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二章 強き智と古き絆



 政府館地下、不死省会議室。

「これでこちらが勝ったも同然ね」

 私は背中合わせに縛られた二人、エルシェンカ副聖王とアレクに向かって言い放った。しかし流石長年政府を支えてきた男、余裕の笑みで以って返す。

「それはどうかな?まだクレオは自由の身だ。こちらの缶もまだ一つしか取られていないしね。彼が二つ蹴ったら君達の負けだ」

「たかが機械人形一人に何ができると言うのです?」隣にいたジュリト神父が嘲る。「我々の勝利は確定的です。早く残りの缶の在処を白状して、時間の節約をした方が互いのためだと思いませんか?」

「何だ、まだ見つけていないのか。不死省も大した事ないな。まあ『仮』司令官の君じゃあ無理もないね」


 ガツンッ!


「っ!」脚を蹴られてエルシェンカが呻く。

「お互い様でしょう。あなたも本来ならリーダーではなかったはずだ。あの男があんな事さえしなければ――我等が王がああなってしまったのも全てお前達のせいだ!」

 同感だ。お父様の辛い顔を間近で見てきた私にとっても、奴と親類のエルシェンカは憎い相手。不死族の誰にしても思いは同じだろう。

「ああ、それは認める。しかし、だからと言って僕に当たっても仕方ない」

「分かっています。あなたまでいなくなれば、坊ちゃまの悲しみは更に増す。我々としてもそれは望む所ではありません」


 ガンッ!


 逸れた蹴りがアレクの膝を打つ。「いてっ!」

「だから早く喋って頂けないかと頼んでいるのです。私も我慢の限界なのですよ、いい加減」

「外に出て新鮮な空気を吸ってくる事を勧めるよジュリト。君に必要なのは休養だ」

 その言葉に彼は微笑み「結構。まだ勝負は付いていないので」きっぱり辞退した。

 ホワイトボードには昨日と同じ作戦表がそのまま残っている。「そんな機密情報を僕等に見せて良いのかい?」「大会終了までに出られると思っているの?」

 私が椅子から立ち上がると、アレクが反射的に顔を上げた。

「咽喉乾いたでしょ?ジュースでも取って来てあげるわ。ついでに隣の部屋の様子も見に行きたいし」

 執務室で捕らえた時、デイシーが押さえ付けられたショックで気分が悪いと訴えたのだ。彼女は今隣の休憩室のベッドで横になっている。勿論手足は縛り付け、中でカーシュに見張らせている。

(あの子意外と繊細な所あるのね)可哀相な事をした。大会が終わったら喫茶店でパフェでも奢ってあげよう。

「ルザ」「何よ?」「ありがとう」こんな状況の中、アレクは照れ笑いを見せた。

「ば、馬鹿じゃないの?あんた、段々あの機械人間にお人好しうつされてるわよ」

「そうだな。実はさっきも同時に叫び出しちまったんだ。廊下を出たら突然」

「いい、想像付くから。リクエストは?好きな物買って来てあげるわ」

「いいのか?じゃあ俺はサイダー。確か売店に置いてたよな?」

「ええ。そっちは缶コーヒーでいいわよね?」

「無糖のミルク無しだよ」

「分かってる。ジュリト、そう言う訳だから少し席を外すわよ」

 神父は呆れたように首を横に振り「甘いですねあなたは。彼等は敵ですよ?ルールにもあるでしょう、重傷にならない程度なら何をしても構わないと」

「私、義理でも十数年お父様の娘なの」

 その一言は彼を沈黙させるのに充分威力を発揮した。さて、幼馴染は元気になったかしら……?

「入るわよ二人共」


 ガチャッ。


「え?」

 部屋の奥に置かれたベッドの前に倒れているカーシュが見えた瞬間、

「隙有りです!」


 パシャッ!!


「きゃぁっ!?」

 至近距離で強烈なカメラのフラッシュを焚かれ、一時的に目が眩む。怯んだ私の脇を通ってドアの外へ出ていくデイシーの気配。

「無能共が揃いも揃って、ぎゃっ!!」

 再度閃光音。私は会議室のデスクに置いた杖に向かって「ロディ、あの子を止めなさい!」そう命じた。

「うげ、無理だよ姉ちゃん。あの姉ちゃん全身を聖水で清めてる!とても触れないって!」

 用意周到な。あの子は本当、螺子が一本外れたような喋り方と内臓された頭脳のギャップが有り過ぎる。

「デイシー逃げろ!多勢に無勢だ、外に出てクレオに手を貸してやれ!――但し、くれぐれも『本気』は出すなよ」

「……了解です」

 ようやくぼんやりと輪郭が見え始めた。私は腕を伸ばし、彼女の首根っこを掴もうと突進した。

「デイシー!!」

「わっ!」

 デスクの下に潜り込んで彼女は避けた。そのまましゃがんで左側へ抜けようとしているので先回りする。

「ルザちゃんしつこい!」

「そう思うなら大人しく捕まって!」

「嫌です!!」

 童顔の幼馴染は躊躇う事無くアレクの腰から“透宴”を抜き取り、鞘を外して横に一閃させた。足首に絡み付く感触。完全に視力の回復していない事もあってバランスが崩れる。ドスッ!頭から床にぶつかった。痛い。

「少し借りますねアレクさん!じゃあ皆さん暫しのお別れです~!御機嫌よ~!」


 バタンッ!


「ぐっ……」両目を押さえながらジュリトが呻き、どうにか立ち上がって開いたままの休憩室に入る。バシッ!「いてっ!?」

 頬の一撃に目覚めたカーシュが、見た者を凍り付かせる視線を受けて固まる。

「あ、あれ俺一体……デイシーは?」

「逃げられました。あなたが無様に気絶している間にです」

「へ……?」

 ベッドの下に落ちていた分厚い医学書を拾い上げ、頭にタンコブを作ったばかりのカーシュの鼻先に突き付けた。普段なら奥の硝子戸付き書棚に収められている神父の蔵書だ。

「ああ、デイシーが急に取材中の病気の資料が見たいって頼んで来て」

「非常に分かりやすい嘘ですね」起き上がりかけた私の方を見、「矢張り不死省に異物は必要無いようです。今度の議題にあなた方の事を出しましょう」

 会議室に戻って来るなりアレクが「俺達を嵌めようとした罰だな」苦笑気味に言った。

「黙れ義兄弟。俺は今裏切られた絶望感で一杯なんだ」

「先に裏切ったのはそっちだろうに、よくもまあぬけぬけと言えたもんだな」

 ポカッ!

