008 不破刃
「んんんんんんんんんんんんーーーーー!!!!」
「「「うおおおおおおおおおおおおーーーー!!!!」」」
道場に叫び声が響き渡る。
赤、青、黄の小さな竜巻が目まぐるしく回転し、中央のひときわ大きな竜巻の周囲を旋回する。
大きな竜巻は道場の師範である不破刃。青い頭巾、上半身裸、筋肉質な巨体が熱気と騒音を放つ、すごい漢である。
そして可愛い声ながらも全力で吼えている小さな竜巻は、弟子である光の三妖精、サニーミルク、ルナチャイルド、スターサファイアの3羽であった。
人里の外れにあるこの「不破流忍術道場」では、回転の力を利用した武術を教えている。
道場での不破流の稽古は週に2回。住民の苦情によりそれ以上は開催できない。
そもそもここは道場とは名ばかりで、村民会館を間借りしているだけである。
週の2日を不破流忍術道場、2日を不破流ダンス道場として賃貸契約を結んでいる。
報酬は現物支給がほとんどであり、さほど儲かるわけではない。
が、不破流を見つめ直す場として、弟子をとり教える事は、不破本人にとっても有意義な事であると認識している。
不破流忍術は、暗殺術を礎としながらも、様々な人や自然の動きを取り入れ発展させた独自の戦闘術である。
激しい台風の如き「動」の動き、時に相手の動きに合わせる旋風のような「流」の動き、そして優しく吹き付ける微風のような「静」の動き。
不破流の体術は変幻自在の回転力によりあらゆる局面での戦闘を可能にする。
不破流の真価は体術だけではない。
大声を張り上げ、裂帛の気合で魔を払う。邪を断つ心の武術でもある。
そして何よりも、不破流の極意は、激しい動きの中で相手を「見る」事にある。
高速回転で鍛えられた動体視力により、相手の動きを盗み、視線を盗み、そして相手の動きを刈る。
不破は様々な流派の戦い方を実戦と観察を通じて学び、そして自らの流派に取り入れてきた。
常に進化を続ける武術、それが不破流忍術である。
幻想郷に流れ着き、新たなる強敵と出会い、そして様々な強さの在り方を今も学んでいるのである。
不破刃は、かつては復讐鬼であった。
同門の兄弟弟子の卑劣な罠にかかり、不覚をとり、如月流暗殺術の継承者争いに破れた。
納得が行かず、怒りと憎しみをもって暗殺術を継いだ男をつけ狙い続けた。
如月流の名を捨て、己独自の「不破流」を発展させ、一人の男を倒すためだけに全ての時間を費やしていた。
しかし、そんな日々の中で、不破は、見てしまった。
自分が打倒すべき最大の宿敵が、ひたすら鍛え上げた真っ直ぐな空手に敗れ去る所を。
嘘偽りのない、純粋な実力でもって暗殺術が凌駕される所を。
不破はそこで初めて気付く。自分がいかに狭い世界で勝利に拘っていたのかを。
世界にはまだ見ぬ強者が星の数ほど居る。
それに比べれば、たかが一流派の暗殺術の後継者争いに、何程の意味があろう?
もしあの時、ライバルとの戦いに勝ち、暗殺術の継承者に選ばれたとして、一体どれほどの物が得られていたのだろう?
