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爆走腐男子くん番外編  作者: らんたお
4/6

最上級生の風格!!(夜宮前生徒会長と粟森前副会長との出会い編)

こちらを見て読んでから本編の『ベタのものってオイシイです!』を読むことをお勧めします。

 るんるんる~んっと、BLウォッチングに勤しむべく放課後の特別棟へと足を踏み入れた僕。

どこにあるの僕の萌え~と嘆くほど、最近はめっきりBLウォッチ出来なくなってきていた。

 それもそのはず、ここ最近は僕の腐男子的妄想が学校中に広まり、皆萎縮したのか普通のスキンシップですらしてくれなくなったからだ。

 うぇ~ん、悲しいよぅ。

 別に、イチャイチャしてたからって恋人ってわけでもな……いや、そうに違いない!! イチャイチャしてたら、絶対そうでしょ!?

 とにもかくにもそういう場面を絶対キャッチするのだぁ~と、廊下を歩いていたところ、ぽんぽんと肩を叩かれた。振り返ると、数人の上級生と見られる方達。


「君、あの子リスちゃんだろ? 木登り上手な」

「男同士のイチャつきを見て回ってるっていう、未来ちゃん、だっけ?」

「ホント、マジでかっわいい顔!」

「マジで男か? マシュマロみてぇに肌つるつる!!」


 口々にいろいと言っていたけど、初対面なんだし挨拶しとかなきゃだね。こんにちはと小首を傾げながら言ったら、何故か皆、やべぇ、マジかよ、と口々に言っては口元を手で覆ったり、顔を背けたり?

 ていうか、子リスって何!? 木登り上手は自慢の一つだからいいとして、子リスって!! 誰のネーミングだよ!

 いや、何となく分かる。 十中八九、生徒会長でしょう!? あの人、何回目かに会った時、僕の事をちょこまかすんじゃねぇリスって言ってたもん!!

 誰がリスだよ!! 僕は人間だよ!?

 ホント失礼しちゃうよねぇと思っていたら、先輩方が、男同士のイチャつきを見たいんならいい場所知ってるぜと言ってきた。ホントに!?

 期待に胸を躍らせて彼等を見上げたら、付いておいでと言われ彼等について行く。






 付いた場所は、ほとんど物置場所と化した二階の教室の一角。少し下を見下ろせば、運動部の部室が見える場所だ。

 もしかして、部室が見える場所だからってこと? でも、これだと着替えを覗く変態みたいにならないかな? って、男同士のイチャつきを覗こうとする時点で変態でしたな!!

 いやでも、これはタブーな気がするぅ。


 ここですかと聞けば、そうだよと返って来る。やはり、部室を覗ける場所って意味なのか。腐男子のモラルに関わるから、それだけはやりたくないんだけどなぁ。

 いやでも、下を覗けばそうだけど、遠くにあるグラウンドを見ればいいのでは!?

 サッカー部の練習が、少しばかり見える位置である。ちょっと視点を左に向ければ、体育館で練習するバスケ部も微かに見えるし!!

 バスケ部と言えば、栄くんがいるはずだ。ちょっと見づらいけど、見えたりするかなぁ~?

 背伸びしてみたり、視点を変えてみたりして栄くんを探していると、一人の先輩が視界を塞ぐように目の前に立った。

 なんだろう?


「君さぁ、なんでそんなに男同士のが見たいの?」

「だよなぁ。俺だったらパスだぜ?」

「きもいっつーかーなぁ?」

「ホントは、自分が興味あるんじゃね?」


 興味? BLを見たいという興味ならあるけど、彼等が言っている興味はなんだか違うような?

 どういう意味だか分からなくて、目の前の先輩を見上げていたら、にやりと嫌な笑顔。なんだかその笑顔に、背中がぞわりとする。

 気付けば背後にもう一人、左隣の先輩は、ぷにぷにと僕のほっぺを突いては、赤ちゃんみてぇにモチモチと言い、左前の先輩に至っては、ちっせぇなぁマジで子供みたいと不敵に笑っていた。

 なんだか、囲まれてるような気がするんだけど?