「いたっ!無抵抗の人間をいきなり殴るなよ!」

「お前に俺の気持ちが分かってたまるか!デイシーを巻き込むつもりなんてなかったんだ!それを人質になるからって無理矢理」

「何ですかカーシュ、私の指示には従えないと?坊ちゃまの情けで籍を置いているようなあなたに、拒否する権利があると思っているのですか?」

「だけどあなたに人事権は無いわ、ジュリト」堪りかねて口を挟んだ。「勿論私のもね。お父様の人事にケチをつけるならそれこそ議題物。他の連中が何て言うかしら」至上命令を無視しての独断専行、とバッシングされる事必至だ。

 私達の言い合いに堪えかねたのか、止めたまえよ三人共、エルシェンカが首を横に振る。

「敵の前で仲間割れなんてみっともない。ジュリト、仮にも大将なら部下の手綱ぐらい普段からきちんと引いておきなよ」

「手綱?鎖の間違いでしょう?命令を完遂出来もしない駄馬にはそれで充分です」

 携帯電話を取り出し、短縮番号を押す。

「リュネ、一つ残念な知らせが。孫娘が脱走しました……なんですって?ええ、見つけたらこちらに連絡を。靭にもそう伝えて下さい」ピッ。「どういう事ですエルシェンカ?」

「聞いた通りさ。だから僕がずっと一緒だったのに、君等のせいで」

「何の話?デイシーがどうかしたの?」

 神父は大袈裟に両手を上げ、肩を竦める。

「あなた方の責任は予想外に重いようです。早急に捕らえて下さい。彼女も友人にまで牙を剥くような真似はしないでしょう」

「?ああ」

 デイシーが多少危険とは言え、こちらの有利は揺ぎ無い。まだ缶は三つとも残って……?

「ジュリト。この部屋にあった缶は?」

「このデスクの下に……無い。しまった」

 先程デイシーが潜った時、奪われたに違いない。会議室に連行された時点で狙いを定めていたのだろう。吐き気がすると言ってやたら屈んでいたのもそのためか。

 とすると。私はもう一度ホワイトボードを観察した。

(まさかこれも……盗まれた?)



 樹上から前方に見える白色の建物を分析。延床面積約一万五千平方メートル、四階建て。内部で活動している人数は――そこまで解析しようとした所で眩暈が起こる。昨日密航して色々歩き回ったせいで予想以上に疲弊していたらしい。

(或いは……の不足か響いているのか……)

 何れにしても、長期間の休息にこの場所は向かない。移動して無人の、雨風を凌げる建物を探さないと。

 ゆりかごを抱く手に力を込めた瞬間、女の悲鳴が上がった。

(周辺探査機能の出力、百パーセント)

 前後左右上下三百六十度、サーチ拡大。東二百二十メートル地点に異常確認。生命活動の停止しつつある男女。傍らに立つ人物のアドレナリン上昇を確認。所持する凶器の血痕は男女と遺伝子情報が一致。

(この犯人は……)

 検索した情報を確認。完全一致。危険予測プログラム作動。早急にエリア外への離脱を推奨。人間の視認できる範囲を超えた距離、障害物有。他の要因が無い限り、こちらが気付かれる可能性は零。

 そこでシステムに若干のバグが発生した。解析………エラー。原因不明。

(これも感情……?)理解不能。(違う……彼女に与えられた物とは)ならば私にとっては不必要だ。強いて言うなら、それは今まで経験したどのバグより冷たく、些細な衝撃で爆発しかねない危険性を孕み――あの時と類似点の多い物だった。

(駄目……)システムの簡易リセットを図る。このバグは彼女と正反対、解析しかけるだけでシステム全体が悪い方向へ侵食される。予測出来る誤差は甚大だ、到底認められない。

「これは、何?」問いに依って発生した空気の波が、抱えたゆりかごに反射した。コレハ、ナニ?




「これは、何?」


 まさかまた人がいるとは思わなくて、驚いて樹上を見た。

 黒い長髪を真紅のリボンでポニーテールにした少女。年はレティさんより下、五、六歳ぐらい。黒縁の丸眼鏡に白いYシャツ、膝下まである赤いチェックのスカートを履いていた。

「君は……」

 彼女の一番の特徴は、小さな身体に見合わない両腕一杯に抱えた黒色の卵状の物体。日光で艶やかに輝くそれを守る様に胸に押し付け、器用に幹を滑って地面に降りる。

「君は一体」

 レンズの向こうにある感情の見えない目。言葉が通じないのだろうか?まさかこの子、

「君は誰」今度はエレミア語で話し掛ける。

「こちらの言葉でいいわ、クレオ・ランバート」僕より流暢な発音で彼女は言った。

「!ど、どうして僕の名前を!?それにこちらって事は、君はやっぱりエレミア人なんですね!」

 屈んで手を差し出そうとすると、彼女は首を小さく横に振った。「いいえ、私はエレミア人ではない」

「ならどうして僕の名前を知っているのです?どこかで会った事が」

「……直接は無いわ。少なくともあなたの記憶媒体には残っていない」

 メモリーを検索。彼女の言う通りだ。そして引っ込めかけた手を再び出す。

「エレミア人でなくても、僕の記憶に無くても関係ありません。御家族は?離れ離れになったのなら連合政府に行きましょう。調査部の名簿にあるかもしれません。取り合えず手続きをして、パスポートと住む所の確保を」

「結構」少女は僕の手を無視して、スタスタと政府館の方へ歩き出した。慌てて後を追う。

「待って!君みたいな小さい子は誰かの保護を受けないと!シャバムは治安が良い方だけど、それでも子供が一人で歩ける程には良くはありません!」

 カクン、人形みたいな首が一度縦に振れた。「それは認めます」

 何だろう。僕はその返答に酷く不安な感情を覚えた。

「もしかして既に危険な事に巻き込まれたんですか?だ、大丈夫ですか?一体何があったんです?」

「予測不能だわ」彼女は小さくそう言い「機械人形であっても思考解析は不可能。判断困難です」

「な、何を言っているんです??」

 彼女と僕の間には、この宇宙とエレミアぐらい遠い距離が横たわっている。木霊すら届かない程の心の距離。けれど、放っておくなんて勿論出来ない。

「君、名前は?」

「後方二百メートル地点から誰かが走ってきます」

「え?」

 振り返って驚いた。パステルカラーの青緑の長髪、身体に不釣り合いな提げたカメラ、捕まったはずのデイシーさんだ!

「クレオさん!無事で何よりです~!」

「デイシーさん!済みません。僕のせいで迷惑を……」

 相手が好きな人だったとは言え、潜伏場所を漏らしたのは致命的なミスだ。しかしデイシーさんは大仰に手を振って笑った。

「構いませんよ~早目にスパイだと分かって却って良かったぐらいです~」

 そう言われると少しは気も休まる。

「エルさんとアレクも一緒ですか?」

「うーんと、脱走出来たのは私一人だけです~。“透宴”は借りて来ましたけど~」魔力を受けて柄だけになった短剣を見せ、ポケットに入れた。「ところでそちらはどこのお嬢さんですか~?」

「えっとその、この子は」

「ただの通りすがりです」

 少女はそう答え、さっさと歩き出そうとする。

「ちょ~っと待って下さい」

 さっ、と進行方向に手を伸ばして少女の行く手を遮るデイシーさん。

「何?」

「あなた、不死省の関係者じゃないですよね~?協力してくれたら~、私達もあなたにできる限り力を貸しますよ~如何です?」

「何故?」眉をミリ単位で上げ、微かに不機嫌そうに言う。「あなた達と私の目的は違う。協力するだけ無意味だわ」

「そうですね~じゃ~あ、警察の人呼んできますね~。親御さんが今頃迷子なんです~って交番に駆け込んでいるかもしれないし~」

「――無駄よ、父は遥か遠い所にいる。それにこの宇宙の法的機関とは接触したくないわ。勿論あなた達とも」

 デイシーさんが肩を落とす。

「関わるな、って事ですか~?良くないですよそう言うの~」

「善悪の問題ではない。……あなた達が私の敵でない保証はどこにもないだけ」

「私はこれでもジャーナリストの端くれ、困っている人の味方ですよ~信じてくれませんか~?」

「困っていないわ私は。それに先の発言、証拠としては信憑性に欠く」

「突っ張りますねお嬢さん~。どうしたら説得されてくれますか~?」

 形勢は明らかにデイシーさんに不利だ。この子の年不相応な理路整然とした物言い、何者なんだ?

