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隣の病室のあの子

作者: 鹿尾菜ケイ

ホラーになりませんでした

「あーー!なんで 夏休み真っ只中に怪我するかなぁー私ーー!!」


遊べねーじゃん!!と愚痴を漏らしているのは鬼塚咲乃 高校生


交通事故で病院送りになった


「にしても 怪我したの私だけかよ…」


普通なら複数入れる病室に1人ぽつんと寝転ぶ


「怪我しろって訳じゃねーけどさー……暇ーー!!」


暇つぶしの本を持ってきた母は昨日来たっきりだし…つーか小説なんか読まねぇし!


「1人部屋のが良かったなー。ま、今実質1人部屋なんだけど……」


無駄に広いとなんか違和感感じるんだよなぁ



まあ、窓際なのが救いかな 動かねー景色より動く景色の方がマシってね


看護師の足音もうるせー…


バタバタ…


忙しいのは分かってるけどさ、こっちは寝たいワケよ


競歩みたいな感じで走ってくれねーかな


「ホントに誰も運ばれてこねーな」


「お姉さんさっきからうるさい…」


「うわっ!!!」


びっ…くりした…!いつの間に現れた??


「なんだよ少年…」


「少年じゃない、僕は藤原海斗だ!」


ませた小学生…


「で?藤原少年……何しに来たの」


「隣の病室だったけど お姉さんの声がうるさいから文句言いにきた」


へぇ〜


「勇気あるなお前〜!」


ケラケラと笑って頭を撫でると不機嫌そうに怒る


「女の子はお淑やかにしなきゃなんだぞ!」


「……ぷっ、ぶははは!いつの話だよ!おもしれーなお前ぇ」


ぷくぷくと少年の頬が膨らむ…どうやら泣きそうなようだ


「あー…悪かったよ…そうだ!怖い話しようぜ!」


少年に構わず話し続ける


「いつだっけな…まあいつでもいいか、この病院でな死んだやつがいんのよ」


「病院なんだしそんなことあるでしょ…ぐすっ」


「いやな それが変な死に方なんだ そいつは骨折で入院したのに突然脳死した」


怖いだろ?


「うーん……怖くはない!」


「なんだよー」


「だってさ打ちどころが悪かったってだけかもよ?」


げー


「嫌なとこ付くなお前……さては頭良いな?」


「うーんどうだろう学校行ってないからわかんないや」


「なんで行ってないんだ?」


えー言うの?とごもる


「いえよ私達の仲だろ?」


「どんな仲なの……?」


「いいからいいから」


そう言ってぐいぐいしてくるお姉さん


「僕は心臓が弱くて入院してるんだ」


「へえー大変だな……じゃあ私みたいに遊び回れないのか」


「遊ぶってどんな感じ?やっぱりぶわぁーってする?」


ぶわぁー?


「楽しいってことか?」


「うん!……う…」


突然ガクンと膝をつく藤原少年


「どうした?心臓痛いのか?」


「大丈夫……ちょっと楽しくて……苦しくなっただけ」


「そっか…お前…いや海斗!元気になれよ!」


そう言った背中をさする手は優しい


「なりたいよ……でも僕には心臓くれる人いないし…」


お母さん達もきっと邪魔だと思ってる……


「んな事ねーよ!私の方が母さんにめーわくかけてっけど文句言われたことねー……いやあったか?」


「慰めになってないよぉぉ」


とにかく!!


「海斗は大事にされてるはずだ!勇気あるやつがめげんな!」


「お姉さん……うぅ…」


「静かにすっから病室に戻れ」


「うん…あ、そうだお姉さん名前は?」


そう言われ一瞬キョトンとする


「あ、名前言ってなかったな!私は鬼塚咲乃!また会おうな〜」


「うん!」







その日、僕の心臓のドナーが見つかった

手術も成功…


名も知らぬその人にどれだけ感謝した事か……そして


勇気をくれた鬼塚お姉さんにお礼を言わなければ


次の日


「あの」


「どうしたの?」


通りかかった看護師に聞いてみる


「隣の病室にいた女の人に会いたいんですけど……」


「え?隣に女の人なんていないわよ?」


「でも……あ、そうだ!鬼塚咲乃さんはもしかして退院したんですか?」


その名を口にした途端看護師が驚く


「え……なんでドナーの人の名前知ってるの?」


「……え?」


どういう…?


「内緒の話なんだけど……その子事故にあったあと頭痛がするって言ってたんだけどその時には遅くて亡くなったの……臓器提供の意思もあったし……一昨日亡くなったばかりだったから…親御さんも大変よね…」


早口で難しい話だったのでよく分からなかったがひとつ分かったことは


お姉さんは


「…一昨日…じゃあ」


あれは一体……



ドクッ

『胸張れよ!お前は勇気のある奴だ!』


「……お姉さん……」


僕の心臓が動いている限り……あのおかしくて優しいお姉さんは生きているのかな……?

そして与えられた生命に感謝しながら僕は医者になることを決めた



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― 新着の感想 ―
[良い点] いい話! Σ(゜Д゜ノ)ノ でも、たしかにホラーになってはいませんね。 幽霊がでてホラーならファンタジーもホラーですしね。
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