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(改題)黒塚:she is ONI-BBA  作者: 大原英一
最終話「黒塚」#1 安達ヶ原
22/41

その11

 呪われたPC、て。こいつ完全に言ってることおかしい……て、ふつうだったら思うだろう。

 だがそのときのオレは、なんかスゥッと飲み込めてしまった。そうなのだ、今回の一連の出来事は単なる嫌がらせの域を超えている。

 店の大将にもつ煮を注文すると、オレはオガに向き直った。

「新しいね」

 皮肉を込めてそう言ってやった。


「もしよかったら、おはらいしてくれる人を紹介するよ?」

 オガはいつもどおりの表情でしれっと言った。

「……なに、おまえ、そんな紹介業みたいなこと、はじめたの?」

「ボクはお金なんて取らないよ」

「その、お祓い業者は金を取るってことか」

「興味ある?」

「……ある」


 よくわからない流れだったが、けっきょくお祓い業者にきてもらうことにした。というのも、料金が5千円(交通費別)とリーズナブルだったからだ。

 まあオガになにもなしというのはアレなんで、あの「ひじ」での勘定はオレが持った。これでヤツもいいかげんな紹介はできなくなる。

 もともとオガはいいかげんなことをする男ではない。そこは安心してよいのだが、逆にどんなガチな業者がくるのか、楽しみなような怖いような……。

 こんなことに金と時間を使うなんてバカバカしい、と自分でも思う。けど気休め程度にはなるだろう。

 値段もリーズナブルだし。そこ重要。


 オガもぜひ立ち会いたいというので、彼にもオレの部屋にきてもらうことになった。オレとしてもそのほうが安心だ。お祓い業者さんがトンデモなかただったら、手に負えないからだ。

 オガとオレとでスケジュールをすり合わせたうえで業者さんに予約を入れた。こう言っちゃ失礼だが、その業者さん、意外と忙しい身であるらしい。

 1週間後の平日の昼間に、オレの部屋でお祓いが行なわれることになった。それまで自宅のPCにはいっさい触れなかった。

 スマホはふつうに使っていたが、なろうにはログインしなかった。これもお祓いが済むまでの辛抱である。



 当日。オレが住むアパートの最寄り駅でオガと業者さんが待ち合わせし、そこからタクシーで彼らはここまでやってきた。

 交通費はぜんぶオレ持ちだが、タクシーの距離はたいしたことない。

 部屋のチャイムが鳴りオレはドアを開けた。オガに連れられて入ってきたのは、人のよさそうな、柔和なかんじの小太りのおばさんだった。

「はじめまして、坂本サカエと申します」


祈祷きとう研究家 坂本サカエ】


 彼女が渡してくれた名刺にはそう書かれてあった。

 また名刺だ。今月だけで何枚もらうんだよ。まあ坂本さんにいたってはビジネスだから、しゃーないけども。

 それにしても、また研究家だ。オレは黒塚さんの鬼婆研究家を思い出した。祈祷師、じゃダメなんだろうか。そこまでの資格免許はないということか。

「蛍田です。今日はよろしくお願いします」

 最初の挨拶をするまでに、オレは光速でそんなことを考えていた。


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