「あの、それ……大事な物なんですね」

「!!!?」無表情に変化が起きた。卵状の物を抱える細い腕に力が入る。

「そんなに緊張しなくて大丈夫です。僕達は決してそれを奪ったりはしません」

「信用しろと……?」

 頑なに懐疑的姿勢を崩さない彼女に、僕は精一杯の笑顔を向けるよう努力した。

「少なくとも僕はあなたを信頼します。同じLWPとして」

「Lost Would People……世界を失った人間……」何かが彼女の心に触れたらしい。「そう……私も失った……あの時」

 暫しの沈黙の後、形の整った唇が動く。

「クレオ・ランバート、一つだけ答えて。あなたにとって……エレミアと言う場所は、どんな意味を持っていたの?」

「エレミアは僕の生まれた地。今の僕を形作った全てです。こちらの言葉で表すなら……故郷。どうしても帰りたいふるさとです」

「過去は決して戻らないわ。だけど……私も帰りたい、あの場所へ……行けるならどんなに………」

 押し殺せない感情が声に乗って耳に届く。無表情だと思っていた顔に浮かび上がる、悲哀と絶望。この女の子は今までそれらを背負って歩いてきたんだ、たった一人で。

 僕は彼女の手を取る。冷たかった。

「僕が手伝える事はありませんか?あなたのために」

「――忘れないで」

「え……?」

「エレミアでの全ての出来事を……それで私も、少しは救われる……」

 勿論、と答えると、少女は小首を傾げた。

「了解しました。このエリアを離脱する間だけ、あなた方と行動を共にする事にします。で、初めに何をすればいい?」

 デイシーさんは待ってましたと言わんばかりにポケットから二枚の写真を取り出した。フラッシュを焚いても暗い部屋だ。一枚目は左側にピントがずれる程近くにいるルザ。大きなデスクと、少し離れた所に拘束されて座らされているアレクとエルさんが写る。

 もう一枚にはレストランのマネージャー、本職は神父さんのアップだ。デイシーさんは迷わず背景のボードを指差した。政府館とその周辺らしき地図に複数の赤と青の丸印。

「これが敵の布陣です~。本星の場所こそ書かれていませんけど、恐らくここから推測は可能かと~」ポケットから青いストライプの空き缶を取り出しにっこり。「政府館の敷地内に後これと同じ物が二つあるはずなのです~。あなた、どこに隠してあるか分かりませんか~?」

 子供らしくない難しい顔の彼女は頭を上げた。「分析終了。半径三百メートルの探査で同定の物体は発見できませんでした。結果と配置図に従い、可能性の最も高い地点は――」政府館の真ん中、中庭を人差し指で示す。「ここです」

 唖然とした僕と違い、デイシーさんはふんふん頷き「成程~、ここなら確かに守りは堅そうですね~。取り合えず近くまで隠れながら行って~、缶が実際あるか確認しましょうか~」

「付近まで行けば探査が使えるはずです」

「分かりました、じゃあ宜しくお願いします~。あ、後、敵が近付いてきてたら教えて下さい。出来ますよね~?」

「了解」

 色々?の僕はデイシーさんの腕を掴んで「あの子は何なんですか?」耳打ちで訊いた。

「私もよく分かりません~。雰囲気的にはサヴァンっぽいですけど……でも虚言癖は無さそうですし、信用して良いんじゃないですか~?」

「私はサヴァンではない」「わっ!」

 急に間に割り込まれて吃驚。

「じゃ、じゃあ何なんです?」

「あなた達に教える必要があるの?」フイッ、首をあさっての方へ向け「私は請われて一緒にいるだけ」

 触れてはならない事だったようだ。繋がりかけた心を離される訳にはいかない。僕は頭を下げた。「済みません」

「謝罪する必要は無いわ。私の能力については保証する。……手を」

「?はい」

 僕の左腕をなぞり小声で、プログラム発動、と言った。一瞬肩から下が淡く光る。少し、重くなった?

「もう動かしていいわ。射出口は手の甲。プログラムキーは『える弾丸』よ」

「冱える?」

「射出口を対象に向け言えばいい。後はダウンロードさせたコードが起動させる。但し、オーバーヒートに留意を。長時間使用するには冷却装置が不十分だから」

 混乱する僕を他所に彼女は先頭で歩き出す。デイシーさんに目配せすると「取り合えず、もしもの時のために覚えておいた方がいいですね~」

「え、ええ」冱える弾丸、冱える弾丸……僕は心の中で何度も繰り返した。



 政府館中庭中央。薔薇花壇の前にぽつんと置かれた青いストライプの缶。その隣に立つ身長二メートルを超えた大男に声を掛ける。

「ああ、あんたか。妹は見つかったか?」

 防衛団へ出勤した私を待っていたのは脅迫。――お前の大事な妹は預かった、返して欲しければ聖族側を諜報し情報を流せ。

朝いたはずの妹は自宅の電話に一度も出ず、病院へも連絡したが行っていない。慌ててとんぼ返りし、もぬけの殻になった家を確認。私は脅しを受け入れざるを得なかった。

「いや、まだだ」

 ラーメン屋での食事以来親しくなった靭殿だけには事情を話し、任務放棄にならない範囲で個人的に捜索協力してもらっている。何せ政府館内部だけでも百室を超える広さだ。一人では到底手に余る。

「情けない限りだ。まさか不死省が私みたいな何の役職も無い者を切り崩しに掛かるとはな」

「強えってだけで充分脅威的だよ。こっちに妹らしい子は来なかったぜ。ってか人っ子一人来ねえ」

「感謝する。缶の守護で他に気をやる暇など無いだろうに、無茶を言って済まない」

「いいさ、どうせ聖族側はもう虫の息だ」伸び。「あー、しっかし立っているだけってのも結構退屈だな」そう言って大欠伸した。「誰か代わってくれねえかな」

 初夏の中庭は植物達が軒並み繁茂し、小道以外はかなり見通しが悪い。攻める側にしてみれば隠れながら近付ける、割と有利なフィールドだ。勿論、庭中に張り巡らされたトラップさえ無ければの話だが。

