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5✳️

結局、自称ヒロインマニュエルは、魔法局で隔離されてた期間、好みのイケメンを教師役に付けることで、ギリギリ、本当にギリギリの所で進級試験に合格出来る点数を取れた。

希少属性持ちなので、出来ればこのまま実力を伸ばし、国に貢献させたいとの思惑と、下手に野放しにしては、騒動の種になりかねないとの懸念から、成績を維持し、問題を起こさない事を約束させて、学園に復帰させたと言う事らしい。


希少属性持ちは、魔法封じの魔道具が効きにくいと言うのも、懸念材料の一つだったとか。


闇魔法は、闇を凝縮したような黒い靄を、剣や鞭、短刀等の武器として変化させ攻撃したり、魔力で作り出した黒い靄を直接相手に投げ、目眩ましに使ったり、相当な実力とコントロールを身に付けると、黒い靄を操って、敵に精神攻撃を加える事も出来るらしい。

ただコントロールもせずに、闇魔法で相手を錯乱させたり、昏倒させたりも出来るけど、それは大変危険な行為なので、魔法を習う一番最初に厳しく言い聞かされるのだとか。


それを試験中容赦無くぶっぱなした自称ヒロインマニュエルは、犯罪者になるギリギリの所だったとか。

コントロールが全く身に付いて無かったので、強力な混乱をさせてしまったが、継続時間は驚く程短かったそうだ。


そんな恐ろしく頼もしい魔法は、戦力としても大いに役立つので、手離すのが惜しかったのもあるのだろう。


まぁ、私達は以前と変わらず、極力関わらない方向で行くので、迷惑を掛けられなければ、傍観する所存。


◆◆◆◆◆◆◆


と、意思確認しあって、見掛けたら遠巻きに眺めてたのに、最近学園の様子が変わってきた。


新入生歓迎会から3ヶ月。

何をどうやったのか、自称ヒロインマニュエルを、複数の男子生徒が取り囲み、チヤホヤしている。

何時ものメンバーで、中庭でお弁当を食べながら、遠巻きに自称ヒロインマニュエルを観察している。


自称ヒロインマニュエルは、好みの男子生徒に囲まれて、ニヤニヤが止まらない様子。

おとなしくしていれば、可愛い見た目をしているのに、ニヤニヤが止まらないせいで酷い顔。

それをうっとりと眺め、手に手に自称ヒロインマニュエルへのプレゼントを差し出す男子生徒達。


何かのカルト宗教ですか?洗脳ですか?と問いたい。


お弁当を食べる手も止まりがち。


「あ~、食欲が失せるから、何処か他でやってくれないかな~?」


「あれは、何がどうなってああなってんだろうな?」


「精神操作かしら?洗脳かしら?」


「ん~、それってどちらも相当な実力とコントロールが必要と聞きましたが、彼女にそれが備わっているんですかね?」


「納得いきませんね?」


「あれじゃない?男を操る術だけは、ご自慢の勘違い思考で身に付けたんじゃない?」


「そんなことが可能なのだろうか?」


「さ~?でも、人の100倍くらいは欲望が強そうではあるね~」


「どちらにしても、魔法で操っているなら、それは違法行為だね。殿下に進言しとかないと」


「そうですわね!くれぐれもご自身で確かめようなどとは、なさらない様にも進言いたしませんとね!」


「あ~、あの方は、責任感強いからな~」


「魔物取りが魔物になっては、話になりません!」


「ええ、その辺も、慎重に行くべきだと進言します」


そう言う事になりました。

