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青い月の下で  作者: 由起
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市場①

「夕げ時に休みに何をするかと問われて"することがないので寝るだけだ"と答えたらしいな」

「…はい」


(?王子が何故そのことを気になさるの?)


疑問形が顔中に溢れたのだろう。王子がふっと笑った。この国では比較的珍しい部類に入る、少し茶色がかった金髪が少し揺れ、端正な顔立ちでも特に印象深い濃い青い瞳が細められた。


「今から市場の視察を行う。夕方の市場がどのような混雑ぶりか、確認する。お前も付き合え」

「は?……はい。………???」


(何故私を連れてお出かけなさるの?何か意図がある?私は何かしでかしたの?)


王子は今度はナオミの表情に現れた疑問形に答えず、静かに席を立ち、ナオミの居る方へ来た。王子を立たせて自分が座る訳にはいかないという使用人としての礼儀作法として、ナオミは慌ててソファーから立ち上がった。


「オルグ、出掛るぞ」

「ナオミ、行くぞ」


サッサと早歩きしてドアへ向かう王子の脇をナオミは慌てて小走りして追い抜き、ドアを開けた。部屋を出た王子の後ろをついて歩いた。


「帽子はかぶらず、髪はそのままにしておけ」


スレシュ国だけでなく、世界で何人いるかわからない位珍しい、少し茶色がかりつつもほぼ黒の真っ直ぐな髪が歩くと揺れる。


「目立ちますがよろしいのでしょうか?」

「構わん。お前の色なのだ。気にすることはない」


(いえ、そうではなく、私と一緒に居ることで貴方が目立つんですが)


(王子と市場へ行くなんて)


「私の馬車へ乗れ。構わん」


職員が王子が乗るときにサッと手を出した。当然のようにその手を取り、王子は馬車へ乗り込んだ。遠慮しながらも王子の命令のため、ナオミは続けて乗り込んだ。


「私の隣へ座れ」


どこに座ろうかためらったナオミに王子は当然のように言った。


「はい。失礼致します」


市場視察の際は王子の馬車の中でも小型のものになる。通常馬車は3人×2の6人定員だが、これは4人用であった。しかし市井の馬車とは異なり、ゆったりとした大きめの作りであった。


(でも王子との距離が…)


ナオミはドキドキした。


いつも監視されているナオミだが、まず一番懸念されているのが"脱走"と"国へ帰ること"である。


(私は逃げません)


頬を染め、微かに王子の体温を感じながら、ナオミは思った。


(何故なら…)


俯きながら、ちらりと右側の王子の大きな白い手を見た。

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