 目の前の先輩の笑顔が若干怖いせいか、思わず半歩後ろに下がると、真後ろにいた先輩が、触れるか触れないかの距離で、ホントは君が男同士に興味あるんだろと耳元で囁いた。

 男同士に興味って、男同士の恋愛に興味があるかってこと? 僕が? まさか!!

 違いますよ、見て幸せに浸りたいだけですよと反論するより早く、目の前の先輩が顔を近付けてきた。


「やられてみたいの?」


 君可愛いから試してみてもいいけどと耳元で……何、今の色気!! すっごい厭らしい感じだったんだけど!!

 絶句してたら、周りの先輩達が僕から離れて爆笑していた。お前本気かよ、マジにありえねぇ、いくら可愛いっつってもさぁ、と笑い転げんばかりである。

 からかわれている、ってことだね!? いやぁ、びっくりした。心臓止まるかと思ったよぉ~と、ほっとしていたら。


「え? でもこの子ならありじゃん? なんか、可愛い声で鳴いてくれそうだし」


 反応良さそうだしとか言っていたんだけど、正直彼等が何を言っているのかよく分からない。

 いやいやねぇだろ、アホかお前、いい加減戻ってこい、と他の先輩方にひーひー笑われながら止められる。彼等は一体何を始めるつもりなの?

 そもそもこの人、なんだか雰囲気が怖いんだよねぇとか思っていたら、その先輩が僕ににっこりと微笑んできた。さっきまでの妖しい雰囲気はなかったものの、何を考えているのやら分からない。


「君が望むんだったら、いつでも見せてあげるよ? ただし、君がやらせてくれるんならね」


 言いながら、僕の顎を掴んで上を向かせる先輩。その瞳が、獲物を狙う獣のように見えたのは気のせいなのか、と固まっていると……スパーン!! ビクゥ!! 今、痛いぐらいに心臓飛び跳ねたよ!?

 一体何事と驚いて音のした方へ目をやると、入口の所に、絶対零度の瞳でこちらを見ているイケメン眼鏡さんが立っていた。なんだろう。眼鏡越しに、下賤の者共を蔑むような視線を送ってきているような気がする。いや、気のせいではない!!


「お前達、ここで何をしている」


 効果音にゴゴゴゴゴォ~って文字を使いそうな凄まじい気迫!! ここで嘘を付けば、その場で極刑を言い渡されちゃいそうなほどの雰囲気なんですけど!!

 微動だにせずして、この距離感を埋めるほどの威圧感。圧力半端ない。印籠も出されてないのに、ははぁ~っと言ってしまいたくなる。

 これは、早々にお代官様に謝り倒しといた方が良さげ? だって、勝手に空き教室に侵入しちゃってたわけだしね! 山吹色のお菓子は持ってないけど、山吹色……と言ってもオレンジ味の飴なら持ってる!!

 たたたっとお代官様の所へ走り、どうかこれをお納めくださいませぇ~と飴玉を差し出す。


 静寂が、訪れる。え…なんで?

 恐る恐る見上げると……


「何をやっているんだ?」


 とさっきまでの殺伐とした雰囲気を発していたとは思えない落ち着いた声で、同じ質問を僕にした。僕だけに!! ということは、嘘偽りなく正直に申し上げといた方が宜しいですよね!!


「山吹色のお菓子?」

「……オレンジだろう」


 はい……としょんぼりした。案外、山吹色って難しいよねぇ。レモンだと薄すぎるし、オレンジだと濃すぎるんだよ。間を取りたいところだけど、そうすると、からしかマスタードぐらいしか思いつかなくてさぁ。

 まぁ、今持っているもので代用するなら、オレンジ味だったということなんだけど。


 さっきのはお前に言ったわけじゃないと僕の手を引いて教室の外に出されてしまう。そのままお代官様、中にいた人達に向けて、犬畜生にも劣る奴らだな、後で覚えておくといいと言って扉を閉めてしまった。

 犬畜生って、初めて生で聞いた!! そのまま歩き出してしまわれたお代官様に、なんとなくついて行く。

 するとお代官様、なんで山吹色のお菓子なんだと聞いて来たので、賄賂ですよと返した。何故袖の下なんかと不思議がられた。


「お前はむしろ、未遂とは言え被害者だろう」

「? 被害者って何の話ですか?」


 するとお代官様、歩みをピタッと止められた。僕も慌てて、おっとっとっと急停止。

 じっと、見つめられる。


「お前は」

「こーうーせーい~!! 康晴どこだ~い」


 お代官様が何か言い出す前に、辺りに声が響き渡る。誰かを探しているようだけど?

