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転校したら、首位のチームに入れられました(ただし嫌われ者の集まりです)  作者: サエトミユウ
2章 なれ初め

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第35話 キース・カールトンの独白 前編

 キース・カールトンはふと思い出す。

 他の【部隊ナンバー99】はどうしているのだろうかと。

 九十九も部隊があったわけではなく、人数が九十九人いたわけでもなく、覚えやすいようにとつけた名前。

 覚えやすいのならナンバー1でも良かっただろうに、レベッカらしい。


 ――俺も、ジェシカやリバーと同じく、幼い頃にアンノウンに襲われてレベッカに救われたクチだ。

 当時、俺と俺の家族には、家族ぐるみで仲良くしている隣家があった。

 父親同士が親友らしい。

 真面目で融通の利かない父を、隣家の父親がやんわりと庇ってくれて、隣家の父親のだらしなさを父がカバーしていた。

 俺と隣家の息子もそういう関係だった。


 そのまま何事もなく暮らしていたら、互いにカバーし合う理想的な付き合いだったのだろう。

 だが、アンノウンが襲来して、その関係は瓦解し、俺はほんの一握りの仲間しか信じられなくなる。


 アンノウンの襲来時は警報が鳴って知らせるのだが、その警報はひっきりなしに鳴るのだ。安全のためなのか、かなり遠くに発生したときでも律儀に鳴る。

 毎度毎度避難し、襲われる前に討伐隊に倒され、何事もなく戻る。何度も繰り返され、住人にも油断が出来ていた。

 あの時も警報が鳴り、俺たち家族は避難した。だが、避難に飽きてしまった隣家の家族は避難しなかったのだ。

 隣家の息子も、

「あれ、いっつも鳴るじゃん。そのたんびに避難してるけどなんもなくてさ。めんどくせーし、それより、遊びに行こうぜ! 今ならみんな避難してるから、遊び場が使い放題だ!」

 などと言いだしたのでたしなめたら、つまらなそうな顔になり両親のところに戻っていった。

 それで、当然両親とともに避難したと思ったのだ。


 だが、実は避難していなかった、そして今回出現したアンノウンは凶悪で、討伐隊を突破して町に到達しそうだ、と聞いたとき、俺たち家族は青ざめた。

 俺たち家族は、警備隊に隣人がまだ避難していない話をした。

 このシェルターにいないのだ。間違いないだろう。

 父は警備隊に助けてくれるよう訴えたが、警備隊は動いてくれなかった。

 当たり前だが、警備隊員ではアンノウンに遭遇しても敵うわけがない。

 避難するしないは個人の自由だ。警報を無視して家でのんびりくつろいでいるバカをわざわざ自分の命を懸けてまで救いに行く義務はない、とのことだった。

 もしもアンノウンがこのシェルターに到達する前に彼らがシェルターに辿りついたのなら迎え入れるが、そうでなければ無理だ、シェルターを開放したら避難している全員が襲われることになる、逃げ遅れた者のために全員を犠牲にすることは出来ないと突き放され、それは正論なので俺たち家族も引き下がった。


 ……そんなとき、父が親友だと思っていた隣家の男から連絡が入った。

 息子がひどい怪我をして避難できなかったと。妻もそれを見て貧血を起こし、フラフラしていると。自分も息子を負ぶって避難しようとしたら足を挫いてしまったと。

 迎えに来てくれ、俺たちだけじゃ運べない、家族全員で来てくれないか。


 父は懊悩した。警備隊は間違いなく助けに行ってはくれない。救助は警備隊の仕事ではないから。もっと言うなら、俺たちだって死の危険を冒してまで助けに行く義務はない。

 だが、父は助けに行く決心をした。最初は父一人で行くと言っていたが、俺と母は反対した。隣家の全員が動けないような状態なら、こちらも全員で向かい支えないと恐らく逃げられないだろう、と。

 父は俺を置いていこうとしたが、俺だって何かしらの助けになるだろうと言い切り、問答している時間も無かったので、父は警備隊にあることを頼み、救出に向かった。

 父は隣家の男と通信でやりとりをしつつ、合流地点に向かった。

 だが、そこはもぬけの殻だった。

「……おかしい」

 父はいぶかしむ。

「時間がない。父さんは詳しく場所を聞いてくれ。探して見つからなかったら戻るしかない」

 俺は父にそう伝え、父もそうするしかないと三人で焦りながら探していると――。


 手分けして探そうと分かれた途端、俺はいきなり口を塞がれ、引きずられた。

 そして、縛られて放り投げられた。

 痛みに息が詰まる。

 隣家の夫妻、そして……俺が親友だと思っていた男は、血走った目で俺を見ていた。

「おい! お前の息子はそこだぞ!」

 父と母が慌てたように飛び出してきた。

 そして、真っ青になっていた。

「せいぜい俺たちが逃げる時間稼ぎになってくれよな!」

 そう言い捨てて、三人は走って逃げていった。


 俺は悟った。

 アンノウンの足止めのために、俺たちは使われたのだと。

 そして……俺のすぐ近くに、アンノウンがいるのだと。


 …………俺が生きていたのは、父と母が命懸けで守ってくれたからだった。

 その代わり、俺は父と母と両腕を失った。

 俺が気付いたときは、救助されて治療をされた後だった。


 俺は倒されたアンノウンを使い両腕を有機機械化して、すぐレベッカの率いる傭兵部隊に入隊した。

 年齢は聞かれなかった。

 というか、勝手に「娘と同い年だな!」って決めつけられた。

 …………もう、それでいい。

 俺が加わったときにはすでにリバー、ジェシカがいた。二人も〝同い年〟ということだった。


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