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(改題)黒塚:she is ONI-BBA  作者: 大原英一
最終話「黒塚」#1 安達ヶ原
14/41

その3

 少女。それが彼女の第一印象だった。

 お人形のようなパッツンの黒髪に白いカーディガン、だが内側に着込んでいるのは黒のワンピースのようだ。なんか外国のお葬式みたいだ。

 黒のストッキングを穿き、足元は……なんとヒールだった。(せえ)小っちゃ! ヒールの力を借りてもまだだいぶ小っちゃかった。

「27歳ですけど、なにか?」

 彼女は多少不機嫌そうに言った。


 世の中にはいろんな出会いがあり、いろんなあいさつの仕方があるだろう。けど、いきなり年齢から入るのはいかがなものか。

「さ……39歳です」

 思わずオレもつられてしまった。すると、ぷっと彼女が吹き出した。

「年齢暴露大会ですか。……オフ会の待ち合わせですか、と聞いたんです」

「あ、」

 オレは瞬時に真っ赤になる。そうか、彼女のルックスに目を奪われ第一声を聞き逃したのだ。


「ええ、まあ。貴女はその、主催者のかたですか?」

「いいえ」即答だった。

「そうですか……」

 オレは言葉を継ぐことができなかった。どうするんだよ、この状況……。胃の頭自然文化園(動物園)の入り口で、おっさんと少女にしか見えない27歳女のツーショットですよ。

「申しおくれました、私、黒塚です」

 彼女がいきなり名乗ったのでオレは慌てた。


「ほ、」

 頭が真っ白になる。夜勤明けでボーっとしているせいか、いやちがう。

 自分のペンネームを言うのがめっちゃ恥ずかしかった。いいおっさんがほっとケーキとか名乗るの、ありえないだろう。

蛍田ほとだです」

 思わず本名を言ってしまった。とりあえず、ほっとケーキはありえない。偽名を使うとかまで頭が回らんかった。是非もない。

「蛍田さんというのは、ペンネームですか」

「いや本名です。ペンネームを言うのが逆に恥ずかしくって。……黒塚さんはペンネームですか」


「ええ」

 そう言うと彼女はオレをちらと見た。

「なにか?」

「……いいえ」

 なんだそりゃ。めっちゃ気になる感じだった。まあしかし、徹頭徹尾ミステリアスな女性だなこの御仁ごじんは。

「それじゃ、お茶でも飲める場所へ移動しましょうか」

「え、ちょっ……」

 黒塚さんの提案にオレは面食らった。まったく唐突なんだよ、この人の言動すべてが!

「主催者のかたを待たないんですか?」

「来ないでしょ、きっと」

 またしても即答だった。どうしてそういい切れる。


「今日のオフ会を告知したサイトへのリンク、あれがすぐに消されていたでしょう? あの時点で私は、十中八九イタズラかなと思いました」

 オレの考えを見透かしたかのように、彼女は理由を説明した。

「そして今日、万が一でも『鬼婆』の目印が出ていたらと思ったんですが、やはりダメでした」

「あのう……目印なしで、よくオレが見つけられましたね」

「だって立ち止まっている人があなたしか、いなかったから」

 それもそうだ。ホントこの御仁には、かなわない。


「まあでも、遅れてくる方もいらっしゃるかもしれないから、いちおうメッセージだけは残しておきましょう」

 そう言って彼女は近くの公衆電話ボックスへと入って行った。


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