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爆走腐男子くん番外編  作者: らんたお
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本日も、編集者として頑張らせて頂きます。

本編の『季節外れのサンタさん!2』の暗躍する稲田さん視点です。

 どうも、私、浅夢様の編集担当の稲田と申します。本日は、大切な使命を浅夢様より託され、只今実行中でございます。

 未来くんがお家に帰るまでに、お二人のお家でお泊りの準備をしておかなければなりません。そう、男子高校生がお泊りに来るのです。

 未来くんの大切なお友達です。決して粗相があってはなりません。なんとしても、心地よく過ごして頂けるよう配慮せねばならないのです。ただし、準備が過ぎると返って怪しまれる恐れがあります。程々の準備として置きましょう。

 しかしまさか、念のためにと託されていた合鍵がこんなにも早く活躍することになるとは思いもしませんでした。ご在宅中以外でお家にお邪魔するのは初めてとなりますが、家人の許しもあるので大丈夫であると信じましょう。


 もう一人の編集者である兵藤さんは、お若いながらも妻帯者のため鍵を預けるのに適任ではなかったこともあり、都内在住の独身の私に白羽の矢が立ったわけではございますが、家人の居ないお家に勝手に入るのは少々気が引けるというもの。

 いやしかし、これはすべて浅夢様の創作意欲のため。未来くんが襲われないか心配なところではありますが、私の調べたところご友人は皆ノーマルのようです。逆に、未来くんが興奮のあまり襲い掛からないか心配です。

 恐らく未来くんならば、鼻血を出す程度で終わるでしょうが。



 ところで、いつも来ているスーパーに来てみたものの、年頃の男子高校生の好みそうなお菓子が分かりません。いえ、そもそもどのような飲み物を好むのかも分からないのです。

 冷蔵庫の許容量を考慮するならば、籠二つ分に入れている今の食材で恐らく大丈夫だとは思われるのですが、夕食並みの間食をするのは学生の食欲ならばあって当たり前だと検索サイトに載っていました。であるならば、大量に買い込む必要に迫られます。

 しかし、どのようなものが良いのでしょうか……店員さんに聞いてみましょう。


 店員さんの中でもお若く、高校生っぽい方を探す必要があるでしょう。いえ、店員さんならば誰でも男子高校生の好みそうなお菓子を把握しているかもしれません。一先ず、前者の方を探しつつ、居なければ近くの店員さんに聞いてみることにしましょうか。

 店内を少し回っていると、どこからか店員さんの囁き声が聞こえてきました。今日のジェントルマンさん大量に買い込んでいるね、と聞こえて来ます。はて、紳士など店内に居ましたでしょうか?

 いえそれよりも、丁度お菓子コーナーに学生風の男性店員さんが居らっしゃいました。この方ならば適任です。


「すみません」

「あ、はい。何でしょう?」


 ここで、男子高校生の好みそうなお菓子はどれですか、などと直球で聞くわけにもいきません。そんな不審者確定な言い回しをするのは得策ではないため、ここは一つ嘘を付かざるを得ないでしょう。


「高校生の弟がお菓子を買って来て欲しいと言うのですが、どのようなものが好きなのか分からないので選んで貰えますか?」

「お菓子……ですか? えっと、普段どのようなものを食べているかは分かりますか?」

「いえ、離れて暮らしているので」

「そうですか……」


 なんだか神妙な顔をされました。その一瞬の表情から、複雑な家庭環境を想像されているような気がして申し訳ない気持ちになりますが、彼はすぐに気を取り直してお菓子を勧めて下さいました。


「こちらのチップス系は老若男女問わず好まれるものだと思いますよ」

「種類が多いですね」

「そうですね。塩味が一番ベタだと思います。後はのり塩とかコンソメ味とか」

「ではそれで。他には何がいいでしょう?」

「他は……」


 次にお勧めして下さったのは、細いクッキー生地にチョコレートがコーティングされているチョコレート菓子など。その次にお勧めされたのはサクサク食感のスナック菓子と呼ばれるもの。成程、浅夢様の小説にも出て来ていたものですね。これが男子高校生の好むお菓子だったのですか。今日は勉強になりました。

 それではそれらを……


「カートンで貰えますか?」

「え!?」


 彼は、驚いて目を丸くしておられます。何故そんなにも驚かれるのでしょう? 男子高校生が一週間も家に居るのですよ? それぐらいの備蓄がないと持たないでしょう。今日からお泊りだとすると今準備しておかなくては怪しまれますし、箱で置いてあれば備蓄だと思って気兼ねなく食べてくれるはずです。

 未来くんに放課後買い物に行かせるにしてもお小遣いが足りませんし、私がサポートするからにはこれぐらいのことを前もって行って置くのは当たり前のことだと思ったのですが、何やら呪縛に掛かっておられます。もしや……


「商品棚にあるだけなのでしょうか?」


 そうだとすると困りました。箱であるからこそ備蓄感が出るのであって、中身だけで置いてあると必死でかき集めた感が出てしまう上に保管が難しくなります。未来くんのあだ名がリスだそうなので、木の実を備蓄しているイメージと相まってしまい、食べるのを躊躇われてしまう恐れも出てくるのです。それでは、大量買いする意味も無くなってしまいます。

 それに、男子高校生の胃袋を舐めてはいけないと書いてありました。未来くんが必死で料理をするにも限界があると想像するに、彼等の胃袋を満たすまでの間食が必要です。それ故にカートン買いしか道はないと思って来てしまったのですが、どう致しましょう?


 悩んでいると店長さんが現れました。事情を説明すると、すぐに持って来ますと言って下さいました。ついでとばかりに飲み物もいくつか見繕ってもらい、そちらもカートンでお願いしました。


「それでは、水1ケース、珈琲1ケース、オレンジジュース1ケース、お菓子がそれぞれ1ケースずつですね」

「はい、お手数をお掛け致しました。申し訳ありませんが、車に詰め込むまで台車をお借りしても宜しいですか?」

「えぇ、構いませんよ。むしろお車までお持ちします」

「ありがとうございます」


 お優しい店長さんに店員さん達で、本当に良かったです。有難いことに、車に詰め込むまで手伝って頂きました。世知辛い世の中に心洗われる瞬間でございました。さて、それではお宅へ向かうと致しましょう。やらなければいけない準備はまだまだあるのですから。



 その後、カートン買いのジェントルマンという異名が、お店を訪れる度に囁かれることとなりました。はて、そのような凄い紳士とは一体どのような方なのでしょう? 浅夢様の創作の参考にと探しておりますが、未だにそのような方にはお会い出来ておりません。いつかお会い出来ると良いのですが。

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