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マンハッタン狂詩曲  作者: 木山碧人
第九章 死の街

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第12話 乗艦

挿絵(By みてみん)





 浮上するのは、戦略飛行空母『ガンダールヴ』。武装不明ながら、放浪者ドリフターを一掃できる兵器らしい。想定通りの仕様でぶっ放してくれるなら願ったり叶ったりなわけだが、扱い方を誤れば世界は滅亡するらしい。そんな兵器を開発するなって話でもあるが、人類の歴史を振り返れば責めても意味がない。科学者の探求心を抑えることはできず、よりよい社会を実現しようと願った結果だ。


 それより、重要なのは今。

 

「……ここから入れる保険はあるか?」


 振り返った先には、潰れた車から現れた面々。持ち込んだ武装をトランクから取り出しているが、上空に広がる光景に面を食らってる。現状の手札では、お手上げ状態。相手が誰であろうと、先に目的の品を奪われたのは間違いなく、状況的には詰んでいる。なんせ、敵の主戦場は空だ。【火】に依存した航空機は扱えず、止める手段がない。頼みの綱は詳細不明の意思の力か……それとも……。


「あるよ。そのために私がいる」


 そこでようやく声を発したのは、ローズ。


 翼の生えた赤い両脚を羽ばたかせ、手を差し伸べた。


 ◇◇◇


 最深部と思われる格納庫にはたどり着いた。


 『ガンダールヴ』と思わしき空母には搭乗できた。


 残る手順は乗っ取るだけだったが、そこで空母は浮上。


 搭乗ゲートを無理やり突き破り、たどり着くのは都市上空。


 艦橋に差し迫る廊下の窓から確認し、起こった現象を理解する。


「待て待て待て……。私は何もしてないぞ。一体誰が操縦してる!?」


 予定通りの先にあったのは、予測不能の事態。


 すんなりと侵入できたはいいが、最後の最後で度肝を抜かれた。


「アンノウンの登場か。なんにしてもやることは同じだ。そうだろ?」


 並び立つカルロは、落ち着いた様子で声をかけた。


 視線の先には艦橋に通じる扉。脇には制御盤が見える。


 能力を行使すれば、正体を確認することは可能になるはず。


「仰る通りだな。……電磁操意エレクトロキネシス――【構造掌握アクティベート】」


 疑う余地もなく、制御盤に右手をかざし、唱える。完全な支配には艦橋内のパネルに触れる必要があったが、目の前の扉を操作するには十分。言霊と意思に伴い、閉ざされた扉が開くと、そこには待ち受ける一人の男がいた。


「一足遅かったな……副操縦士」


「機、長……? いや、あなたは……」


 現れたのは、ボロボロの制服を着た、髭面のエデン機長。


 一目で分かるほど老け込み、以前と同じようで違う人物だと分かる。


「前置きはいい。マフィアにつくか、俺につくか、今すぐ選べ」


 状況が詳しく説明されることはなく、迫られるのは二択。


 詳しく聞こうとしても突っぱねられるのは、目に見えていた。


「…………」


 カルロは沈黙を貫き、介入する素振りは見えない。


 共に潜入してきた他の面々も口を閉ざし、見守っている。


 退路はあったが、状況的に答えないという選択はできなかった。


 ――だからこそ。


「私は……」


 ◇◇◇


 ローズに抱えられ、飛翔するのは空中。


 赤い両脚の翼を羽ばたかせ、快適に空を旅する。


 他の面々は別の方法で上空を目指して、この場は二人きり。


「道中だんまりだったな。人に深入りするのが怖いか?」


 心置きなく問いかけるのは、気になったこと。


 ローズが俺から距離を置こうとしていた理由の模索だ。


「どうせみんな……力に溺れて、私のこと見えなくなるでしょ。関わっても無駄なだけ。効率が悪い。好きにも嫌いにもならない位置で無関心を貫けば、私が傷つくことはない。……みたいな本音が聞きたいんでしょ? 残念。ハズレ。私には私の信念がある。だけど、心を明かすには好感度が足りないから」


 当の本人が饒舌に語ったのは、本音のような嘘。


 深掘りはシャットアウトされ、足りない条件を明かす。


 ここからどんな話題を振ろうが、関係性は変わらないだろう。


「だったら、否が応でも明かさせてやるよ。……この戦場でな!」


 降り立つのは、飛行空母『ガンダールヴ』の甲板。


 周囲には早くも二足歩行兵器が立ち塞がり、銃声が轟いた。

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