 階下から現れたその人は、僕等を見つけると、にっこりと微笑まれた。

 ぐは!! なんってぇ~美形!! 明らかに日本人じゃないよね!!

 キラキラ輝く金髪に、澄んだ綺麗なグリーンの瞳を湛えたそのお姿は、どう見ても王子様!! 八雲くんといい勝負なんですけど!!

 驚いて見つめていたら、康晴ここにいたんだねと言った後に、この子は誰だいと聞かれる。康晴……お代官様の名前か!!

 ということは、この人はお代官様を探していたんだねとかなんとか思っていたら、生徒会長まで現れて、何故か怒られた。


「あ、未来!! お前、またなんか悪さしてたんじゃねぇだろうな!!」

「僕は何もしてないですよ!!」


 ていうか、開口一番がそれ!? 理不尽だよ!! ちょっと、変な先輩について行っただけなのに!!

 他には何にもしてないよと心の中では反論するけど、口に出来ず。生徒会長の気迫に押され、お代官様の後ろに身を隠した。

 するとお代官様、生徒会長に向かって先程の出来事を詳らかに話されまして……その瞬間、生徒会長の怒りのボルテージが最高潮に!!


「粟森先輩、そいつらの顔と名前、当然覚えてますよね?」


 今すぐ教えてくれますかと湯気でも立ち昇らんほどに奮起していらっしゃるぅ!? そしたらお代官様改め粟森先輩は、当然だ、この学校の全てを把握しているからなと眼鏡を押し上げながら仰られました。え、もしかして、お代官様じゃなくて将軍様!?

 すべて把握って、牛耳ってるってことでしょう!? どういうことなの、一体何なの、と狼狽えていたら、何を勘違いされたのか、もう大丈夫だからね、怖くないからねとハーフの王子様は仰った。

 というか、先輩方は何者!? ハーフの王子様を見つめてきょとんとしていたら、にこっと微笑んで。


「僕は、三年の夜宮オスヴァルトだよ、前の生徒会長だったんだ」


 こっちは同じく三年の粟森康晴、前の副会長だよ、とお代官様を紹介した。え…やっぱり、美形しか生徒会に入れないんだね!!

 やっぱりBL学園ものは正しかったんだと喜んでいたら、お前それどころじゃねぇだろと生徒会長に呆れられた。

 何言ってるの!! 大事な事でしょ!?

 生徒会長こそ、こんな大事なことを僕に隠してたなんて人が悪いじゃないですかっと言ってやったら、普段通りのお前だな、心配して損したぜと溜め息を吐かれた。ただその時、優しく頭を撫でられたけども。

 優しい生徒会長なんて……気持ち悪!!生徒会長、何か悪いものでも食べたのと聞くと、お前が既に悪いもんを食ってんだろ、体にも心にも毒だから早く吐き出せと訳の分からないことを。

 まさか、BLのことじゃあるまいな!? ぜんっぜん悪いものじゃないから!! むしろ健康的なものと断言すると、んじゃせめて周りの人間の健康被害になるから自重しろと怒られた。

 無理だよ!!


 いつもの掛け合いになってワーワー騒いでいたら、前生徒会長様と前生徒会副会長様の会話が聞こえてくる。


「大丈夫みたいだね」

「だな。しかし、精神的なものは後から来るからな」


 子供を見守る保護者の様な彼等の姿は、とても絵になる光景だった。

 さすが美形!! 圧巻だね!!

 生徒会長はただの乱暴者だけど。


 また一つ、お姉ちゃんに話すネタが出来たなぁ、とホクホクしたのだった!!


 因みに南校は進学校ではないけど、基本的に3年生の部活動は自由参加だから、生徒会や各委員会の3年生メンバーは便宜的に存在する形になっていて主導する立場は2年生なんだよね。だから彼等は前生徒会って扱いになる訳。

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