四章 残酷な離別
修理の間に僕はまた眠っていたようだ。目が覚めた時、もう黒髪の少女はいなかった。別れも言わないまま、またどこかへ行ってしまったらしい。
「せめてお礼ぐらい言いたかったのに……」
悲しい人だった。僕よりずっとしっかりしているから危険は無いと思うけれど、一抹の不安は残る。
立ち上がって服の土埃を払っていると、ドタドタ複数の足音が聞こえてきた。樹の陰から顔だけ出す。
「アレク!それにカーシュも!」
「クレオ!探してたんだぞ!今までどこにいたんだ?」
「僕はずっとこの樹の下で修理を受けていました。それより、僕を探していたと言うのは一体……そうだ、デイシーさんは見つかりましたか?」
「ああ、彼女は大丈夫だ。今リサちゃんと一緒にシルクさんに付き添われて病院で診察を受けてる」そこで二人は複雑な表情を見せた。「おいカーシュ、本気で見せないと駄目なのか?」「エルシェンカさんの命令だ。それに同じエレミア人だから気付く事もあるかもしれないだろ」
「何の話です?」
「付いて来れば分かるさ」
二人は僕を政府館から少し離れた林へ案内した。反対側へ通り抜ければ屋敷に辿り着けるその入口に、何故か十数人の政府員の人達が集まっていた。
「遅かったわね」
ルザは杖を振り「もう少しでロディ達に呼びに行かせる所だったのよ」小声でそう言った。
「済みません。ところで僕に用って何です?この人達は?」
はぁっ。「あんた達、ここまで来るのに何も説明しなかったの?言いにくい気持ちは分かるけど男でしょう?情けないわね」
口振りこそ刺々しいけど、ルザは僕をとても心配しているらしかった。相当悪いニュースのようだ。
「まあいいわ。遺体が運ばれない内に行きましょう」
「遺体……!!だ、誰が死んだんですか!?まさか……」例の少女の悲しげな目が脳裏を過ぎる。僕は腰の辺りで右手をひらひらさせ「これぐらいの女の子、ですか?」恐る恐る尋ねた。
「?誰よそれ?違うわ。死んでいるのはヘレナと……パン屋のイムよ……」
ルザは顔を伏せ、誰がやったかは知らないけど酷い有様よ、昨日の夜まであんなに元気だったのに……と呟いた。
「――ふ、二人が!!?でも今朝、屋敷を出る時ちゃんと行ってきますって言ったんですよ!なのにどうしてこんな所で死んでいるんです!?」
「知らないわよそんなの!!」怒鳴った拍子に左側の目尻から一筋零れる。「私だって叩き起こして訊きたいぐらいだわ!あいつ等、何で仕事場でもない所で勝手に殺されているのよ!?」
指で強く涙を拭き取り、ちょっと通して、強引に政府員達の直中へ僕を連れ込む。
二人は今朝着ていたのと同じ仕事用の服で、綺麗に横にされて眠っていた。うつ伏せのヘレナさんの背中と、仰向けのイムおじさんのお腹には赤黒い染みが広がっている――大量の血だった。僕には一滴も流れていない生命の証。
土気色になり始めたおじさんは苦しそうに眉を顰め、舌を出したまま死んでいた。毎朝美味しいパン生地を捏ねていた太い指は、凶器を掴んで抵抗したのか傷だらけだ。服からまだ香ばしく焼けた小麦粉の匂いがして、余計に悲しくなってくる。
「どうだ?何か気付いた事は無いか?」カーシュが訊ねる。「今朝会った時と違う所があるとか……観察するのは辛いと思うが耐えてくれ」
「ええ、分かっています……カーシュ、ヘレナさんの顔も見せて下さい」
「ちょっと待っててくれ。あ、エルさん!」
人混みが人一人分割れ、今朝より幾分疲れた彼が姿を現す。
