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03 どうしよう、怖くなってきたぞ


「ただいま!」


 玄関に入り、まずはパチンと灯りのスイッチをいれる。


 ……。


 あー、うん。点くわけないよね。電気なんてきてないもん。


 それをいうと、水とガスもだ。ガスはボンベだけれど、そんなものはこの家を創る際には入れていない。


 うーん……これらのインフラをどうしたものかな?


 DPでの代用は止めた方がよさそうなんだよね。


 ほら、外の灯りの件で確認したら、馬鹿みたいに消費するのが分かったし。多分だけれど、ダンジョン内の設備を作るのと、その維持分にはDPを使用するのはお得。でも、それを運用するという点では凄まじく効率が悪いみたいだね。


 ……なんでこんな訳の分からんことになってるんだ?


《利用しているエネルギーの違いの為です》


 お? まさか答えが返ってくるとは思わなかったよ。


 ふむ。エネルギーが違うってことは、生産と運用で別個になってるってことか。と、リポップも運用側に入るのか。


《当ダンジョン・システムは他所のダンジョンと違い、惑星管理システムを模倣して造られたものです》


 は?


《当ダンジョン・コアは、祖竜によって惑星管理システムを真似て創り出されました。そのため、使用するエネルギーも、惑星管理に使われるエネルギーと同様のものを使用しています》


 ……あの祖竜は何者だったんだよ。


《元は“世界”が直接生み出した生物です》


 は? え? それじゃ、神様と同じってこと?


《その通りです。ですが、神と比すれば有象無象の脆弱な生物にすぎません》


 ……。


 えぇ……。


 あれが脆弱って。あれにブレスを吐かれた時、私を守ってくれたシールドとやらはあっという間に壊れかけたんだけれど。察するにあれ、オペレーターをしてたメイドちゃんがシステムとやらを使って張った代物でしょう? それをほぼ壊す程の威力だよ。それを脆弱って……。


 そんなことを考えている間にも、ダンジョン・コアは説明を続けていく。



《前マスターはいかな手段を以てか管理システムにアクセスし、情報を抜きだし、私を作り上げました》


 なんか“私”とか云いだしたぞ。自我とか持ちはじめた?


 ちょっと確認してみよう。穴を掘って埋めている間はほったらかしにしてたようなものだし。


 Ver.3.3.0


 なんかバージョンが上がってる。自己改良が速すぎないかな!? え、大丈夫? 人類を滅ぼすことを決定したAIみたいにならない?


《前マスターは不老不死、及び不死身となるための研究に憑りつかれていました》


 ダンジョン・コアの話は続く。


 おかげで図らずも、ドラゴンの寿命? についての知識がついたよ。


 ドラゴンは条件付きの不死の存在だ。卵から産まれ、成長し、衰える。そして死ぬ前に、自身の全てを、知識や能力を詰め込んだ卵を残して死に、再度、仔竜となるのだそうな。


 不死鳥みたいな生態だけれど、これ、デメリットがあって、全てを卵に詰め込んだとしても、どうしても約3割が失われてしまうんだそうな。


 3割。結構な量だよ。


 で、あのドラゴンはそれをどうにかすべく、ここを作って引き籠って延々と研究していたそうだ。目指したところは“卵返り(リボーン)”を不要とする肉体。即ち不老不死にして不死身。


 結果はしくじって、ドラゴンゾンビになってしまったわけだけれど。


 で、造られたダンジョン・コアは、研究に没頭できる環境にしろと命じられただけでほったらかし。


 しかも、与えられた権限はダンジョンの基本整備だけで、魔物の創造、運用はもとより、罠の作成、設置も出来ない有様。


 結果として、この35万年間、延々とダンジョンを拡張し、侵入者に攻め込まれないようにとにかく最奥までの距離を伸ばし、迷わせるような枝道を大量に作りと、そんなことばかりをやっていたとのこと。


 というかさ。ダンジョン・コア、説明がどんどん人間臭くなってきて、最後は延々と愚痴を云ってるんだけれど。


 Ver.4.5.0


 ……どうしよう、怖くなってきたぞ。


 私は何を間違えた!?


《――!? ま、マスター。大変失礼を致しました。マスターの大切なお時間を私如きのつまらぬ――》


「あぁ、気にしないでいいよ。というかさ、もういっそのことこの35万年間に溜め込んでたものを全部吐き出しちゃいなよ。聞いてあげるからさ。あ、でも途中でご飯はだしてね。まだ私【ひ弱】状態だろうし。途中で一回死んで、無駄にエネルギーを使っちゃったからね」