「行けよ。妹、心臓弱えんだろ?早く見つけてやらねえと」

「ああ。だが政府館内で不死省の管理する部屋はもう粗方捜索し終えたのだ。他に監禁されていそうな場所に心当たりは無いだろうか?」

「無いな。後は周辺の倉庫ぐらいしか思い付かねえ」

 靭殿は頭を掻き、済まねえな、と言う。

「こんな非人道的な手段に出るなんざ、今年のジュリトはよっぽどおかしいぜ。幾ら最近の坊ちゃんがいよいよ塞ぎ込んじまっているとは言え……こんな勝負に勝った所で喜んでくれるとは思えねえ」

 昨日廊下で擦れ違った際、聖王代理はまるで幽鬼のような暗い表情だった。私を認識した時も鬱気は全く晴れず、虚ろな声でああとかええと返し、今にも倒れそうな程ふらふらして立ち去ったのだ。

「それもこれもあいつが――っと、あんたには関係無え話だったな」

 政府員内の噂で聞いた事がある。彼がああなった原因は仲間だった友人達の死――とりわけ伴侶にも等しかったある人物の失踪だと。

「靭殿。私如きに言う資格は無いのだろうがその、現在の聖者様を一人にしておくのは危険だと思う」

「分かっている、一日数回は誰かしら顔を見に行っているんだ。でも坊ちゃんは昔の記憶が無いせいか俺達と距離を置きたがる。気兼ね無く話せるのは同じ屋根の下で暮らしているオリオールぐらいのもんさ。けどそれも最近は……」太い首が左右に振れる。

 以前の休養騒ぎを回想する。もしあの時条件をクリアできなかったなら、聖者様はあそこまで苦しまずに済んだのだろうか?素直にその事を告げると、大男はきっぱり否定した。

「ありゃ坊ちゃんが希望したんだ。お前等が変に責任感じる必要無えよ。――多少休んだからってどうにかなる物でもないし、な」

 地面に突き刺した大剣の柄を回しつつ諦観の表情。

「お互いお喋りが過ぎたな。そろそろ行けよ」

「ああ」

 花壇には向日葵や紫陽花、桔梗が花を付けていた。健気に咲くそれらを眺めていると、誘拐など遠い出来事に感じてしまいそうになる。ベッドサイドに飾っておけば、花が好きなリサは喜ぶだろう。

(彼等にも心はあるのだろうか?)

 真心を込めて育てた草花は一際健やかに長く生きると言う。人間の感情に植物が応えているから、としか思えない。だとすれば下手に摘み取るのはいただけないな。

(庭を耕すのもいい)花と一緒に野菜を植え料理に供するのも楽しそうだ。尤も私は余り得意ではなく、今でもサラダやシチュー等簡単な物しか作れない。

 思考を巡らしている場合ではなかった。リサを探さないと。

 政府館の敷地内には宇宙船ドッグを含め、十棟前後の倉庫が乱立している。手始めに一番近い防衛団所有の武器庫へ足を向けた。あそこには任務用のダイナマイトが積まれている。少女を監禁するには些か危険過ぎる場所だ。

 通路を抜け中庭を出ようとした時、外から複数の足音が聞こえてきた。靭殿は交代の仲間がいるとは言っていなかった、では誰だ?

 気配を殺し樹の陰に身を潜める。一つは足取りの割に重い特徴的な物、クレオ殿に間違いない。後二つは彼より軽く、一つは恐らく子供。もう一つは……思い出した。デイシー殿だ。地面の蹴り方に独特の癖がある。

(まさか缶の場所が知れた?会議室のボードには、在処そのものは書かれていなかったはずだが……)私のような特殊な訓練を積んだ者ならともかく、普通の人間が短時間で割り出せるとは考えにくい。だとすれば当てずっぽうか?

「缶はこっちですか?」

「ええ。地面に注意して。警備は一人ですが、周辺に複数の罠が仕掛けられています」

 第三の声は少女の物だ。どこまでも冷静な、訓練の時の私よりも静かな、まるで機械が喋っているような声。一番の要注意人物、と脳内アラームが鳴る。

 不意に三人の歩みが止まった。囁く息使いと衣擦れの音だけが聞こえてくる。数分待ったが一向に入ってくる気配は無い。

(まさか私に気付いた?)

 気配は完璧に消え、且つここは彼等からは完全なる死角だ。影も伸びてはいない。

(しかし向こうは明らかに様子見の状態だ。靭殿を警戒しているにしても、あんな手前で止まるメリットは無い)

 魔術か、若しくは別の方法か。とにかく私が潜んでいる事に敵は気付いている、ならば。

 私は小石を数個掴み、隠れているのとは反対の茂みへ放り投げた。ガサガサッ。

(位置を誤認させておいて油断した所を奇襲する。問題無い。クレオ殿を除いて相手は女性だ。騒ぎを聞き付けた靭殿が加勢してくれれば数十秒で終わる)

 警戒しているのか、また沈黙の時間が流れる。――動きがあったのは約五分後。再び中庭への足音が聞こえ始める。だが、今度は一つだけ。

 茂み同士の隙間から蒼い髪を目視できたのと同時に、彼は立ち止って辺りを見回した。

「誰かいますか?僕、投降したいんですけど……」

 彼が囮役?幾らデイシー殿が素早いとは言え、靭殿のディフェンスを抜くなら加速装置のあるクレオ殿の方が適任のはず。それとももう一人の女児に蹴らせるつもりなのか?

「あのう」

 考えている時間は無い。彼を行動不能にして急ぎ缶の守備に行かねば。

 ハルバートを逆手に持ち、懐へ飛び込もうと息を詰めた。


 ドオンッ!!


「うっ!!?」「なっ!?」

 地表を這う『何か』に皮膚が泡立つ。クレオ殿は蹲って胸元を押さえていたが、急いで缶のある中庭の中央へ走って行く。後を追った私が見た光景は、俄かには信じ難い物だった。


「まだみたいですね」


 膝をついた靭殿の前で、黒縁眼鏡を取った妹の親友はそれまで見た事が無い程不敵な笑みを浮かべて立っていた。

「ぐ……な、何だ今のは……?」胸を押さえて呻く。

「流石不死の中でも頑丈さに定評のある靭さん。普通の人ならさっきので気絶していますよ?まあ、久し振りなのでまだ三十パーセントも出してませんけど」

 提げたカメラが故障していないか確かめつつ、左手をくるっと回した。白い閃光。大気に散った電流が植木を撃ち、微かな黒煙を放ち始める。

「デイシーさん!?」

「ああ、クレオさん。裏切り者のシルクさんも、こんにちは」

「えっ!?」こちらを振り返り、吃驚仰天跳び上がる。頬が見る見る赤くなる。「し、シルクさん!何時からいたんですか!!?」

「シルクさん、隣に来てもらえます?――早くしないと靭さん、そっちの樹みたいにしちゃいますよ?」

 蹲る巨体からは既に白い湯気が立ち昇り始めていた。電流の熱によって顔を紅潮させながら彼は怒鳴る。

「止めろ!こいつは俺達を纏めて始末したいだけだ!」

 呼吸が荒く、口の端から飲み切れなかった唾液が垂れている。筋骨隆々の腕が痙攣を起こしていた。拙い、感電で予想以上に身体を痛めたようだ。幾ら不死とは言え医者に連れて行かないと後遺症、最悪彼等の『核』にもダメージが。