「誠さんの様子はどうですか?」
「良くないね。取り合えず屋敷に帰して、ジュリトに目を覚ましたら診察するよう言っておいた」
「誠さんがどうしたのですか?」
「この現場の第一発見者が誠なんだ。デイシー達を介抱しながら近くを通り掛かったカーシュを呼んだはいいが、彼が着いた途端気絶。まだ大分うなされていたよ」
今朝の執務室での思い詰めた様子を思い出す。ここへ来たのは気分転換のためだろうか?なら誠さんにとって今日はとても不運な一日だ。偶然とは言え、同じ屋根の下で生活していた二人の無残な姿を最初に発見するなんて……。
「そうですか……ところで遺体を動かしてもいいですか?彼女の方もクレオに確認してもらうんで」
「少し待って」現場写真を撮っていた政府員に二、三言って「うん、構わないそうだ。余り乱暴にするなよ」
「了解。――よっと」
カッ、と見開いた乾きかけの目と視線が合って一瞬エンジンが加速する。毎朝笑顔でおはようと言ってくれた唇は半開きのまま、口の端から苦悶の泡が垂れ落ちていた。ずっとうつ伏せだったためか、顔面に血が集まって紅潮している。
「酷い……一体誰がこんな事を……」
ボロボロッ。機械人形でも涙が出るなんて思わなかった。二人との思い出が溢れ、レティさんに伝える時の事を考えると後から後から、止まらない……。彼女達がいなかったら、僕達はきっとこの宇宙でもっと孤独だったはずだ。
「クレオ、今朝と変わった所は、あるか?」
袖で両目を拭い、何とか数十秒頭頂部から足先まで観察して、首を横に振った。
「そうか……済まなかったな。辛い事頼んじまって」そう言ってカーシュは深く頭を下げた。「ルザ、お前はどうだ?」
「――私も特には。財布やパスポートは入ったままなのよね?」
「ああ」
「屋敷に置かれた二人の持ち物も荒らされた形跡は無かったわ。物盗りの犯行でないとすると、動機は何なのかしら?」
二人共命を奪われる程の理由なんて無かったはずだ。言葉の通じないこの宇宙で誰かの恨みを買う事も考えにくい。けれど、現に二人は僕の目の前で冷たくなっている。
「――こいつは例のエレミア人殺しの仕業かもしれないな。焼かれていないのを除けば状況も動機不明な点も一致する」
エルさんはしばらく考え込んだ後「早急にシャバム在住のLWPの安否確認と保護が必要だな。クレオ、君は政府館の玄関で遊んでいるレティ嬢を屋敷に連れ帰ってくれ。勿論、君自身も充分気を付けるんだ。犯人が狙っているのが『人間』だけとは限らない」
「俺、付いて行っていいですか?」アレクが手を上げた。
「ああ頼む。政府の方でもなるべく早く彼女の護衛を手配するよ」
「あの……」僕は口籠ってしまう。「レティさんにこの事をどう言えば……」
一人の物ではない深い溜息。
「犯人を確保するまでは伏せていた方がいいと思うわ。下手に耳に入れて混乱した所を襲われても厄介だし」
「一理あるね。クレオ、連合政府の人間には僕から緘口令を敷いておく。彼女には、二人は遠方の政府の施設に手伝いに行ったと説明しておいてくれ」
「分かりました」
そう先ではない未来、真実を伝える瞬間は必ず来るだろう。その時のレティさんの気持ちを想像するとやるせなくなる。
もう一度二人の遺体を見遣る。僕も修理する人が現れなかったらこんな風になってしまうのかな、機械人形と言えど。――僕が死ぬ時、きっとアレク達は悲しんでくれるだろう。僕がヘレナさん達の死を悼んでいるように。