ライオット様が、即行動とばかりに、お弁当を食べ終わるとすぐに生徒会室に向かった。


私達も、食べて早々に退散した。


◆◆◆◆◆◆◆


王子殿下は、進言を受けてすぐに行動してくれたのか、自称ヒロインマニュエルはそのままに、明らかに見張りと思われる取り巻きが増えた。

精神操作系の魔法を見破るのは、相当難しいらしく、しかも、掛けた本人が魔法を解かない限り、効果は続くらしい。

流石に何十年も掛かりっぱなしとはいかないけど、数年は操られてる事に自覚もなく掛かり続けるらしい。


そして関係ない傍観者のはずの私は、とても忙しい。

何故なら、魔道具研究科の魔道具製作で、偶然にも魔法阻害効果のある魔道具を作れてしまったからだ。


元々、無属性魔法には、魔法防御のバリアがあり、それは有名で、魔道具も有ったんだけど、それは1回から3回くらいの使いきりで、魔法が当たった時点で壊れる物だった。


先輩が研究していたのは、継続的に魔力を補充することで、何回も使える物にしたかったとか。

なかなか居ない無属性持ちの私が入った事で、協力を頼まれ、興味本位で参加して、何がどうなったのか、たぶん先輩も分かっていないが、偶然出来てしまったのが、魔法阻害の魔道具。

ただし、魔法の解除機能は無く、防ぐだけ。物理攻撃も防げない。

何の役に立つのか、分からない物を作ってしまった!と先輩と悩んで放置していたら、偶々講師として招かれていた、魔法局魔道具制作部の部長さんが、これは使える!って持っていってしまった。


3日後、大量に注文が来た。

先輩と2人、訳が分からなくて困惑してたら、講師の魔法局魔道具制作部部長さんが、解説に来てくれた。


物理攻撃は防げなくても、精神攻撃が防げる魔道具は画期的で、今までは教会に行ってお祈りをして、効果が切れるまで隔離されてたのが、常に身に着けて、たまに魔力を補充するだけで、精神攻撃を防げるとは、凄いことだ!と絶賛された。


なにそれ、そんなに頻繁に精神攻撃を受けてるんですか?高位貴族コワッ!と、低位貴族出身の先輩と私は恐れ慄いたのだった。


実際、他国の闇魔法使いの暗部とか暗殺者とか、人間に良い感情を持っていない悪魔とか、魔族とかが証拠が見付けられにくい精神攻撃を仕掛けてくるらしいよ!コワッ!


そんなこんなで、大量注文が来た魔道具製作に追われる私と先輩。


それが巡り巡って、現在進行形で精神操作の魔法を掛けまくっている疑いの、自称ヒロインマニュエルの監視を任された、王子殿下の側近に、私達の作った魔道具が配布されている。


側近の方達が持っている魔道具と、王子殿下が持っている魔道具の、消耗具合を調べ比較し、側近の方達が持っている魔道具の方が消耗が激しければ、精神攻撃を受けている証拠になるとかなんとか。


比較するにも、結構な時間が掛かる作業だ。

その間、側近の方達は自称ヒロインマニュエルの側に居続けなければいけないので、それだけで精神的苦痛を味わいそう。


王子殿下の側近の方達に深く同情しながらも、日常は忙しく過ぎていく。


◆◆◆◆◆◆◆


更に3ヶ月。

そろそろ魔道具の比較検討に入った頃。


自称ヒロインマニュエルに、ライオット様とエンデ様が再び目を付けられた!


王子殿下の側近の方達が、精神的疲労と魔道具の比較検討のため、度々自称ヒロインマニュエルから離れて行動し始めて、物足りなくなったのか、取り巻き以外のイケメンを物色し始めたらしい。


