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転校したら、首位のチームに入れられました(ただし嫌われ者の集まりです)  作者: サエトミユウ
3章 ナンバー99は語る

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第59話 作戦決行 ②

 アッシュは寂しそうに窓を見るシャム・シェパードを見た。

 大した役者だ。クロウが興味を持つだけある。

 傭兵時代、暗殺業者ともかかわったことがあるが、これだけ〝らしくない〟演技をする暗殺者はお目にかかったことがなかった。

 だが、やはり二流だな。

 もし一流なら、この俺の暗殺なんて割の合わない仕事は受けない。


 そんなことを考えつつ、シャム・シェパードに話しかけ、暗器をふるう彼女の一撃を防いでみせた。

 互いに軽口を叩きつつ、わざとわかるように氷結魔術をかけると間一髪といった感じで防いだ。

 アッシュは愉しみすぎて殺してしまうところだったかと少し焦る。

 だが、ま、そのときはそのときか。クロウに謝って許してもらおう。虫の息程度ならベストではないがベターの結果だからな、と、開き直った。

 どこまで出来るのかと小出しに実力を出しつつ戦うと、暗殺者だけあり俊敏でさまざまな武器の扱いになれていたが、パワーと魔術に関しては大したことがなかった。


 だが、情報操作はなかなかのようだった。

 クロウから、

『ちょっと面白いからそのまま流す』

 と、通信が入り、何のことやらと思ったら、足音から始まりあたかも教室の外で誰かが叫んだように聴こえる音が流れてきたり、果てはジェシカが『助けて!』と叫ぶ声が流れてきたりした。

 なかなか臨場感溢れるサウンドだ。


『うお、スゲェ! マジで外から音が聴こえてきたみたいだったぜ!』

『ジェシカの憐れっぽい声はレアだったな』

『やだちょっと、私こんな声出さないわよ』


 クロウが待機中で暇をしているリバーたちにも流しているようで、感想を言い合っていた。

『ちょっとこっちは殺し合いの最中なんだけど? もう少し緊張感ってないのかな?』

 アッシュが思考通信で苦言を呈していると、うっかりシャム・シェパードを殺しそうになってしまう。

 しまったと思ったが、どうやら無事らしい。跳ね起きてこちらを睨んでいる。

 ホッとしつつ、つい説教をかましたら逃げてしまった。


 外へ逃げられないよう、窓の方へ近づいたら氷結魔術を飛ばす。

 危機察知能力はかなり高いな、と思いつつ見事に躱すシャム・シェパードを見た。

 徐々にポイントに近づいているが……はたしてクロウの考えた策がベストなのかとアッシュは疑問に思いつつあった。

 クロウにとって、情報は宝であり玩具だ。

 実際、クロウの得た情報によっていろいろ救われることは数え切れないほどたくさんあるのでクロウがほしがったのならその情報は多少手間をかけることになっても得た方がいい。

 だが……今回のやり方は、かなり危険なのだ。同意したが、今でも迷っているし取り止めたい。

 うっかり殺したことにして阻止した方がいいんじゃないか?

 そう思っていたら、ジェシカを見つけたらしく向かっていった。

 ジェシカは躱して蹴りを放つ。

 通常なら間違いなく背骨が折れたはずなので、かなり手加減したのがわかった。

「うーん……。ジェシカが手加減しているとなると、俺がうっかり殺しちゃったらまずいな」

 クロウへの愛と過保護さが誰よりも強いジェシカが『シャム・シェパード生け捕り作戦』を真面目に遂行しているとなると、アッシュが不真面目にやって殺すわけにはいかなくなる。


 ……と、思ったら、キースは間違いなく殺す勢いで殴りかかっていた。

 ジェシカの蹴りを喰らったのは殺気がこもってなかったからだろう。キースの拳は避けていた。

 続いてリバーが仕掛ける。

 こちらも殺す勢いだ。『お前ら仲良くなかったか?」と思うほど容赦ない。

 そういえば、リバーは情に篤いが情に流されることはなかったなということをアッシュは思い返した。

 リバーは、アッシュを殺そうとしたのなら、たとえほんの少し前までじゃれ合っていた相手だとしても、鉄パイプでくし刺しにする冷徹さがあった。

 ジェシカとキースはそもそも仲間以外に心を許さない。

 クロウは――誰にもわからない。心を許しているのか許していないのか。自分本位なようでいて、仲間想いだったりする。

 今回も、いったいクロウの本心はどこにあるのか誰にもわからないまま、全員がシャム・シェパードを追い詰め誘導している。


 そして、誘導に見事引っかかったシャム・シェパードは、クロウに捕らわれた。



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