表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/14

2✳️

魔力有りの判定を受けた洗礼の儀式、その後の顔合わせと言う名のお茶会、それらをやり過ごし、伯爵家の本を読み漁り、男爵家の立て直しに奔走し、家族との涙の別れを経て、王都の魔法学園初等部入学式。


予算と仕事の都合で父親しか来られなかったけど、無事入寮の手続きもすんで、新しい制服を着て講堂と呼ばれる、入学式会場に。


一際目立つピンクの髪からは、なるべく距離を取って座り、お友達とおしゃべりしながら偉い人の話を聞き流す。

ちなみに、伯爵子息も初等部に通うことになってる。

友達が通うなら僕も!と可愛い我が儘が通った結果、高位貴族にも関わらず、初等部からの入学になった。

他にも何人か同じような理由で、高位貴族の子息が通うらしいと噂。


入学式の後は、お待ちかねの魔力判定検査。

この検査で各個人の属性が判明し、その属性によって授業やクラスが分けられる。


体育館くらい広い建物に移動して、教師に誘導されて一人一人水晶に触れていく。

水晶の色で属性が判明して、その属性ごとにリボンを渡され、制服に付ける。

一目見て属性が分かりやすくするようだ。


列に並び、友人達とどんな属性が良いか話しながら順番を待っていると、前方で一際強い光が。


例の自称ヒロインが触れた水晶は、真っ黒に黒光りして、そのすぐ側の教師が驚いて固まっている。


ザワザワと騒がしくなる周囲。

光、闇、無の属性は珍しく、魔力持ちの中でも300人に1人いるかいないかと言われる割合で、その分強力な攻撃や防御が出来る、と本で読んだ。


ヒロインって、普通光属性とかじゃないのだろうか?

これも他とは違う乙女ゲームの特色?


そんな事を思いながら、自分の順番を待っていると、友達のチルルが触れた水晶が、ヒロインよりも更に眩しく、白く光り輝いた。


チルルは平民で唯一魔力持ちと判明し、お茶会で友達になった子で、見た目はミルクティー色の髪と、黄色い目の柔らかそうな印象に反して、ズバズバ意見を言う気の強い、ちょっとヤンキー臭の漂う女の子だ。

根は良い子なので、付き合うのは楽しいのだが、たまに男の子もギャン泣きさせる猛者でもある。


ザワザワと騒がしい中、私の順番。

恐る恐る水晶に手を置くと、強く光ってはいるのだが無色透明。


「はうっ!君は無属性か、今年はどうなっているのか、闇と光と無属性が一遍に居るなんて…………」


ブツブツ言われても、どうしようもないんですけど?


