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長虫切り

片手で印を組むと


 魔力の呪源

瞑想に合わせて、どぷりとどこからともなく魔力とか呼ばれる力が湧いてくる。

 肉体の強化と奇蹟の強化、勇者によっては精神で肉体を超えるともいう。

勇者に与えられた奇蹟の一つだ。


長虫が身を捩らせあの頭をこちらに向けた。

確実なほどに視認する。

くぐがぁぁぁぁぁ!

 怪物は雄叫びのままに前足を岩場から離して突貫する。

タックル、石柱を蹴散らして迫り来た。


なんの躊躇もいらない。武器を握ったまま身体を捻り勢いをつけて構えた。



 衝突に合わせて関節の固定、槍と成して殴り付けた。


腕が痺れる。どうやら思ったより重かったらしい。

くぐぎゃああああ!

顔だけで数倍、3か4メートルはある巨体が吹き飛ぶ。

 衝突すると岩盤を砕き、大長虫は体温が高いのか湯気を出してのたうつ。

嫌だな。崩落するとディムはともかく他が死ぬ。


 そりゃそうだ。勇者とまともな人間が殴り合えば相手は死ぬ。

手加減しなければ巨大な怪物でも同じ

尋常と勇者を隔てるモノが奇蹟である。

勇気のある人でも聖人でも無く。ただの化け物、ああいや兵器か。


 それはそうと、胴体を刺していればいずれは死ぬだろうし急所は首か?体積が大きすぎるか?なら奇蹟だ。

小剣を構え直して突進すると


 一撃加える前に半身を起こした。

尾がこちらに向く。

そして、間髪入れずに放たれた。


 軌道から逸れて回避する。下手に洞窟を壊したくはない。


 大長虫は石柱に這い付き岩盤に張り付き出した。

天井に向けて動き出す。

 ああ、手が届かない場所に行ってしまうな。

距離を詰める。そして石柱に足をかけて飛び上がる。

石柱を乗り継いで背中に乗り込み掴み込んだ。

 背中の首筋の中心、小剣を捩じ込む。

骨だ。硬い。


くぐ、ぐぎゃあああ!


 絶叫

頭を振り出す。大長虫は何度も暴れる。

 今度は小剣を外させず蹴って脱出した。


当然、着地するとまた突進する。

 大長虫は対応するのか頭を向ける。

なんだ?


 くぐうぐきゃああああ

吐いた

 悪臭がする。或いは毒か。

どちらにせよ。範囲が広い。


 飛ばすか。


 構えた小剣が青い光を放つ。

燃え上がる剣と名付けられた勇者の奇蹟である。

 初めの勇者が何だったのかはわからないが、奇蹟というやつは魔術と違い種や仕掛けはない。

何が起こっているのかはわからない。

ただ、なんの役割をこなせるかそれだけは確実に理解できる。


 例えばコレは…、振り抜いた。

同時に閃光が洞窟を染め、大長虫の皮膚と肉加えて中心部までを真っ二つに裂いた。

大長虫の肉体を両断

 光が力になり小さな小剣を与えたのだ。

即ち、物理的に触れたものを剣で叩いたのと同じように破壊せよと

別に魔を払うわけでもなく。ただ力がある。それ以上はわからないがそれ以上は現状必要がない。

 現代の戦術ドクトリンとは、強力な駒である勇者を強化して戦うことを主にしているのだ。


くぐぁぁくぐぁぁ

 思わず酷い異音に顔を顰めた。

白い湯気を出して大きく二つに裂けた長虫の肉体は再び繋がり始めた。

 再生している。


思わず目を剥く

 限界はあるのだろうか。流石に何度もやるのは裂けたいが、最悪やるのだろう。

期待できるとしたらシセラだろうか。


 くぐぁぁくくぐぁぁぁ!

大長虫が吠えた。

 すると肉体に空いた孔から次々に蝙蝠が溢れ出すと、一斉にグラディムートに襲いかかった。


 なるほど、剣で全てをしらみ潰しに斬り潰す。できなくはない。

奇蹟を使えばより楽に溶かせなくもない。

大長虫が妨害するだろうが何とかできなくはないだろう。


対応は…走った。石柱の生えた自然窟や滝、目隠しにしてなるべく体力を温存すべく撹乱を図った。


 さっと石を拾い投げた。遠方を目指して何処かに、当たって何度も反響する。

完璧でなくてもいい。少しでも勘違いしろ。

 元々が不利な状態なのだから

 蝙蝠を横目に確認する。後ろにはウネウネと大長虫が付いて来る。


 天井の光を探す。

あの大長虫がこっちにいるならば、仲間の方からは遠くなっているということ

 

狙っているのは、


 天井の光が極光になった。

確認すると、岩の柱に身を寄せ伏せた。


 瞬間、光の波濤が押し流した。


 何かまでは判別できないが、熱光線だ。

おそらくはシセラリア

 ラミリックだとしても問題はない。

重要なのは多くの蝙蝠を薙ぎ払えたという事

 そして大長虫の用兵というより、蝙蝠が数に任せて押し込もうとする行動パターンがある事からできた行動だが


 肉が焼ける音をさせながら、大長虫はもがき顔面を振り回して、そして目があった。

そしてそのまま、見上げてラミリックとシセラリアの方を目撃した。

当然の如く再生している肉体をさらけて


くぐぁぁぁぁぁ!

 しかし、援軍への無視は期待できなかった。

苦悶のような咆哮を一つ上げると魔物の蝙蝠の群れがその肉体から溢れ出し上へと向かった。


つまりはラミリックがこちらにやって来る事は期待しない方がいいだろう。シセラがあぶない。


 こっちに残った蝙蝠は残り少なめだが、引き回せるのはあまり期待しない方がいいだろう。

なにせ今も大長虫と完全に目があっている。


 初めと同じように尾をうねらせて、そして天井から生えた岩を弾いた。

避ける。が、どうやら治るにしても痛いのは避けたいのか。


 切っても繋がった。もとい再生するのは対策がある。


 焔の剣

手元の小剣が橙の焔を灯す。

テンプレート的な再生殺しを構えた。

 今度は長くはならないが、あくまで消えづらいはずだ。


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