何時の間にか皆は遺体に向けて顔を俯き、目を閉じて沈黙していた。
「何をしているんですかアレク?」
「ん、ああ。黙祷だよ。こっちの宇宙じゃこうして死者に祈って別れを言うんだ。エレミアには無かったのか、こう言う習慣?」
「少なくとも僕が作られて以来、エレミアで死んだ人はいませんでした。どうやってしたらいいですか?」
「そうだな。いつも俺は安らかに眠れますように、って心の中で言ってる。突然死んだ人間って、ちゃんとけじめつけねえと化けて出てくるらしいしな」
「え!まだ二人と話せるんですか!?」
遺体の方を振り返った僕の肩をアレクは掴む。
「違う違う!専門家、悪いが説明してくれ」
「しょうがないわね」頼みに応じてルザは肩を竦める。「アレクの言う通り、確かに条件次第では魂が昇天しない事もあるわ。この二人の場合は残念ながらもう素直に昇ってしまっているから無理だけど、その状態なら意志の疎通も死霊術師との契約も可能よ。死ぬ寸前負の感情に飲まれて悪霊化してさえいなければ」
「じゃあやっぱり会えないんですね……」
「あんたが死なない限りはね。でも機械人形って魂あるのかしら?」
「さぁ……」
ルザは腕を組み、何故か明後日の方を向いた。
「……他はともかく、あんたはあるかもね。機械にしては人間臭過ぎるもの」
そう言えば僕のオリジナル、人間のクレオ・ランバートも死んだ。だから僕は生み出された。彼がどんな人だったかは全く知らない。それを内臓メモリーに書き込む前に創造主、母は自ら本物の所へ行ってしまった。もし僕に魂が宿っていたとしたら死んだ時、宇宙を越えて彼等にも会えるのだろうか?
「覚えておけ飼い犬」
病院の屋上。手摺りに背を凭れたまま奴は前後に揺れていた。
「何だよ先輩?説教なら勘弁してくれ。幾ら“あの方”のお気に入りだからって、やって良い事と悪い事があるぞ」
「冗談じゃない。奴にとって私など駒の一つに過ぎん」
ドンッ!ハルバードの尻をコンクリートの地面に叩きつける。
「飼い犬、お前が主人の命令を利くのは勝手だ。だが妹とその友人達を傷付ける事は赦さん。分かったか?」
「あれ娘なんだろ?お前が殺した異教徒の。よくそんなに大事にできるもんだ」鼻で嗤う。「どうせすぐ死んじまうのに」
「――訂正しよう。お前は犬にも劣る畜生だ」人として最低限の情が欠如している。
沸騰した顔面。懐の刃物に手が伸びるのを見て、我知らず溜息が洩れた。
「止めておけ。奴に言われなかったか?間違っても私に喧嘩を売るな、と」
「ケッ、この糞アマ!何でもお見通しって訳か」
虚しい男だ。内に何物も秘めず、本能のままに戦いを望む。同じ向かってくるにしても、個人の尊厳と承認を求めていたデイシー殿とは雲泥の差。
「一つ忠告しておく。従順に奴の命令を聞いた所で、使い捨ての駒の末路程悲惨な物は無いぞ。それでもお前は奴にほいほい従うつもり」
「五月蠅え!手前が余裕ぶっていられるのも今の内だ。現に、今日俺は手前が手を拱いた連中を始末した。“あの方”のポイントは確実に上がったぜ」
脳裏に先程見た二つの惨殺体が浮かぶ。苦しみ抜きながら命を奪われた者達は、今頃牢獄で嘆き悲しんでいるだろう。
「あの二人は急所を外されて何度も刺されていた。同じ殺すにしてもあんな残虐な、無闇に苦痛を与える手段を選ぶ必要は無かったはずだ。あれはお前の独断だろう?」
「ああそうさ!大父神に先立って、俺が罪深き異教徒共に罰を与えてやったんだ。何が悪い?」
