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転校したら、首位のチームに入れられました(ただし嫌われ者の集まりです)  作者: サエトミユウ
3章 ナンバー99は語る

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第57話 決定打

 結局、証拠不十分でクロウは解放された。

 というか、調査官が調査をしようとするたびにジェシカがほぼ喧嘩腰で調査官に詰め寄り、終わった後はクロウを抱きしめスリスリしつつジェシカが殺気を籠めて調査官を睨みつけるので、調査官も辟易したのだ。

 また、無表情にされるがままのクロウの、瞳のハイライトが消えているのを見た調査官が、(あ、あれが理由なのかな)と、重たい愛から逃げ出したと話さなかったクロウを察したのもある。


「ようやく解放された! なんなのあの調査官!?」

 ジェシカが憤り、同意するようにキースがうなずき、リバーも、

「あと一回呼び出したら、潰してやろうかと思ったぜ」

 と、物騒なことを言った。

 アッシュは苦笑していたので、三人はいぶかしむ。

「なんでアッシュは連中の言いなりになってんだよ? お前なら裏から手を回してどうにでも出来たんだろ?」

 と、リバーが言った。

 実際、アッシュは教官とは仮の姿、名家の当主で圧力をかけようと思えばかけられるのだ。

 アッシュが口を開く前にクロウが口を挟んだ。

「私が止めた、というよりも、私が呼び出すように仕向けたのだ」

「「「!?」」」

 三人が驚いてクロウを見た。

「調査官のブレインにハッキングし、思考誘導ウイルス()をつけた。一気にインストールすると違和感などで感知される危険性もあったから、今回の私の調書を取る際に複数回に分けてインストールするようにしたので呼び出してもらったのだ」

 クロウが理由を語った。

「……つまりはよ、連中が呼び出したんじゃねえ、お前が連中を呼び出してたのかよ」

「そうだ」

 リバーの問いにクロウがうなずく。

 アッシュは苦笑したまま言った。

「……どうしようかと悩んだけど、こういうのって後々有効打になるかもしれないからね。正直、このままやられっぱなしも癪だし。こちらも利用させてもらった、ってことで自分を納得させた」

「「「なーるほど」」」

 アッシュの微妙な言い回しに三人が納得した。


 アッシュが許可した理由はそれだけではない。クロウが今までにないほどイキイキしていたからだ。

 今までもこういう騙し騙されの情報戦はやっていたはずなのに、そのときよりも楽しそうだ。

 ……思えば、この学園に入ってからのクロウは以前と違っていろいろなことに反応するようになった。

 クロウは中規模以上の戦争よりも小規模ゲリラ戦のほうが好みなのか、と思い、あまり強く叱れなかった。


 調査官の話を盗聴していたクロウが、全員に伝える。

「ミザリー・アレグラの隠れ家を見つけ、家宅捜索したらしい。アッシュとシャム・シェパードの写真が出てきたそうだぞ」

 全員が顔を見合わせた。

 それは、調査官の目がシャム・シェパードにも向くということだ。

「……そうなると、シャム・シェパードまで捜査の手が伸びる可能性があるんじゃないか?」

 キースが声に出して言うと、リバーが眉根に皺を寄せる。

「ここにきて身バレして逮捕かもしんねーのか」

 リバーの言葉を受けてジェシカも言う。

「そんな簡単に丸く収まればいいけど。慌ててアッシュを殺して雲隠れするんじゃないの?」

 アッシュがジェシカにうなずいてみせた。

「俺もジェシカの意見に賛成だ。俺は暗殺対象に上がる可能性は考えられるが、シャム・シェパードにはない。怪しんだ調査官が裏で捜査して、ミザリー・アレグラのように消される可能性もあるな」

 クロウは皆を見渡し、言った。

「さっそく思考誘導ウイルス()が役に立つな。彼を誘導してシャム・シェパードに伝えよう」


 シャム・シェパードが取り調べを受けた後、皆で待ち構えて反応を見ることになった。

 指導室から出てきた彼はこわばった白い顔をしていたが、クロウたちを認めると、ショックを受けたあとの泣きそうな顔を作った。

「どうした」と、クロウが声をかけると、目を伏せ、ゆるゆると首を横に振る。

 そして、アッシュをまっすぐ見つめた。

 それは、シャム・シェパードがアッシュを始末することを決心した、とわからせるのにじゅうぶんだった。

 アッシュはシャム・シェパードににこやかに会話する。


 シャム・シェパードの去っていく後ろ姿を見ながら、リバーがボソッと言った。

「……おい、アッシュ教官サマよ。顔に出てんぞ」

「ん? 何が?」

 アッシュはとぼけたが、ジェシカとキースは同時に肩をすくめた。

 リバーが答える前にクロウが答えた。

「とてもうれしそうだ。ようやく戦闘できると喜んでいるのが伝わってくる、と、リバーは言いたいのだろう」

 アッシュがリバーに笑いかけた。

「勘違いするなって。中途半端な状態が続くのが嫌だっただけだ。快適な学園生活を送るのに、スパイなんて要らないって考えているだけだよ。お前だってそうだろう?」

 リバーがしらーっとした表情でアッシュから顔を背け、ボソッとつぶやいた。

「今さらどーでもいーよ」

 クロウ、キース、ジェシカが同意するようにうなずいたので、

「……確かにそういう意見もあるよね」

 と、アッシュは肩をすくめた。


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