表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/14

13『おしまい』

「……っていう推理を考えたんだけど、どうかな」


 腕にあたる温かい感触と、耳に飛び込んできた声によって俺の意識は覚醒した。どうやら眠ってしまっていたらしい。せっかく来てくれたというのに眠ってしまったというのは非常に申し訳ない話だが、恐らく俺はしっかり話を聴いていただろうから許してほしい。お陰で変な夢を見た。

「どうかなって訊いてみても、君にこの声が聞こえてるかどうか分からないから、この質問は無意味だね」

 悲しそうな声で鶴ヶ谷は言う。どんな表情をしているのかは分からない。


 俺の記憶が正しければ、今、俺の置かれている状況が夢ではないのなら、俺と鶴ヶ谷が今いる場所は病院の俺の病室だ。鶴ヶ谷の出した問題の死体となって運ばれたとかそんなアホな話ではなく、よくある自転車と車の衝突事故によって俺はここにいる。困ったことに、事故が起きたあの日から俺の体はちっとも動こうとしてくれないので、俺は今昏睡状態という扱いを受けているだろう。

「ねえ、君はいつ目を覚ますのかな?」

 悲しそうな声のまま鶴ヶ谷は言う。

「早く、目を覚ましてよ」

 目は覚めているさ。ただ動かないんだ。

「せめて、何か反応してよ」

 出来るもんならとっくにしてる。

「生きて、いるんでしょ?」

 生きてる。それは保証する。

「……なーんて、聴こえてるのかな……?」

 全部聴いてる。聴こえてる。

 余りにも一方的な俺と鶴ヶ谷のやりとり。俺と鶴ヶ谷、どちらの『声』も聞こえる第三者がこれを聞いたら、さぞかし滑稽だと思うだろう。そして、悲劇だと思うだろう。同情し、何も言えなくなるだろう。いや、もしかしたら鶴ヶ谷に俺の『声』を届けてくれるのかもしれない。優しくてお節介な人間だったらやってくれるだろう。

 なんてことを考えても、そんな都合のいいことは起こらない。あり得ないと俺は知っている。


「それじゃあ、私はそろそろ行くね」

 その言葉と同時に、腕に触れていた温もりが消えた。ガタガタと何かを動かす音が聞こえる。きっと椅子を片付けているのだろう。

 俺がさっきまで見ていた夢のように、鶴ヶ谷と二人で顔を会わせて会話をし、一方的なクイズ大会が開かれる、そんな日常はいつかまた訪れるのだろうか。もしそれが現実にならないのなら、鶴ヶ谷には悪いがずっと夢の中にいたいなと、俺はそんなことを考えてしまう。夢の中でなら、楽しそうな鶴ヶ谷の声が聞こえるし、笑っている鶴ヶ谷の顔を見ることができる。

 でも、諦めてはいけないのだろう。

「それじゃあ、また明日」

 なんて言って手を振りあえる日を俺は待ち続けよう。


 また明日。


 届かぬ声を送り続けながら。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