最早、不破にはそれが魅力的なものだとは思えなくなってしまっていた。
不破は様々な「強さ」の形を見極め、己の力にするため、武者修行の旅に出たのであった。
世の中には様々な強者が居た。
空手。軍隊式実戦格闘術。我流マーシャルアーツ。古式骨法。ムエタイ。テコンドーの様々な発展形。忍術。古武術。柔道。シュートボクシング。スポーツ武術。中国拳法。超常の力を操るサイコパワー。悪の力を操る者。
どの者も、一流の猛者であった。
同門のライバルを破った空手の男は、その後の戦いで幾度となく見たこともない強者と戦い、そして勝ち、あるいは負けた。
世界は広い。強者達の戦いを見る度に自らの不甲斐なさが堪える。
そして戦いの場に居ない自分の身を歯痒く思う。
あの者にはどうやって勝とうか。あの技にはどう対処しようか。
いかに鍛えれば己の強さを引き出せるか。
武術を志す者として、夢は膨らむばかりである。
己を鍛え、湧きあがる心を抑え、修練に励み汗を流す日々。
そんなある日、行き倒れの男を拾った所で不破の運命は変わる。
その気さくな鎌使いは、様々な世界を旅していると言った。
男から更なる強者の話を聞き、不破は願う。もっと見たい。もっと聞きたい。そしてもっと闘いたい。
そう願った不破は、一命を賭し、鎌使いの男と共に他の世界に跳んだのだった。
異世界での更なる強者との戦い。時には勝ち、時には負け、自らの強さと弱さを実感する日々。
伝説の挑発使い。サイコパワー。腋臭使い。NINJA。SUMOU。
様々なライバル達との戦いが自分を強くする。
不破は異世界で充実した毎日を送っていた。
だが、カレー好きの邪神との戦いで不覚を取った不破は、己の回転力を遥かに上回る混沌時空の竜巻に巻き込まれてしまう。
そして気がつけば、ここ幻想郷に飛ばされていたのだった。
幻想郷でまたまた行き倒れの少女を拾った不破は、ここが妖怪だらけの世界だと知り驚愕する。
多々良小傘と名乗ったから傘お化けの少女は、不破の存在感と声の大きさに感服し、不破に弟子入りを熱心に希望した。
修羅の世界に身を置く不破は、戦場で誰かと組むことはあれど、弟子など一度も取ったことがなかった。
そのような者を傍に置くことは自らの修行の邪魔になるばかりで益はない、そう思っていた。
だが、己の矮小さを広い世界で学んだ不破は、これも巡り合わせかと感じ、小傘に不破流忍術を伝授することに決めたのであった。
小傘から幻想郷の常識を学んだ不破は、違和感に気付く。
丁度その当時、幻想郷には不破以外にも多数の人間が急激に幻想入りしてきているようだった。
そして異世界の文化、異世界の魔法、異世界の生物、異世界の土地が、元あった幻想郷の土地と融合していっている。
幻想郷の結界と幻想入りの詳しい仕組みは、新参者の不破には勿論のこと、小傘も多くは知らぬため、何がどうおかしいのかは判別が付かない。
違和感は違和感のまま放置する他なかった。
一つ言えるのは、混沌とした中でも静謐を保っていた幻想郷が、にわかに騒がしくなった。
それだけは間違いない。
山で修業の日々を送る不破は、ある日、一人の黒づくめの男を見かける。
重々しい足取りで俯いて歩く。その男の、目。
暗く、重く、憎しみと妬ましさを湛えた瞳。だが次の瞬間、男は目線で自らの目を隠す。
それを見たのはほんの一瞬だった。
それでも、不破がその男の事が妙に気にかかった。
何故かと言えば…その男から醸し出される雰囲気が、自らの過去に重なったからであった。
汚い忍者。
男はそう名乗った。
汚い忍者の目的は、復讐。
己を認めない周囲。己の立場を奪った騎士。そして奪われるままであった自分自身の弱さ。何もかもが許せない。
仲間など必要ない。絆など幻想だ。
役に立つから褒められ、役立たずだから認められない。
強いから頼られ、弱いから顧みられない。
弱い人間は役に立たない。見捨てられ、やがて忘れ去られる。
効率こそ全て。非効率こそが悪。それが世界の真理なのだ。
汚い忍者はありとあらゆる情愛に背を向け、視線を隠し、心を隠し、効率だけを友とした。
彼もまた憎しみに囚われた修羅であった。
異世界からやってきた彼は、宿敵である騎士を倒すため、様々な手段を講じた。
しかしそれも一人では限度がある。
いつの間にかこの世界でも仲間を得て、絆の力を誇示する騎士。
