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青い月の下で  作者: 由起
8/24

東棟の清掃②

ナオミは清掃を丁寧に続けた。

仕事が終わる鐘が鳴ると、仕事道具を片付けて1階へおりた。


仕事の報告を済ませると、自室へ戻るのだが、ナオミは東棟の小間使い責任者に呼び止められた。


「ナオミ、あなたは明日から東棟担当になります」


ナオミは驚いた。小さくえっと驚いた声を出してしまい、手で口を押さえた。


「南棟での仕事ぶりも聞いています。明日からこちらの仕事をよろしく」

「あ…ありがとうございます。こちらこそよろしくお願いいたします」


ナオミの頬が紅潮し、輝いた。嬉しそうに自室へ戻るナオミの姿を見送ると、東棟小間使い頭は王子へ報告に向かった。


「彼女は囚われ人としてではなく、普通の職員として扱っても良いかと思います。個人的見解ですが」


小間使い頭は付け加えた。

王子はふっと笑い、今日二人目だ、と笑いながら思った。


「そうだな、そうだろうな」


書類処理をしながら報告を聞いていたが、筆を止め、置くと秘書に命令をした。


「ナオミを今後普通の職員として扱うように」


小間使い頭も含めて皆驚いた。しかし王子の決断のはやさは今に始まったことではない。秘書が口を開いた。


「監視とご報告は如何致しましょうか」

「うむ…細やかなことは要らないが…動向だけ…小間使い頭、お前から報告してくれ」

「かしこまりました」


ナオミが食堂へ現れると、小間使い頭がナオミにこそっと呟いた。ナオミは驚いて泣き出した。それに周囲は驚いたが、小間使い頭が手で大丈夫と制した。


件の衛兵は丁度その時に食堂へ来たので、小間使い頭がナオミにもう囚われ人ではないことを伝えたのだなと理解した。


ナオミは確かに美人の部類だが、目を見張る程ではない。しかし濃い色素を持つ…それ以外の美人の要素を持つ、非常に珍しい女性だ。隣国の平民であろうとも、王族との婚姻はその見た目で誰しもが納得するだろう。


衛兵はそう思った。


ナオミは落ち着くと食事をとった。嬉しくて嬉しくて、今日はあまり得意でないメニューだったが、美味しく完食した。


食後自室でレース編みをしていると、ノックがした。秘書だった。


「はい?」

「王子がお呼びだからすぐにお伺いするように」


ナオミはそのまま秘書についていった。


「失礼致します」


ナオミが入ると王子はソファーに座って寛いでいた。


「小間使い頭から聞いたか?」

「はい。ありがとうございます」

「これからは自由に行きたいところへ行っていい。給金も出る」

「ありがとうございます」


王子はちょっと苦笑した。

「今迄が普通ではなかったからな…」


「?」

「先日行った市場等も自分で行けるぞ。暇をもて余すこともない」

「今は買っていただいたレース編みで忙しいので、編み上がったらまた行くことに致します」


ナオミはにっこりと微笑みながら言った。


ナオミが退出すると、王子は秘書にもう少し早く自由にしてやっても良かったな…と独り言のような形で話した。


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