「知っているんですよ。シルクさん友人を沢山作るタイプではなくて、打ち解けて話せるのは更に絞られて数人。その貴重な友達も裏切るつもりですか?」

「まさか」

 裏切ると言うなら――その友人達でさえ、とっくの昔に裏切っている。

「宜しい。ではこちらへ」

「馬鹿止めろ!!」

「五月蠅いです」


 ビリッ!手から弾けた小さな雷が彼の背中を撃つ。


「がぁっ……!!」

「まだ慣らし運転レベルですよ。今度は本気を出します」

 この豹変振り。とても無二の親友のリサには見せられないな。

「デイシーさん……どうして?」

 彼女は緩く首を傾げ、白い顎に手をやる。

「その質問はナンセンスですよクレオさん。まあ信じられないぐらいインパクトが強いとは思いますけど。――分かりやすく説明すると、これが本来のデイシー・ミラーの姿です」窓際に畳んで置かれた眼鏡を指差す。「あれを掛けている時はあくまで仮。後天的に作られた性格って訳です」

 クレオ殿が示す理解不能の色。だが小道具が無いのを除けば、同じ境遇の私には理解出来る。

「特別な事じゃありません。クレオさんだって絵を描いている時とそれ以外、多少人となりが違うはずです。好きな人と一緒にいる時とも……正直ですね。クレオさんには余り縁の無い話題だったかも」

「そう、なんですか」耳まで真っ赤にしながら相槌を打つ。「でも本当のデイシーさんなら、そちらを出した方がいいのでは?その方が楽、ですよね?」

「……あのですねクレオさん。些細な感情の振れで、魔術の管理下に無い源泉魔力のまま放電する人間がまともな社会生活を送れると思います?あの眼鏡は暴発しないための抑止装置です」

 バチバチッ……雷が接触する度、地面に黒い焦げ跡が発生する。相当な電圧、しかし少女の顔に一切の疲労は無い。

「それにこんな状態じゃ、近付いただけでリサちゃんの心臓が止まっちゃいます。クレオさんはショートしかけてません?」バチッ。「まあいいです。早く最後の缶探しに行きたいですし、そっちの二人にはそろそろ退場してもらいましょう」

 バッ!私の目の前に両手を広げて立つクレオ殿。驚いた私を他所に、少女は普段動かさない眉を上げた。

「ですよね。その気持ちは分からないでもないですよ。……しょうがないですねえ」

 それまでにない放電密度の中、靭殿の背中がぐっと丸まり、耐え難い様子で地面に顔を付けた。

「うっ……!」

 離れているクレオ殿でさえ、機械に変調が現れたのか苦しげに息を吐く。

「クレオさん、そこどいた方がいいですよ?今日凄く調子良いんで、ちょっとした落雷レベル出ちゃいます」

「クレオ殿、私達の事はいい。影響が出ない所まで退避してくれ」

 肩に触れた手に走る電流。高熱によって中指の麻痺が起こる、火傷だ。

「裏切り者でもいい。シルクさんは僕が守ります」

 突然左腕を彼女の方へ伸ばし、冱える弾丸!と叫んだ。


 ババババッ!!


 甲から射出された蒼色の弾がデイシー殿目掛けて飛ぶ。それらは咄嗟に張り巡らされた高圧電流の壁に阻まれ、白い水蒸気を発生させた。

「!凄い威力ですよクレオさん。あの女の子に感謝しないと」

「駄目ですかやっぱり」

「いいえ。相手が私でなかったらきっと強力な武器になっていましたよ」一しきり褒めた後「下ろしたらどうです?どうせ通用しませんし」酷薄に告げた。

 彼は諦めて射出口の閉じた腕を下げ、蹴られて転がった青い缶の方へ顔を向ける。

「もうここに用は無い筈ですデイシーさん。無駄な争いは止めましょう。僕達の目的は大会に勝つ事のはずです」

「大会?さっきまではそうでしたけど、本当はどうでもいいです」昏い笑顔を浮かべて「誰も彼も基本的な所は何も変わらない。厭な物に蓋をして、生産性の無い事ばっかり。もううんざり。一回誰かがキツいお灸を据えないといけないんです」

 拙い。封じられた人格のフラストレーションが表面化し始めている。いつもにこにこしている影で、このような考えを育んでいたとは……彼女が豹変する様に胸が痛んだ。

 ガッ!近付いてきた彼女の足首を掴む分厚い手。

「何やってる!?早くその小僧を連れて逃げろ!急いでエルシェンカを呼んで」


 ドオオオウウウンッッッ!!


 覆い被さるクレオ殿に押し倒され地面に転がった。頬や掌に土のザラリとした感触。

「あらら、皆気を失っちゃいましたね」

 彼女は大した確認もせず、明るい声でポケットに缶を入れた。私の目の前を丈夫そうなスニーカーが通り過ぎる。

「最後の缶は多分リュネさんの所ですね。去年も一昨年もそうでしたし。本当、単純」

 少女の足音が聞こえなくなり、私はクレオ殿に大丈夫か、と声を掛けた。しかし返事は無く、仰向けにさせてもピクリとも動かない。

「お、おいクレオ殿……?」

 まさか、さっきの電撃で重要な部品が破壊されたのか?不安になって頬を叩いたり、上半身を揺さぶってみたりしたが回復の兆しは無い。

「私のせいだ……早くリサに診せないと」

 いや駄目だ、妹は所在不明だった。仮に見つけたとしても、もしメモリーや回路に破損があって直せないとしたら……。


「クレオ・ランバート?」


 開け放たれた窓から、先程の声の少女が黒い卵型の物体を抱えたまま飛び降りた。その黒い瞳は人形……以前の私と同じ感情を映さぬ物だ。

「数ヶ所に高圧電流の負荷による破壊が見られます」

「分かるのか?貴殿が機械技師なら頼む、彼の修理を……こうなったのは私を庇ったせいなのだ」

 その瞬間、瞳に複雑な光が現れた。少女は唇を僅かに震わせ、物体を掻き抱く。

「クレオ・ランバートがあなたを庇った……そう、了解した。認識を上方修正します」

「ん?」

「スキャン開始――彼のリカバリーは任せて。あなたが付き添っても修復時間は短縮されないわ」

 感情の籠らない事務的な口調。だが私にはそれが、彼女にできる精一杯の気遣いに感じられた。

「済まない、感謝する。しかし何故貴殿は二人と共にいなかった?中庭の入口までは一緒だったのに」

「疲労を見咎められて休まされていただけ。そこの一室で」出てきた窓の先の部屋を指差す。

「今は大丈夫なのか?」

「問題無いわ」

「そうか。私は行くが、くれぐれも無理はしないでくれ」

 私は急ぎ気絶した靭殿に肩を貸し、普段は隠している訓練で培った全力を以って政府館内の医務室まで運んだ。非情な不死省とは言え、流石に医者には手は出さなかったようだ。運悪く魔術実験の事故に遭ったと説明し、治療を依頼する。

