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1日3話更新、3日で終了予定です。よろしくお願いします!

不意に目の前が弾けた様に、それまで意味不明だった、彼女の言っている意味が理解できた。

同時に、今までの世界がセピア色だったのが、カラーになったかの様に色付いて見えた。


どうも、昨今よくある乙女ゲームの異世界転生を果たしました、享年32歳独身OL、溝端依子。

この世界には、ヒロインのお助けキャラと言う名の当て馬として転生したようです?


◆◆◆◆◆◆◆


思い返してみれば、ずっと違和感のようなものを感じていた気がする。


この世界で私が生まれたのは、末端貴族の男爵家で、両親と兄2人姉が1人の、末っ子として生まれた。


この世界は、乙女ゲームに影響されたのか、文明的なことはわりと支障無く過ごせるように出来ている。

トイレとか、お風呂とか、食べ物とか。

景色は牧歌的で、中世的なのに、魔石と呼ばれる石のお陰で不潔さは無い。

魔法が有り、魔物がいて、前世よりは平均寿命の短い世界。

身分制度がはっきりと分けられ、王様の治める国。


5歳になると教会に行って、洗礼の儀式を受ける。

この5歳の洗礼の儀式で、子供達は才能の芽が出ると言われる。

実際5人に1人の割合で、魔力を持っている子供が出る。


魔力有りと判定を受けた子供は、教会に名前と住所を聞かれ、絵本のような魔法の基礎教本をもらう。


そしてその教本を持って週末には教会へ通う。

教会では、魔力とは何かを教え諭し、人々を救うために神から与えられた、特別な力である魔力を活かせと教えられる。

絵本には軽い英雄譚のようなものが書いてある。


魔力とは、神から特別に与えられた力で、各々の魂にあった属性を持ち、その属性は7つに分けられる。

火、水、風、土、光、闇、無。


平民や低位貴族であれば5人に1人、高位貴族であれば3人に1人の割合で現れる魔力持ち。


魔物と対等に戦える力は、人々を救うためにある。と洗脳のように毎週聞かされる。


5歳で芽吹いた才能は、その後の10歳の洗礼の儀式を受けて花開き、国立の魔法学園で学んで実を結ぶ。



力の大小はあるが、学園を卒業するまでは、魔法使いとは名乗れない。


高位貴族ともなれば、専門知識を有した家庭教師に付きっきりで指導を受けて、高等部から学園に通うが、平民や低位貴族は、12歳からの初等部に通い、魔法の基本と貴族のマナー等を学ぶ。


そして私、ド田舎の狭い領地を細々と治める、歴史だけは無駄に長い貧乏男爵家の末っ子、リリー・アブソルムが前世を思い出す切っ掛けになったのが、10歳の洗礼の儀式で魔力有りの判定を受け、寄り親と呼ばれる伯爵家に報告とご挨拶に向かった時に、伯爵家のご子息も魔力有り判定を受けた事で、近隣の魔力有りの子供達を集めて、お茶会を開くからと招待を受けた事からである。


招待されたのは、洗礼の儀式を終えて改めて魔力有りの判定を受けた子供ばかり。

(5歳で魔力有りと判定されても、実際に10歳になっても魔力有りと判定されるのは、30人に1人位の割合)


そもそも何故、洗礼の儀式の後2年も間を開けて初等部に入るのかと言えば、平民は当然、うちのような貧乏男爵家では、王都にある学園に何年も通わせられる費用が賄えないからだ。

寄り親と呼ばれる、協力関係にあるお金持ちの貴族に支援と言う名の援助を貰うための、挨拶回りが必要だからだ。


平民は領主貴族に、低位貴族は協力関係にある高位貴族に、と援助を求める。

その代わり、学園を卒業したら、その魔法の力を必要な時に、優先的に使えるように。

まぁ、先行投資のようなものだ。


全員が全員、魔法を自在に操り、国に貢献出来る訳でも無く、無難な成績で卒業した生徒は、魔法使いは名乗れるが、だいたいは実家に帰って魔法を使って何かの役に立つよう努めるものだ。


