覚者
「着いたか」
『他人の心に入るのは初めてだが、不思議な気分だな』
「清掃の時間の始まりって訳だ」
『楽しくないのか?終わると本当に心がすっきりするぞ』
「(何も答えない)」
『向こうの側から片付けていこう』
「結構それぞれ、面白い色や形をしてるんだな」
『そういう形のやつは大体が負の感情だ、廃棄しておけ』
「こんなに綺麗でもか?」
『そんなものが綺麗ってセンスが俺には解らないが、自分の心に負の感情なんか残したくないだろ?』
「………わかった」
『俺は向こうを片付ける、ここいらは負の感情だらけみたいだから廃棄しまくれば良いさ』
「やっておくよ」
『グッドラック!』
『おい』
「何だ?」
『向こうをやっとけって言ったよな?』
「そうだな」
『おい!今、何をしたんだ?』
「………お前を殺そうとしてるよ」
『やめろ!痛い!痛い!!』
『こんな事をして、絶対警察に捕まるぞ』
『このイカれ野郎!!』
「捕まらないさ」
「普通なら、心の中に武器なんか持ち込める訳が無いだろ」
「不可能犯ってやつだ、現実の世界でお前がどんな面白い死に方をするかなんて俺は知らないが、さぞ愉快な事になるだろうな」
『何をしてるんだ……?』
「俺はな、昔から怪物になりたかった」
『それをそんなに一箇所に集め過ぎるのはよせ、精神が変容して頭がおかしく……』
「とっくになってるさ」
「これで大体だな」
『お願い…助けて……』
「怪物の初仕事に、人間でも食ってみるとするか」
「ここで躰が千切れると、現実の躰はどうなるんだろうな?」
「俺に教えてくれよ」
『痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い』