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(改題)黒塚:she is ONI-BBA  作者: 大原英一
最終話「黒塚」#1 安達ヶ原
19/41

その8

 ふと思いついてあるキーワードをググッたオレは、PCのまえでマウスを持ったまま目が点になった。

 そのキーワードとは「安達ヶ原」。オフ会で出会ったあやしい編集長、安達ガハラ氏から連想した単語ワードである。

 目からウロコとはまさに、このことだ。オレはあまりに無知だった。


 すべては、つながっていた。

 安達ヶ原は鬼婆伝説発祥の地だった。そこに黒塚という墓があって鬼婆が祀られている。黒塚は鬼婆それ自身も意味するらしい。

 オフ会でオレが会ったあの人たちは、ようするにガチだったのだ。……まあガチじゃなければ、ふつうあんな名刺は持たないだろうけど。


 胃の頭公園で最初に黒塚さんと会ったとき、名前のくだりで彼女が妙な視線をオレに送った意味が、ようやっとわかった。

 黒塚という単語ワードに無反応だったオレは、彼女からこう思われていたのだ。あ、こいつ素人だなと。

 本当に、いまのいままでオレは鬼婆伝説なんてしらなかった。「3枚のお札」くらいしか、しらなかったのだ。


「3枚のお札」をはじめ、昔話や民話にはよく鬼婆が登場する。

 各地にいろんな鬼婆がいるが、グーグル先生で調べたかぎり、やはりいちばんメジャーなのが安達ヶ原の黒塚らしい。

 なんたって、黒塚が鬼婆の代名詞になっているくらいだからね……



 ……だから、なんだっつーの!



 鬼婆にくわしいのが、そんなに偉いことか。だいたい、あのオフ会はなろう作家のためのものだぞ。

 同時に鬼婆愛好家(フリーク)のためのオフ会でもあったけど……。

 できれば黒塚キヌエさんを疑いたくない。だが、彼女は安達氏と裏で通じていて、オフ会を装って素人のオレを勧誘するつもりだったのでは?

 その疑念を完全に払拭する材料もまた、オレにはなかった。


 忘れてしまおう。そう思ったが、せっかく彼らからもらった名刺を捨てる勇気もないチキンなオレ、ってどうよ。

 いや、これはほら、なにか犯罪めいたことが起こったときに証拠として()っておくがいいさ。

 犯罪めいたことって……。鬼婆から想起されるイメージは、どれも酸鼻をきわめた。


『……黒塚さんはペンネームですか』

『ええ』


 そういえば黒塚は彼女のペンネームだった。

 黒塚さんはいま、なろうでバリバリ活動しているのだろうか? 気になったので、「黒塚」でユーザ検索をかけてみた。

 結果、黒塚○○という名のユーザが3名、そのまんま黒塚が2名いた。3名のなかに黒塚キヌエは存在しなかった。

 となると、2名のプレーンな黒塚のうちどちらか、ということになる。

 残念ながらその2名はどちらも読み専の方で、活動報告も上げておらず、あの黒塚さんの匂いを感じ取ることはできなかった。

 まあいいさ。すくなくとも黒塚という名のユーザは存在する。彼女はウソなんて言っていなかった。


 ついでに「安達ガハラ」でユーザ検索してみたが、そんなユーザは存在しなかった。オレは彼のペンネームをしらないので、これ以上はどうしようもない。

 それにしても、彼は本当になろうユーザなのだろうか。編集者なのに? 趣味で小説を投稿しているのか、あるいは読み専としてダイヤの原石でも発掘しようとしているのか……。


 考えたところで、わからなかった。

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