100万円分の価値
「あ…、あり…、がとう。」
「うん、じゃあ僕はネカフェにでも泊まるから君はこの部屋でゆっくしてて。」
「あ、サクラ姫。」
「知ってるの?
SAKURA面白いよね。」
「うん。
サクラ姫、好き。」
「本当?
じゃあ、いいもの見せてあげるよ。
付いてきて。」
「わぁー。
サクラ姫、いっぱい。
フィギュアも。」
「ちょっと待って。
これ発売されたやつ全部?」
「うん。
わかるの?」
「わかる。
桜も欲しかったんだけど、お父さんとお母さんに壊されるから可哀想で買えなかったの。」
「壊す?」
「うん。
桜のお父さんとお母さんアニメが嫌いで、小さい頃からアニメのグッズひとつも買って貰ったことなくて。
テレビ見てても怒って消されるの。」
「DVD全巻あるよ。
それから漫画も。」
「桜も漫画だったら、全巻持ってる。」
「捨てられないの?」
「うん。書籍はかろうじて。
グッズもお小遣いで買ったやつ少しだけ。
捨てなさいとは言われるけど。」
「見ていいよ。」
「あ…、ありがとう。
でも接客は?」
「いや、いい。
君を手当する為の口実だから。」
「え?
じゃ、桜が出て行く。
ネカフェは桜が泊まるから。
お金も要らない。」
「怪我人をネカフェに泊まらせないよ。」
「だめ!
もう手当終わったからいいよね?」
「無理!
桜さんを始めて見た時、テレビの中のサクラ姫に似てるって思ったんだ。
好きなキャラにそんなことさせられないって、気持ちわかる?」
「わか…、るけど。
桜はサクラ姫じゃない!!」
「そうだけど、初めて会った理想の女の子だから。」
「桜、顔キモいし性格ブスだよ。」
「なにそれ?
ご両親やクラスメイトから言われたの?
桜さんは陰キャだし、警戒心強いとは思ったけど性格ブスだなんて思わないよ。
それに顔はサクラ姫ごと馬鹿にしてるようなものだからそういうこと言うのやめてよ。」
「違っ!」
「桜さんもサクラ姫に似てるって思わない?」
「サクラ姫には、すっごく共感することいっぱいだけど…。」
「アニメから出てきたみたい。」
「あのさ…、桜さんに触れてみてもいい?」
「……ぅ。」
「違っ!!!
サクラ姫みたいだから、フィギュアに触れるみたいにちょっとだけ触ってみたかったの。
でもいいや。
桜さんはフィギュアと違って生きてるから。
触るとセクハラになるもんね。」
「…、ぁ。
握手だけ…。」
「これで100万円分の価値!」
「じゃ、そろそろ行くね。」
「ぁ…、い、かないで。」
「いやでも。」
「桜がここに泊まって、咲玖さんが出ていくと、凄く居ずらい…。
申し訳無くなる。」
「でもさ…、そりゃ何もしないけど。
僕がここに居ても桜さん、挙動不審でガードしてゆっくり出来ないじゃん。」
「でも、ここ咲玖さんのお家だから。」