卑劣な手段を持ってしても、騎士を倒すことはできなかった。
汚い忍者の恨みは更に深まる。
そうした時に声を掛けたのが不破であった。助力の申し出を、彼は渋々ながらも受け入れた。
彼自身の信念である「効率」が、騎士達に助力なしで一人で挑む非効率を許さなかったのだ。
不破は確かめたかった。
復讐に意味はあるのか。それを果たした後に何が待っているのか。
全ての情愛に背を向けた男が、その先に何を見るのか。
自分自身のように、復讐より大切なものが見つかるのだろうか。
効率とは不思議なものだ。
そう不破は思う。
何かを成し遂げるには、一人では難しい。
故に、大きな事を成し遂げようと思うならば人を使うのが効率的だ。
そして人をうまく使うためには、己を知り、相手を知り、肉体的にも精神的にも効率的に運用しなければならない。
汚い忍者は騎士と効率的に戦うため、仲間を増やす。
強大な敵と戦うには、己の手足となり、武器となり、盾となる者がどうしても必要だからだ。
汚い忍者の行動原理は効率であり、常々仲間にもそう説いている。
だが、効率を付き詰めれば、忍者自身が背を向けた情愛、信頼関係や絆に触れずにはいられない。
水橋パルスィは不破と同じく、忍者の暗い感情…特に強烈な嫉妬心に魅かれてやってきた妖怪だ。
夫に裏切られ、嫉妬に狂い、人から妖怪に転じた女。
幸せを求め、他人の幸せを呪い、それ故に自らの幸せも手放した矛盾した心の妖怪。
彼女の傍に居る者は、狂う。緑の瞳に見つめられ、嫉妬に流され、やがて狂気に陥る。それが彼女の妖怪としての能力。
だが汚い忍者は狂わない。或いは、既に狂っているのかもしれない。
そんな男だからこそ、彼女は興味を持った。
他人の心に人一倍敏感な彼女は、汚い忍者の目線の奥に、何かを感じたのであろうか。
ついてきた彼女を、汚い忍者はこれ幸いと手駒として利用する。
騎士を倒すため、効率的に利用するため、己の忍術を教え込む。
触れ合う手。通わせる視線。紡ぎ合う言葉。
そんな小さな積み重ねが、いつしか信頼と絆を産む。汚い忍者は気付かない。
鍵山雛は、忍者が利用できると踏んで恩を着せた妖怪だ。
正確には妖怪ではなく、穢れを集める神、である。
彼女の周囲には穢れが集まり、その穢れは人に有害である。
人の幸せの為に作られた「流し雛」がその発祥であるが故に、人の幸せを願って止まない彼女は、自分の体質で周囲に迷惑をかけることを恐れた。
誰よりも人を愛し、それ故に誰とも近寄れない。
そんな彼女の穢れを、汚い忍者は吸った。忍術の道具の原料である靭皮紙に穢れを吸わせ、呪符とする。
靭皮紙が呪符になる過程で、彼女の集める穢れは紙に吸われるため、人に害を及ぼさなくなる。
彼女は、久しぶりに…それこそ数百年ぶりに、人間の、手に、頬に触れ、その温もりを感じ、涙したのだった。
人にようやく安心して触れられるようになった彼女は、汚い忍者を慕い、彼の力になろうとする。
汚い忍者は、彼女の感じた恩義を一方的に利用するつもりであるのだが…
人に使ってもらえる。自分が役に立つと思われる。求められている。
そんな喜びの感情が、いつしか信頼と絆を産む。汚い忍者は気付かない。
メディスン・メランコリーは、世間知らずに付け込んで忍者が唆して仲間に入れた妖怪だ。
人形が元になり、毒で命を得た、産まれて間もない妖怪。
強い力を持ちながら、その制御もできない。
人に恨みがあると言いながら、自分の心をまるで理解していない。
革命を起こすと言いながら、具体的には何もできない。
彼女はまだ子供であり、生き方を教えてくれる親や教師などは居なかったのだ。
そんな彼女を、汚い忍者は利用する。
互いに助け合おうと甘い言葉を掛け、手駒として効率的に動かすために様々なことを教える。
契約で結ばれた冷たい同盟関係。仮初めの友情。忍者は飽くまでそのつもりである。
しかし、それも長く続けば事情は変わる。
変わらない関係、それ自体がいつしか信頼と絆を産む。汚い忍者は気付かない。
汚い忍者、笠松ノブオ。
彼には、理解できないのだろう。
自分がどれだけ感謝され、周囲の者に頼りにされているか。
効率主義を唱える汚い忍者を軸に、いつの間にか芽生えた信頼。いつの間にか結ばれた絆。
彼自身が目を背け、切り捨てたつもりでいた、暖かい感情が彼女達を変えた。
いつしかそれが、汚い忍者本人をも少しずつ変えて行くのだろうか?