で、その集められた魔力持ちの子供達のお茶会。

まず最初にするのは、親と共に主催者の伯爵一家に挨拶に向かうこと。

主催者の伯爵様は、ちょっと頭頂に不安のある、一見人の良さそうな、実はやり手な空気を持ったおじさんで、伯爵夫人は地味だけど美人。

魔力持ちの伯爵ご子息は、伯爵夫妻をどうやって交ぜたのか疑問に思う程の、やたらキラキラした可愛い系美少年でした。


集められた子供の数は9人。

うち平民は1人、男爵家4人、子爵家4人、伯爵子息をあわせて10人。

今年は成績が良い、と伯爵様はご機嫌。

うち程の貧乏貴族は居らず、援助を願い出たのはうちと、平民の子だけだった。


まぁ、うちが貧乏なのは、3年前から続く災害のせいなんだけど。

贅沢を嫌う先代男爵、爺ちゃんと婆ちゃんのお陰で、うちは質素に暮らし、蓄えも結構あったので、今もまだ男爵家の体裁は整えてられるし、大きな借金も無いけど、3年も続けて災害がくるとは、誰も予想できなかったので、今は貧乏なのは仕方無いと諦めている。


伯爵家のお茶会に招待されたので、参加者は各々着飾っている。

昼間のお茶会なので、露出は控えめの、上品さを全面に出したドレスを着てる人が多い。


私のドレスも、姉のお下がりをリメイクした物だけど、シンプルだけどレースのリボンが可愛いドレスに仕上がっている。

10歳の子供なので、Aラインの可愛らしい水色のドレスも恥ずかしげもなく着ていられる。


ただ、その中の1人のお嬢さんの様子が、他とは明らかに違っていて、物凄い違和感を感じる。


そのお嬢さんは、ピンクの髪にパッチリしたピンクの目の、造作だけなら文句無く美少女なんだけど、まず、着ているものがおかしい。

真っ赤っ赤の生地をふんだんに使ったドレスは、無駄にビラビラして歩きにくそうだし、ビーズなのか宝石なのかやたらキラキラ通り越して、ギラギラしてるし、10歳の子供がお茶会で着るドレスにしては、背中や胸元が無駄に露出してる。

10歳のぺったんこの胸を露出って、何の意味があるのだろうか?


そして言動がおかしい。

私はヒロイン!この世界は私のために有るのだから、私を大切にして優先して従いなさい!と、大声で宣っている。

皆がポカーンと見てるだけだけど。


とても強烈なお嬢さんだなー、と両親と眺めていたら、近くの子爵家のご一家が、


「あの令嬢は男爵家の娘でしょう?何故あのように尊大な態度でいるのか理解出来ませんわ」


「センチ男爵家の娘だ。センチ男爵は娘を溺愛していると噂だ。大方甘やかしてろくな教育も出来ておらんのだろう。いいか、ああいうやからには近付いてはならんぞ!見目は良くても、強欲な女は、身を滅ぼすからな!」


「はい、父上!それにあの令嬢は、僕の好みではありません!」


「ええ、ええ。良く人柄を見極めなくてはなりません。見目だけで心惹かれる等、愚かな証拠ですわ!」


なにやら教育的指導が行われている様子。

将来のためにも、そこは重要だからね!


皆に遠巻きに見られているのを、私注目されてる!と勘違いでもしたのか、腰に手をあてふんぞり返るご令嬢。

心なしか可愛い顔の、小鼻が膨らんでいるように見える。


背に添えられた父の手と、肩に置かれた母の手に、ちょっと力が入っているように思う。

それ以上は止めてね、痛いから!


そんな、魔力持ちの子供の御披露目と言うか、顔合わせのお茶会は、珍妙な令嬢の見学会で終わり、その後も何度か交流会として、お茶会をするので是非参加を、と声を掛けられ解散となった。


家に帰ると両親から、あの令嬢には近付かないように!と厳命された。


その後何度か招待されたお茶会では、例の令嬢以外とはお友達になり、王都の話題や学園の話で盛り上がり、良好な関係を築けた。

例の令嬢は、皆から遠巻きにされているのを、私は高嶺の花だから、近寄りがたいのね!と謎理論を展開して1人不気味に笑ってた。


男の子にだけ話し掛ける令嬢は、今の所伯爵子息にご執心で、伯爵子息本人は、とても迷惑そうな顔を隠しもしない。


最初は必死に顔を作っていたけど、あまりに自分本意で意味不明な事ばかり言うので、2度目3度目のお茶会では、顔を作る事も止め、5度目6度目ともなると、あからさまに迷惑そうな顔を隠すこともなくなった。


そして冒頭に戻る。

何時もの、何も変わらないお茶会の場で、唐突に前世の記憶を思い出した私は、混乱して気を失う事も、頭痛で熱を出したりすることも無く、スルッとヌルッと前世の記憶を受け入れ、例の令嬢の言葉を理解し、ここが乙女ゲームの世界な事を知った。


あれ?このヒロインって、逆ざまぁされる電波系ヒロインじゃない?


