プロローグ 〜ある童話の前章〜
むかしむかし
あるところに、一人の心優しい青年が住んでおりました。
青年は人々に愛される物語を書く作家になることを夢見て、毎日物語を書いて過ごしていていました。
男の子が好きそうな冒険物語、女の子が好きそうなとある国のお姫様の物語など、青年はたくさんの物語を毎日毎日書きました。
しかし、いくら物語を書いても、
誰も青年の書いた物語を読もうとはしませんでした。
なぜなら、青年がいる世界は、異世界からやってきた勇者達の活躍によって、世界は平和になり種族や階級による差別が完全になくなっただけではなく、その勇者達の異世界の知識によって文明が大きく発達しようとしていたのです。それ故に、人々の興味は主に勇者達が広めた異世界の娯楽や食べ物、そして勇者達の活動を記した書物に向かれていました。
つまり、青年の書いた物語は「時代遅れでつまらない物語」、「平和になる前に起きていた事件や差別を彷彿とさせる非常に不愉快な物語だ」と罵倒され、多くの人に見放されていたのです。
青年は悲しみました、
自分はただ自分が書いた物語を人々に読んで欲しいだけなのにと。
青年は毎晩毎晩、物語を書き続けました。
いつか自分の物語がみんなに認められることを信じて書き続けました。
自分が書いている物語の主人公のように、たとえ、今は辛く苦しくても自分の気持ちに正直に行動し、努力を重ねていくことで、努力は実り、自分は報われると信じていたからです。
しかし、残念なことに
誰も青年の書いた物語を認めようとも読もうともしませんでした。
それでも青年は物語を書き続けました。
たとえ、自分の書いた物語に対する罵倒を浴びせられても書き続けました。
そしてついにお金が底を着いてしまい、青年は物語を書くことすらできなくなってしまいました。
青年は悲しみました。それは自分の本が皆に認められなかったからではなく、
自分が信じていたことに裏切られてしまったから……………………。
努力しても、努力しても誰も認めてくれない、自分の気持ちに正直に行動しても、何も得られない。
「努力をすること」、「正直になること」これらはこの世にとって、人間にとって大事なもののはずなのに........................現実は? 結果は? そして今の自分は?
人として幸せか? 満足か? 何か間違えたことをしたか? 自分が悪いのか? どうして悪いんだ? 誰が悪いんだ? 自分を認めてくれなかった人か? 誰に聞けばいい? 誰を攻めればいい? 誰も悪くないのに?
自分モ悪くないのに?
この世界がおかしいのか?
自分の方がオかしイかもしれなイのに?
こうなったのも自分が悪いからなのか?
自分はたダ、物語ヲ書イていタだけナノに?
そうだ、物語を、人々に愛される物語を書くこと、それが僕の夢だ。
ユメをカナエようとスるコトはワルイコト?
「違う」
「ジャア、オマエハワルクナイ、ナニモマチガッテイナイ、ワルイノハ...............................................................................................................」
お話はとりあえずここまで。
物語において、童話において、昔話において
何もかもがうまくいかない人、絶望している人、助けを求める人、何かを失敗してしまった人、そして正直で優しくて、勇敢な心をもつ人の前には、必ずその人のこれからを変える、「何か」が現れる。
それは、主人公を冒険へと導いてくれる妖精かもしれないし、主人公に助けを求めてやってきた、何処かの国のお姫様かもしれない。この二つのどちらかが現れたら、その主人公は、どんな辛いことが起きようとも必ずどんな形であれ幸せを手にすることだろう。
ああ、もし青年の目の前に妖精が現れたら、お姫様が現れたら、どうなっていただろうか。
青年の自問自答に、突如入り込んできたソレは、「真っ黒」で覆われており、大きな口からはギラギラとした牙が覗かせており、大きな手足に、長い腕、そして背中からはコウモリのように、カラスのように「真っ黒」で、刺々しく、それでいて全てを包み込みそうな翼が生えていた。
そう、ソレは人々を誘い、悪の道に墜とそうとする「悪魔」のような姿をしていた。
この「悪魔」と「青年」の出会いが青年のこれからを変えるのはもちろん、後に、歴史を変え、人のあり方も変え、そして、世界全体に大きな変革をもたらすのだが...................。
この時の青年はもちろん、この悪魔でさえも、そうなってしまうとは、思いもしなかった。
初めての投稿です。
アイディアが尽きるまで書き続けたいと思います。
よろしくお願いします。