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マンハッタン狂詩曲  作者: 木山碧人
第九章 死の街

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第11話 進展

挿絵(By みてみん)





 マンハッタン北端。インウッド・ヒル・パーク地下。


 そこに広がるのは、機械的な迷路。出口の見えない要塞。


 電気系統はショートし、頑強な自動扉は全て施錠されている。


 本来なら予期せぬアクシデントなわけだが、我々には功を奏した。


電磁操意エレクトロキネシス――【構造掌握アクティベート】」


 私の意思能力は、電動の物体及び構造物のハッキングを可能とする。大抵の場合は、元々の電流を上書きするのに多大な労力を強いられるわけだが、停電している場合は省エネルギーで済む。本来、ワンフロアの掌握が限界だったところ、施設全体のマッピングに加え、全ゲートのコントロールを可能とした。


「どこまで見えた?」


 辺りは暗闇に満ちる中、問いかけるのはカルロ。


 二丁拳銃の引き金を引き、マズルフラッシュが瞬いた。


「オールコンプリート。最短ルートでお届けできるが、あいつは別だ」


 放たれる銃弾が飛んだ先には、二足歩行の自律した黒い機械。


 先鋭的なフォルムで、両腕と両脚を器用に動かし、頭部分はない。


 武装は機関銃二丁。【火】の概念に依存せず、ハッキングは個別に必要。


「荒事はお任せあれってな」


「頭のない機械相手に負けるかよ」


「前だけ見てろ。後ろは任せときな!!」


 そこに数名の援護射撃が加わり、機械は沈黙。


 爆発を伴うことはなく、現フロア内の制圧が完了した。


「………」


 返事をせず、心置きなく前だけを見つめる。


 飛行空母の強奪まで、大して時間はかからないだろう。


 ◇◇◇


「前見ろじいさん、前、前、前!!!」


 七人乗りの車内に響くのは、助手席に座るエデンの叫び。


 視界の先に映るのは、道路交通法を守らない数匹の骨共だった。


「まか、せい――――っっ!!?」


 運転する高齢者ドライバーは急いでハンドルを切るも、横転。


 グワングワンと視界は揺れ、何回転かした後にようやく停止する。


「…………生き、てるか?」


 逆さになった車内で、ふと問いかける。


 辺りはガラスが飛び散り、てんやわんやの状態。


「どう、にかな……」


「問題ありませんが、外をご覧ください」


 返事をよこしたのは、ヴォルフとレオナルド。


 他も見た限り無事で、問題なのは外に広がる光景だ。


『『『『『『――――――』』』』』』


 車に押し寄せてくるのは、大量の放浪者ドリフターたち。


 音を聞きつけたのか、数匹どころの騒ぎじゃなかった。


「ありがちな展開だが、まずいんじゃないか? 武器の大半はトランクの中だぞ? 俺の得物は使えんことはないが、索敵発破型のピーキーだ。この体勢の場合、即ドカン。敵味方諸共重力に圧し潰されるわけだが、どうする?」


 ウィルは拳銃を握り込み、現状を端的にまとめる。


 意思の力とやらを抜きにして考えれば、概ね正しい見解。


「……いいや、撃て。全責任は俺が取る」


 ないものねだりをしても仕方がない。


 ありものの手札で最善を選ぶなら、これしかない。


「正気か? 頭をぶつけて、気が狂ったんじゃないだろうな?」


「事細かに話している時間はねぇ。いいからとっとと引き金を引け!」


 骨共の腕が車内に迫る中で、声を荒げ、決断を急がせる。


「あー、分かったよ。もうどうにでもなれだ!!!」


 正気と狂気の狭間で、ウィルは引き金を引いた。


 口径のでかい拳銃から発射されたのは、一匹のネズミ。


 ボトンと車内に落ち、近くにいる放浪者ドリフターに反応し、動き出す。


「――――」


 エデンはシートベルトを外し、逆さになった車内上部に着地。


 窓枠の外に出ようとするネズミ型爆弾を手で掴み、外に放り投げる。


「骨は外だ」


 瞬間、重力の渦が発生し、衝撃で車は地面に沈み込んだ。


 あわや圧し潰されるところだったが、身体の原型は留めている。


『『『『『『――――――』』』』』』


 最も被害を受けたのは、外側にいた放浪者ドリフターだった。


 重力渦の発生地点は車の真上。球体状の圧が発生する。


 外はギリ効果範囲内で、下はギリ効果範囲外という寸法だ。


 博打だったが上手くいった。問題は山積みだが、ひとまず安心。


「ローズ……車体を持ち上げてくれ」


 とはいえ息つく暇もなく、指示を飛ばすと、車体は上がる。


 一足先に窓から外に出たエデンは服についたガラスを払いのける。


「やれやれ。ここはどの辺、だ――」


 ふと空を見上げた先には、言葉を失う光景が広がる。


 航空母艦をそのまま空に浮かべたような物体が見えていた。


「………………ガンダールヴ」

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