「さっきのか、凄い音だったな。長くシャバムにいるが、あんな酷い魔術音は初めてだ」

 副聖王の孫娘が表で暴走しているのだ、と言った所で信じはしないだろう。仕方なくもう一度誠実に宜しくと言い、医務室を後にした。



 雲海に挟まれた小道。僕と彼女はエレミアへ戻る途中だ。

『凄く大きかったね。他の六魔もあんなだったのかな?』

 先程見た光を司る魔、虹色の羽毛の霊鳥グリューネ様を思い出す。身長だけでも僕の三倍以上、広いはずの神殿も七色の翼を展開すると狭く感じられた。

 臆して碌に言葉の出なかった僕と違い、社交的な彼女は明るく挨拶して僕の分まで自己紹介してくれた。供え物として大父神様から預かってきた、弱ったグリューネ様の力を補う光輝く球体を嘴の先に差し出したのも彼女だ。

『ありがとうございます』

『何が?』

 僕が説明したが、不思議そうに彼女は首を傾げるだけだった。

『いいよ別に。私も巫女、じゃなくて、エレミアの住民として一度はお目通り願いたかったし。無理言って付いて来させてもらって、こっちこそありがと』

 小道の上にも霧が掛かり、帰るべき街を薄いベールで覆っていた。

『でもクレオはいいなあ、グリューネ様の羽根貰えて』

『差し上げますよ』

『ううん、いい。何枚もあってもぐちゃぐちゃにしちゃうだけだし』

『?羽を集めているんですか?』

 ブンブン!激しく首が横に振れた。『ごめん、今のは忘れて!お願い!』

『え、ええ。分かりました』

 彼女を見る度に、巫女は秘密が多い職業なんだと分かる。ディーさんの所に度々相談しに来る時も、しきりと部外者の僕を追い出そうとするし。

『ねえクレオ』

 何故か彼女は自分の膝の辺りを指差し、しきりと僕の目を見る。

『何ですか――さん?』

 十数秒の沈黙の後、何故か首を竦めて両手を上げた。

『やっぱり見えるはずないか……ごめん、何でもない』小声で『もし見えてたら、ルウみたいに友達になってくれるかと思ったんだけどなー』残念そうに呟く。

『――さん?』

『違う』

 彼女らしくない冷静な声。次の瞬間、遠くにあった雲海が押し寄せた。



「――起動完了。システムの再スキャニング開始」

「う……」

 夢か……そうだ、エレミアに帰る方法なんてまだ全然……あれ?僕、何でこんな外で寝ているんだろう?

 人工眼球を動かして声の主を確認し、メモリーに検索を掛けた。が、所々再生されない。

「メモリードライブの一部に破損を確認。使用不可な部分を新規メモリーと交換します」

 少女の左手は金色の光を帯び、メモリーの内蔵された胸部に置かれている。

(不思議な感じだ……)

 頭の中の靄が取り除かれクリアになっていく。ノイズが無くなった分、思考回路がスムーズに走るのが実感できた。

「直してくれたんですね。ありがとうございます」

「まだ部品交換が必要な幾許かのダメージが認められます。動作は許可しません」

 起き上がろうとした所を諌められ、再び地面を枕にする。

「そう、ですか……あの、シルクさんは?」

 咄嗟に庇ったけど、あの放電だ。怪我していてもおかしくない。

「彼女は自分がやるべき事をしに行きました」

「無事だったんですね、良かった……」

 ほっとした矢先、どこかから爆発音のような物が聞こえてきた。慌てて飛び起きようとするが、勿論小さな手は許さない。

「今のは、まさかデイシーさんがまた」

「断定は不可。私のシステムでは感知できないエネルギーです」首を振り「しかし恐らくはスピリチュアル・エーテルの一種。この宇宙では魔力と呼ばれる精神エネルギーでしょう」補足説明を加えてくれた。

 下から見える少女の顔は綺麗で、けれどさっきと違いどこか悲しそうだ。

「あの、僕、寝ながら何か言っていましたか?夢の最後にあなたの返事が聞こえました」

 答えは無い。不安になった僕は「えっと……」何とか言葉を紡ごうとする。

「名前」

「あ、はい」

「名前を」憮然とした口調。それ以上何も話す気は無いようだ。

 ボーッ、と四角い青空を眺めながら先程の夢を思い出す。

「あれ?そう言えば……グリューネ様?」

「ここだ」

 ヒラリ。右肩口に留まった七色の鳥は翼で頭を掻いた。

「済まぬ。お前を保護するために力を使ったのだが、機関部の高熱に耐えられなくてな……」

「いえ、無事ならそれでいいんです」

「強ちそうとも言い切れんがな」

 力無く羽ばたき「修理は粗方終わったようだし、戻らせてもらうぞ」

「その前に一つだけ構いませんか?」少女を示し「グリューネ様は彼女を御存知ですか?エレミア人でないのに言葉が……」

「――クレオ、作られて日の浅いお前には分からぬかもしれんが、人には色々詮索されたくない事があるのだ。特に――身を裂かれる程辛い出来事はな」

 それだけ伝えて霊鳥は僕の内部機関へ戻って行った。

「今話していたのは光の巨鳥グリューネ?どうしてまだ」

「知っているんですね!ならもう一度出てきて頂いて話を」

「いえ、それには及ばない。知覚は出来ない。あなたが一方的に喋っているようにしか見えなかった」

 本当に魔力が分からないんだ。だとしたら、

「問題無い。危険は他のセンサーで充分判断可能。――ねえ、グリューネは」小さな唇を噛む。「……何でもないわ」

 飲み込まれた言葉の続きを想像したけど、僕には到底考え付かなかった。ただ、僕の数十倍、数百倍辛い目に遭った事だけは理解出来る。慰めさえ拒絶する程に彼女の心は傷付いていた。

「直ったら一緒にデイシーさんを探して下さい。僕、どうしても止めないといけないんです」

 今の彼女は誰彼構わず膨れ上がった怒りの餌食にしてしまうだろう。ドンッ!また爆発音が響く。少女の目が動いた方向は不死省、それもリュネさんの地下研究室の方だ。

「あの、どうなっています……?分かる範囲で教えてもらえませんか?」

「――地下施設が異常な放電現象によって破壊されています。重軽傷者十一人、機器の七十パーセントが使用不能。被害は一階部分まで拡大しているわ」

「は、早く修理をお願いします!このままじゃ」

 遠からず標的は力を押さえ付けた対象、デイシーさんが一番慕っている唯一の肉親へ向かうだろう。そうなれば取り返しが付かない。

「記憶媒体を絶縁体で保護します。これ以上の破損はあなたも望まないでしょう?」

「え、ええ」

 エレミアでの貴重な日々の記憶。僕の唯一の財産。さっきの衝撃で幾つか消滅してしまったようだ。そう思うと急に切なさが溢れ出し、泣きそうになった。

「記憶は人を支えるわ。どんな記憶も……手放すつもりはない」

「はい」

 思う所は真逆だけど、互いの強い決意はきっと同じ。

彼女は目を伏せ、黒い卵を撫でた。

「だけど私はけして思い出さない。システムに忘却機能は無いのだから」




 ドンッ!!


