ひろし視点
『下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ』[第311回]2024.9.13OA 「ゆいこのトライアングルレッスンU」にてありがたいことに採用していただきました。
https://youtu.be/NWWemdPSdh8?si=OGfEajbu3UDEY0uf
※「ゆいこのトライアングルレッスン」は声優の巽悠衣子さんが原案です
初投稿で右も左もわからず、こんな感じの投稿の仕方で良いのかわからないのですが記念に投稿してみます。
読んでいただけましたら幸いです。
ゆいこは俺のことが好き、というのは有名だった。
小さな頃からことあるごとに好意を隠しもせず、
「好き!」「大きくなったらひろしと結婚する!」などと言ってきた。
ゆいこはたくさん俺に好きだと言ってくれたが、
俺はそんなゆいこのことを妹のようにしか思えず、いつも適当に流してきた。
いつからだろう、ゆいこが俺に好きだと言わなくなったのは。
そのことに気づいたのはゆいこが高校を卒業し、大学生になってしばらく経った頃だった。
少しは大人になったということだろうと特に深くも考えていなかったが、
どうやらそれだけではなかったらしい。
「……あのね、私、たくみと付き合いだしたんだ。
ひろしには今までたくさん迷惑かけちゃったよね、ごめんね。
でも安心して!もう恋に恋するおままごとはちゃんとおしまいだから!
ひろしはやっぱり私の良いお兄ちゃんだよ!」
それを聞かされたとき、俺はどんな顔をしていたのかわからない。
記憶の中のゆいこは制服姿をしていて無邪気に笑っているが、
今は大学生らしく私服を着ており雰囲気もなんていうか少し大人っぽくなった。
正直に言うと見慣れない。
ああ、あの頃のゆいこはもういないんだなと思った。
ゆいこが「かわいいでしょ!」と自慢していたブレザーのリボンはもうない。
俺のことが好きなんじゃなかったのか。
きっと彼女は、制服とともに俺への気持ちなど脱ぎ捨ててしまったのだろう。
いや、そもそも俺へ恋愛感情など抱いておらず、親愛の情だったと気づいてしまっただけか。
ただひとつ言えるのは、この気持ちに今更気づいたところでもう遅いということだけ。
きっとこれから先、母校の制服を見るたびに思い出すのだろう。
スマホを開こうとして取り出した黒い画面には、
手が届かなくなって初めて自分の気持ちに気づいた馬鹿な男が映っていた。
ご覧いただきありがとうございました!
ユニフォームを着せるのではなく制服を脱いだ話なので趣旨ズレかなと思っていたのですが、採用していただいて素敵すぎる朗読をしていただき嬉しさやらなんやらで混乱しています。
巽さんがほかの視点も欲しいと言ってくださったので、もし書けたらほかの視点もアップしたいという気持ちはあります……!