サディスティックな哄笑。人命を奪った罪悪感の欠片も無い姿に吐き気さえした時だった。
ザッ。「よう、人形」
振り返らずとも、その呼び方をするのは一人しかいない。
「俺やったぜ!一度に二人もだ!なあ凄いだろ!?」
「……ああ。仕事の度に腕を上げるなお前は。しかもこいつと違って態度が良い、犬は犬でも忠犬だ」
「今度も俺頑張るぜ!あんたに認めてもらえるように」
「ああ」
バタン。
「――御目出度い奴だなぁ、ええ人形?あいつ筋金入りの馬鹿だ。忠犬どころが駄犬だぜありゃ」
「なら下手に焚き付けるな。迷惑を被るのはこちらだ」
「妬いたか?」
「馬鹿を言うな」
後ろから奴は私の顔を無遠慮に覗き込み、赤目を細めてゲラゲラ笑う。
「……あの男、近い内に必ず失敗するぞ」
「だろうな」
「私は助けないぞ。仮令お前の指図でもな」
「ああ、構わないぜ」
「何?」
奴はなおもニヤニヤしながらコンクリートを爪先で蹴る。
「あいつも所詮異教徒。しくじった時は大父神の裁きが下るだけだ、そうだろ?」
「使い捨て、か。お前らしい明解な答えだな」勿論同情などしないが。
空が茜色を帯びてきていた。奴の髪が更に赤く、血染めのように見える。実際数百人の異教徒を屠ってきたのだ。私と、ずっと以前から。
「さっき覗いたら目を開けてたぜ、お前の人形」
「間違えるな、リサは人間だ。話が終わったならもう行く」
あんな死体を見た直後だ。きっと衝撃を受けて精神的に参っている。早く言って声を掛けてやらなければ。
「あのガキの面倒見だしてからお前、益々俺を邪険にし出したよな?」
奴は突然横に跳び私の目の前、それこそ鼻先が触れる程近くに立った。右手に持った物を顔に近付ける。
「世話焼かせるなよ。――終わりだ」エタノールの付いたハンカチをぐしゃぐしゃに畳んで自分のポケットに捻じ込む。「早く行け。本当に人形になっちまうぞ」
「縁起でもない事を言うな」
横を通り過ぎようとした瞬間、奴の腕が私を掴んだ。強い力だ。
「放せ」
振り解いた一瞬、奴は奇妙な顔をして力を抜いていた。恰も人間のような表情に思わず、どうした?反射的に尋ねてしまった。一瞬で常の傲慢に戻りせせら笑う奴だったが、瞳に僅かな動揺が残っている。
「心配するだけ無駄だったようだな」
今度はちょっかいをかけられずに屋上を出られた。階段を早足で降り、リサ達の病室へ向かう。
キィッ。
「リサ」
「お姉ちゃん……」
妹は自分のベッドを抜け出し、隣でまだ眠っている親友の額をハンカチで拭いていた。脂汗で普段サラサラしている青緑色の前髪が皮膚に貼り付いている。
「ごめんなさいお姉ちゃん。私のせいで色んな迷惑掛けて……」
「気にするな。私だってリサにはいつも迷惑と心配の掛け通しだろう?お互い様だ」
泣きそうな彼女の頭を撫で、次いで痩せた身体を抱く。心臓の欠陥のせいで妹は今まで碌な運動をした事が無い。私としては余り心拍数が上下しない筋肉トレーニングやストレッチ、ウォーキング程度はやって欲しいと正直思うのだが。身体も丈夫になるし、何よりダイエットには運動が一番だ。
「私は二人が無事だっただけで充分満足だよ。偶然とは言え凄惨な現場に居合わせたんだ、下手すれば纏めて始末されて……」口元を押さえる。「済まない。配慮を欠いた発言だった」
「いいよ。はっきり言うお姉ちゃんらしくて、私結構好きだよ。でも……凄惨な、って?」
怯えた表情で見上げて問う妹は本当に分からないようだ。しかし、それなら彼女は何に恐怖していると言うのだ?
