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(改題)黒塚:she is ONI-BBA  作者: 大原英一
最終話「黒塚」#2 鬼哭啾々
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その9

 大草原の真ん中で小太りのおばさんと、ふたりきり。こんなシュールな状況があっていいのだろうか。

「オレをおぼえていませんか、坂本さん。先日お祓いをしてもらった蛍田ですが」

「……お祓い、ですって? 何のことですか」

 思わずオレは目を閉じる。うっわ、マジか……。


 覚悟はしていた。この坂本さんが、あの坂本さんじゃないという可能性。

 オガにしたって、信じたくはないが、オレの脳内に送られたダミープログラムだったのだ。

 この坂本さんだってダミーかもしれない。

 いや、先日のあの坂本さんがダミーで、いま目のまえにいるこの坂本さんは天然ものかもしれない。

 (ぶり)みたいに言いましたけど、はい。


「あなたがオレをおぼえていないなら、それは記憶障害です。ここまでどうやって、きたかも、おぼえてないんじゃないですか?」

 図星を突かれたらしく、彼女は無言のままワナワナと震えていた。かわいそうだったがある意味、しょうがない。


 現時点でオレは坂本さんより優位に立っている。彼女より多くの情報を持っているからだ。

 が、そう思っているのはオレだけで、じつは坂本さんは敵のスパイかもしれない。わざと無知を装っているかもしれないのだ。

 とにかく、用心するに越したことはない。手の内をあまり見せず、情報は小出し小出しでいく。


「ああっ……なんで、どうして、こんなところに」

 坂本さんはいまにも崩れそうなかんじだった。

「おぼえていることを、とりあえずオレに話してくれませんか。オレもなにか情報を差し上げることが、できるかもしれません」

 すると彼女はオレの顔をじっと見た。値踏みしているようだった。意外と用心深いんですね、ま、お互いさまか。


「……趣味で、インターネットのあるサイトを見ていました。家で、家事をしながらです。そしたらいきなり意識がとんで、気がついたらここにいました」

 ゆっくりと彼女は話しだした。どうやらオレは信用してもらえたらしい。

「そのサイトって、『小説家になろう』ですか」

「そ、そうよ。なんで、しっているんですか……」

 オレはその問いには答えず、つづけた。

「なろうに、ヘンなサイトへのリンクが出ていませんでしたか。『鬼婆になろう』とかいうサイトです」


 坂本さんは口元をおさえ、大きく目を見開いた。どうやら図星だったようだ。

「……ええ、そうよ。そのリンクをクリックした瞬間に意識がとんで」

 えらく手っ取り早いなとオレは思った。

 あきらかにオレの場合ケースとちがった。オレはリンク先まで行けたし、そこでオフ会の告知を目にしたのだ。


 いま思えば、オフ会は黒塚さんたちによる救済措置だったような気がする。

 かりにネットのなかに鬼婆が棲んでいて、そいつが獲物を物色しているとすれば、クリック1発で捕獲できるのが理想的だ。

 そう、まさにいま坂本さんが語ったように。

 すると彼女は鬼婆の標的ターゲットなのか。いや、オレもだよ。むしろターゲット歴ではオレのほうが先輩だよ。

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