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空を飛ぶ薬

 魔術師とは、鉱物植物の調合による秘薬や儀式による秘法を行う事で魔術を引き起こし自然の力を借りる技の事だ。

 触媒と準備さえできていればワンアクションで火力を出し、逆に準備ができていなくてもある程度準備をすればやはり火力を出す。

 なんなら薬剤を使った治療も可能だ。元はこの世界の植生や生物を調べる一団だったらしい。

だがそれを反応や祝詞を含めると攻撃に転用できるとわかると戦地活用される様になり、そして当然の如く忌避された。

 今でも多くは戦闘魔術師を魔女と呼んで忌避するらしい。


代表的な魔術が、空を飛ぶ秘薬。

 具体的な内容は知らないが、靴先に塗り、ホウキにまたがる事で宙を滑空する魔術だ。

これは、少なくとも俺の知らない旧時代の技術でも、或いは勇者の力でも存在しない。


 超越的で不気味な奴らとまで言われているが、薬物を始めとする触媒を介する事で超常を起こすシャーマンだ。

治療もできる。本来の村に住み着く魔術師はそっちが本職なほど

 じゃあ、神官なにすんだよって話だが、一応神の奇跡という別ジャンルのような魔術を扱うようだ。そもそも今日は帰っているが

 アイツは面倒になると神に仕えるとしか言わない。場合によっては働くが大抵はパチ屋だ。

いや、今は迷子の捜索だ。


「ディム、見つけた」

「ああ。ラミリックだ」

 ところで、本拠地にしているカルフの村から集落を数十個つを確認した。大陸全土で田舎だからか間隔も広い。と言うか魔物ありきでこの数は異常だ。

 なぜか単独で踏破しているのが信じられない。なんの用があったんだろうか


 山の麓の端、妙に焼けている。

 蛮族のような巨大な槌に騎士の鎧。

 槌は手元にあるが…戦闘か?いや何か壊したのか?騙されたのか?大抵は、後者だな。キレられるパターンだろうな。場合にもよるが、厄介事かもしれない。対応できる範疇ならいいが


 シセラリアのホウキから降りると足をつけて、ひと呼吸してから


「…ラミリック。なにがあった?」

なぜか遥か遠方にいた仲間に問いただした。

「うむ。どうやら集合と言われていた“現地”に向かっていてな。そしたら、…なんと言ったか?まあいいか」

 物資補給で帰ったのにわざわざこっちまで来たのか

うむ。と一人でうなづく女騎士。精兵試験に座学はあったはずだが

「それでな。例のアレ、あーなんだっけ」

顎をさする女騎士、まさかその辺で炭になってる木とか実は壊してた建物とかの汎用的な単語を忘れたのか?