「まただわ。何が起こっているの?」

 カーシュと二手に別れ、デイシーとクレオを探し政府館内を歩き回る事早一時間。断続的な爆発音、放出される魔力の高さに鳥肌が立つ。一体誰なの、暴れているのは?

「どこかに隠れていた方がいいんじゃないかい?」杖の中でキュクロスが忠告する。「制御されていない魔力が吹き荒んでいるねえ。ルザじゃあ手に負えないよ」

「婆ちゃんの言う通りだ。姉ちゃん、二人を探すのは止めて避難しようぜ。冥蝶もそう思うだろ?」

 呼び掛けられた瞬間、俺はルザの意識を乗っ取り表へ出た。

「俺なら抑えられん事もないが、確かにこの身体を危険に晒すのは避けたいな」

 憤怒の魔力とあの“赤い世界”は無関係だ。前の記憶で原因もはっきり分かっている。デイシーと呼ばれるルザの友人だ。以前暴走した時は怪我人が出ない内に取り押さえられて事無きを得たが、今回は既に若干手遅れの感がある……「ぐっ!?」

「冥蝶!?」

「心配するな」胸を押さえる。「少し蝶が疼いただけだ。どうやら俺が出ているのが気に食わないらしい」

 手慰みに手近な死霊の魂の欠片を与えて大人しくさせる。少年が杖から出てきて肩を擦った。

「済まない」

「冥蝶、姉ちゃんは大丈夫だよな?何があってもお前が人間に戻してくれるんだよな?」

 未来に対する恐怖、俺の態度を察しての不安。少年の心に渦巻く感情は手に取るように分かった。

「ああ、恐れる必要は無い。必ずルザは人になれる」

二度と“赤い世界”は来させない。何度そう少年と己を慰め決意しただろうか。

 死した身体は生前より活発だ。だが蝶の進行の抑制はほんの一時的なもの。本来の姿に一歩近づいた彼女が元気になるのは必然だった。

「だよな、そうだよな……」何度も聞いた呟きが枯れた俺の心を抉る。

 時々考えてしまう。この一見平和な時間は全て、“赤い世界”の自分が見る夢幻ではないか、と。彼女はもう絶対に救えなくて、それを認めたくないばかりに。(いや)結果はどうあれ、俺は少しずつ進んでいるはずだ。現にあの機械人形は二つ前まで姿を現さなかった。