属性ごとに色違いのリボンは、無属性の私は二本の色違いの細いリボンだった。

属性を2つ持つ人は居ないので、二色のリボンを持つ人は、無属性なのだそうだ。


光と闇と無属性の生徒は、学年に1人か2人居れば多い方で、1学年に3人も居るのはとても珍しいらしい。

検査を担当する教師がブツブツ言ってた。


教師に更に誘導されて生徒達は、属性別に別々の教室に案内される。


大変不本意なことに、私とチルル、例の自称ヒロインは、希少属性なので、同じ部屋に案内されてしまった。

部屋に居るのは3人だけ。

自称ヒロインは、自分の属性が希少属性だったことで、大変浮かれていて、私達の存在に気付いて無い様子。


広い教室の、なるべく自称ヒロインから離れた席に座り、チルルとこれからの事を話す。


「ねぇリリー、私ら何で希少属性なんかになっちゃったんだろう?超めんどくさい予感がするんだけど?」


「チルル、私も全く同じ意見よ。本当に面倒臭い。どうせなら土属性になれれば良かったのに」


「私は風属性が良かったな~!洗濯物がすぐ乾きそうじゃない?」


「フフフ、私は土属性で、土の改良とかしてみたかった!」


「光属性って、確か治癒に特化した属性だよね?攻撃魔法もあるらしいけど、これ絶対国のために力を使え!ってやつじゃ~ん」


「でも、光属性の使い手って、聖女様~とか言われる立場じゃない?」


「無理無理無理!私はそんな柄じゃないって~!」


「フフフ、案外似合うかもよ~?」


「ええ~、リリーだって無属性って事は、結界とか空間魔法とか使えるんじゃない?」


「いやいやいや、そんなのお伽噺の世界じゃない!無属性はどっちかって言うと、魔道具作りの方面に能力を発揮するんじゃなかった?」


「へ~そうなの?」


「たぶん。私も本でチラッと読んだだけだから、詳しくはないけど」


そこで教室に新たな人物が登場。

1人は長い髪と髭が真っ白の、白いローブを着たお爺さん。

もう1人は、やっぱり長い紺色の髪を一つに縛った、背の高い、凄く綺麗な顔をした男性。


私とチルルは、2人が来たことで席を立ち、挨拶のために腰を折る。

伯爵家で習ったカーテシー。

まだぎこちないのは許してほしいところ。

自称ヒロインは、棒立ちしてたけど。


「ふぉっふぉっ、楽にしなされ。それにしても、今年は3人もの希少属性持ちがおるとは、なかなかに珍しい事じゃ」


穏やかな声で、朗らかに話すお爺さん。


「まずは自己紹介をしようかの。わしは魔法局で局長をしておる、セロ・テンプルじゃ。属性は闇じゃ、よろしくの~」


続いて背の高い綺麗な顔をした男性。


「私は教会から派遣された、大神官を務めております、ブレンドル・スティークと申します。属性は光です。よろしくお願いいたします」


どっちも凄い偉い人だった。

2人が自己紹介を終えて、こっちに促すような目線を受ける。


こう言う場合、身分の高い者から自己紹介をするのが常識。

自称ヒロインと私はどっちも男爵家の娘だけど、うちの方が歴史は長いので、この場合は私から、のはずが、自称ヒロインが立ち上がり、


「わたしは~、センチ男爵家のマニュエルですぅ~!属性は希少属性の闇ですぅ~!よろしくお願いしま~す!」


なんかグネグネしながら、ブレンドル大神官だけを見て自己紹介してる。

お茶会でも散々見てきた光景なので、今さら呆れたりはしない。

何時もより、よりグネグネしてるけど、気にしない。


一応終わったようなので、サッと立ち上がり、


「アブソルム男爵の次女、リリーと申します。属性は無属性の判定を受けました。よろしくお願いいたします」


最後にカーテシー。

次にチルル。


「イエール伯爵領から参りましたチルルと申します。平民なので姓はありません。属性は光です。よろしくお願いいたします」


チルルもちょっとグラついたけどカーテシー。


「ふぉっふぉっ、よろしくの~。わしは闇のお嬢さんを、ブレンドルは光のお嬢さんを担当するでの。申し訳ないが、無属性のお嬢さんは、担当者が少々手が離せんで、1週間程遅れてくるでの~。それまでは魔石に魔力を込める訓練をしとってくれ、ちゃんと魔力を込められたら、お小遣いも出るでの~」


お小遣いを貰えるならば、張り切りますよ!


その後の説明では、属性ごとの授業はこの教室で3人で、普通の授業はまた別のクラス分けがあると説明を受けた。

今日は顔合わせだけで、普通授業のクラスを聞いて解散。


教室を出るブレンドル大神官を追って、自称ヒロインマニュエルは早々に教室を出ていった。

その姿を見て、


「う~わ~、今度はブレンドル大神官に目をつけた~!今後私への当たりがきつくなりそうなんだけど~!」


「反対なら良かったのにね?」


「ほんとだよ~!何で私の担当がお爺さんの方じゃないの~?見た目的にお爺さんの方が、光魔法使いっぽいじゃ~ん!」


「ああ、それは私も思った!」


「まあ、愚痴ってもしょうがないけどさ~!これからのウザさを考えると、面倒臭い!」


「わかる。私も出来るだけ助けるからさ!今は忘れて学園探索しに行こう!」


「は~い!」


チルルも憂鬱な気分を飛ばすように立ち上がり、2人で教室を出た。


学園案内の地図を見ながら、場所の確認をする。

途中、前世の桜に似た淡いピンクのチリーの木の下で、怪しい躍りを踊るヒロインマニュエルを見たが、ガン無視した。


お茶会友達と食堂で落ち合い、ワイワイと食事をして、寮に戻る皆と別れて、図書館に行く。


ずっと楽しみにしてた図書館。

高等部の方が蔵書量は多いらしいけど、初等部の図書館だって大したもの。

伯爵家には無かった本が読み放題!

