表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転校したら、首位のチームに入れられました(ただし嫌われ者の集まりです)  作者: サエトミユウ
3章 ナンバー99は語る

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/61

第52話 また暗殺者が押しかけた

 何もアクションのないまま数ヶ月経ったら、展開があった。

 ただし、双方望まない方向で。


 その日、ひきつった笑顔のアッシュが、女性を伴って教室に現れた。

「えー、なぜか今日から副教官がつくことになったんだよね。ミザリー・アレグラ副教官だ」

 教室で彼女をそう紹介したアッシュは、さらに専用回線で四人に追加した。


『たぶん、彼女も暗殺者なんだけど』


 ジェシカ、キース、リバー三人は呆れた声をあげそうになるのを必死に呑み込んだ。

 そして、今度はクロウを見つめた。クロウが情報を集め解析するのを待ったのだ。

 クロウは口元に手を置き考え込むようなしぐさをする。

『――どうやら、依頼主はシャム・シェパードと同じだ。なかなかアッシュを始末しないからしびれを切らせたようだな。……確かにやたら時間をかけるな、とは思っていたのだが、依頼主はそれを了承していなかったらしい。常に酒を飲んでは妄言と呪詛を怒鳴り散らしていたので情報が精査できなかったが……今調べた。セントラルの汚れ仕事専門業者に頼んだ履歴が洗い出せた。標的は、アッシュおよびシャム・シェパード』

 クロウから専用回線で話を聞いた四人は、さらに呆れる。


 アッシュが独り言のように専用回線で呟く。

『……となると、こっちの暗殺者はそんなに時間をかけずに仕掛けてくるのかな』

『今、殺しちゃう?』

 アッシュの言葉を聞いたジェシカが問いかける。

『……だから、簡単に殺して解決、って方向に進まないようにね? ――とはいえ、どっちみち殺すしかないのかもしれないけどさ』

 アッシュが突き放すように言ったのでリバーがキョトンとして言った。

『なんだよ? シャム・シェパードと違ってその女には積極的じゃねーか』

 アッシュは思わず苦笑する。

『変な言い回しをするなよ。……その、セントラルの汚れ仕事専門業者には俺も大変お世話になったからな。……なんせ、学生時代セントラルにいた俺をボッコボコにして、エリアにいたアンノウンの餌にしようとしてくれたし』

 ジェシカたちの表情が険しくなった。

 特に、ジェシカとキースはアッシュと似たような目に遭っている。より共感できるしぜひとも暗殺者を始末したいと考えた。


 ミザリー・アレグラは、露骨なまでにアッシュにつきまとった。どうやら教官の誰かに取り入ったらしく、99小隊の副担当にも収まった。

 リバーはイライラしたように舌打ちをしたりしたが、シャム・シェパードのときよりもおとなしい。端的に言うと、シャム・シェパードで部外者が関わるということに慣れたのと、ナンバー99に入るわけではないので『待て』が出来たのだ。

 ジェシカの方が危険だった。握手したときはこのまま殺そうかな、と考えたくらいにミザリー・アレグラに対して殺気立っている。

 キースに至っては握手どころか会話を交わそうともしない。


 ジェシカとキースにとっては、得体の知れない暗殺者よりも以前アッシュを陥れて殺そうとした裏仕事の連中のほうが具体的に殺意をぶつける対象だ。

 あと、シャム・シェパードと違ってミザリー・アレグラは見ていられないくらいに演技が下手で、アッシュを陥れる気満々なのがありありと分かる。

 自分の美貌と男好きする肢体に自信があるのだろう。まず、色仕掛けで籠絡しようとしている。

『露骨すぎてうっかり殺しちゃいそう』

 と、アッシュまでぼやき始めた。


 ミザリー・アレグラの露骨な態度にイライラしているのはシャム・シェパードもだ、とクロウは見てとった。

 その演技にボロは出ないが、ミザリー・アレグラを見て、やれやれと言った感じのため息をつくことが多くなっている。

 アッシュもさすがにバレバレの誘いに乗らないようにしている。だが、それだとミザリー・アレグラは手出しができないようだ。


『まいったな……。もう少し精鋭を送ってくれないかな? そう考えるとシャム・シェパードはなかなかの手練れなんだなって思い知ったよ。少なくとも演技では比べようもない』

 アッシュがぼやくと、四人が同意するようにうなずいた。

『事前情報が無くのんきに構えていたら、あのオドオド演技に間違いなくだまされていたわよ。それに比べてあの色狂いは……! もう少し頭を使えっての! 身体ばっか使ってんじゃねーよ!』

『おいジェシカ、下品だって』

 ジェシカが吠え、アッシュがたしなめる。

 クロウがポツリと話す。

『ただ、ミザリー・アレグラの存在はシャム・シェパードにも効果があった。かなりイライラしているようだ。もう少し静観すれば双方に動きが出そうだ』

『どちらにしろ、ミザリー・アレグラの方は時間がかけられないのだろう? なんにせよ数日以内に動くんじゃないか』

 それを聞いた四人はうなずいた。


 シャム・シェパードは本当にイライラしているようだった。恐らく、彼女が新手の暗殺者であることもわかっているのだろう。思わずクロウに愚痴をこぼした。

 クロウとしては、稚拙だがアッシュ以外には有効な手口で熱心に誘いをかけているミザリー・アレグラは、なかなか仕事熱心だなと感心する。アッシュが自分に関心が無いことはわかりきっているだろうに、それでも色仕掛けを諦めない。

 そう考えてシャム・シェパードに回答したら、シャム・シェパードは役柄をきちんと演じていない――つまり副教官として潜入したのならばそれを全うしろ、と憤りを感じているようだった。


 面白い、とクロウは初めてシャム・シェパードに興味を持った。暗殺者などという汚れ仕事なのにもかかわらず、その仕事に美学を持っているらしい。

 これは学習しがいがある素材だとも思った。恐らくこの判断は【クロウ】ではなく【レベッカ】の方だと、クロウは感じた。クロウのみの時は、今までそういう判断を持ったことがなかったのだから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