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ゆいこ視点

「もう恋に恋するおままごとはちゃんとおしまいだから!

 ひろしはやっぱりわたしの良いお兄ちゃんだよ!」

嘘。

ううん、今は嘘かもしれないけど、いつか本当にしたいって思ってる。

ひろしのためにも、たくみのためにも。

本当に、しなきゃ。


だってわたしは、わたしのせいで

今までひろしに彼女ができなかったのを知ってる。

だってたくみは、わたしがいつまでもひろしのことを

忘れられないのをわかってて、

それでもいいって、待つって言ってくれた。

全然伝わらなくて落ち込むわたしを慰めながら

ずっと側に居てくれたのはたくみだから。

これは、わたしたちそれぞれが前に進むための決別の言葉。

わたしは、ちゃんと笑って言えてたかな。


ひろしの前では最後まで明るく元気なゆいこでいたかった。




たくみが好きだって言ってくれたとき、素直に嬉しかった。

わたしでいいの?

何をしたってわたしはひろしの好きな人にはなれそうにない。

わたしはきっと、人に好きになってもらえるような人間じゃないんだ。

自信もなくなって、わたしじゃだめなんだって凍えていく心がやっと抱きしめてもらえた気がして、

気が付くと涙がこぼれていた。

のどが詰まってうまく話すことができないでいると

大きな手が優しく背中をさする。

小さな頃から変わらないそのしぐさに、さらに涙があふれてくる。

どうして今まで気がつかなかったのだろう。

こんなにいつも優しくしてくれたのに。


嬉しさと、

たくみの気持ちに気づかずに

ずっとひろしのことを相談していた後ろめたさと、

気がつかないようにしていたのに

もうひろしのことは諦めるしかないんだと自覚してしまった苦しさと。

いろんな感情でぐちゃぐちゃになる。

どうしようもなくひろしのことが好きなわたしと、

このままたくみのことを好きになれたら良いのにと思うわたし。



すぐには答えは出せなくて、たくさん悩んだけれど、

やっぱりこのままじゃだめだって思った。

ひろしのことは諦めて、ちゃんとたくみを好きになりたい。

それができたら、みんな幸せになれるはずだよね。



忘れられない恋なんて無いんだって、

女はどんな恋だって忘れられるってどこかで見た。

「次の恋をすれば忘れられるから!大丈夫!」って友達も言ってた。

だから、この気持ちだって忘れられるはず。



わたしがひろしをただの過去にできるまで、ひろしには会わない。

わたしはかわいいものが好きだし、

思い出を大事にするタイプだったから、

中学校の制服も捨てずにとっておいていたけど

ひろしのことを思い出してしまうから

高校の制服と一緒に近所の子に譲った。

あーあ、中学の制服も、高校の制服も、かわいくてお気に入りだったんだけどなあ。

制服デートとかしたかったな。

でも、いつまでも大事に置いていたらいけないよね。

わたしはもう、卒業したんだから。


ずっと飾っていた写真立て。

ひろしがくれた誕生日プレゼント。

かわいいって言ってくれた髪飾り。

わたしがわがままを言って、貰ったひろしの制服の第2ボタン。

そういえばそのときに、たくみも「ついでにやる」って

第2ボタンをくれたっけ。

これじゃどっちがどっちのかわかんないよ……ばかだなあ。

たくさんの思い出を封印していく。



もっと大人になったら、

「わたし、あのときは本気でひろしのことが好きだったんだよ?」なんて

ただの思い出話として笑って言えるようになるのかな。

はやくそんな日が来ますように。

ゆいこ視点はひろしへの決別。たくみと前に進むという決意。でもまだひろしのことは全然忘れられてない。というイメージで書きました!

たくみのことをちゃんと好きになりたい、ならなきゃいけないって思ってる感じです……

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― 新着の感想 ―
[良い点] わ〜!!!『ゆいこ視点』拝読できて嬉しいです!ありがとうございます! 心情ががとても丁寧に吐露されていて好きです。 ゆいこの素直な気持ちがわかることで、読み手からは、ボタンの掛け違いの部分…
[良い点] ゆいこ視点を書いてくださって、ありがとうございます。 まだ、ひろしへの気持ちが残っているなか、ゆいこがどんな思いで決別の言葉を述べ、思い出を封印していったのかがありありと伝わってきました。…
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