夢のような場所で夕方まで本に没頭した。


◆◆◆◆◆◆◆


それからの学園生活は概ね順調。

自称ヒロインマニュエルのウザ絡みを除けば。


案の定、ブレンドル大神官がチルルの担当になったことで、チルルに意味のわからない文句を言いまくり、絡みまくった。

チルルもおとなしく文句を言われて耐える性格ではないので、顔を合わせる度に、激しい罵りあいと、たまに取っ組み合いが起こった。


そして私も巻き込まれた。


私の担当になった教師は、魔法局副局長を務める、アルガデア・ロイヒと言う、眼鏡の父親と同じくらいの年代の男性で、凄く普通の男性だったので、自称ヒロインマニュエルには直接絡まれはしなかったけど、だいたいチルルと行動を共にする私は、喧嘩に巻き込まれ、最後は力尽くで2人を引き離す役目を振られた。

家の手伝いで畑仕事をしていた私は、2人よりもだいぶ力が強かった事で、自動でその役割を押し付けられた。

まぁ、一応貴族子女の自称ヒロインと、平民とはいえ希少属性持ちのチルルを、男子が力尽くって訳にはいかないからね。


授業は、私もチルルも真面目に受けていたし、自称ヒロインに邪魔をされなければ、担当教師に褒められるくらいの成績は取れた。


希少属性の生徒は、よっぽどの成績不良か素行不良でなければ、高等部への進学を勧められ、申し込めば、学費だけでなく生活費の援助も受けられるので、チルルとも相談して、進学をする方向で考えてはいた。


自称ヒロインの成績は、底辺を競う勢いで、高等部への進学は、希望して試験に受かれば、と言うことらしい。


魔法以外の授業では、私とチルルは2番目に優秀なクラスになれたし、自称ヒロインは最下位のクラスで分かれたので、とても平和に過ごせた。


学園行事は、クラス別なので楽しかったし、放課後は図書館に入り浸る私に、同じように本好きな先輩も出来たし、充実した時間を過ごせた。


そして、自称ヒロインの独り言を偶然耳にして、お茶会友達の伯爵子息が、実は攻略対象の1人だった事が判明。


とても驚いたけど、納得の顔の良さに感心もした。

他にも居る高位貴族の子に比べても、群を抜いて顔が良いからね。

成る程、このレベルの攻略対象が他にも居るのか、とちょっと腰は引けたけど。


あんなピカピカキラキラの美少年の隣に並ぶなど、考えただけで気疲れする自信がある。

良い奴ではあるし、基本、気さくで可愛い性格をしてるけど、実は腹黒い一面もあるし、友達としてなら良いけど、男女のお付き合いを考えるのは難しい性格だと思う。


そのあたりを、自称ヒロインはまるで見えてないと思う。

顔が良ければ全て、とか思ってそう。

もしくは、自分はヒロインだから、誰もが自分を好きになって、思い通りに事が運ぶのが当然とでも思ってそう。


能天気に、いつだって顔の好みな男子に駆け寄っているし。


そんな自称ヒロインを避けて、躱して、逃げて、たまに勢いで突き飛ばして、初等部の3年間が過ぎ、私とチルルは、そこそこ優秀な成績で初等部卒業を迎えた。


◆◆◆◆◆◆◆


高等部進学前の、長い休み期間最後の週、成人を迎える私達は、お城でのパーティーに招待された。


新成人を迎える貴族の子息子女のデビュタントのパーティー。

高等部へ進学を許された平民も特別に出席を許されるパーティー。


そんな行事があることを、すっかり忘れさっていた私は、実家の男爵家から手紙と共にドレスが送られてきたことで、思い出し、慌ててお友達に相談した。


お友達は、笑いながらマナーのお復習に付き合ってくれ、ダンスの練習に付き合ってくれ、お互いのドレスを見せあい、どんな化粧をするかで話したりした。


デビュタントのドレスは、基本白いシンプルなドレスで、高位貴族ともなれば、その白いドレスに様々な装飾を付けオリジナリティーを出すとか聞いた。


だがお茶会友達は、伯爵家の子息を除けば、皆子爵家か男爵家、下手に装飾を付け目立っても印象が良くないので、最低限の装飾と、仲の良さをアピールするために、お揃いの花でも付ける?と相談して決めた。


勿論自称ヒロインはメンバーに入っていない。

伯爵子息は、身分にあった装飾した礼服を着るそうだが、お友達共通の花は付けたいらしい。


キャッキャワイワイと楽しみながら迎えたデビュタント。


領地から駆け付けた各々の親と共にお城へ向かえば、あまりの煌びやかさに腰を抜かしそうになり、圧倒されて、気を失いそうになり、カッチカチになって何も覚えて無いまま、気が付いたら終わってた。


いつの間にか父親も領地に帰ってた。


その事を友達に話したら、皆も同じ様なもので、やっぱり記憶が飛んでたらしく、全員でゲラゲラ笑った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