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夏祭りの言わなくても分かるヤツ

作者: 相竹 空区

『第4回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞』への応募作です。



 僕は男子高校生として、夏の夜空へ叫ばずにはいられなかった。


「夏祭りなのに浴衣着てこなかったのぉ!?」

「は?そっすけど……」


 しかし彼女は動じず、いつもの敬語混じりのタメ口を返してくる。


「どうして……可愛い格好してくるって言ってたじゃん!」

「いや、してるっしょ可愛い格好」


 確かに普段は制服を見てるから今日の格好は新鮮かもしれない。肩出しの服とショートパンツ?僕はファッション弱者だから女の服だなぁ、以外思い付かなかったけど。


「まぁ……いやでもさ!言わなくても分かるじゃん!」

「なんすか?そのメンドイ女みたいなヤツ」

「はー!風流を解さない現代っ子め!」

「逆にセンパイは浮かれ過ぎっすよ」


 呆れ顔で首を傾げると髪がサラリと……暖簾みたいに動くのは素敵だなぁ、なんて思ったけど形容の仕方がコレだと怒られると思ったので黙っておいた。


「お面は祭りの醍醐味!このたこ焼きはなんか人気で並んでたし、イカ焼きは外せないしチョコバナナも必須でしょ!」

「なんで一気に買うかなぁ」


 ドヤ顔で両手一杯の戦利品を見せびらかすと若干ウザそうにする後輩彼女。ギャルゲーみたいで素敵じゃない?とか口に出したらヤバそうなので反芻に留める。


「なにニチャニチャしてんすか?」

「んふふ」

「キモッ」

「あぁーっ!先輩捕まえてキモいと言いますか!勝負は型抜きで決めましょ!」

「ナチュラルに型抜き行くの決めないでもらえます?」

「じゃあ何したいか言ってみろよえぇーっ!?」


 ふぅと一つ息をついた彼女がかぶりをふって咳払いを一つ。そしてコチラを睨み付けるが、背丈の差で上目遣いになっている。


「センパイ今日アタシ色々考えて可愛い格好してきたんすケド?」

「?」

「か・わ・い・い!って言ってない!」

「え?それで今日塩対応だったの?」

「当たり前でしょ!?センパイが可愛い格好してきてね!って言うから着たんですけどぉ!?」

「あ、はい。可愛いです」

「そして!夏祭りなら!」


 顔を真っ赤にしながら無言で手を差し出している。カツアゲでしょうか?恐る恐るその手にイカ焼きを乗せ──


「ちっがぁーう!手でしょ!?」

「ゲソです……」

「握れぇーっ!って言ってんだよタコが!」


 イカ焼きはひったくられたし、まだチョコバナナを握ったままの手を強引に恋人繋ぎにされたので少々惚けてしまう。


「言わなくても分かるヤツですよ、コレ」


 顔を背けた彼女の耳まで真っ赤な横顔が愛おしく感じたので、今度こそ僕は──

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