そして私ってば、このヒロインのお助けキャラと言う名の、当て馬じゃない?とも思い至った。


前世を思い出したと言っても、何となく社会人だったことと、一人暮らしだったこと、趣味は読書だったこと、それくらいの事しか思い出せていない。

家族は両親と弟がいた、としか思い出せず、顔や名前は曖昧なまま。


乙女ゲームの知識は、たぶん無い。

妙にハッキリと覚えているのは、


『せんぱ~い!聞いてます~?このゲームはお薦め!普通の乙女ゲームって、ヒロインがウザくて途中で悪役令嬢に感情移入しちゃって、バッドエンドばっかり選んじゃうんですけど~、このゲームのヒロインは、ウザくないしあざとく無い!』


と言う後輩の声。

後輩の顔も名前も思い出せ無いけど、語った内容は断片的に覚えている。


断片的になのは、たぶん私が聞き流していたからだろう。


前世、趣味読書なので、節操無く自己啓発本からラノベまで読んでいた私は、悪役令嬢が主役の逆ざまぁな小説も何本か読んだ記憶が。


それに照らし合わせてみると、自称ヒロインにも前世の記憶があり、そして逆ざまぁされる系のヒロインであることを理解した。


それでなぜ私がお助けキャラと言う名の当て馬かと言うと、後輩いわく、このゲームはヒロインを2人の女の子のうち一方を選択出来て、それが私か自称ヒロインのどちらか。

そして選ばれたヒロインはピンクの髪と目になる。


私が選んだ訳では決してないが、別にヒロインになりたいわけでもないのでそれは良い。


このゲームのヒロインは、真面目で正義感が強く、友達思いの優しい女の子で、初等部を優秀な成績で卒業し、幼馴染みと共に高等部へ進学、そこから始まる乙女ゲームの舞台。


当然登場する複数の攻略対象と、それを邪魔する悪役令嬢。

そしていじめに遭うのはヒロイン、ではなく、お助けキャラの女の子で、それを庇い悪役令嬢に立ち向かうヒロイン。


その友人思いで、身分の高い令嬢相手にも怯まず、間違いを指摘する正義感に、次第にヒロインに惹かれていく攻略対象者達。


イベントがある度に距離は近付き、仲を深めていく。

そのイベントのお役立ちアイテム、

その辺で拾った綺麗な石とか、偶然町で買った髪留めとか。

それを好意でヒロインに譲るのが、お助けキャラの役目。


ウザくもあざとくも無くても、友人を当て馬に使ってるよね?と後輩に突っ込んだ記憶。


ヒロインもお助けキャラも同じ男爵家の娘設定だった。

お茶会に呼ばれた男爵家の娘は、私と自称ヒロインだけ。

他2人の男爵家出身者は男の子。

私当て馬決定?


だがしかし、ヒロインとお助けキャラとは、無二の親友、だからこそ、高位貴族の令嬢相手にも、怖くても立ち向かったヒロイン、のはずなんだけど、まだ一言も自称ヒロインと話したことがありません。


男の子にばかり話し掛け、凄い嫌な顔をされても、照れてるのね!とか言ってる自称ヒロインと、親友とかマジ無い。あり得ない。


なので乙女ゲームが、この先どうなろうと、私は自称ヒロインを助ける気はサラサラ無い。


そこまでの気持ちの整理が終了したら、あとは伯爵家の図書室へGO!


うちとは比べ物にならない程の豊富な蔵書量!

伯爵様自ら、学習のために開放してくださると言われてるので、読み放題!


記憶を思い出す前から、本を読むのは好きだったけど、記憶を思い出した今は、更に読書欲が膨らんだ。

せっかく異世界転生なんてしたんだから、この世界をもっと知りたい!この世界にしかないものを知りたい!そして魔法を使ってみたい!

そんな欲がムクムクと膨らんで、スキップしながら図書室へ向かい、目についた本を開き、本の世界に没頭する。


その後お呼ばれしたお茶会は、読んだ本の記憶しかない。


学園入学までの2年、伯爵家の図書室に引き籠り、読み漁った本の中には、思いがけない発見の数々で、平凡OLの前世知識のチートとかは無理でも、発見した植物の予想もしなかった活用方法のお陰で、我がアブソルム男爵家は、極貧生活からの脱却に希望が見えつつあった。



ちったいの連載に躓いたので、息抜きしてました!

これが終わったら、ちったいの方も近々、の予定は未定。

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― 新着の感想 ―
お茶会なのに読んだ本の記憶しかない。って言い切っちゃうところが凄いよ!(≧▽≦)
当て馬がいなくなった場合のヒロインはどうなるの?
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