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京鼠刹那時蜜茶  作者:
1/3

幸路 彩

京都府京田辺市は、主の今住んでいる地域です___。

「歩きスマホ、あかんよ?」

うち、(さち)()(あや)は、おもわずスマートフォンの電源を切った。階段を降ってるときに声かけないでよ、転けそうになるやん。顔も声も存在も知らない人に、注意されることは嫌い。他人なんだから見て見ぬ振りをしてーさ。

うちは顔を上げる。うちに気づいたのか、その人はニコリと微笑んだ。

「違法なんやって」

「そ、そうなんですか……」

その人の太眉がかなり印象的だった。この人は、顔も声も存在も知らない人ではないことに、今気づいた。

そうやん、この人4組の峯下七海(みねもとななみ)や。峯下七海は、太い眉毛が特徴的な、人当たりのいい女子である。

峯下、峯下さんは、紙コップに入った唐揚げをパクリと食べた。

「じゃあね」

お得意なツインテールの先が、うちのスマートフォンに当たりそうになる。うちはただ、峯下さんの小さくなる後ろ姿を見送るしかなく、言葉なんか喉元にも出てこなかった。

うちも、唐揚げ買お。

うちは階段を上がり、屋台の唐揚げ店へと足を運んだ。

と______。

「お、彩や。唐揚げ買うん〜?」

おっとりとした、男子受けがいい声。今日はいろんな人と会う。ただの駅なのに。

「舞……」

舞こと相沢舞は、偶然やなと言わんばかりにニコリと笑った。

「うちも買うとこやった。彩って塩唐揚げでよかったやんな?」

「うん、お願い」

舞は、ポン酢かけ唐揚げと、塩唐揚げを頼む。はいと塩唐揚げを渡された。そしてうちは350円を舞に渡す。

「え〜。わざわざ返さなくてよかったんに〜」

「あ、じゃあ渡さへんわ」

「………やっぱり払ろうて」

ぽんと舞の手に350円を置く。

そして数分後。2人は駅の外にある、ベンチに腰を下ろした。

「てかな、さっきななちゃん(峯下さん)と何話してたん?」

「見てたんやな」

一つ、唐揚げを口に入れる。

「まあな。うちの目は『田辺中の千里眼』とか呼ばれとるしな」

うちは、さっきの話を舞に伝えた。

「峯下七海って4組、やんな?あんた、わからんかったん?学校でも有名やで」

「……そうなんや」

なんでうちは気づかんかったんやろう。周りに目を向けてへんからか…。もっと、周りを見よ。

そして唐揚げを一つ口に入れる。

「でも、峯下七海さ。男女問わずいい気取った笑顔しいへん(しない)し、ちょっとうち憧れとったんや」

舞の顔が、少し険しくなる。そんなに、輝いた存在なんや。

「でな、その七海の友達の、由塚早苗月もめっちゃ美形なんや」

「どんな感じ?」

「ショートカットで、ツンデレって感じのリーダーポジな女子や」

うちは、自分の髪を指でくるくると巻く。なんか哀れだ。

太陽は、こんなあたしも照らしてくれる。暖かい、両親みたいな存在。あるときは隠れて、あるときは涼しい風をふきあらす。不安定であり、暖かい存在なのだ。

「___彩?」

舞の声で我に返る。

「ごめんごめん、ぼーっとしとった」

「はぁ……。最近、彩そういうとこ多いで?大丈夫?」

「……うん、大丈夫や」

ニコリと笑ったつもりだ。でも、無理な笑になっていたのかもしれない。

すると、舞のスマートフォンがゔと唸る。

「ごめん彩。母さんから連絡来とうたらしくてな、早よ帰らなあかんわ」

「うん、ええよええよ。ちょうどうちも帰ろうかなって思うてたわ。じゃ、学校でな」

「うん。バイバイー」

手を振る。舞の姿が、だんだんと小さくなった。

うちも帰ろう。

彩は立ち上がる。太陽は、こんなうちも照らしてくれる。

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