アーク11
「他国との交流会、ですか」
アークは手の中の紙片へ視線を落とした。所属する隊の隊長補佐殿から渡されたのは、来月行われる交流会の警護の任務。自国の学生と他国の留学生で、昼食会を開き交流を図るというのだ。勿論、ただの学生等ではなく、それぞれ国の優秀な人材を集めた学院の生徒たちだ。我が国ではプラタナス学院の生徒が参加する。
そういえば、ラタムが城で開かれるパーティーに強制参加させられると、先月の手紙で愚痴っていたな。生徒会のメンバーで後輩想いのあいつは、自分だけ逃げる事も出来ないだろう。
「ああ、子どもの御守りは大変だろうが賞与は弾むから、頑張ってくれ」
世間知らずのお坊ちゃん達を警護するのか、羽目を外さないように見張るのか、どちらが本当の任務なのか分からないなと思いながら、アークは一礼して退出した。
「ええぇっ、お貴族様のお偉いおぼっちゃん達に、この幻影の魔道具を貸し出すんですかぁ?」
バックヤードで在庫整理をしているデボラの耳に、ヘラの嫌そうな声が届いた。整理を終えて戻ると、不機嫌そうにぶつぶつと呟いている。
「っはぁ~、ったく、おぼっちゃん達はイイ気なもんね。この幻影の魔道具一個いくらすると思ってんンのかしら。大体、たかがパーティなんかでお遊びに使っていいものじゃないっての。今では失われたと言われる昔の大魔法士様が作ったのよ。それを他国のボンボンが来るからってカッコつけちゃってさ。もし壊されでもしたらどうすんのよ」
一枚の申請書に呪詛を吐く如く恨み節を続けるヘラ。麻手袋を外しながら、デボラも覗き込んだ。
「あ、プラタナス学院の交流会ですね。そういえば、去年も華々しくやっていましたから、一応他国の有力者の子息が参加する行事ですし、外交的な意味合いもあるのかもしれませんね。国力を見せつけるのは、外交手段の一つです」
スラスラ語るデボラに、ヘラは目を丸くした。
「あんた、何やらせてもドン臭い割に、変な事詳しいのね。ま、そういう事なら、このヘレニーア様が整備した、最っ高の状態でド派手な演出かましてやるわよ!」
なんだかんだと、自慢の魔道具を披露する事は楽しいヘラなのだった。