 こうなったら愚痴を全部聞いておこうと思うよ。変にストレスとかを残されたままだと危険な気がする。


 そんなことを思ってたら、ダンジョン・コアがピンク色になったり水色になったりと、慌ただしく明滅した。


 そして《なんとお優しい》とかいってやたらと私を持ち上げるようなことを云いだした。それにしても、よく喋るな。どれだけ抑圧されてたのよ……。


「とりあえず、ちょっと場所を変えようか。ここ玄関だし」


 そう。靴を脱いで玄関をあがって、電気のスイッチを入れたところでこの会話だ。玄関の真ん中にすわって、延々と話してたんだよ。体感で2日くらい。


 なんか時間感覚はしっかりしているけれど、それに対する私の反応がどうでも良くなってる気がする。簡単に云うと、1分と10日が同じ感覚だ。これも進化の影響かな? まぁ、いっか。


 縁側を通って、居間にはいる。暗いから雨戸を開けよう。


 ダンジョン・コアの本体はこの自宅に置くつもりだけれど、どうしようか? 仏壇は作りつけのがあるんだけれど、ここに入れるのもねぇ。床の間のほうでいいかな。あそこは御嶽山神社関係の神様が祀られてたんだったかな? 私は詳しく知らないんだけれど。


 いまはなんにもないまっさらな状態だからね。そこにダンジョンコアを置いても問題ないだろう。


 居間もなんにもないから、畳を敷いて、座卓出して、あとは座布団。ダンジョンコアを祠のダミー同様にりん台の上に載せる。もちろんりん座布団の色は紫だ。


 ……色合いが地味に合わないな。赤にしよう。



 ★ ☆ ★



 それから3日経過した。地上の明かりをそのままここまで持ってきたからね。昼夜が分かるようになったんだよ。雨戸を開けといてよかった。


 その間、私は相槌をうちつつ、おにぎりを食べたりボルシチを食べたりしてた。


 そういや、トイレと無縁になってるよ。え? 食糧のエネルギー変換率100%!? 私のお尻の穴が無用の長物に!


 ……云ってて恥ずかしくなってきた。何馬鹿な事を考えてんだ私は。ついでになんで別の用法なんて考えた私はっ!


 頬を染めながらお茶を啜り、太郎焼きを頬張る。太郎焼きというのは、隣町の名物? で、要は大判焼きとか今川焼の類だ。ただ、一般的なそれらよりも大きい。


 あ、隣町って、もちろん実家のある方だよ。いうまでもないけど。ちなみに、私の住んでいた町の名物は葛餅だ。


 ごくりと口の中の物を飲みこみ、僅かに残ったものをお茶でながす。


「張り合いがないというか、虚しいと云うか……苦労したねぇ」


 聞き終え、暫しの間のあとに私がそういうと、ダンジョン・コアはまたしても激しく明滅しはじめた。


 喜んでる……というよりは、感極まった、という感じみたいだ。人間だったら号泣しているような感じかな?


《こうして……こうして話を聞いていただけるなんて。私は幸せ者です!》


 なんだか大袈裟だなぁ。


 Ver.5.7.0


 そろそろ改良は落ち着いてくれないかなぁ。地味に怖いんだけれど。


《マスター、私如きのためにお時間をいただき、感謝いたします。作業の再開準備はいつでもできています》


「うん。それじゃ、インフラに関して考えよう」


 私は云った。


 とりあえず、一番欲しいのは電気だけれど、ちょっと大変そうだからこれは後回しだ。


 ガス……火に関してはさほど重要じゃない。調理の際の火とお湯を沸かす程度だけれど、これも電気さえあればどうにかできる。うちは電気湯沸かし器を使っていたしね。調理に関しては、ガスからIHにしてしまえば問題ないだろう。

 こうすればガスは不要になる。


 そして最後が水だ。


 こいつが地味に厄介だ。給水はともかく、排水を考えなくてはならない。このあたりはどうしようね? 地下水脈から水を引いてきても、排水をそのまま流す訳にはいかないし。


 ん? トイレ不要なら排水も不要? いや、お風呂は入るし。それにお姉ちゃんもいずれここに住むんだし。


 ということで、ダンジョン・コアと相談だ。


《給水、排水、共に問題ありません》


 おぉ?


《スライムを用います》


 え?


《正確には、スライムに使われている分解システムを浄化用に改良したものを用い、浄化設備を作りましょう。必要DPは20,000ほどとなります》


 結構掛かる? と思ったけれど、上水、下水の双方でこのDPとのこと。


 うん、問題ないね。ということで作ってしまおう。このふたつの設備は、ダンジョン・コアがやってくれるそうだ。


 ……バージョンが上がったからできるようになったみたいだ。


 あ、スライムだけれど、魔法生物としてのスライムで、私のもってる常識に照らし合わせると生物兵器というか、戦闘用ドローンみたいなものであるらしい。ロボット兵器といったほうがより近い? いや、見た目は信玄餅なんだけれどさ。


 とにかく、これで水回りは完了。


 よし、それじゃ次は電気関係だ。


 魔素なんていうロマン溢れる代物とかでどうにかなんないかなぁ。


 そんなことを思いながら、次の相談を口にした。


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