「無理するんじゃないよ」

 忠告に俺は頷く。次の瞬間、老婆の顔が酷く霞んだ。

「駄目だ、ここは光が多過ぎる。今日はもう引っ込む。後はお前達が守ってやってくれ」

「そっか……」少年はまだ恐怖に引き攣る笑顔を見せた。「分かった。冥蝶は早く姉ちゃんを治す方法を見つけてくれ」

「ああ」

 意識の奥に沈む直前、半開きの目のルザと擦れ違った。俺は手を伸ばし、彼女の背中を表へ向けて押した。

「ん……あれ?今、誰か背中に触った?ロディ?」

「あ、うん。姉ちゃん、ボーッ、としてたから。やっぱどっかで休んだ方がいいって」

 目の焦点に不調を感じ、眉間を親指と人差し指で押さえる。

「そう……?最近は調子いいと思っていたんだけど。今朝早起きしたせいかしら?」

「きっとそうだよ。姉ちゃん夜型だしさ、なキュクロス?」「そうだねえ」呼び掛ける弟に杖の中から皺枯れた声が応えた。

「……止めとくわ。不死省の勝利はともかく、私はお父様の娘。あの二人を探すぐらい朝飯前よ」

 毎日のように執務室で鬱々としているお父様。年々酷くなる有様にただ手をこまねいる訳にはいかない。少しでも気分が晴れるニュースを届けなければ。


――かーごめかごめー。籠のなーかのとーりーは――


 懐かしいフレーズに声のする方、玄関へ向かう。様々な種族の子供達がお互いの両手を繋ぎ、輪になって回りながら歌っていた。

「オリオール?それにレティも」見知った後ろ姿を見つけて思わず呼んだ。回転が止まり、少年少女が一斉に振り返る。

「あれルザ?赤い缶ならこの辺には無いよ。さっき皆に探してもらったもん。ゴミとボールは沢山あったけどね」

「いえ。缶も探してはいるけど、クレオかデイシー通らなかった?」

「私見たよ」

「本当!?」

 幼いエレミア人が小さな指で道筋の軌跡をなぞる。玄関を直線に横断するコースだ。

「でもクレオ、だけ。見たのも、一時間ぐらい前、だし」たどたどしい言葉だけど、はっきりした発音だ。

「ありがとうレティ。少しの間に随分言葉上達したわね、偉いわ」頭を撫でると、少女らしくキャッキャと笑う。

「皆が、教えてくれるの。ここ、友達いっぱい!エレミアだと子供、私一人だけだったから……」

「今は楽しい?」

「とっても!!」

 弾ける笑顔。両親の死を乗り越えつつある証拠に、きっとお父様も喜ばれる。――死霊術者の村から救出された私も、どこかでこんな顔をしていたのだろうか。

「そう。レティ、これからも元気でいてね」

 ふと、輪の中心で座る女の子に目をやった。一人だけ中等部と思われる彼女はタオルで頭をすっぽり隠し「どうしたの皆?」どこかで聞いた事のある声で尋ねる。

「何でもないよお姉ちゃん。さ、かごめかごめの続きやろう」

「そろそろ他の遊びにしない?脚疲れてきちゃった」

「一回当てたら休憩にしようよオリオール」別な女の子が提案する。「オレンジジュース飲みたい」「俺ミックス」「僕はサイダー」

「だってさ。責任重大だねお姉ちゃん」

「う……分かった。次こそ当てる」

 どうやら取り込み中らしい。私は子供達にもう一度礼を言い、軌跡の先にある中庭を目指す。確か靭が一人で缶を守っているはずだ。

 ゾワッ。中庭の入口に立った直後、大気に拡散した魔力と微かな焦げ臭さで条件反射に身震いが起こった。

「靭!?いるなら返事をして!」

 植え込みの間を通り、中央の広場へ向かう。黒焦げの地面に靭の大剣が転がっている。が、持ち主と青い缶はどこにも見当たらない。

「靭!?」

 さっきからの爆発音。誰がこんな事を?どうする?会議室に戻ってジュリトに報告?いえ、

「二人共!犯人はまだどこかで暴れているはずよ、探して!」私は杖を振り上げた。

「駄目だって姉ちゃん!冥蝶も危ない事はしない方がいいって」

「あんたまで!田舎の迷信なんて今は関係無いでしょ!?さっさと見つけないと、一生魂食べさせないわよ!」

「暴君!」

「何とでも言えば。さ、ぐずぐずしてないで」


「ルザ?」


 突然聞こえた声に、心臓が口から出そうになった。

「お、お父様。どうなさったんですか?」

 蒼白い顔をしたお父様はふらふらしながら「散歩です……ルザは誰と話を?」

 しまった!氣を使うお父様だけど、何故か死霊は見えない。どう誤魔化そう、と考えていると「ああ、何だ」勝手に頷いた。「変わったお芝居ですね。どこかで上演するの?」

 燐が上手く囁いてくれたみたい。言い訳としてはやや苦しいけれど、寿命を削って死霊術を使っているとバラされるよりはずっとマシ。

「い、いえ。まだ脚本も全然構想段階なんです。昨日不死省の方で話が出ただけで」

「そう……てっきり夏祭りの出し物かと思いました。今年はLWPの人達もいますし、賑やかになりそうですね」

「え、ええ。あ、でも言葉が分からないなら演劇なんてつまらないですね。やっぱり別の物を提案します」

「そう……ですか?私は構わないと思いますが……」

 お父様は所々炭になった樹に触れた。

「それよりこれは……一体どうしたのですか?まるで雷に撃たれたような……痛がっている」

 指先から温かな光が幹へ流れ込む。焦げた箇所が少し茶色を取り戻し、ショックで落ちた葉の代わりに黄緑色の新芽が生えてきた。

「中庭全体の植物の氣が弱っている……誰がこんな酷い事……?」

 まるで自分が傷付けられたようにお父様は呻き、悲しい顔で隣の樹へ手を伸ばす。

「あなたも苦しいの……?大丈夫、すぐに治療するから」

 奇跡の力を使う度、お父様の足取りは明らかに覚束無くなっていく。

「お父様止めて!無理をしないで下さい、お願いです……」思わず冷たい手を取る。

「これぐらい平気だよ……昔はもっとずっと苦しくても出来ていたから……」

「昔の事なんて忘れて下さい!あんな」奴の事なんて!続く言葉を辛うじて飲み込んだ。言ったが最後、決定的な亀裂が入ってしまう。――でも、察せられてしまった。潤んだ目で睨まれて胸がキリキリ痛んだ。

「忘れて、どうしろと言うんです……?私が待っていなければ彼は、どこへ帰ってくれば……」

 白い頬を一筋伝う物。

「ごめんなさいお父様。私、何て事を……本当に済みません!!」

「いいえいいえ。ルザの方がきっと正論です。二百年も、私は何をやっているのでしょう……」

 首が横に振れる度、折れてしまいそうで肝が冷えた。

「せめて私、肩を貸します。早く植物達を治して一緒に昼食にしましょう。美味しいランチを食べれば元気も出てきますよ」

 私は必死に明るい話題を選ぶ。

「知っていましたかお父様?さっき話したのですけどレティ、大分こちらの言葉を覚えたんですよ。あれなら来年は初等部へも通えます。そうしたらもっと色んな友達が出来ますね」

「……ええ。彼女も最初に比べればずっと安定した氣になりました。あの明るい笑顔は周りの人達を幸せにしてくれます」

「お父様だってそうですよ」

 返答は寂しそうな微笑。胸を掻き毟られるような焦燥に駆られ、いてもたってもいられなくなる。


―――アルジサマ……ワタシガズットオソバニイマス……。


 頭の中に抑揚の無い高音が響く。不思議だ、反響する度に言葉が、感情が心に染み込んでくる。

(分かるわ……今のお父様には誰かの助けが必要よ)


―――……ズットオソバデ、ウタイマショウ。


(幻聴?でも綺麗な唄……)

 預けられた体重はとても軽い。もしかしたら私より軽いのかもしれなかった。

 項垂れた草花は、お父様の奇跡で見る見る力強さを取り戻す。可憐に咲き誇る花弁は鮮やかなピンク、ホワイト、そしてレッド。

「泣いているの……?」

「え?」

 お父様は中空に視線を彷徨わせ、漂う氣を感じ取っている。

「理解されなくて辛いの?……そんな事はないよ。あなたを心配してくれる人は沢山いる……だから、どうか悲しまないで……」

「お父様、一体誰と話して」

 続けて発せられたのは衝撃的な名前だった。

「お、お父様……本当、ですか?デイシーが……こんな事」

 一本螺子の抜けた風な幼馴染がそんな深い悩みを抱えていたなんて。他の人間の口から聞いたのなら絶対信じなかっただろう。

「ええ、この氣は確かに彼女……本当の姿を誰にも分かってもらえず、泣いています」

「本当の……?」

「私も詳しくは知りませんが、デイシーさんは生まれた時から魔力が非常に高く、しかも普通なら修練の必要なその解放を生後一週間程で体得していたそうです。制御を知らないまま……」

「純魔力の解放を……?それは危険だから禁止されているはず」

「ええ。ですが、乳幼児に制御を教えるのは殆ど不可能です。当時存命だった御両親は日に何度も魔力に打ち据えられ、エルに泣きついたそうです。でも……彼の力と知識を以ってしても完全制御には数年掛かりました。結局自力では困難だったので、抑制魔術の掛かった伊達眼鏡を常に装着させる事にしたそうです」お父様は深い溜息を吐き「どうやら本人は心の底から納得していた訳ではないようですが……」

「あの眼鏡が伊達?」

「今は多少の度が入っているかもしれません。エルの家系で目が悪い人は余りいませんでしたが」

 じゃあ今のデイシーは裸眼で歩き回っている訳ね。確かに学生時代、彼女が眼鏡を外した所を一度も見た事は無かった。まさかそんな事情だったなんて……。

「ルザ」

「は、はい」

「事は一刻を争います。彼女にこれ以上辛い思いをさせないために協力して下さい」

「勿論です、何なりと仰って下さい!」

 良かった……!緊急事態を前に、一時的とは言えお父様の生気が戻った!

「ありがとう。ではあなたはエルを探して下さい。今日は……何かは忘れましたが大会ですし、恐らく執務室にはいないはずです。私はこの氣を追ってデイシーさんを見つけ、エルが来るまで何とか説得してみます」

 エルシェンカはまだ不死省の会議室にいるはずだ。さしものジュリトもお父様直々の命令とあらば拘束を解かざるを得ない。

「分かりましたお父様、すぐに連れてきます。だから絶対に無茶はしないで下さいね」

「ええ」

 首を微妙に上へ向けながら、お父様はふらついた足取りで中庭の出口へ歩き出す。私が呼び掛けてももう返事は無かった。

 ふと気配を感じて振り返ると、開いた窓の傍に誰かが立っているのが見えた。あれは、デイシーの親友?

「これ、デイシーちゃんのだ」窓辺に置かれた眼鏡を手に取って観察する。「忘れ物かな?今頃探しているかも……」

「あなた」

「は、はい!!」少女の身体がビクッ!となる。「あ、あなたは聖者様の」

「ルザよ。その抑制、いえ眼鏡を渡してもらえない?私から」

 言いつつ考えを巡らせる。私に掛けさせる力があるの?無尽蔵の魔力を吐き出すデイシーに。

 私が迷っている内に、少女の首が弱く横に振れた。

「いいえ。久し振りに会って話したいし、私が返しておきます」

「え、ちょっと」

 あ、思い出した。この声、さっきかごめかごめの真ん中にいた少女の声だ。

「届け物をすると言えば、子供達もこれ以上遊んでとは言わないでしょうし……」疲れた表情で呟く。

「いえ、今あの子色々あって」

 無駄だった。硝子窓を閉めた彼女は一度頭を下げ、廊下を左に歩き去ってしまった。




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