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マンハッタン狂詩曲  作者: 木山碧人
第九章 死の街

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第16話 エピローグ

挿絵(By みてみん)





 黒い教会内にある、ブリーフィングルーム。


 最奥のモニターに映し出されるのは、艦橋の映像。


 それを神妙な面持ちで見つめる、白衣を着た女性がいた。


「……Xデーまで、12年」


 飛行空母『ガンダールヴ』の開発者ナガオカ・ミア。


 人類救済の一役を買いながらも、不安はぬぐい切れない。


 彼女は手元にある指示棒のボタンを押し、画面を切り替える。


 ――映し出されるのは、暗がりの格納庫。


 そこには一体の巨大なシルエットが浮き彫りになる。


 全長は約20メートル。頭部パーツが伴った二足歩行兵器。


「急がねばなりませんね。空母に搭載する機体……伝意装甲機の量産を」


 ◇◇◇


 人類救済より翌日。9月6日午前。黒い教会内にある病室。


「――――」

 

 そこで目を覚ますのは、赤いフルフェイスマスクを被る少女。


 バイザーの一部は欠けており、特徴的な赤い瞳が露わになっている。


「やっぱり……誰もいない……」


 寂寥感のある病室を見回し、ローズは言った。


 限定的な『透明人間』が至る末路は、いつも同じ。


 どれだけ関係値を深めようとも、いずれは去っていく。


「…………」


 すると、ガラリと病室の扉が開く音が聞こえる。


 入ってきたのは、緑のフルフェイスマスクを被る女性。


 同期であり、部下。似たような悩みを共有できる稀有な存在。


「クレ・マチス……」


 自然と口にするのは、現れた存在の名前。コードネーム。


 無口な彼女は、挨拶を交わすこともなく、事務的に行動する。


 黒服の懐に手を突っ込み、そこから取り出したのは四つ折りの紙。


「……手紙。……未来のエデン・キースから」


 さっさと用件を済ませて、そそくさと去っていった。


 再び訪れるのは無音の空間。手元に残されたのは手紙だけ。


「――――」


 見ないという選択肢はなく、折られた紙を丁寧に開く。


 緊張が高まり、ゴクリと唾を飲み、綴られた文字に目を向けた。


『達者でな。我が愛しの娘』


 書かれた内容はたったそれだけ。


 情緒豊かで、重厚な言葉じゃなかった。


 それでも伝わる。思いが心に染み込んでくる。


「お父……さん?」


 マスクを外し、ほろりと涙が零れ落ちる。


 短い銀髪を露わにして、言葉の意味を噛みしめる。


 ひとしきり涙を流し終え、心と感情の整理がつき始めた頃。


「捜さ、ないと……」

 

 病み上がりの身体を突き動かすのは、本能。


 任務以外の行動で初めて、自我を持てた気がした。


 ◇◇◇


 同時刻。コロンビア大学。キャンパス内。


 席に座っているのは、ストリート系のギャング。


 若者を中心とした集団で、リーダー的な存在に欠ける。


「…………」


 登壇するのは、車椅子に乗ったエデン・キース。


 意思の力を可視化するゴーグルをつけ、言い放った。


「いいか? 俺が頭で、お前らは手足だ。12年後に起こるXデーに備え、戦闘力と組織力を強化し、俺たちを見捨てた人類に復讐を果たす。組織名は……『ZX(ゼクス)』。その時まで俺たちは影に潜め、十分な力を蓄えた後……世界に終止符を打つ」


 ◇◇◇

 

 同時刻。マンハッタン、高層ビル内にある休憩室。


 天井は崩れ、人の出入りはなく、復興の兆しは見えない。


 閑散とした空間の中、テーブルに座り、コーヒーを飲むのは三名。

 

「ひとまず、『人類の救う』仕事は片付いたわけだが、次はどうする?」


 全ての始まりとなった場所で問いかけるのは、ヴォルフ。


 当初の目的からは大きく逸れたものの、再び振り出しに戻る。


「意外だね。面倒が片付けば、私を追い払うんじゃなかったのかな?」


 次に反応したのは、ウォルターの身体を乗っ取るレオナルド。


 初めは殴って正気に戻して、魔術商社に勧誘するのが目的だった。


 人類を救った今、妙な関係性が構築され、殴るに殴れない状況となる。


「今はいい。急ぎじゃないからな。それに、使命が終われば引っ込むんだろ?」


「聡いですね。殴るより、頭を使うようになりましたか。感心感心」


「茶化すのはやめろ。……それより、次は何をしでかすつもりだ?」


「そうですね。私が最も興味関心を向けているのは……彼」


 レオナルドが視線を向けた先にいるのは、七三分けの男性。


 ウィル・チータムと名乗る、食えない主演俳優に関心が注がれる。


「正体は問いません。あなたは次に何をされたいのですか?」


 問いは極めてシンプル。機密性を保ったまま答えられる話題。


 プライベートな問題に踏み込むことなく、三人の主導権を託した。


 内容にもよるが、ヤツが抱える思惑に巻き込まれることになるだろう。


「次は……そうだな…………。厄介事を請け負うギルドの設立ってのはどうだ? 善も悪も関係なく、払える金次第で動く『なんでも屋』ってのが基本コンセプトだ。そこの元大統領はともかく、ヴォルフの兄貴の主目的は金稼ぎだろ? このご時世ならガッポリ稼げるぜぇ。悪い話じゃないだろ? な?」


 明かされるのは、褒められたものじゃないビジネスの展望。


 まだまだ手の内は分からないが、確かに悪い話じゃないのは確か。


「共同経営か。……まぁ、オレは構わねぇが、ギルド名はなんだ?」


「――『フィクサーズ』。崩壊したニューヨークを影で牛耳ってやろうや」


 三人の運命を紐づけたのは、黒幕の複数形。


 誰かが異を唱えることなく、方向性はここに定まった。


 ◇◇◇


 同時刻。ブルックリン。マランツァーノ邸。晩餐室。


 そこに集うのは、人類を救済したマフィアの面々だった。


 それぞれの手元にはワインが揃い、主役の音頭を待っている。


 視線が注がれるのは、黒服に着替えた副操縦士。ラウル・スミス。


 期待と重圧を一心に背負い、ここで言うべきことは既に決まっていた。


「人類の救済と、ルチアーノファミリーの再興を祝し、乾杯!!!」


 それぞれが苦労をねぎらって、勝利の美酒に酔いしれる。


 もう『スミス』のファミリーネームを名乗ることないだろう。


 これからは、ニューヨークに根を張るルチアーノの名が知れ渡る。


 そうすれば、いつかは会えるだろう。我が妹、ラウラ・ルチアーノに。


















































































































◇公開予定リスト


・ドイツ編

・地獄編

・巨大生物攻略編

・マルタ編

・???/Xデー ←NEW


公開順未定。順次更新。


◆公開未定リスト


・超常現象対策局(仮)

・ザ・マランツァーノ(仮)

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