「殺されていたんだ、リサ達が倒れていた傍で二人。どちらもクレオ殿と屋敷で暮らしていたエレミア人らしい。――死体を見なかったのか?」
「うん……林を抜けようとしたら、前で手を引いてくれてたデイシーちゃんが急に止まって……肩の向こうから………」
「どうした?」
忌まわしい記憶を振り払うように頭を左右に振る。
「ううん、きっと私の思い違い……まだ頭が混乱しているみたい」
「何か見たんだな?犯人か?」
「ち、違うよお姉ちゃん。デイシーちゃんに遮られて本当にちらっとしか見えなかったの。それも多分見間違いだし……だってあんなの、現実とはとても思えない……」
酷く怯えて言った。
「錯覚でも構わない。リサの見たまま正直に話してくれ。殺人犯に繋がる貴重な目撃証言なんだ、頼む」
私の頼みにも、妹は真実を語ろうとはしない。普段より呼吸が浅かった。緊張が続けば心臓にも悪い。一旦諦めるか。
「分かった。デイシー殿が目を覚ましたら同じ質問をする。彼女と一緒ならリサも話しやすいだろう?」
「う……」
「デイシーちゃん!?」
うっすら瞼を開いた親友を抱き締める妹。数秒は放心状態だったが、縋る重さにその存在を認識して光を取り戻す。
「リサちゃん……シルクさんも」
瞬間、掛けたままの眼鏡の奥が硬直する。それを見た妹は察して「大丈夫だよデイシーちゃん。ここにはお姉ちゃんしかいないから」
「そう……」彼女は妹の耳元に顔を近付け「リサちゃん、シルクさんにあれ言ったの?」「ううんまだ。話してみる?」「止めとこう。犯人とは関係無いし……」語尾を間延びさせず真剣な表情で話し合う。隠し事は良くない、と注意したいのは山々だが、悪戯に二人の警戒を招くのは避けたい。外堀から埋めていくか。
「どうして関係無いと言い切れるのだデイシー殿?良ければ教えてくれないか?」
病床の彼女は暴走していた時とは真逆の気弱な目を向け、「私達があそこを通り掛かった時、既に凶器が無かったからです。まだ発見されてないはずですよ」
「本当か?」
確かにさっき飼い犬は殺人に使用したと思われる刃物を持ち歩いていた。先程の様子では奴と二人は接触していない。犯行は二人が来る前に終わっていたと考えて間違いない。
(犯人も凶器も、リサに至っては死体さえ見ていない。なら二人は一体何を……)
上半身を起こしたデイシー殿の背中を、妹が細い腕で支える。
「もういいよリサちゃん。自分のベッドに戻って休んでて。シルクさん、悪いですけどお医者さん呼んできてもらえますか?」
「あ、ああ」
廊下に出かけて、中に入ろうとしていた誰かを避けた。
「カーシュ殿。アレク殿も」
二人はベッドの上の妹達を見、ほっと胸を撫で下ろした。
「良かった。二人共目を覚ましたんだな」
「デイシー、大丈夫か?気分はどうだ?」
カーシュ殿の気遣わしげな視線に新聞記者は笑って、平気だよ別に、笑って手を振った。検査が終わったらすぐ家に帰してくれるはず。
「そ、そうか……」
「それより不死省はどうなったの?私出頭しないといけないんじゃない?」アレク殿に柄だけの短剣“透宴”を返しながら尋ねる。
「いや、それなら大丈夫。今向こうはLWP殺しの件でてんやわんやだ。事件の捜査で大会も中止。代表のジュリトは倒れていた誠さんに付き添っているしな。あの様子じゃ多分もうどうでもいいぞ」
「ああ、大会ルールにも外れてないし、何か言って来てもエルシェンカさんがどうにかしてくれるさ」
「そんな事言って、病院前に張り込んでませんよね?」
「デイシーちゃん!?」妹が叫ぶ。
「大丈夫、二人は仲間だもの。信じているよ。一応訊いてみただけ」
まだ先程の人格の影響が出ているのかもしれない。彼女は不安の色を見せたリサに満面の笑顔を向けた。
「リサちゃんはもう診察してもらったの?」
「うん。心臓にも特に異常は無いから何時でも帰っていいって」
「じゃあもうちょっとだけ待っててね。一緒に帰ろう」
「うん!」
私達を置き去りに、少女達はお互いの顔を見て頷き合った。