以前は、あまりに相手にされなさ過ぎて、諦めて他の男子に迫っていたのに、騎士科のエンデ様が目を付けられ、エンデ様と仲の良いライオット様にも目を付けた。


そして、頻繁に昼食を共にするレイチェル様を、悪役令嬢に見立てて微妙な接触を図っている。


すれ違い様に転ぶとか、食堂でわざとぶつかってスープをかぶり、泣きながら逃げていくとか、レイチェル様の帰る時間に合わせて、近くの泉に落ちるとか。

そして、その全てで、取り巻きの男子達が大声でレイチェル様を責め立てる。


レイチェル様は困惑するばかり。

レイチェル様を責めて、疑いの目で見るのは、自称ヒロインマニュエルの関係者だけ。

他は誰1人レイチェル様が何かしたとは疑ってもいない。


自作自演の猿芝居。

猿でももう少し演技力あるわっ!と突っ込みたいのを日々耐える私。

たまにチルルがつっ込んでるけど、私とチルルの存在は、自称ヒロインマニュエルには見えてないらしい。

それも、皆からヤバイ奴扱いされる理由。


身分差を笠に着て、私を苛めるのね!と泣いて責める自称ヒロインマニュエル。


レイチェル様と仲の良い私は、あんたと同じ男爵令嬢、チルルは平民。

言ってることの意味が通っていない。


度々現れる自称ヒロインマニュエルに、レイチェル様がお疲れ気味。

ライオット様とエンデ様は、グネグネしながらグイグイ近付いてくる奴に、最初は気持ち悪く思っていたのが、最近では笑いを堪えるのが大変らしい。

思う存分笑えば良いと思うよ?

思わず本音がポロリすれば、次からは本当に爆笑しだす2人。

自称ヒロインマニュエルは、何を勘違いしたのか、私のお陰で本当の笑顔を取り戻した2人!と自慢して歩いているらしい。

どこまでポジティブに解釈出来るのか、ちょっと好奇心を擽られる。


調査結果は、微妙。

確かに王子殿下が持っていた魔道具よりは、側近の方達が持っていた魔道具の方が、消耗はしていたが、それが自称ヒロインマニュエルからの精神操作なのか、他の取り巻きの誰かのせいなのかは分からなかった。


常に集団で行動する奴等、その中に何らかの方法で闇魔法の魔道具を使ったとしても、誰が何のために使用したかは判別出来ない。


更に別の調査が必要なようです。


まずは、自称ヒロインマニュエルから、取り巻きを引き離す方法、次に誰かが魔法を使った際に、その誰かを特定する方法、そして、魔法を使った人物に対する罰則の決め方。

少なくともこれらは事前に考えておかなければいけない。


と、とても深刻な顔をした生徒会長で王子殿下なクラップ殿下が仰った。

ライオット様とエンデ様が協力者に任命された。

レイチェル様は、極力近寄らないように注意された。

チルルは、出来るだけレイチェル様と共に行動するよう頼まれた。

私に、魔道具製作の無茶振りが来た!

無理無理無理無理!と本音爆発で全力で断ったのに、先輩が勝手に了解していて逃げられなかった。


放課後まで先輩に付き合わされて、魔道具製作に取り掛かったが、犯人の個人を特定する方法が、どうしたもんか全然考え付かなかった。


先輩と2人煮詰まってたら、王子殿下直々に、大量のお菓子の差し入れと、魔道具製作部所属の助っ人が派遣された。

先輩の兄だった。

先輩以上に魔道具マニアだった。


マニア兄弟との魔道具製作は、マニアックな言葉の応酬で、私にはちんぷんかんぷんだった。

不貞腐れてお菓子食ってたら、唐突に思い浮かんだアイデアを2人に話したら、天才か?!と褒められて、即行で魔道具を作り上げたマニア兄弟。

お前らこそ天才か!?とつっこみ返しておいた。


出来上がった魔道具は、離れた位置から個人を特定するのではなく、1人1人に着ければ良いんじゃね?と思い提案したもの。

極小の魔石を使って、魔法を使用した形跡が感知されると、魔石が特殊な光を発する仕組み。

その特殊な光は眼鏡型魔道具で見えるように、セットで作った。

襟の裏とか、ズボンの裾とかに縫い付けとけば、本人にも気付かれないと思う。


これをどうやって身に着けさせるか?と、魔道具と眼鏡を渡され、悩む王子殿下。

魔法実技の授業の時などに、更衣室に忍び込んでちょっと着けちゃえば良いよ!と提案したら、悪い笑顔を向けられました。

超が付く美形の悪い笑顔は、迫力がありますね!2度と見たくないけど!