不破は、それを見守るのみ。
しかしそれすらも、何かを変えていくのだろう。
人に教え、人から教わる。
小傘やサニー達に不破流を教え、不破の意識はまた一段と高まった。
汚い忍者達と共に行動し、共に笑い、共に汗を流し、共に闘い、時にはぶつかり合い。
そんな日常も、全て不破の…いや、関わり合った全ての者の、糧になっている。
汚い忍者の復讐が終わるまで、この関係は続くのだろう。
いつか仮に復讐を終えたとして…
その後、彼はどうするのだろうか。彼女達はどうするのだろうか。
答えは未だ、無い。
「はああああああああああああああああ」
「「「んんんんんんんんんんんんんーーー!」」」
「うおおおおおおおおおおーーーーー!」
今日も幻想郷に大声が響き渡る。
【用語解説】
不破刃 (ふは・じん)
弾幕を反射する程度の能力
外の世界から来た人間。
青い頭巾。惜しげもなく晒される鍛えられた上半身。大地を揺るがす大声。
それが「師範」こと不破刃である。よく名字を「ふわ」と呼ばれるが、本人はもう訂正する気はない。
趣味は己を鍛えること、強い者を観察すること、子供と遊ぶこと。
如月流忍術の後継者候補だったが、ライバルに敗れた後、様々な格闘技の良い所を取り入れた不破流忍術を自ら創設する。
幻想郷では主に汚い忍者と行動を共にしているが、その他に複数の弟子を抱えている。
サニーミルク (さにーみるく)
光の屈折を操る程度の能力
全体的に赤色っぽい雰囲気の妖精。髪はオレンジのセミロング。
幻想郷は妖精が沢山いるが、その中では割と上位の存在。
常にサニー・ルナ・スターの3匹で行動しており、まとめて三妖精と呼ばれる。自称三妖精のリーダー。
力は弱いが、光を反射させたり屈折させたりする能力を持つ。
その能力一点に限れば、上級妖怪をすら驚愕させるほどの性能を発揮する。
趣味はいたずら。能力を使って姿を消すことができる。
日の光を好む。
ルナチャイルド (るなちゃいるど)
音を消す程度の能力
全体的に黄色っぽい雰囲気の妖精。金髪縦ロール。
どんくさい。
能力を使って周囲の音を消すことができる。特定の音を選んで消すことも可能。
サニーの光の屈折による姿消しとルナの音消しの能力が合わさり、いたずらの際には非常に高度が隠密行動が可能となる。
月の光を好む。
スターサファイア (すたーさふぁいあ)
生き物の気配を探る程度の能力
全体的に青っぽい雰囲気の妖精。黒髪ストレート。
かくれんぼの鬼になった時に最強。
ミステリアスな性格で、三妖精で何かをしている時に、しれっとサボっていることがある。
趣味はキノコの盆栽と料理。
汚い忍者 (きたないにんじゃ)=笠松ノブオ
能力を盗む程度の能力
宿敵であるナイトを倒すために効率の鬼と化した忍者。
能力を使い、幻想郷の妖怪達から能力を盗む。
盗むと言っても、魔法の才能と忍術を組み合わせた、それっぽい術を開発するだけであるが。
使える者は使い、使えない者は捨てる、という効率至上主義を唱える。
彼自身は幻想郷の住人を「利用しているだけ」という認識だが…
ブロントさん (ぶろんとさん)
あらゆるものを守る程度の能力
1 名前:既にその名前は使われています 投稿日:2005/04/28(木) 11:25:42 B9zsO3y1
やはり忍者よりナイトの方が頼りにされていたキングベヒーもスとの戦いで
おれは集合時間に遅れてしまったんだがちょうどわきはじめたみたいでなんとか耐えているみたいだった
おれはジュノにいたので急いだところがアワレにも忍者がくずれそうになっているっぽいのがLS会話で叫んでいた
どうやら忍者がたよりないらしく「はやくきて~はやくきて~」と泣き叫んでいるLSメンバーのために俺はとんずらを使って普通ならまだ付かない時間できょうきょ参戦すると
「もうついたのか!」「はやい!」「きた!盾きた!」「メイン盾きた!」「これで勝つる!」と大歓迎状態だった忍者はアワレにも盾の役目を果たせず死んでいた近くですばやくフラッシュを使い盾をした
忍者から裏テルで「勝ったと思うなよ・・・」ときたがLSメンバーがどっちの見方だかは一瞬でわからないみたいだった
「もう勝負ついてるから」というと黙ったので戦士サポ忍の後ろに回り不意だまスフィストを打つと何回かしてたらキングベヒんもスは倒された
「ナイトのおかげだ」「助かった、終わったと思ったよ」と忍者を行き帰らせるのも忘れてメンバーがおれのまわりに集まってきた忘れられてる忍者がかわいそうだった
普通なら裏テルのことで無視する人がぜいいんだろうがおれは無視できなかったみんなとよrこびほめられたかったのでレイズを唱えてやったらそうとう自分の裏テルが恥ずかしかったのかHPに帰って行った