第2話 入社式
基本的に2日に1度更新でいこうかと思います。気分が乗れば1日ごとに。今回は気分が乗ってます。
「え~、本日はこのような入社式を挙行できましたことを、誠に嬉しく思っております」
そんな言葉から始まったのは、俺がこれから入る会社の入社式だ。地元の中学を出て工業系の高校へ進み、家庭の事情もあってそのまま就職したのがこの建設系の企業。小さめの会社だが、かなり大きな仕事に関わっているらしい。
つい最近建設されたばかりの、古風な、しかしかなり大きな教会で式をしている。もっと他の場所はなかったのかと問いただしたいところだが、こんなものを建設してるよというのを実際に見てもらいたいとのことだ。
長々しい学校の校長を彷彿とさせる社長の言葉の後に、一人ひとり呼ばれ主祭壇の前に出る。十字架のステンドグラスの下、女神像の足元で簡単な自己紹介をする。
「末富龍治です。皆さん、よろしくお願いします」
人数の関係もあって、やや小さめな拍手が起こる。周りは18歳の自分と違い、大卒からの新卒しかいない。これからどう付き合っていこうかと不安に思うところがないわけではない。なるようになれだ。
その後は、話がほとんどではあったが1時間ほどで終わり、少しの自由時間が与えられた。食事も出たので軽くトイレに行った後堪能し、することもないので教会を見て回ることにした。
今は中々見ないパイプオルガンに、馬鹿でかい十字架のステンドグラス。その上女神像とくれば、ここだけ西洋に飛ばされたかのような錯覚を覚えてしまう。椅子も木製で、先ほど行ったトイレも含めて近代的なものは見る限りほとんどない。まあ、地震大国の日本のことだから、耐震に関するところは違うだろうが。
今時こんな建物の需要があるのかとも思うが、仕事に選んでしまった以上は仕方がない。頼まれたら作る、それだけだ。
合計して3時間弱ほどの入社式を終え、教会から出て送迎用のバスへ乗り込む。ところが、他のみんなが持っているものを忘れていることに気づいた。
「すみません、ちょっと忘れ物を……」
「急がなくても大丈夫ですよ」
社長から優しい言葉をいただき、教会の中へ戻る。食事の前に行ったトイレに鞄を忘れてしまった。普段ああいう手提げのものは使わないから、すっかり意識から抜けてしまっていたようだ。社会人になったのだから、気を付けなくては。
ともかく、鞄は手元に戻ってきた。後はバスに戻るだけだ。
広大な教会を抜け、再び大きな扉まで戻ってきた。古臭い金具に手をかけ、外側へ開く――が、そこに広がっていたのは。
「……どこだよ、ここ」