◆◆◆◆◆◆◆


誰かが王子殿下の命令で、取り巻き達の服に魔道具を仕込んで観察する事2ヶ月。

結果は教えてくれなかったけど、魔道具は役に立ったようで、お褒めの言葉を貰いました。


取り巻きの数人が、学園を休学して、教会預かりになったと噂に聞きました。


それでも自称ヒロインマニュエルは、絶好調に調子にノリノリです。


ライオット様とエンデ様、王子殿下の側近のキラキラ男子数名が、常に側に居る状態にご満悦らしい。


偶々、興奮していたのか、小鼻が膨らんでフガフガしてるのを、目撃して吹き出した思い出。

注意しないと、私の方が変人に見えてしまう!


レイチェル様は相変わらず、嫌がらせのような言い掛かりを付けられている。

チルルが言い返して、やっと初等部時代のライバルだったと認識した模様。

罵りあいは語彙力の差でチルルの圧勝。

問題を起こすと即退学を言い渡されている、自称ヒロインマニュエルは、手を出す事はせず、悔しそうにギリギリ歯を鳴らしながら、逃げていき、泣き真似をしながらレイチェル様の取り巻きに嫌がらせを受けている!と、ライオット様やエンデ様に訴えているそうな。


◆◆◆◆◆◆◆


騒がしくて面倒臭くて、忙しい日々は過ぎ、幾つかのイベントも無難に過ぎた。

取り巻きが美形ばかりで、無駄に騒がなかった自称ヒロインマニュエル。


そして2年生も残り一月。

最終の魔道具の比較検討。

結果、が出る前に王子殿下の様子に劇的な変化が現れた。


場所は昼食時の食堂。

大勢の居る中で、レイチェル様の前に立つクラップ王子殿下。

その腕にぶら下がる様に腕を組む自称ヒロインマニュエル。


「公爵令嬢、レイチェル・イムエキス、貴様はこのマニュエル嬢を日々虐げていたそうだな!?そのような品性卑しい者は、この国を代表する学園に相応しく無い。生徒会長、及び王子の権限で貴様を退学処分とする!」


宣言するクラップ王子殿下の言葉に、食堂中がシーンと静まり返る。


「失礼ですがクラップ殿下、仰っている意味が分かりませんわ?」


「惚ける気か?マニュエル嬢の証言は複数の生徒の証言と一致する。処分は覆らない!」


「ですが、わたくしは彼女に指1本触れた事はありません」


「貴様の取り巻きでも使ったのだろう!」


…………………食堂に居る全員が注目し、話が続いている中、気になっていることがある。

自称ヒロインマニュエルを囲む、キラキラ男子集団の目が、正気に見えないんですが?

何て言うか、半分寝てるような、意識がハッキリしていないと言うか?

王子殿下の話す声も、何時もの快活さが無いし。


ポケットに入れていた眼鏡を装着。

先輩兄が可愛さ重視で作って、全然似合わなくて私に押し付けてきた、赤いフレームの特殊な光を見る眼鏡。


自称ヒロインマニュエルの魔道具は、胸ポケットに入っているはず。


……………光ってますね、燦然と!

精神操作の魔法、絶賛放出中の様子。


取り敢えず、取り押さえれば良いですか?


全く噛み合わない口論を繰り広げる王子殿下と自称ヒロインマニュエル、その取り巻き男子の目には、敵と認識しているレイチェル様しか入っていないらしく、私の事はガン無視なので、ちょっと動いてみる。

やはり無視。


今度は大胆に動いてみても、周りの人達に少し見られただけで、中心人物達はチラとも見ない。


なので、食堂の給仕をしている職員さんに、ロープをお願いする。

何処から出したのか、すぐに渡された!


さて、ではいきますよ!



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