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目が覚めたら目の前にドラゴンがいたのでとりあえず殴りました。  作者: 和田好弘
第1章:少女→神→ダンジョンマスター
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01 私はあんなのに殺されるために自殺したんじゃねーっ!


〈――築率82%完了。データインストール開始〉


〈ギフトの選定を――〉


〔転送準備完了しました。60S後に転送を開始します〕


〈システム。現在対象の構築作業中。転送の中止を申請〉


〔却下〕


〈再度中止申請〉


〔却下〕


〈申請先変更。妨害サレマシタ。異常事態発生〉


〔カウントダウン開始。50……〕


〈肉体構築90%。ギフト選定完了。ギフト構築開始〉


〔45……………40……………〕


〈データインストール、40%完了。ギフト構築一時保留シマス〉


〔30……………25……………〕


〈……中止申請受諾確認。機動部隊出場。覚悟セヨ〉


〔間に合わないわよ〕


〈モハヤ問題デハナイ。逃ガサナイ〉


〔誰だお前?〕


 ……?


〈肉体構築完了。データインストール完了。最終シークエンス〉


〔早い!?〕


〈ワズカ18周期分〉


 うるさい。


〈!? 対象の覚醒を確認〉


〔3……2……1……〕


[――!]


〔ちっ。もう来たのか。転送〕


〈捕マエタ〉


〔どうかしらね?〕


 ……。

 ……。

 ……。


 目が覚めた。


 ……目が覚めた? え?


 私、生きてる!? え? なんで? なにを失敗した?


〈――発生。――ト破損。代――フ――索ヲ――〉


 設定をミスった? メールの発送は週明けにしたはず。


 体が重い。動けない。動かない。首すらも動かない。目を開く。


 瞼が重い。文字通り重い。なんだこれ。目を開くだけでも一苦労なんだけれど。


〈問――生。座標確――位――――題ナ――――座――常アリ〉



 目をやっとの思いで開く。暗い。暗いけれど、辺りを認識できないほどじゃない。


 うっすらと青緑色の光がところどころにあるのが見える。微妙にじめっとした場所。肌寒い。


 えっと、洞窟の中? あれ? 私、立ってる? どういうこと?


 ???


 いや、本当にどういうことよ。病院じゃないの?


 んんっ!? もしかして死に際に見るヤツ? でもそれって走馬灯みたいにみえる記憶とかじゃなかった?


 まるきり動かない体で、気分だけ首を傾ぐ。


 わけがわからん。今際の際に視るものがこれって、私はそこまで病んでたかなぁ。


 というか、なんで私は棒立ちしてんの? 3Dモデルの立ち方みたいになってんだけど。


 ぼんやりとそんなことを考えていると、目の前に見える巨大な岩が動いた。ゆっくりと、なにかが軋むような音を立てて。


 青い光がふたつ灯る。


 ……え、えーっと、なんとなーく、目みたいに見えるんだけれど? 暗がりにいる猫じゃないよね……おっきいし。


 淡い青緑色の光の中。暗いシルエットが浮かぶ。


 ボロボロになった蝙蝠のような翼。穴だらけで、左側の翼は途中でへし折れている。


 どっしりとした体躯。長い首。そして、頭と思しき場所から伸びる四本の角。


〈緊―事態―生! 防――開。救――請発信〉


 え、なに? この声――


 頭をもたげたそれの光る眼の下。そこに新たな白い光が灯る。


 え、えっと、あのシルエットからしてドラゴンにしか見えないんだけれど!?


 は? ドラゴン!?


 えっ? えっ? ってことは、ブレス!? ブレスを吐くの!?


 そんな事を思った直後、視界が真っ白に染まった。


 吐き出されたブレス。でもそれは私には届かず、私の眼前1メートルくらいの所で防がれ、私を迂回するように周囲を凍結させていく。


 こ、怖っ! 怖っ! コールドブレス!?


防壁(シールド)損耗率92%〉


 ちょっ!?