「あの、よろしければ私から」

 女性だが、年齢的に中年。

本土での嫌な事件で、ひどく集中力を削がれていたが、ラミリックの後ろの方にいたのだろう。


 割と整った顔立ち。着膨れを除いてもなんとなく良さげな体型ーーー


悲しいな美しかった花。

とはいえこのパターン、食べさしには興味がないが

「私の息子を助けては貰えませんか?」


もし娘だったなら興味があった。

ーーー


 ラミリックを頼ってきた女、名前はセオラ。

セオラの息子。齢は8ほどのメティロ

 両者共に棲家はマチェット鉱山の開拓村

 メティロは洞窟に向かったらしい。


『黒いおじさんに聞いたんだ。お山の暗き者の洞窟には勇者様の剣があるって』

黒い服を来た男にそれを言われてから、お山の洞窟に行く告げて駆け出して行ったとの事だ。

 この時代の勇者というと蛮族的なソレではなくヒーローを示す言葉の一つだ。

ヒーローベルトが安置してあったから、ヒーローになれるぞとか誘われたような物だ。

ちなみにベルトを巻いてもヒーローには成れないが、この大陸には暫く勇者がいなかった。何かしらの救いを欲していたという事も十分にあり得るのかもしれない。

別に勇者の剣は特別なそれではないのだが、象徴的な武器になっている。

そもそも使わない勇者もいる。事実として携帯性に優れる武器との相性はいいのだが


だからまあ、嫌な事に子供が釣れたのだろう。


 黒い男はともかく、この手の子供を探すのは勇者の使命に近い。

誘拐すればいいじゃんとか、そもそもこの暑苦しい上に湿気の酷い気候になんで黒い服とか気になるが


わざわざ知って見逃したと知られたら本土から何か言われるかもしれない。この地域は特にグラディムート達のパーティしかいない。

 というか大した危険はないが形だけ送られているのだ。


 まあマチェット山脈の開拓村の近くの洞窟など、いくらでもあるが、おおかた潰して回った事もあり絞れるし、実質数は少ない。

 近い洞窟は繋がっている事が多いし、間違えても被害は少ないかもしれないが、この辺りの洞窟には名のある魔物が棲息している。

 恐るべき暗き者。洞窟のウェール。

確か、古い時代にあったとされる民謡。

大陸に着いた時、歓迎の宴で聞かされた。


古い。ぶっちゃけ魔の鬨の変より前、魔物がいたかも定かではない旧時代での昔だ。


 つまり、暗い中では足元に注意しろと言う事だと言われているが、洞窟の中には穴が空いていて危ないらしい。足が折れたら一人では出れないとか、実際に何度か調べた洞窟は足を折りかねない穴だった。

 つまり、名のある魔物とか言ったが事故で死ぬなよって意味だ。

あれが魔物ならもう何度も見た。

 

 それにしても迷子探しの前に宿に戻って多めに薬とか持ってきてよかった。

マチェット山脈が麓の村。元々、鉱山として開発する予定があったと聞く名前もついていない僻地の村。

 椅子が欲しくて、セオラの住んでいると言う村に一軒だけあった酒場に入っている。

酒を頼まないのは諦めて欲しい。いや、身分を明白にしたから文句は言ってこないだろうが、睨んではいるな。落ち着かない。

 開店前の店内で頼んだ水を割れたコップで呷った。

「うむ。魔物の種類もわかっている。これはアレだな。怪我の功名という奴だな。“ゲッ”プかシセ“ダ”なら特定できるだろう?すぐ出発だ」

惜しいな。いうなら棚から牡丹餅とかだろう。

 この大陸に限らず洞窟は大体、蛇も蝙蝠も鼠もいる。特定できる情報ではないと思うけど、それに分かっているのは入り口を確認したからだし、そもそも、魔物の種類と言っても現地の人間が似ている生物に当てはめて呼ばれているだけだから対応策も分からない。

 シセラリアはこっちをじっと見てやはり割れたコップを傾けている。

「だが、この山の周りの掃討はまだだろう?遅れてしまったと思えばおかしな話でも無い。今すぐ行くぞ」

 仕方がないか…

「ラミリック。今回は事前調査のつもりだったはずだけど」

「うむ。だが、こうしている間にも死んでいるかもしれんぞ」

「…今死ぬなら助けた頃には死んでいるだろう」

「間違えた。今動けば助けられるかもしれん」

「まあ、そうだな」

 反論を諦めた。反論できないとは思わないし、同時に偵察なしで突破できるほど甘いとは思わない。だが、言わねば意見が簡単に通ると思われてしまう。強行的に

ミイラ取りがミイラになる。と言う事態になるかもしれない以上、正論とも言い難い。

僧侶に至ってはサボっている。

 だが、実際に最善は尽くせるし遺恨に思われるのも困るだろう。


「…個人的には今すぐの突入は反対」

 これまでダンマリだったシセラリアが急に水を指してきた。

巨大な帽子で顔は見えないが、冷静な言葉だった。

ラミリックが眉をひそめる

「シセラ。なぜだめなんだ?」

「子供とはいえ、死地に向かった。義理は小さいし、それに安全はタダじゃない」

「だが…」

 ラミリックは口篭る。単純に思いつかないのだろう。なにせ変な話も混ざっていた。予想を立てられるほど詳しくはないが厄介な目に遭うのは予想がつく

「ラミリック。貴女の意見は冷静さに欠けている」

あくまに静かにシセラリアは追撃する。だが、ここで矛先を変えてきた

「ディム。貴方のパーティだから、貴方が決めて」


帽子の奥、細い指が帽子の縁を上げていて、燻んだ赤の虹彩と目があった。

 こう言う時には一番まともだから、迷惑と無茶をかけるよ。

「やるだけやろう。悪いが付き合え」


「そうね。貴方は、なんだかんだでこうする」

シセラリアの顔は再び三角帽子の奥に隠れた。



「きっと魔王を倒す事になっても大丈夫ね」

 ところで、なるべく危険は避けて動くつもりなんだけど


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