上下関係できるの嫌だし…。」
「そうすると身が危険だし、だよね!」
「そこまでは!!」
「僕に付き合ったキャバ嬢の対価としても受け取れない?」
「うん。」
「じゃあ、いいや。
君がここに住む約束してくれたからそれで手を打とう。
どっちにしても生活費は僕が出すつもりだし。」
「あ!!!!!!」
「え?
気づかなかった?」
「やっぱり出て行く!」
「外は危険だよ。
また昼間みたいなレイパーに遭遇するかもしれないし、警察に見つかれば連れ戻される危険もある。
僕の家に居ても襲われる心配があるんだよね。
どうする?」
「ぇ……。」
「こ…、ここに居る。」