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(改題)黒塚:she is ONI-BBA  作者: 大原英一
最終話「黒塚」#1 安達ヶ原
21/41

その10

 着信音で一瞬ビクッとした。まさか黒塚さん的な人から、かかってきたのかと思った。

 オレは彼女に電話番号を教えていない。それなのにかかってきたら、ハッキング確定だ。いやストーキングの線もある。

 スマホに表示された名前を見て安心した。友人からだった。

「もしもし」

「あ、けいちゃん。いま電話、大丈夫?」

 オレを蛍ちゃんと呼ぶのは友人のオガだ。たしかに蛍田ほとだって、ちょっと呼びづらいかもしれない。まあ下の名が桂樹だから、どっちに転んでも桂ちゃんなんだが。


 尾上也茂おがみや しげる、通称オガ。

 字面は地味だがなかなかド派手な名前だ。あまり名前のことは触れないようにしよう。オレも似たようなものだし。

 オガは前の現場で同僚だった男で、たしか2つくらい年下だったか。どちらもアラフォーのおっさんですよ。

 前の現場を彼が先に辞め、そのあとオレが辞めた。が、なぜかいまでも関係がつづいている。関係て……フレディ・マーキュリー的なそれじゃないよ?

 ようは飲み友だちだ。


 電話の用件は、なんのことはない、飲みのお誘いだった。

 オレはふたつ返事でOKした。この、やりきれない心の叫びを誰かに聞いてほしくて仕方なかったのだ。

 場所はいつもの「ひじ」。地元の小料理屋だ。

 桜は散ったがまだちょっと肌寒いなか、オレはウィンドブレーカを着て外出した。



「やあ蛍ちゃん、ひさしぶりだね」

「そうか? 毎月ここで飲んでいる気がするけど」

「ふた月ぶりだよ」

「そうか……とりあえず、おつかれ」

 瓶のラガーで乾杯した。ん、うまい!

「それよかオガ、聞いてくれよ」

 オレが切り出すと、彼は眠そうなタレ目をしばたかせた。毎回思うがこいつはガチ○ピンに似ている。


 先日のオフ会のことをオガに話した。彼は聞きながら、厚揚げを箸でくずして口に運んでいた。

「厚揚げはしょうが醤油にかぎるな」

 言ってオレも料理を口にした。オフ会関連の出来事について、べつにオガに意見をもとめたわけじゃない。ただ誰かに聞いてほしかった。

 それで気持ちがラクになることもある。


「そりゃまた興味深い話だね」

 と彼は言った。あいかわらず目は死んでいるけど。

「なんだよ、おまえも鬼婆大好き人間か」

「ボクがオカルト好きなの、きみもしっているだろう」

 そうなのだ。この友人はオカルトや狐狸妖怪の類いが大好きで、そのテの話にくわしい。だからこそ彼に持ちかけたというのも、ある。


「まあ、あれだ。鬼婆はさておきハッキングだよ。まさかオレが狙われるとは思わなかった」

「どうだろうね」

「……え、どういうこと」

 ビールのグラスを持ったまま、オレは固まってしまった。

「呪われてるかも、しれないね」

「え、オレが?」


 するとオガは若干首をかしげた。

「いや、PCが」

「PCて。おまえ、それ本気で言ってんのか」

 彼はさらに厚揚げを口に運んだ。ヘンな間がもどかしい。

「最近、流行っているみたいだよ。呪われたPC」

「マジか……」

「まあオカルトだけどね」

 友人はそう言ってグラスの中身を飲み干した。

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