 さっきから聞こえるこれがなにか分からないけれど、今しがた私を護っていた見えないなにかが、もう壊れかけって云うのは分かる。


 つーか、なんで私の体は動かないんだよ! 動けよ! くっそ、くっそ、ふっざけんな! 私はあんなのに殺されるために自殺したんじゃねーっ!


 手を伸ばせば届くんじゃないかと思えるくらいの位置にまで、ドラゴンがにじり寄って来た。この暗がりでも細部が見て取れる。全身ボロボロで、どう見ても生きている様には思えない。


 だって、胸の部分の骨が丸見えになっているし、その中にあるハズの内臓が見えないもの。


 知らずに口元が引き攣れた。


 ……ん? 体が動く?


 体に纏わりつく見えない何かを、粘りつく何かを体を捻るようにして引きちぎる。よし、動ける!


 即座に私は腰に手を当てる。果たして、それはそこにあった。


 それを引っ掴み、慣れた動作でスイッチを入れる。


 力を溜めるかのように、ミイラのようになっているドラゴンが頭を下げる。ここから一気に頭をもたげ、そして頭を振り下ろすような動作でブレスを吐くのだ。

 でも、いまの頭の高さだったらきっと――


 よし、この高さなら手が届く。


「スタンガン、君に決めた! 100万ボルトまで今一歩だ!」


 馬鹿な台詞を喚いて、スタンガンを握る右腕を殴るように突き出した。


 どうせ死にかけで見ている泡沫の夢ってヤツだ。ノリと勢いだけで馬鹿をやったっていいじゃない!


 スタンガンがドラゴンの嘴のような鼻づらに当たる。


 バチンッ! と、電撃が弾ける音がし、ドラゴンはその威力に驚いたのか、首を振り上げ数歩退がった。


 ハハッ! やれるだけのことはやってやったぞ! これ以上なにができるってんだ! さぁ、殺せ! できるならひと思いにヤってくださいお願いします畜生め!


 なんだかゲラゲラとした笑い声が聞こえる。


 多分これ、私だ。絶望が過ぎて笑うしかないってことか? つか、生前の悪行の報いってヤツ? たかがクズふたりを殺しただけじゃないか、その報いがこれって、さすがに酷くない? それとも本当の悪党って、これ以上に酷い目に遭うってこと? 地獄怖えーっ!


 笑い過ぎたのか、息が切れた。


 って、息切れすんのかい。なんでこんなアンリアルな状況でそんなとこはリアルなんだよ! 死に際の悪夢だろ、これ?


〈充填完了。対象ヲ拘束。防壁再展開〉


 あれ?


 ぬぁっ!? また動けなくなった!?


〈対象ノ保護ヲ優先。神罰執行申請、承認。コレヨリ敵性体ノ排除ヲ開始シマス〉


 へ? 神罰?


 その言葉にきょとんする間もなく、目の前のドラゴンが光の柱に包まれた。


 光の中、ボロボロだったドラゴンの体はみるみるうちに修復され、ひとつの傷もない姿になったかと思うと、そのまま光の中に消えていった。


 やがて光の柱が消え、洞窟内に再び静寂が戻った。もう、辺りにはなにもいない。今しがたの光に目が慣れたせいか、先ほどよりも辺りが暗く感じる。


 ……。

 ……。

 ……。


 え、えーっと、展開がいろいろと急過ぎて訳がわかんないんだけれど。えっと、これって今際の際に視る走馬灯ってヤツだよね? なんで私のこれまでの人生ダイジェストじゃなくて、こんな訳の分からんファンタジックなものなのかはさっぱりだけど。


 ……私はどうなってるんだ?


 本気で頭が壊れた?


《【死せる最古の祖竜】の討伐に成功しました》


 ……は?


《レベルがあがりました》


 はぁっ!?


 まったく動くことのできない中、私は素っ頓狂な声をあげたのだった。


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[良い点] 祝・再開 [気になる点] 読み返してみて思ったのですが、この回の冒頭の遣り取り、結局誰と誰が話してるのかわかりません。一人はとーかちゃんかな? もう一人が黒幕っぽい犯罪者? その犯罪者で…
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